※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

132 / 383
前回、1話飛ばして投稿していました。前回の話の前に1話追加したので是非ご覧ください。


悪夢の中の『デス13』②

「っ!」

 

ヤミの目が覚めた。

 

今度はコーヒーカップに1人で乗っていたようだ。ぼんやりとした意識が一気に覚醒する。

 

くすんだセピア色の遊園地。忘れもしない。今までなぜ忘れていたのか。ここは昨晩も訪れた。

 

「マズい……!」

 

何の対策もできずに、またここに来てしまった。このままでは昨晩の繰り返し―――いや、もっとひどい目にあわされるかもしれない。

 

起きている間はここでの出来事を覚えていることは出来ない。相談しようにも、することが出来ない。

 

だが、今回はこんなにひらけたところで目を覚ました。前回の様にはいかないはずだ。

 

この世界が本当に昨日の声の主の思い通りに動く世界だとすれば、戦闘にすらならないのだが。

 

事実、昨日は変身(トランス)能力の制御を奪われ、服の中に触手が蠢いた。

 

その時の感覚に身震いしていると、1人の女の子が姿を現した。

 

「っ! 姫柊雪菜……?」

「あっ! ヤミさん!? どうしてここに? ここがどこか分かりますか?」

 

見慣れた制服に身を包む雪菜は、ようやく見つけた知った顔であるヤミのもとに駆け寄ってきた。

 

しかし、

 

「止まってください!」

「ッ!! あの、何か?」

 

言われた通り止まる雪菜。

 

「そこから動かないでください」

「はい? わ、分かりましたけど……」

 

この世界のでたらめさを知っているヤミ。考えているのは、

 

(この姫柊雪菜、怪しい)

 

精巧な偽物が出てきても驚くに値しない。

 

「ヤミさん、何があったんですの?」

「まったく、どういう事よ、これは」

 

雪菜の真贋を確かめようと周りをぐるぐると回っていると、狂三とクロも現れた。

 

「あれ? みんないるの?」

「どうやら、ここはただの夢の中という訳ではないようですね」

 

アスナと桜も、いつもの制服姿で現れた。ここまでそろっては、全員を本物か見分けることは出来ない。ヤミは諦めてとりあえず全員が本物だと思うことにした。

 

(疑っても見分けがつきそうにないですし、本物だったら固まっていた方が良いですからね)

 

もっとも、固まっていたところでこの夢の中の世界で戦えるのかわからないが。

 

「それで」

 

ヤミ以外の5人は、この世界について何も知らないようだ。アスナが先頭に立って場を仕切る。

 

「この世界は何なの? みんなこの世界に来る前のことは憶えてる?」

「全くですわ。昨日の夜に眠って、気が付いたらこの場所に立っていましたの」

 

その言葉にヤミ以外の女の子は口々に『知らない』と言う。ここはヤミが説明するしかない。たとえ分かっていることがほとんどないとしても。

 

「私は昨日、この世界に来ました」

「本当!?」

「はい。結論から言うとここは夢の中の世界です。何者かの能力によって作り出された世界で、この世界の支配権はすべて敵が持ってい―――」

「―――アララ、皆さんお揃いで。こんにちは。ん? いや、今は夜だしこんばんはが正しいのかな?」

 

ヤミのセリフにかぶせるように、とぼけた声が聞こえてきた。

 

全員、相当の実力者だというのに、そこにいることに気が付くことが出来なかった。

 

一言で言うとピエロの顔をした死神だ。体全てを覆い隠すようにマントをかぶっていて、手には大きな鎌を持っている。あの大きさになると、実際に武器として使うには少々邪魔になりそうなサイズだ。ピエロ顔のせいで、持っている鎌もおもちゃのように見えてくる。

 

だが、明らかに異常な存在だ。

 

全員が戦闘態勢になる。

 

「ってあれ? 何であの男は入ってないんだろ……?」

 

ピエロはぼそりと呟くが、女の子たちには聞こえていない。

 

