※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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オフトレーニング旅行 ~仲直り作戦⑥~

現実世界に吐き出された男は、人のいなくなったお店から脱出していた。目立つ装備はすべて捨て、最低限の装備だけを持って。

 

鏡の世界から強制的に吐き出されたということは、アゼンダに何かあったのか、それとももう用済みだと判断され捨てられたのか。

 

どちらにせよ、この場に留まっているのは危険すぎる。

 

「アゼンダはもちろん、あの女とも連絡が取れない……クソッ!」

 

逆探知の危険を考え、端末も捨てる。今回の計画のために使っていたものだ。惜しくはない。

 

アゼンダと男が島に来れたのは、赤毛の少女の手引きがあったからだ。フェイトによって壊滅した犯罪者グループの生き残りには、指名手配をかいくぐって装備を整える余力などなかった。

 

「とにかく、この場から離れなければ。援軍を呼ばれれば逃げ切れない」

 

アゼンダのスタンド能力さえあれば、その援軍すらも全員無力化出来ていた。だが、無いものねだりしていてもしょうがない。今回の作戦は失敗だったと諦め、次の機会をうかがうしかない。

 

問題は、すっかり人払いされてしまったこの場所から、どう逃げ出すのかということだ。虎の尾を踏んでしまった男が、逃げきれるのかということだ。

 

着実に狭まっていく包囲網。翔が連絡してそこまで時間は立っていないはずだが、よほど優秀な人間がいるらしい。男には心当たりがあった。

 

とうとうその時が来た。

 

「管理局の高町なのはです。少しお話、よろしいでしょうか?」

 

白を基調としたBJ(バリアジャケット)に身を包み、手には科学による魔法の杖、レイジングハートを持つ、犯罪者の恐怖の象徴、高町なのはが空から降りてきた。

 

男は震えそうになる声を押さえつけ、出まかせで乗り切ろうとする。

 

「ッ!! (し、白い悪魔だと!? よりにもよってこいつに見付かるなんて……ッ!!)い、いや、避難勧告も出ている。ここで立ち話というのは少々危険なのでは?」

「問題はありません……画像照合、終わりました。あなたを拘束します」

「クッ―――なっ!!」

 

なのはには最初から話し合う気などなかったのだ。

 

桃色の輪っかが、男の体を拘束していた。すっかり簀巻きにされ、身動き一つとれなくなってしまった。

 

拘束用の『バインド』の魔法、魔力を使った手錠だ。込める魔力によって性能が変化する。なのはの魔力で編まれたバインドで拘束されてしまえば、逃げ出すのは不可能だ。

 

しかも、この量は普通に拘束する時に比べても明らかに多い。どれだけ気合が入っているのか分かるというものだ。

 

絶対に逃がさないという鉄の意志が。

 

男は身動きが取れない以上に、なのはの意思に圧倒され、逃げるという選択肢を取れなかった。

 

「こちら高町なのは。目標の人物を捕えました。これより連行します」

 

男は引き渡されるまで、全く抵抗することは無かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が戦った少女と、フェイトさんを襲っていた男を取り逃してしまったとはいえ、俺が関われることは終わりのようだ。

 

訓練を切り上げて駆けつけてくれた高町さん達が、あの後すぐにその場を引き継いでくれた。俺は気絶したアゼンダを送り届け、事情聴取に応じる形になった。

 

特にアゼンダは拘束してもスタンド能力で逃げてしまうため、鏡のない部屋に閉じ込める必要がある。そのあたりの説明も必要だ。

 

それにしても、今回は3人中2人を取り逃してしまうとは。何たる失態……でもないな。こんな街中で襲われて死者が0人だったんだ。戦っているんだから、多少のケガで落ち込んではいられない。

 

ま、ウォズを名乗るあいつがいなかったら、死んでいた人がいたのは間違いない。それによる二次破壊も。すごい微妙な気持ちだ。次に会ったら話さないといけないことがたくさんだな。

 

怪我人はヤミとテスタロッサさん―――もといフェイトさんの2人だ。

 

フェイトさんは肩を撃たれていたため、すぐに病院に行ってもらわなければ。フェイトさんのことを見た高町さんの顔は……まあ、敵に回したくはないとだけ言っておきましょうか。

 

そしてもう1人の怪我人のヤミだけど、彼女も病院行きだ。でも、フェイトさんとは違い、そこまで深い傷はなかった。外から見ると痛々しいけど。

 

戦っていた俺たちは、そろって救急車に乗って移動した。ちなみにアゼンダも。俺の攻撃で顔を火傷したからな。

 

みんな揃って治療を受けている間、俺は聴取を済ませた。

 

途中、男の方が捕まったと連絡が入ったが、結局俺が戦った少女が捕まることは無かった。あのメンバーでも捕まえることが出来ないとはね。

 

