年末年始に何かしたいと思っていましたが、2話更新が限界でした。
ちなみに私はFGOでは村正を、モンストではアルセーヌを引き当てることが出来ました。刺さないで下さい。
「ねむ……」
俺はあくびをしつつも、目的地に到着していた。
夏休み初日の今日は予想通りみんなに振り回されて終わった。7月下旬に始まる夏休みだが、8月は諸々のイベントのせいで、この島ではまともに休むことが出来ない。
旅行に行けば話は別なんだろうけど、俺たちには出かける予定がない。よって、休みは実質10日間ほどしかないのだ。
そんな休みを全力で満喫しようと思ったら、1日目からフルスロットルで飛ばしていくしかない。
おかげでちょっとくたびれているが、俺の本命のイベントはまだまだここからだ。
「どうも、御門先生」
「どうしたの、突然聞きたいことがあるなんて」
今回の目的は、当直で病院に残っていた御門先生だ。
昨日は色々あったせいで会いに来ることは出来なかったが、そのおかげで決心がついた。
今回の事件、どういう結果に終わるかはわからないが、終わるまでは絶対にヤミには話さない。
「ティアーユ・ルナティーク博士について、聞きたいことがあります」
「っ、ティアについて……? どうしてかしら?」
御門先生にとっても予想外の名前だったのだろう。
「メアのことは知ってますよね。黒崎メア。この前……と言っても、もう2か月近く前になりますけど、うちの学校に転校してきた娘です」
「それはもちろん覚えているわ。あなたから連絡貰ったんだもの」
「だったら、いろいろと知っておく必要があるでしょう? ただでさえ8月は色々とごたごたしそうなんですから。集められる情報は集めておきたいんです」
これも俺の偽らざる本心だ。ここでの情報によっては、8月になる前に大勝負に出る必要があるかもしれない。
この理由なら少し話しにくいことでも話してくれるだろう。
だというのに。
「本当に?」
「はい?」
御門先生は聞き返してきた。
「本当に、それだけが理由なの?」
「はい……や、それ以外に無い訳じゃないんですけど……」
「言いなさい。言ってくれたら、こっちも相応の事を返すわ」
「……わかりました」
すべて話した。クローディアにしゃべってはいけないと言われていたことまですべて。昨日の夜ヤミと話したことも。
「そんなことが……」
「他言無用ってことでお願いします。と言っても、俺も他言無用だって言われたこと、今喋っちゃったんですけど」
人のことを言えない俺だが、御門先生なら大丈夫だろう。
「私以外には話さないようにしなさい。いえ、それよりも、あなた達そんな危ない事件に関わっているの?」
「ええ、まあ。俺1人ですけれどね」
「つまり、他の娘にも秘密にしているってことね……あなたがどういう考えで行動しているのかはわからないけれど、その事件はまともじゃないわ」
「そりゃそうでしょう」
クローンとはいえ、2万人の人を殺そうという異常な実験だ。単純な殺人事件をまともというつもりはないが、2万人ともなると、常軌を逸していると言える
「はぁ……わかってないわね。あなたが関わっているのは、単純な事件じゃないのよ。この島の、黒い部分を相手にすることになるの。余計なことを……はぁ、言っても無駄か。でも、これっきりにしなさい。あんまり深入りしても、決して幸せにはなれないわ。単なる正義感で相手にするには、行き着いた科学者の相手は苦しいものよ」
「分かりました。肝に銘じておきます」
確約は出来ないけど。その時の場合によるとしか言えない。
「ま、忠告はここまでにするとして、私も言った事は守るわ」
御門先生は足を組み替える。
「えー、まずね、ティアがその実験に関わっているって言ってたわね」
「はい」
一番大切なところだ。御門先生は実際の実験について知っているわけじゃないから、自分の印象の話になる。
「正直、可能性は結構あるわね」
「え? そうなんですか?」
てっきり、『参加しているなんてありえない』とか言われると思ってたんだけど。
「あの娘、いい娘なんだけどね。昔から研究にしか興味がないというか……世間知らずでだまされやすいというか……自分から、ってことは無いにしても、いいように納得させられて参加させられるっていう可能性は、十分にあると思うの。実際、ヤミちゃんの事で前科があるわけだしね」
「うーん……」
騙されている可能性か……それはありそうだな。
「はぁ、それにしても、ヤミちゃんに続いてそんな実験に巻き込まれるなんてねぇ。実は私とティアは大学の同級生なんだけど、あの女ったら、卒業してすぐにヤミちゃんを作ってた研究機関にスカウトされちゃったのよ? キナ臭いところだったからやめなさいって言ったのにね」
「じゃあヤミの事も、兵器として作ってたわけじゃないんですね」
「そんな危険な考えはティアには無いわよ。ヤミちゃん、そのあたりは何も言ってなかったの?」
「ま、そうだと思ってましたけどね。一応確認しただけですよ。一応」
だとすれば安心だが、それだとすると余計にクローディアの言葉が気になる。どうして首謀者として名前が出てしまっているんだ?