「ま、いっか。私の世界に、ちょっかいかけられるわけないんだし……」

「何をぶつぶつと言っているんですか!」

「そうよそうよ! いったいどういうつもりなのよ! せっかくお兄ちゃんと添い寝してたのに!」

「「「はい?」」」

「え?」

「クロちゃん、それについては後でね?」

「え? ちょっと?」

「皆さん、気を付けてください。おそらく私たちはアイツにはまともに攻撃できません。逃げることも難しいかもしれないです」

「どうして話が進んでるの? 私があとでお説教されるかもしれないんですけど?」

 

騒ぎ立てるクロを無視して、ヤミは相手について知っていることを話す。

 

「なら―――先手必勝ですわッ!!!」

 

狂三を自身の影から短銃を取り出し、ピエロに銃口を向けた。

 

「無駄です。この世界で攻撃が出来る訳が―――」

 

昨日の経験を思い出しヤミが告げるが、その忠告に反して引き金を引くと同時に炸裂音が響いた。

 

「ッ!? どうして―――」

 

この世界の主(仮)であるピエロに対しての攻撃だ。それもわかりやすい銃による射撃。変身(トランス)による攻撃にまで対応した敵が、あの程度を見逃すわけがない。

 

ヤミが攻撃の結果を確認しようとピエロに注目するが、何も変化は無かった。

 

「こ、これは……?」

「く、狂三ちゃん、それって……?」

 

アスナの声で、全員が狂三の持つ短銃に視線を向ける。短銃を持った狂三が一番驚いているようだ。

 

それもそのはず。いつもは霊力で編まれた弾丸を吐き出していた銃口。だが今その銃口からは、まるで陳腐なマジックのように色とりどりのお花が飛び出していたのだ。

 

「いやいや、スタンドの僕に銃弾は効かないから何もする必要は無いんだけどね? でもせっかくだからパフォーマンスの意味も込めて少しキレイにしてみたんだ! どう? 気に入ってくれた?」

「このように、この世界をもとの世界のルールで動いていると思わないでください。未知の物品の創造だけではなく、自分たちの能力にまで干渉され、操られてしまいます」

「昨日はヤミちゃん大変だったもんねぇ。ここは夢の世界だから記録には残ってないけど、絶対に忘れられない経験だったでしょ?」

「~~~っ!!」

 

ピエロの言葉に、顔を赤くするヤミ。この場で昨日のことをぶちまけられた場合、自分の説明を無視して突撃していただろう。

 

その程度にはヤミも乙女だった。乙女じゃなければエッチな話題にあんなに敏感に反応したりしない。

 

そして今の光景と説明で、みんな動くに動けなくなってしまった。

 

「あなた、スタンドなんですよね? じゃあこの世界に本体もいるんじゃ……」

「さあ、どうだろうねぇ? いるかもしれないし、いないかもしれない。存在するかもしれないし、存在しないかもしれない。探したいのなら好きに探しても良いよ? でもその時は、僕は鬼ごっこの鬼になって探す邪魔をするけどね?」

「それは厳しいですね……攻撃が効かないどころか能力も使えないんじゃ……」

 

桜も苦々しい顔をしている。

 

「はーっ、それにしてもみんな本当にかわいいなぁ。こんな美少女に囲まれて、夜月翔許すまじ……っ!」

 

ぶつぶつと言っていたピエロだったが、直後急速に世界が崩れ始め―――

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

 

壁にクモの様に張り付いていた人影が、俺の『魔法の射手』をよけてビルの壁面を蹴る。恐るべきことにそのまま壁を蹴り、屋上まで逃げた。

 

「逃がすかよ!」

 

だが俺とて、その程度の芸当はこなせる。

 

同じように壁を蹴り、鉄筋コンクリートの壁を駆け上る。

 

全力ダッシュというわけではない。この逃亡はただのポーズだ。

 

俺の予想通り、フードを被った下手人が屋上で俺が来るのを待っていた。見間違えるはずはない。見たことのある戦闘服に、月明かりでも映える赤毛の三つ編みおさげ。

 

黒咲メアだ。

 

