※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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オフトレーニング旅行 ~帰宅~

「あー、くたくた」

 

膨れたお腹をさすりながら、ソファーでくつろぐ。

 

ホテルアルピーノに戻った俺たちは、メガーヌさんが作ってくれた食事を済ませた。

 

事件のせいでまともに食材を仕入れることが出来なかったが、冷蔵庫の中のものを総動員して、パスタパーティを開催したのだ。

 

ヤミは以前よりは積極的に会話に参加しているように思う。さっきのお話で、少しとはいえ考え方が変化したんだ。

 

それは俺に対してじゃなくて、ヴィヴィオに対してなんだけどね。良かったと思うよ、本当に。うん。

 

そんな楽しい食事だったが、メンバーは少し減っていた。

 

まず、怪我をしたフェイトさん。拳銃に撃たれていたからね。次に犯人逮捕と諸々の処理をするために、現地の警察を手伝っている高町さんとランスターさんだ。そこに加わる形で、桜もここにはいない。

 

スバルさんはここに残っている。事務作業は得意じゃないから、行くと逆に足を引っ張ってしまうのだとか。体を動かすことなら得意なんだけどねーとは本人の談だ。

 

今は食器の片付けも終わり、適当にTVを流し見している。

 

いつもは元気な子供たちも、怪我をした人が出てしまったとあれば、静かにもなるだろう。

 

しかしそれ以上に残念なのは。

 

「やっぱり、明日帰るのね」

「はい。残念ですけれど、こんな事件があって純粋に楽しむことなんてできないですから」

「子供たちも、こんな状態で遊ばせたら、怪我をしかねないですからね」

 

スバルさんとアスナは残念そうに言う。

 

落ち込んでいる子供たち。明日予定していた陸戦試合も、心ここにあらずの子供たちを参加させるのは危険だ。そして、子供たちをのけ者にしてまで行うものではない。

 

「う~、やだよー!!」

「どうしてもダメなんですか?」

「ダメです。みんなにケガさせるわけにはいかないんだから」

 

口をとがらせるヴィヴィオとリオをアスナが諫める。こうしてみると本当にお母さんみたいだな。若妻アスナだね。これは気持ち悪いな、俺。

 

あまり調子が変わっていないのは、理子と狂三、そしてアリアだ。3人とも、そのくらいのケガは想定内といった様子だ。

 

「陸戦試合は今回しかできないわけじゃないですからね。また次の機会を待ちますよ」

「あら? それじゃあ来年も来てくれるのかしら?」

「流石に来年は自腹で来ますから」

「ふふ、楽しみにしてるわね」

 

メガーヌさんはニコニコと笑っている。

 

試合を楽しみにしていたのは小さい子供たちだけではない。中くらいの子供たち、アインハルトと綺凛である。この2人も、年少組に負けず劣らず試合を楽しみにしていた。

 

「残念です……」

「はい……」

 

そんな2人の様子を見たルーテシアはデバイスを操作した。

 

「もう、しょうがないなー」

 

空中に映し出されたディスプレイにはどこかのサイトのページが表示されていた。

 

「これ、何ですか?」

「本当は、明日の試合が終わってから見せるつもりだったんだけどね」

 

画面を操作すると、サイトと同じくシンプルなロゴで、しかし大きなフォントが表示された。

 

「インターミドル……」

「……チャンピオンシップ?」

 

ちびっ子たちも何事かと集まってきた。

 

「正式名称はディメンション・スポーツ・アクティビティ・アソシエイション。頭文字をとってDSAAよ」

「つまり、公式試合……大きな大会ってことだ。今6月だから……ちょうど2か月後の8月に学園島で行われることになっている」

「これに出場して見ないか、ということですか?」

「そういうこと」

 

ノーヴェさんも説明に加わる。

 

ルーテシアはウインクして画面を操作していく。画面をスクロールしていくと募集要項が映し出されていく。

 

「実は私も、スバルさんのお母さんも出場したことがあるのよ。懐かしいわ~戦いに燃やした青春の時代」

 

昔のことを思い出しているのか頬に手を当てている。

 

「特定の国が開催しているわけじゃないから、エントリーすればだれでも参加できるの。その分、厳しい予選を勝ち上がらないといけないんだけどね」

「世界各国で中継される大会だもの。本戦に出場できるだけでもすごいことよ」

 

それは、いったいどれだけ狭い門なんだろうか。

 

「DSAAは魔法戦技の大会だから、魔法が使える人しか参加できないけれど、優勝すれば、10代の中では10本の指に入る実力者っていうことが認められることになるわけ」

 

アインハルトと綺凛、とりわけアインハルトの顔に隠し切れない興奮の色が浮かんでいる。

 

それは声色にも表れているのだが、本人は隠せていると思っているらしい。

 

「これをどうして私たちに?」

「ノーヴェさんに言われて、ね? アインハルトと綺凛も、昔は色々あって伸び伸びできなかったんでしょ? アインハルトにいたってはやんちゃしてたみたいだし、こういう健全な大会にも出てみたらって」

「それは前の話ですよ! 今は違いますからっ!」

 

いったい、いつの段階から、ルーテシアとノーヴェさんは計画していたんだろうか。

 

「ホントか~? ああ、今は他の事にお熱なんだっけ?」

「はい? 他の事ですか?」

「……こりゃ先は長そうだな、翔」

「この人とは、ここで決着をつけるべきか……!」

 

どうしてこんなところで、そのお話を蒸し返してくるんだっ!

