※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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新谷航平の記録 結

「これはどうも、航平さん」

「あぁ? あんたか、ブラド。ずいぶんと疲れてるみてぇだな」

「ええ、すこし」

 

この頃になると、航平と会話するのはブラドだけになっていた。触れない神に祟りなし、部下たちは必要がなければ絶対に、近くに寄ることすらしなくなっていた。

 

元より仲良くしたいと思っていなかった航平は、その変化には気が付いていなかった。

 

ただ唯一、ブラドとはそれなりに会話が成立していた。少し形が違うとはいえ、同じように自分を周りの上位種だと思っているからだろうか。

 

ブラドは人間を見下し、航平は自分を神に選ばれた人間だと思っているため、パズルの絵柄がピタリとそろうことは無いのだが。

 

「最近何度も来てるあいつ、誰なんだ?」

 

窓の下には、部下に見送られている客人がいた。見た目は人形のような少女だったが、航平にもわかるくらい、強者の雰囲気を漂わせている。

 

「レティシア=ドラクレア。私と同じ吸血鬼ですよ。人間で言えば正義感が強い人でしてね。最近、追及がどんどんきつくなってきましたよ」

「ほーん。そいつは大変だな」

 

そして実際に人外の種だった。

 

航平はさして重要と思っていないらしいが、もしもブラドが告発され、捜査された場合、ここ最近の悪行に関わっている航平は間違いなく逮捕される。

 

ブラドはイ・ウーではナンバー3の地位を得ていると言っても、まとまりのない組織のナンバー3だ。不要になれば簡単に切られるだろう。

 

ブラドはブラドで、誰かに泣きつくなんてありえないが。

 

「そろそろ、カタを付けておいたほうが良いのかもしれませんね」

「なんだ、ブチ殺すのか?」

「……いえ、さすがの私も、同胞をすぐに殺そうなどとは思っていませんよ。私のスタンドの試運転も兼ねて、少し脅かしてみましょうか」

 

ブラドはどうしようもなくなる前に、行動を起こすことを決意した。それからの行動は早かった。

 

あっという間に会談の約束を取り付けた。

 

2人で屋敷に来たブラドに、付き添いに吸血鬼ではなく人間を連れているブラドに、いやに丁寧に話すブラドにレティシアの警戒心は高かったが、それはすべて無意味だった。

 

『スケアリー・モンスターズ』によって、屋敷に住んでいた住人すべてがブラドの支配下になったころには、レティシアも両手をあげていた。

 

ホワイトスネイクによって能力を奪われ、人質まで取られた。一族郎党、抵抗できずに囚人になってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「は? 武偵殺しの手伝いをしろ?」

「はい。監視も含めてですね。4世が何をしているのか、その周りにいるはずの神崎・H・アリアの動向もわかれば、なお良しですね」

 

ブラドも、航平にそんな器用なことをできるとは思っていない。適当に場をかき回してくれればいい程度の考えだ。

 

そのくらいの実力は備えていると信頼していた。仮に捕まったとしても、大した痛手にはならない情報しか持っていない。捕まったとしても、ブラドの権力ならすぐに釈放させることができる。

 

「武偵殺し……ああ! あのチビ巨乳ね!」

「……まあ、身体的特徴で覚えるのであればそれでもかまいませんが」

 

人をパーツに分けて覚える手法は、探偵科でも教えている。航平の場合は少し極端だが。

 

「そういえばよぉ、なんだっけか。ホームズ4世? に勝ったら自由にするとか言ってたよな?」

「よく覚えていましたね」

 

この男に三大欲求意外に考えることがあったのかと、素直に感心する。

 

「結局、本当に自由にするわけ? あんないい女を?」

「まさか。なぜ私がそんな約束を守らなければならないのですか? 冗談にしてもおもしろくないですよ? どちらにせよ私のところに帰ってきてもらいます」

「くくっ、ヒデェやつだな、あんたも」

「あなたほどではないと思いますが」

 