「奇遇だな。何してるんだ、メア?」

「まずは挨拶しようよ、夜月君……ん、とね、何してたかって質問に答えるとね。えー、っと、お散歩かな?」

 

真面目に答える気がないということがありありと伝わってくる。第一に、

 

「人の家に張り付いておいて、お散歩はないだろ?」

「あ、あそこ夜月君の家なんだ」

 

知らなかったよ、と笑うメア。このままでは茶化されるだけだと判断した俺は、本題を切り出した。

 

今まで触れていなかったが、メアは手ぶらではない。何か背負っている。あんな大きな荷物―――人1人―――を背負ってお散歩なんて絶対におかしい。

 

「何が目的だったんだ? や、こういう質問には意味がないな。目的はヤミなんだからな。だから俺が知りたいのはそんなことじゃない。知りたいのは、何をしていたのかってことだ。しかも人1人背負って。そいつはいったい誰なんだ?」

「あはは、質問が多いよ夜月君……何を、か」

「ああ。ヤミに何かしてたよな? 今朝、明らかに様子がおかしかったぞ」

 

悪夢にうなされていたというには目に毒だったあの寝姿。何も異常がないと言い切れるほど、俺の警戒心は甘くない。

 

打ち解けてきたとはいえ、まだ家の中で弱みを見せたことのなかったヤミが、まさか俺に、よりにもよって寝坊して部屋に入れてしまうなんて。ありえない。

 

「ヤミには手を出さないんじゃなかったのか? それとも、用事があったのは俺か?」

「お姉ちゃんに手を出さないとか、別にそんなこと言った覚えはないよ? 『家族』だし、少しは『じゃれあいたい』とは思ってるけど……それに翔君のことも、特に何かしようなんて思ってないよ。何かしようなんて、思ってないから」

 

だったら何をしに来たというのだろうか。わざわざ敵地に。全員が集合している危険地帯に。こんな夜更けに。

 

気になるのはメアの背にいる『誰か』だ。意識はあるようだが、顔を伏せているためいまいちはっきりしない。体格だけ見れば子供か女性だが。俺の知っている人物なのだろうか。それとも新しい敵なのか。

 

だが、この場から離れたいという空気は伝わってくる。肩を叩いてメアを急かしている。

 

「もういいかな? もう夜遅いし、私帰って寝ようかと思ってるんだけど?」

 

もはや引き留めるには戦い始めるしかない。でもここで始めるのは……何もできない。引き留める理由はあるのに、権利はない。

 

「それとも今夜、これから、私に付き合ってくれるの?」

「……そりゃ無理だな」

「そっか。おやすみ、夜月君」

 

交渉は決裂した。

 

メアの影は、どんどん小さくなり、やがて見えなくなった。

 

それ以降、ヤミに妙なことが起こることは無かった。いつも通り規則正しく、いつものクールな表情を少なくとも俺の目の前で崩すことは無くなった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「あーあ……」

 

シャワーを浴び終わったメアは自室で1人、電気もつけずに、窓の外を眺めていた。

 

首にタオルをひっかけ、衣服は下の下着しか身に着けていない。首からかけるタオルによって、胸の頂点が隠れているとはいえ、無防備な姿であることに変わりはない。

 

借りている部屋が他の建物よりも高い位置になければ、誰かに見られていたかもしれない。

 

部屋も殺風景なものだ。というより、家具が一切存在していない。借りたばかりの部屋をそのまま使用しているのか、無駄な物は何もなかった。

 

唯一あるものと言えば、ボストンバッグに詰められた数着の着替え、脱ぎ捨てられた制服、レジ袋パンパンに入れられた大量のお菓子だ。

 

片づけるという概念がないのか、数少ない生活用品も乱雑に広がっている。

 

メアは1人だが、正確に言えば、1人ではなかった。

 

部屋の隅。電気のついていない部屋でも高い立地と月明かりのおかげで、ぼんやりと部屋の様子は知ることができる。だがそれでも、光の差し込まない部屋の隅はある。

 

その隅に。

 

