※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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オフトレーニング旅行 ~仲直り作戦②~

買い物はつつがなく進んだ。目立ったトラブルが起こることもなく、いつも買い物をしているという巨大なスーパーで、数日分の食材を買い物かごの中に放り込んでいく。

 

人はなかなか多い。食材だけではなく、様々なものが売っている。そのため、島民だけではなく、旅行客も数多く見える。

 

俺はカートを押す係。これも巨大だ。2段構造になっていて、それぞれに2つずつかごを乗せられる仕様になっている。

 

その4つ分のかご一杯になりつつある。30人近い集団が食べる食材を買おうってんだから、そのくらいになるか。

 

「まだ買いますか?」

「そうねぇ……これだとまだ足りないのかもしれないわね~、訓練終わりのナカジマさんはたくさん食べるから」

 

それは昨日のご飯でわかっていたことだった。あの細い体のどこにそんなに入っていくのかと言いたくなるくらいの健啖家だった。それを言ったら、身内のアルトリア達や耀も相当だけどな。

 

「じゃあ、追加で持ってきますね」

「お願いするわ~。ここで待ってるからね」

「あ、私も行くよ夜月君」

 

テスタロッサさんが後ろからついてきた。

 

「あ、それじゃあ私、おトイレに行きますね」

「私も行っておくわ」

 

ヴィヴィオとルーテシアはこの隙に済ませておくつもりらしい。ま、そこまで時間はかからないだろ。すぐに戻ってくることにしよう。

 

歩きながら、俺はフェイトさんに気になったことについて話してみる。

 

「どうしてこっちに来たんですか? トレーニングには不参加でもよかったんですか?」

「うん……なのはに今日は集中してないって言われちゃって」

「何か心当たりは?」

 

こういう変化に素早く対応する。大切なことだ。

 

「ある、のかなぁ。心当たりがあるとすれば、この前の家宅捜査かなぁ……」

 

この前のと言うと、あれか、あのクズの家の捜査のことか。そんなに気にすることが……って、そりゃ指名手配の犯人(ライ)を取り逃して、部隊員を危険に晒したとなれば、落ち込みもするか。

 

その上、成果はほとんどなし。これで落ち込まなかったら、メンタルが鋼過ぎる。

 

「うん。あはは、こんなことでいちいち落ち込んでいたら、執務官なんてやってられないのにね」

「まあ、そういうもんですよね」

 

戦場に出ていれば、ヒヤッとする場面なんていくらでもあるだろうし、空振りなんて毎回のことだろう。むしろ俺のように、毎回ボスにぶち当たるほうがどうかしている。

 

でも、常人には対処不能な『スタンド使い』との最前線を戦っている人にかかるストレスは、とても大きいだろう。

 

「でも、スタンド使いに会った時は俺がどうにかしますよ。俺もスタンド使いですからね。この前は役に立ちませんでしたけれど」

「ありがとう。その時は頼りにするね」

 

そう言うフェイトさんの表情は少し柔らかくなったような気がする。

 

俺も暇ではない(嫌味ではなく、抱えるタスクは多いから)ので、限界はあるが。スタンドは俺たち異世界人が持ち込んだものだ。俺達がカタを付けるべきだろう。

 

話しているうちに、スーパーの入り口にたどり着いた。俺達の目的は一番大きなカートだ。そこに限界まで買い物かごを積み込み、持って行くこと。

 

「あ、フェイトさん。かご取ってもらっても……フェイトさん?」

 

さっきまで並んで歩いていたはずのフェイトさんが、忽然と姿を消していた。

 

「は? え?」

 

辺りを見回しても、フェイトさんは影も形もない。あの目立つ金髪は少し隠れたくらいで隠せるものじゃないんだけど。

 

明らかな異常事態。俺の理解はとても速かった。

 

敵襲だ。

 

「呪われてるだろ、俺」

「素敵。すごい判断力だね」

 