流石のブラドも自分はそこまでではないと思っているらしい。周りから見れば大差はない。

 

「だったら、そん時は俺にくれよ」

「それは……ふむ……」

 

ギラギラと欲望に目を輝かせる航平は楽しそうに言う。

 

ブラドは即答できなかった。

 

理子を手元に置いておきたい理由は、実はDNAだけではない。理子に流れている血が、めったにない『型』であり、奇跡的に自分の血液と合致していたのだ。下手に扱われて殺されてしまっては元も子もない。

 

しかしそれと同時に、航平の子供には、航平の能力を引き継がれるのかという実験も行いたいと思っていた。

 

航平が召喚した女の子には、ブラドの悪行は知れ渡っている。航平と笑顔で手を組む奴にロクな奴はいない。それが女の子たちの共通認識であり、正解だった。

 

同じく嫌われているなら、ブラドに従順になるように教育されている理子の方が何かと都合がよい。

 

「そうですね……考えておきますよ」

 

最終的にはこう答えたブラドだったが、理子は司法取引でブラドの手を離れてしまったため、この話は流れることになった。

 

ブラドがどうするつもりだったのかは最後までわからなかったが、理子にとって幸運だったのは言うまでもないことだった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「おいおい、ありゃどういうことだ?」

 

結果として、理子は戻ってこなかった。しかし、それ以上の収穫があった。デンジャラスゾンビに酷似した人物がいたからだ。

 

思わぬ闖入者は、予想外の規格外だった。

 

彼の活躍によって、理子だけではなく一緒に行動していたはずの夾竹桃やジャンヌまで捕まってしまった。

 

「私に聞かれても困りますね。航平さんは本当に心当たりがないのですか?」

「ねぇな。お前が止めなかったらブチのめしてたところだ」

「……うかつな行動を避けていただけて良かったですよ」

 

航平の頭にはオンとオフしかない。それはそれで扱いやすいのだが、自分の手を離れると不安定すぎてダメだ。

 

特に今回は、もし仮に航平の同類だとすれば、相応の準備が必要になることは明白だった。

 

調べるにしても、慎重にしてもらわなければ。

 

「っち、そんなまどろっこしいことしなきゃいけねぇのかよ……」

「そう言わず、対処はお任せしますから」

 

手始めに、翔がかかわった事件に少しだけちょっかいをかけることにした。

 

スタンドの矢で貫いたとしても、スタンドを発現できるかはおみくじのようなものだ。スタンドに強い弱いの概念は存在しないと言っても、用途に合ったスタンドが発現するのかは運だった。

 

吉が出るか、凶が出るか。だが、航平の才能なのか、航平はほぼ百発百中で資質のある人物を嗅ぎ分けることができる男だった。

 

結果、レット・ホット・チリ・ペッパーという強力なスタンドを、聖天使様の護衛の男―――保脇に―――植えつけることができた。

 

予定外とすれば、デンジャラスゾンビが欲を出してスタンドを回収したせいで、早々に姿をさらしてしまったことだ。

 

「何をやっているんですか……!」

「こんないい能力、無くしちまうには惜しいだろ? 一応臭え演技までしたんだ。バレちゃいねぇよ」

 

バレるバレないのことを言っているのではない。

 

時には切り捨てる判断も重要なのだ。すべてを無傷で理想通りにこなす技量など、デンジャラスゾンビにはないというのに。

 

せっかく正体不明の敵でいることができたのに、能力について知っていた場合、スタンドや不死身のゾンビシステムの穴を知っていた場合、一気に追い込まれる可能性が出てきた。

 

ブラドはしょうがないと、仕掛けることを決意した。

 

相手―――夜月 翔を見る限り、航平とは違いかなりうまくやっているようだ。武偵殺しに続けて、聖天子の暗殺事件、どちらもうまく収めていた。学校での様子を観察しても目立ちすぎている点は無い。