「どういうつもりだ、メア。何の目的があってあんなことをしたのだ」

 

1人の少女がいた。靄のような、黒い霧のような少女が。

 

「夜月翔にも感づかれていたぞ。今回のアプローチは迂闊すぎる。多少手を出すならともかく、スタンドを使ってちょっかいを出すのは危険だと知っていたはずだ」

「大丈夫だよ、マスター。女の子たちは、起きた時には何があったのかなんて忘れてるから」

「……」

 

軽い調子で返す。

 

「それに目的っていうなら、ヤミお姉ちゃんの交友関係を知るっていう大事な目的があったんだよ」

「何か進展はあったのか?」

「それを言われると、ね?」

「つまり空振りだったというわけだな?」

「今回はそんな感じかな。でも、ヤミお姉ちゃんがみんなとうまくやってるっていうのはわかったよ」

 

うまくと言っても、積極的に情報共有しようとしていたというだけなのだが、メアにとってはそれでも十分『うまくやっている』部類に入るものだった。

 

「……ふん。そんなごまかしの関係など、わかろうが分かるまいがどうでも良いことだ。最後には消えてなくなるさ。お前も、その関係をうまく使ったじゃないか。いや、うまくいったかどうかは少し疑問だがな」

「うん、まあねー。ガッコウには色々な人がいるから助かっちゃった」

 

デス13の本体はメアの友人の1人だった。男女ではなく女子同士の混じり合いに興奮するタイプの娘の欲求と、メアのちょっとした興味が合致したのだ。

 

その娘は最近、転校してきたヤミにお熱だった。それと同時に、ヤミを含むたくさんの女の子と一緒に生活しているという噂(事実)のある翔に、ある種の嫉妬に近い感情を抱いていた。

 

交渉の結果、ちょっかいを出そうということになったのだ。驚くべきことに、新しいスタンドである『デス13』が発現するというおまけつきだ。

 

実はあの世界、精神侵入(サイコダイブ)で覗き見ることが出来た。射程距離の短いデス13を確実に当てるために、メアは壁に張り付く役と護衛役になった。

 

実際、メアが見たかったものとは少し違ったわけだが。

 

(女の子が好きっていう人もいるし、まだよくわからないな。何がいいんだろ。でも、あの時は良かったんだよね。うん)

 

マスターのいないときに、こっそりともう一度シてみたが、やはり『あの時』ほどの多幸感は得られなかった。

 

てっきり自分でするからだと思い、一度は諦め、しかし興味を捨てきることができずに今回の行動に手を出した。メア以外の女の子は、されたときどういう反応をするのだろうという実験だった。結果はこの通りだ。

 

せっかくうかつな行為をしたというのに、何も得ることは無かった。2人とも今回のことに懲りて、もうこんなことはやめることにした。

 

だとすれば、もう要因は1つしかない。夜月翔だ。

 

今回は翔も夢の中に引き込む予定だったが、あらかじめ警戒していた翔は、そもそも寝ていなかった。

 

(でも、夜月君に仕掛けるのはキケン、なんだもんなぁ。マスターも言ってるし、こんな関係ないことで、これ以上危険を冒すなんて出来ないもんねー)

 

いい加減体が冷えてきたため、Tシャツを羽織りながら頭を巡らせる。

 

今は曲がりなりにも敵同士だ。そんな相手に頼みに行くというのは、いくらメアでも躊躇する。

 

(ヤミお姉ちゃんには関係ない、関係ないことだけど、興味あるんだよねー……うーん、本当に関係ないの? でも、あの反応……絶対シたことないよねー……)

 

もしかすると、これは役に立つ考えではないのか。メアの頭にひらめきがあった。

 

(もしも夜月君を味方にできれば。ヤミお姉ちゃんもえっちなことにメロメロにしちゃえば、目的を達成できるかな? ついでに私も楽しいし。でも、兵器に『ご褒美』なんて必要ないかな? そもそも、元に戻ってるって言えないか)

 

「うーん、うまくいかないなぁ……」

「何がだ?」

 

まとまらない思考に、メアは苦しむのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。