 

アインハルトはもう完全に置いてけぼりだ。話の流れに、自分が中心にいるとは思っていないのか。

 

後ろにいる女の子たちは『はいはい。そういうパターンね』って、もう納得したような顔をしている。実際に、恐らく、高い確率で、その予想は間違っていない。

 

ニヤニヤとするノーヴェさんにシャドーボクシングをしている俺は完全に放置され、ルーテシアは話を進めている。

 

「ヴィヴィオたちは公式の試合には出たことないんだもんね?」

「そいつらにはまだはえーだろ? いくら何でもさ」

 

そしてノーヴェさんすらバッサリと話題を切り替えてくる。

 

「そんなことないです!」

「大会に出るために特訓しますから!」

「お願いします、師匠!」

「お、おいっ! だから師匠はやめろって! 別に師匠ってわけじゃねえんだからさ。ただ、ちょっと面倒を見てるだけで……」

 

ぶつぶつと言い訳がましいセリフを吐いている。認めてしまえば楽になるだろうに。

 

「ちなみに、今年は私も出場するわよ!」

「「「えー!?」」」

 

ルーテシアの出場はもう確定しているようだ。

 

しきりに『いいなぁー』を連呼する子供たちに、ノーヴェさんの顔が段々と面白くなってきた。これはもう一押しで行けるのでは。

 

「綺凛さんとアインハルトさんはどうするんですか!?」

「私も、出場してみたいです」

「はい。今の自分がどこまで行けるのか、試してみたいと思います」

「……そっか」

 

しかし、それで簡単にまとまる程度ならば苦労はしない。この状況に満足できていない娘が3人もいる。

 

「ノーヴェさん! 3人も参加するんですよ! 私たちも参加したいです!」

「私たち、全員そろってチームナカジマですもんね!」

「おい! 勝手にチームを結成するんじゃない!」

 

そう簡単に許してくれるほど、ちびっ子たちは甘くはない。むしろ、仲間が増えたことで勢いを増している。

 

流石に見かねたのか、メガーヌさんが話に入って来る。

 

「でも参加者にはそれぞれセコンドが必要よ?」

「そいつは暇な姉さんにでも頼むさ」

「じゃあヴィヴィオちゃんたちの分も、一緒に頼めばいいんじゃないの?」

「うーん……」

 

ここまで言われても渋っているノーヴェさん。いったい何が引っかかっているのだろうか。

 

「ヴィヴィオたちはさ、まだまだ格闘技を楽しんでる段階じゃんか。勝敗を気にするのはもう少し後でもいいじゃないかって思ってんだよ。それに、大会に出てボコボコに負けて、ヤル気がなくなるなんて姿は見たくねーんだ」

「どうかしらね。ヴィヴィオちゃんたち、そういうことで変わっちゃうような娘だと思う?」

「そりゃあ……思わねぇけどさ……」

「じゃあいいじゃない。みんなならきっと大丈夫よ。だって、こんなに良い師匠が付いてるんだもの」

「は、はい?」

 

ぽかんとした顔を一気に真っ赤にした。

 

「い、いや、だから……っ! ~~~っ、わかったよ! お前ら全員私が面倒見てやるよ! でも、やるからには全力でやるからな! 大会まで徹底的に鍛えて、いっそ優勝しちまえ!」

「「「やったあ~~~!! ありがとうございます!!」」」

 

照れ屋なお師匠様が認めたことで、3人はハイタッチしている。

 

「あ、そういえば、忘れちゃいけないことだけれど。参加条件はまだあってね……CLASS3以上のデバイスの使用。みんな持ってる?」

「ぁ、わ、わたし」

 

一人、おずおずと手を挙げたのは、

 

「わたし、持ってません」

 

アインハルトだった。せっかくの空気に水を差すのが申し訳なかったのか、縮こまっている。

 

「覇王流にうまく合う物がなくて、今まで最低限のものしか使ってこなくて」

「たしかに、古代ベルカ式のデバイスで性能高いのはレアだからね……でもご安心! 私の交友関係を舐めてもらっちゃあ困るよ! 詳しい人がいるから頼んでみるわ!」

「あ、ありがとうございます!」

 

これですべての問題がクリアされたな。大会に出るのは、綺凛、アインハルト、ルーテシア、ヴィヴィオ、コロナ、リオの6人になった。クロは体質上、こういった大会に参加するべきではないし、ティナも特に興味がない。

 

「なに他人事のように言ってんの、翔。アンタはアンタでその時期は忙しいはずよ?」

「は、何で?」

 

アリアが腕を組んで近づいてくる。

 

俺は別にそんな時期の予定を立てた覚えはないんだけど。や、何か事件が発生する可能性は非常に高いと言いますか、おそらくそうなっていると思うと言いますか。その場面が容易に想像できるのは悲しいけど。