洗脳されていた2人には特に傷はなかった。アゼンダが気を失ったことで、能力も途切れたんだろう。

 

「1日が終わるねー」

「そうだなー」

 

せっかくの旅行の午後を丸々消費してしまった。あいつらマジ許さない。

 

今は病院のソファーに座って、耀と一緒にぽかーっとしている。

 

「全く、とんだ目に遭っちゃったわね」

「そうですね……ヤミさん、大丈夫かな……」

 

首に傷が残らないようにテープを張っているルーテシアは、すでにケロッとしている。図太い根性してるよ。母親のメガーヌさんは、すでに帰って夕飯の準備だ。買い物どころではなくなってしまったため、残っている材料で何とかすると言っていた。

 

対するヴィヴィオは見るからに気分が下がっている。もうサゲサゲだ。

 

操られていたんだからしょうがないが、ヤミをぼこぼこにしたんだ。それも、試合じゃなくてただの暴力で。気分も落ち込むというものだ。

 

処置が終わったヤミが、角から顔を出した。

 

あの白いワンピースはすでにボロ布になっていたため、お店から適当に買ってきた紺のジャージを着ている。

 

「もう少し良いの無かったの?」

「贅沢言ってるんじゃないよ」

 

まさか、そういうのに無頓着な耀にも微妙な顔をされるとは。でも、ヤミにもこだわりはないだろ。将来的にはわからないけど今は。

 

ヤミは俺達、正確にはヴィヴィオを見て、こちらに走り寄ってきた。座っていたヴィヴィオも立ち上がる。

 

「ヤ、ヤミさん! お身体は……うわあ! ヤミさん!? ど、どうしたんですか!?」

 

そのまま、ヴィヴィオの背に両手を回して力を込めた。

 

「良かった……! あなたが無事で。本当に良かったです……!」

「……はい。ごめんなさい。私のせいで、ケガさせちゃって」

「違います。私のせいなんです。今回あなたが狙われたのは。全部私のせいで……っ」

 

涙こそ流していないが、その声は震えている。しばらくするとヤミは体を離す。

 

「夜月 翔。ドクター・ミカドには申し訳ないと言っておいてください」

「出ていくつもりなのか?」

「え!? そ、そんな!?」

 

今度はヴィヴィオが涙目になる。出ていくという言葉だけですべてを悟ったらしい。聡い娘だ。

 

「今回のことでよくわかりました。やはり私は、こんなところにいるべきではありません。周りに迷惑が掛かります」

「そんな! 全然迷惑なんて思ってないですからっ! 夜月さんも止めてくださいっ!」

「どうしてもって言うなら、止めないけど」

「ちょ! 翔さん!? どうして……っ」

「……」

 

どうしてもこうしてもない。

 

「俺だって、いつまでも守ってやることは出来ないからな」

「守る? あなたが、私を?」

 

わざと少し挑発する。

 

「今日の戦いを、それ以外の言葉でどうやって表現すればいいのか、俺にはわからないな」

 

その言葉にヤミは悔しそうな顔をする。言ってる俺も俺だけどな。さっきも言った通り、今回みんなが助かったのはウォズのおかげなんだから。でも、使えるものは有効に使ってやるさ。

 

「ヤミが昔のあれこれで狙われるのはわかった。で、今回怪我人も出たよ。でも良かった」

「良い……っ!? そんな馬鹿な! 怪我人が出たんですよ!」

「怪我が良いわけじゃない! 誰も死ななくて良かったって言ったんだ」

「ッ!!」

 

叫んだ俺に全員が怯む。

 

「出ていくのは勝手だ。でも、今回逃げた奴がヴィヴィオの情報を流したら、お前を狙う奴が利用するかもしれない。いてもいなくても、狙われるのは変わりないんだよ。ここにいてもいなくても、変わらないんだ」

「それ、は……」

 

こんな簡単なこともわからなかったんだな。今まで、ずっと一人だったから。

 

「1人って楽だよな。何をしても全部自分のせいで済む。でも、もう無理なんだよ。昔みたいな一人に戻るのは。周りと関わったんだから。不自由な関係を持ったんだ」

 

不自由かもしれないが、心地よい関係を築いていたんだ。一度築いてしまえば、そう簡単に捨てられるものではない。ヤミのような娘であればなおさらだ。

 

「じゃあ、どうすれば」

「守ればいいだろうが」

「人を守るということですか?」

 

最終的にはそうなってほしいとは思うけど。

 

「違う」

 

今は否定しておく。

 

「ヴィヴィオを守るんだよ。お前はヴィヴィオを守るだけでいいんだ。わけわからない他人を守れって言ったって、ヤル気でないだろ」

 

そんなこと出来るのはもっとお人よしなヤツだ。ヤミは違う。

 

「周りは気にしなくていい。それは俺が「俺たちが」……俺たちがカバーする」

 