フェイトさんと入れ替わるように現れた女の子がいた。声も、どこか聞いたことがある声の妖精さんだ。

 

「さっきの金髪の人なら大丈夫だよ。怪我とかもしてないから。少なくとも今はね」

「何が目的だ」

 

心当たりはありすぎる。今回のメンバーでも、2、3個はすぐに思いついた。

 

「ゆっくり説明すると思う?」

「ブチのめされる前に喋ったほうが、身のためだぞ」

 

『回転』を加えた爪で狙い定める。牙(タスク)が俺の背後で唸り、戦意を顕わにする。

 

「あは、結構血の気が多いんだね。それにいい殺気―――素敵!」

 

獣のように目を光らせる敵対者は、舌なめずりして俺に飛びかかってきた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「遅いわね」

「ですね」

「……」

 

待ちぼうけを食らっているメガーヌ、耀、ヤミの3人は暇を持て余していた。しかし、下手に動いてしまっては翔やフェイトと合流できなくなってしまうかもしれない。

 

小さい紫色のテントウムシが飛んできた。

 

「あら、この子はルーテシアの?」

 

ルーテシアの召喚獣が飛来してきた。見覚えがあるのか、メガーヌの指先に止まる。必死で鳴いている。耀が目つきを鋭くする。

 

「何かあったらしい。行かないと」

 

生命の目録(ゲノム・ツリー)の能力で動物と会話できる耀は、いつものぽけー、とした顔を一瞬で険しくする。それはなんの冗談でもない。

 

あのフリーダムな耀を、ここまで真剣にさせるという事態だということだ。

 

「ヴィヴィオちゃんとルーテシアに?」

「2人に何かあったと?」

「うん、こっち」

 

走り出す耀に、メガーヌとヤミは続く。虫はメガーヌから耀の指に移っていた。他の人にはわからないが、2人の間では情報のやり取りが盛んにおこなわれていた。

 

虫が案内した先はトイレだった。確かにヴィヴィオたちは、トイレに行くと言って場を離れていた。それがここなのだろうか。

 

「ちょっと待って」

 

進みだそうとするヤミを引き留める。

 

「この先、トイレで2人は消えたって、この子が言ってる」

「消えた? 襲われた、攫われたではなく、消えたと言っているんですか?」

「どういうことかしら?」

「わからない。今はルーテシアとのリンクは切れてるって言ってるから」

「召喚獣とのリンクも保てないような場所に、2人は隔離されているというわけですか?」

「そんな場所、簡単に用意できるようなものじゃないはずなんだけれど……」

 

トイレの入り口でまじめな顔をして悩む3人を見て、通る人は少し避けて通るようになってしまっている。

 

「話していても、仕方ありません。実際に見れば術の痕跡が残っているかもしれないです」

「気を付けて進もう」

 

ヤミは腕を刃物に変身(トランス)させる。平和なところに刃物が飛び出れば、騒ぎになる一歩手前だ。

 

周りなど気にしないヤミと耀を、作り笑顔を浮かべたメガーヌが隠しつつ、3人はトイレに突撃した。

 

その中には、

 

「特に変なところは……」

「ない?」

 

扉はすべて空いている。ちょうど誰もいないときに入ったらしい。もしもいたら、騒ぎになっていただろう。

 

変な模様、汚れの類は全くない。落ちているものもなく、魔術的な触媒の手がかりも期待できそうもない。

 

「……」

 

ヤミは油断なく構え、少しずつ前に進んでいく。

 

「やっぱり攫われた?」

「2人とも、そのあたりのチンピラには負けないと思うのだけど……」

「なら、実力者がいたということでしょう」

 

ヤミは軽く返すが、裏の世界を生き抜いていた彼女の頭の中では、様々な手段が思い浮かんでいた。自分よりも実力のあるものを倒す方法は、意外とたくさんあるのだ。

 