 

善人面が演技なら大したものだが、そうでなくても厄介だ。ワルの方が仲間として引き入れやすかったものを。

 

偵察として小さい恐竜を送り込み、情報収集。その情報から、早朝訓練があることを突き止め、そこに罠を張った。

 

デンジャラスゾンビには行かせず、ホワイトスネイクだけが行くように指示を出す。ブラドはホワイトスネイクが自立行動できるスタンドで良かったと、心の底から思っていた。

 

「次々と貴重な人材と知り合うとは、航平さんの言う通り、神に選ばれているという表現も、あながち間違いではないのかもしれないですね」

 

一緒に訓練する相手が、名家のお嬢様だと知ったときは笑ってしまった。ついでにその娘たちからも、DNAをいただければ完璧だ。欲は出さないが。

 

翔はあっさりと罠にかかった。

 

後は追い詰めるだけだというところで―――問題が起きた。監禁していたはずのレティシアが脱走したのだ。

 

まるでホワイトスネイクがいないこの時を待っていたかのように、部下もまとめて不意を突いてきた。

 

ブラドの屋敷は大混乱。あと一歩のところでホワイトスネイクを帰還させることになってしまった。

 

なんだかんだ言って、ブラドは身内や同族には甘い男だった。人権を無視するような発言も、そもそもブラドにとっての『人』は吸血鬼だからだ。

 

レティシアを捕まえるという決断も、最後の手段だった。人が人を監禁できるという時点で、少し壊れているのはわかるだろう。

 

「困ったことになりましたね……」

「じゃあよぉ、いっそのこと意識を丸ごと奪っちまうか? そうすりゃ動けねえぜ?」

「フム……それはまあ、手段の1つではありますね」

 

だがしかし、学園島に広く顔が知れているレティシアだ。レティシアとブラドの名前が知れているのと同じくらい、2人の不和も知られている。

 

長い時間世間に顔を出さなければ、そのうち不自然に思われる。意識を奪うなんて言う消極的な手段で乗り切ろうとしても、何か隙をついてくるかもしれない。

 

今回だって、抵抗の意志はすでに奪っていたのだ。それでも、反撃されたのだ。

 

もっと絶対的な戒めがなければ。相手の心をまとめて折り、ねじ伏せるような楔があれば。

 

それを思いついたのは航平だった。

 

部屋にいたブラドの執事がくしゃみをしたところから、話が広がる。

 

「っち、風邪かよ。吸血鬼って言っても、風邪ひくんだな」

「ええ。そういうモノはあまり人と変わらないもので」

「ふーん、それじゃあ、薬とかも飲むわけ?」

「そうですね。結局摂取している栄養素は同じですから。都合よく薬の成分を排除するような作りはしていません」

「んじゃあ媚薬とかも効くんだな」

「またそんな話を……」

 

こんな時にまで、とことん下品な男だと内心軽蔑するが、ケンカをしても何にもならない。

 

しかし、続く航平の発言には少し引っかかるものがあった。

 

「や、ほら、あいつらのリーダーって女なわけじゃん? だったらしこたま媚薬を使って快楽堕ちさせちまえば、俺たちの味方になるんじゃねぇのかって思ってな」

「フム……」

 

下種には下種なりのアプローチがあるのだと、この時ばかりは少し感心した。そんなアイディアにまじめに頭を使うことになるとは。

 

快楽堕ち、は望めないにしても、堕落したレティシアの姿で士気を下げることくらいはできるだろう。ブラドも人間を痛めつけたことはあっても、そういった目で見たことは無かった。

 

「少し試してみるのも悪くはないですね」

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「ん゛お゛っ、お゛お゛お゛お゛お゛っ」

 

ウゾウゾと蠢く肉の壁に拘束されている少女―――レティシアが獣のような、声をあげる。この生物はとある実験によって生まれた、魔力を吸い取る能力を持った合成生物だ。

 