耀が俺の間違ったところを訂正してくる。

 

「小難しいことは考える必要はない。本人の我が儘が、一番の正解だ」

「我が儘が……」

 

ヤミはヴィヴィオに向き直った。

 

「高町ヴィヴィオ、ごめんなさい。これからも迷惑をかけることになるかもしれません。ですが私は、この関係を投げ出したりしません。だから、その、これからも……」

「はい! 仲良くしてくださいね!」

 

ヴィヴィオは目尻に浮かんだ涙を拭い、今度はヴィヴィオから抱き着いた。

 

「悪い男だね、翔は」

「うるさいぞ」

「そうやって女の子を落としてるんだもんね」

「はいはい」

 

ルーテシアと耀、いたずらっ子が2人揃うと相手をする俺も大変だが、もうその程度では慌てないのである。

 

「む、つまらないなー」

「ま、ヤミさんに言った通り、私たちのことは守ってくれたもんね?」

「もうボロボロだった私を助けてくれたよねー?」

「まあ……」

 

スタンドがなければ、今回の戦いはどれだけ楽だったか。結局のところ、俺達異邦人がこの世界に迷惑をかけているんだもんな。

 

「やらなきゃいけないって気持ちになるさ。誰だって」

 

結果論じゃない。次こそはしっかり守ってみせる。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

アゼンダは、反射するものがない特別な部屋に閉じ込められていた。そのせいで、マン・イン・ザ・ミラーを使って鏡の世界に逃げることも出来ない。これは翔のアドバイスのおかげだった。

 

「いったい何が……」

 

何やら外が騒がしい。

 

やがて、騒ぎの大元が姿を現した。

 

「ッチ、クソが。あんたかい」

「こんにちは、暴虐のアゼンタ」

 

扉の上部にある小さな窓から見えたのは、赤毛の少女だった。

 

「まさか、あんたが助けに来るとはね。それとも始末しに来たのかい?」

「そんな顔しないでよー。どっちかって言うと助けに来たんだよ?」

 

わざわざ、暗殺に失敗した暗殺者を救出するなんて、そんなリスクのあることを行うわけがない。そもそもアゼンダと少女は仲間ではないのだ。お互いに利用しあう、ビジネスパートナー。

 

「けっ、そうかいそうかい。あの男も助けるのかい?」

「ううん、あっちの方は助けろとは言われてないかなー。それに、あなたを助けに来たっていうのも、正確じゃないんだよね。どちらかというと、あなたの能力を回収しておきたいと思って」

「なんだと?」

 

扉がブチ壊される。バトルスーツ姿の少女が一歩踏み出してくる。いつもと違うのは、手に見慣れない装置が付けられている点だ。

 

「じゃ、返してもらうね」

「ま、待って―――」

 

アゼンダの意思は聞いていなかった。

 

丸腰のアゼンダに抵抗は出来なかった。頭に刺さっていたDISCを抜き取られ、気を失う。

 

(メア、そろそろ脱出しろ。時間をかけすぎだぞ。港に向かえ。篠ノ之博士が待っているぞ)

(はーい、マスター)

 

メアと呼ばれた少女は元来た道を戻るようなことはせず、変形させた腕から撃ち出したバスターライフルで道をこじ開ける。

 

外はすっかり暗くなっている。

 

(それにしても、どうしちゃったんだろうね、お姉ちゃん。変身能力が使えないからって、こんな奴に負けちゃうなんて)

(予想以上に高町ヴィヴィオへ気を許しているのだろう。日々の生活も影響しているのかもしれないが)

(試しに高町ヴィヴィオを殺してみる? そうすれば、元に戻ってくれるかも)

(その場合、金色の闇と我々の対立は避けられなくなるだろうな)

(そっかぁ……じゃあやめたほうがいいかもね)

 

複数人の足跡が、どんどん部屋に近づいてくる。

 

「また会おうね。お姉ちゃん」

 

夜に身を躍らせ、闇に溶けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

また別の場所、ビルの上から眼下の雑踏を見下ろす男がいた。翔にジクウドライバーを渡した男―――ウォズだ。

 

「かくして、夜月 翔は予定よりも早く仮面ライダージオウの力を手にした。そのおかげで助かった命があり、回避された悲劇があった」

 

ウォズの持つ本には今回の事件の顛末が書かれていた。フェイトが助かり、ヴィヴィオとルーテシアの洗脳が説かれ、ヤミが自分の在り方について考えるようになり、翔が敵を打倒した。

 

それとは真逆のことが書かれている。分厚い本に記されているのはこの世界の出来事ではなかった。

 

「これからの悲劇すらも打ち砕けるのか……ただ、一つ言える事は―――彼の歩むべき覇道には、多くの困難が待ち受けているということだ」

 

楽しそうに言うウォズの体は、徐々に透けてその場からいなくなった。

 

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