しかしその場合は、それ相応の準備というものが必要になって来る。相手を絞って調べなければ、準備をすることは無い。つまり、意図的に狙われなければ。

 

「誰かに狙われる理由があったりしますか?」

「それは……でも……」

「あるの?」

 

2人とも、理由がないとは言えなかった。特にヴィヴィオには大きな理由がある。それが原因で大きな事件が起きたほどだ。事件から数年たち、様々な工作で普通に暮らせるようになっているが、原因としては十分に考えられた。

 

しかし、メガーヌの口からそれ以上の説明はなかった。ヴィヴィオに許可を得ずにしゃべるのは失礼だと考えたのだ。

 

ヤミと耀は無理に聞き出そうとはしない。2人とも、おしゃべりが得意なほうではなかったし、自分たちにもしゃべりたくないことの1つや2つある。

 

何か理由があることがわかれば十分だった。

 

「これ以上は何も見つかりませんね」

「そうみたいだね、翔に連絡してみる」

 

耀は自分の端末を取り出そうとして―――気が付いた。トイレの鏡に人が写っている。しかも自分の後ろ、真後ろにだ。

 

「ッ!!」

 

耀は勢いよく振り向く。

 

動物の感覚を持つ耀がここまで接近されていることに気が付かない。絶対に異常なことだった。

 

「耀さん? どうかしたの?」

「いや、鏡に人が写って……」

 

再び鏡を見ると、やはり女性が写っている。しかも距離が近づいている。混みあっているスクランブル交差点のように肩と肩がぶつかる寸前といった感じだ。

 

「だって……!」

 

しかし、隣には人はいない。鏡にはしっかりと写っているというのに。

 

「はっ!」

 

ヤミは迷いなく鏡をたたき割っていた。バラバラになった鏡が、辺り一面に散らばる。あまりにも迅速で過激な行動に他の2人は目を丸くする。

 

「そういう能力者の可能性があります。気を付けてください。春日部耀、体に異変はありませんか」

「う、うん。大丈夫だけど……」

 

耀は床に散らばった鏡の破片を持ち上げる。何の変哲もない鏡だ。何か細工を施されているということもない。

 

《鏡を割ったところで無駄だよッ!! 全員揃って、私の世界に引きずり込んでやるッ!!》

 

次の瞬間、吸い込まれるように、2人はその場から姿を消した。

 

「……あら?」

「3人とも、無事ですか?」

 

ヤミとメガーヌは気が付くと、元のトイレにいた。しかしどこかおかしい。体が重い。何か術を掛けられてしまったのか

 

「ハァッ、ハァッ……! ゴホッゲホッ……!」

 

返事がなかった耀は、ぐったりと横たわっていた。

 

「耀ちゃん!? 大丈夫!?」

「ぅ、うん。急に苦しくなって……ゴホッ」

「すみませんが、春日部耀をお願いします。私たちは明らかに誰かの攻撃を受けている。外に出ましょう」

「え、ええ。わかったわ!」

 

メガーヌは耀を背負う。力の抜けた人ひとりを背負いながら動くのはキツイが、こう見えても、管理局の局員。行動には迷いがない。

 

一番戦闘力の高いヤミを先頭に、狭いトイレから外に出る。

 

「あれ?」

「出口、そっちだった……?」

 

出口から外に出ようと足を踏み出した先は、出口とは反対だった。ヤミも自分がなぜそんなことをしたのか疑問に思い、間の抜けた声を出す。改めて外に向かって踏み出した。

 

外には人っ子一人いなかった。

 

少し歩くと、あることに気が付いた。

 

「ヤミちゃん、気が付いた?」

「はい。文字がすべて『反転』しています」

 

品物に付けられるすべての文字が、鏡に映したように反転していたのだ。いたずらだとすれば、どれだけの労力がかかっているのだろうか。

 

「いたずらなわけがありません」

「そうね……耀ちゃん、大丈夫?」

「う、ぅん、大丈夫……」

 