 

「8月は、学園島にたくさんの観光客が来て、沢山のイベントがあるの」

「ふん?」

「DSAAは未成年の大会だけど、その年齢制限と武器制限がなくなった、2人一組のチーム戦、『鳳凰星武祭(フェニクス)』、超能力者が競い合う『大覇星祭』、その他たくさんの学術的、科学的な発表会、新製品のお披露目……ひと月の間にイベントが目白押しなの」

 

なんでわざわざまとめてしまったんだい? 4年に一度とかにすればよかったものを。

 

「色々利権が絡んでくるらしいわね。お偉いさんが大会の優勝者に声をかけたり、優秀な研究者の引き抜きをしたり。文句言ってもしょうがないわ。で、その期間は人の出入りが多くなるでしょ? しかも、世界各国の会社の役人、政府関係者も集まるなんて、そうあることじゃないわ。管理局だけだと手が回らないのよ。テロ、軽犯罪、警備、護衛、人探し、迷子、スリ、交通整理。武偵への依頼はいくらでも出てくるのよ。島にいればね」

 

地獄のような一月だな。俺達に夏休みは存在しないのか。

 

「島の周りにおっきな客船がたくさん停まって、そこをホテル代わりにするくらいには人が来るイベントだからねー。単位が足りない生徒はここで何とか挽回しようとするらしいよー」

 

これは理子の声だ。

 

単位が足りないか……そうなってしまいそうなのが悲しいな。正直今の段階で、いったい何日学校に行っているのかってレベルだ。

 

待てよ。

 

「島にいれば? アリアはその時期は島にはいないのか?」

「ええ。地中海の別荘にいる予定よ? 炎天下の中、働くか家に引きこもってないとまともに生きてられない島になんていられないでしょ?」

 

引き込まってないと生きられないって、そのくらいすごい人口密度なのかよ。それにしても流石は貴族様だ。サマーバケーションは避暑地で過ごすってことだな。

 

「私はさすがにずっとではないけどね。2週間くらいは旅行に行ってるよ? 夏は、戦争があるから……ビックサイトでね」

 

コ〇ケか。脱水には気をつけろよ。

 

「翔も別荘に来る?」

「いや、アインハルトたちの試合があるから。綺凛の戦妹(アミカ)でもあるし。そのあたりは確認するよ」

 

実際には、絶対何か起こるだろうから島に残っていたいってだけだ。地中海は遠すぎる。日本本土もな。

 

それにしても8月か。また一つの目的地が出来た気分だぜ。

 

残念というか、その後の入浴、就寝まで、特に何か起こることは無かった。いくら何でも、事件の後だということで、今夜はみんな自重したんだろう。

 

こうして、俺達の旅行最後の夜は更けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

そのあとは幸い、特に事件が起こることは無かった。次の日起きると、高町さんとランスターさんが帰ってきており、朝食を食べた後はすぐに帰ることになったのだ。

 

空港に向かう途中で、病院にいたフェイトさんと合流する。撃たれた方の腕を吊っていたが、それ以外には問題はなさそうだった。

 

早めに帰ることになった俺達だったが、その際、今回の事件の犯人2人を護送することになった。特にアゼンダはスタンド能力を持っていたということで、俺たちの島でさらに厳重な取り調べが行われるためだ。

 

まさか俺達と一緒の飛行機に乗ることになるとは思わなかったが、何かあったとき対処にあたるメンバーで、これ以上の布陣はないため、しょうがない。万が一にも逃げられるわけにはいかないのだ。

 

俺達にとっては休日を返上する形になってしまったがしょうがない。

 

特に暴れられることもなく、俺たちは島の土を踏むことができた。

 

「ごめんね、みんな。旅行、早めに切り上げることになっちゃって」

「この埋め合わせは絶対にするから。陸戦試合もその時にね」

 

六課の人たちは、2人を最新式の装甲輸送車に乗せる。この車を迎えによこしたと聞いたときは、丸腰の人間2人にここまで必要なのかと思ってしまった。貴重なスタンド使いの犯罪者だからかな。

 

「あ、夜月君」

 

去り際に、フェイトさんに呼び止められた。

 

「なのはに聴いたんだけどね。捕まってたアゼンダの部屋が壊されたらしいの」

「壊されたのにアゼンダは逃げていなかったんですか?」

 

何ともおかしな話だ。

 

「誰かとすり替わっているとか、そういうこともないみたい。少なくとも、私たちが調べられる範囲で調べて、だけど」

 

新手のスタンド使いの可能性もあるってことね。

 

「だから一応伝えておくね。何かわかったら、また連絡するから」

「はい、ありがとうございます」

 

吊っていた手と反対側を振って、フェイトさんは車に乗っていった。

 

「……まあ、そうね、雪菜さんや」

「なんですか、先輩」

「特に何かあったというわけじゃあないからね」

「何も言ってませんけど」

 

俺はその圧力に負けて、帰り道、事件であったことを洗いざらいしゃべり、誤解を解くのだった。

 




結局あんまりトレーニングはしませんでしたね。
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