膨大な魔力を持つ吸血鬼にとって微々たる効果しかないが、最後の一滴まで吸い取ることで指一本ほどの抵抗も許さない。

 

「きひっ、やー、楽しんでくれてるみたいだなぁ。良かった良かった」

「……」

 

腕には細い針が刺さり、体に悪そうな紫色の液体がどんどん注入されている。全身の感度を上昇させ、常に発情状態にさせる危険な薬品だ。

 

下腹部、子宮のお腹には怪しくピンク色に輝く模様―――淫紋が、限界以上の快楽を受け入れ、しかし気絶や失神を許さない。

 

目元と耳元を覆うヘッドマウント式のバイザーが、視覚と聴覚を奪っている。気持ちの悪い幾何学的な模様が蠢き続け、頭の中に直接投影されているかのように、まぶたを閉じても強引に送り込まれてくる。

 

鼓膜を揺らす音は高音と低音との混じり合った一貫性のない不協和音。

 

超能力開発の過程で生み出された洗脳装置だ。脳みその構造を強制的に変化させる悪魔の産物。脳内物質のバランスを崩し、常にいやらしいことしか考えられない廃人を作るための機械だ。

 

そんなものに繋がれて1週間。

 

レティシアが壊れていないのが不思議なくらいだった。

 

この調教の様子は、常に部下に映像として発信されていた。24時間、1日中、昼夜関係なく。眠ろうと思っても、大音量で流れてくる喘ぎ声に邪魔をされる。

 

己の主人が段々と乱れ、壊れていく様子を見て、1人また1人と抵抗を止めていった。

 

しかし恐るべきことに、すべての工程が終了した後でも、レティシアは人格を保っていた。

 

こびりついた粘液を洗い流すためにシャワーにぶち込まれ、余計に股間を汚す結果になっても、その眼の光は失われていなかった。

 

強力な魔力で感覚をねじ伏せ、毅然にふるまっていたのだ。

 

抵抗しようにも、服がこすれるだけで股を濡らす体になってしまい、次に歯向かったら、部下に同じことをされるといわれてしまえば、抵抗の芽は摘まれてしまったも同然だったが。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

レティシアの教育もひと段落して数日経ち、今は夜だった。

 

「ふう……楽しみですね」

 

ブラドは帰ってきたメールを見てにやにやと笑っている。吸血鬼でも文明の利器であるパソコンは使うらしい。それも、特注品というわけではなく、そのあたりの電気屋さんで売っているような既製品だ。この島の物は外のものと比べても2世代ほど進んでいるが。

 

帰ってきたメールは夜月 翔からの返信だった。当然のように入手した翔のアドレスに送った招待状への返事が届いたのだ。

 

結果は『謹んでお受けする』というもの。パーティの招待状のような体は取ってあるが、実際は決闘のようなものだ。

 

翔を見つけられたのは本当に幸運だった。まさかあの無能の遺伝しか持っていないリュパン4世がこんな大物を釣り上げてしまうとは。

 

航平と同じように、もともとこの島にいた筈なのに、突然実力が爆発するように伸びた男。航平の矢、DISCによってしか発現しないスタンド能力を持っている。デンジャラスゾンビに似たパワードスーツ―――『仮面ライダー』への変身。

 

すべての証拠はそろっていた。

 

間違いない。夜月 翔は、新谷 航平と同じ能力を持っている。

 

何としても手に入れなければ。

 

「二つの能力があれば、比較実験もできますからねぇ」

 

問題はその強さだ。向こうは間違いなくブラドを敵と定めて襲い掛かって来る。航平の力を知っているブラドとしては、いささか、ほんの少しとはいえ不安があった。

 

「そうですね。一応、航平さんにも伝えておくとしましょうか」

 

翔がこの世界に来て、2ヶ月経った後の出来事である。

 




これで過去編は終了になります。
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