しかし、その声には力がない。

 

「人払いの結界が張られているのかしら」

「こんなに人の多い場所で使えば、すぐに人に気が付かれるでしょう」

 

人をよせつけない人払いの結界と言っても、練度の高い人が見れば違和感を覚えることが多い。本来はたくさん人がいるはずの場所に使えば、その違和感は大きくなる。

 

「アッハッハッ! それはどうだろうねぇ!」

 

高笑いとともに現れたのは大柄の女性だった。手に持ったを鞭を叩きつけると、床のタイルにヒビが入る。

 

「久しぶりだねぇ、金色の闇……ッ!!」

「暴虐のアゼンダ……!」

 

駐車場で観察していた奴らの1人、特にヤミに対して憎悪を燃やしていた女性が立っていた。

 

「お知り合い?」

「はい。レベル3の念動力と、高速のムチの使い手。昔少しトラブルがありました。ですが、変身(トランス)能力の敵ではありません」

「少しトラブルだぁ……? ふざけるんじゃないよ! あんたに負けて依頼に失敗したせいで、あたしが築き上げてきた名前はズタボロだッ! この屈辱、そっくりあんたに返してやらないと気が済まないんだよッ!」

 

ヤミはアゼンダと無駄なやり取りを行おうとはしなかった。裏の世界では殺った殺られたなど日常茶飯事だ。ヤミ自身、自分が恨まれることをしてきたということも理解していた。

 

「―――変身(トランス)……? 変身(トランス)っ! ……これは」

「アッハッハッ! どうしたんだい!? お得意の変身(トランス)はッ! 久しぶりに見せてくれるんじゃないのかい!?」

 

一向に変化しない自分の体。今まで手足のように使えてきたはずの能力が使えなくなっている。しかし、ヤミは慌てない。

 

「変身(トランス)が使えないのなら、徒手格闘で殲滅するまでです」

 

ヤミは一直線にアゼンダへ飛びかかった。変身(トランス)能力は使えなくても、ヤミの身体能力は十分に高い。変身(トランス)のサポートが無くとも、Aランクの武偵程度なら、制圧できる。

 

「はっ、そう来るだろうと思ったさ!」

 

アゼンダが指を動かすと、横から迫る影があった。

 

「ッ!! た、高町ヴィヴィオ……っ!」

 

割り込んできたヴィヴィオに怯み、ヤミの拳が緩んでしまう。その隙を見逃すアゼンダではない。

 

「なに止まってんだよッ!! ほらァ!!」

 

鋭い鞭がヤミを捉えた。

 

「ヤミちゃん!」

「そっちの女ァ! 動くんじゃあないッ!!」

 

今日のヤミはいつもの戦闘服ではない。女性陣が選んだ白いワンピースだ。実はこれも『ギャップ萌えで仲良くなろう作戦』の一環だった。

 

もちろんヤミがそんな服を持っているわけがない。持ち主はアスナだ。

 

防弾、防刃性能のない、ただおしゃれをするためにアスナが貸した服。その生地が無残にも引き裂かれる。ミミズ腫れを通り越し、青い痣ができてしまっている。

 

アゼンダの一喝で、駆け寄ろうとしたメガーヌの動きは止まる。それは声以上にさらに現れた1人の少女を見たからだ。

 

「ルーテシア!?」

「私の念動力はレベル3。でもね、意識のないやつを操り人形にするくらいは、簡単にできるんだよねぇ」

 

ヴィヴィオもルーテシアも、虚ろな目をしている。アゼンダを背に、守るように立っている。アゼンダの言う通り、操られているようだ。

 

「さあ、始めようじゃないか。金色の闇の凌辱ショーをさぁ!」

 




書いていて思った。こんな事件に巻き込まれたら、普通旅行を切り上げるよね。少なくとも、自分だったらそうすると思う。

明日の陸戦試合中止かもしれないな……
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