「ちなみに今は連絡出来ますか?」
「そうね、聞いたほうが確実ね」
「や、聞いてもそうそう答えてくれるかは分かりませんけど」
「ティアの隠し事は、隠し事じゃないから。すぐにわかるもの」
「そ、そうですか」
電話をかけてもらうが、20コール以上たっても、応答がない。
「出ないわね」
「番号は合ってます?」
「少し前に……そうそう、あなたが前に腕を斬られちゃったことがあったでしょう? その時の治療に使った人工細胞を作ったのがティアなのよ。それを送ってもらう時に連絡したときには繋がったはずなんだけど」
聞くと、ティアーユ先生はこの島にいるわけではないらしい。各地を転々としながら研究を続けているのだとか。
俺がホワイトスネイクに襲われた時は偶然にも島にいたらしいが、そのあとすぐに島を出てしまったらしい。
「それじゃあ、地球の裏側にいるんじゃないですか? 時差の関係で真夜中なのかも」
「それもあるわね。ティアが実験に関わっていなければって前置きはつくけれど。ま、メールは飛ばしておくわね……や、この際いい機会だし……」
ぶつぶつと独り言を始める御門先生。
「ねぇ、夜月君。あなた、ヤミちゃんとティアの仲を取り持つ気はある?」
「2人が仲良くするに越したことは無いですからね。再会出来ればもちろん協力しますよ」
「そうよねぇ? そう言ってくれると思ってたわ」
これは、ティアーユ博士をこの島に呼ぶつもりだな。あわよくば定住させてしまうつもりなのだろう。
「そういうこと♪ その時はよろしくね。間違っても、こんな事件で死んじゃだめよ?」
「それもこれも、ティアーユ博士が実験に関わっていなければって前置きが付きますけれどね」
これでもう話は終わりだ。時間も迫っているし、もう次の仕事場に向かわなければ。
「あ、そうだ。最後に一つ。ここ。ここなんですけれど、何かなってませんか?」
「んー? あら、たんこぶになってるわね。どこかにぶつけた?」
「いえ、さっぱり。なんだろうな……」
今朝起きてからずっと痛いんだけど。寝てる間にたんこぶができるのか……?
「普通そのくらいの衝撃があったら、どんなに疲れて寝てても起きるでしょ」
「そうですよね」
首を傾げながらも、御門先生のところを後にする。次の仕事の場所へ向かうのだった。
―――――――――――――――――――
《翔、準備は良いですか》
「ああ。いつでも行ける」
もはや真夜中と言っても差し支えのない時間。御門先生と話した後に向かったのは、この島の工業ブロックだった。この島の最先端の化学製品を作るための工場が立ち並ぶこの区画は、こんな夜中であっても稼働し、明かりがついている。
その中の1つに俺は攻撃を仕掛けるのだ。
耳に付けた通信機からはクローディアの声が聞こえる。今回はオペレーターとバックアップとして俺をサポートしてくれる。
俺の纏っているアーマーが小さい音を立てて駆動する。
月明かりで鈍く光るグレーとダークブルーの装甲。手には『OTOメララ【ボクサー】57mm散弾砲』が握られている。
俺もあまり正体がばれるのはよろしくない。
スタンドの
そう考えた俺は、過去で手に入れたからというものの、あまり使われていなかった『アーバレスト』を今回の能力に選んだ。
これならば顔も隠れるし、能力から正体がばれることもない。
「3、2、1―――0。作戦を開始してください」
「突入するッ!!」
人間の限界を超えた初速で、一気に加速する。
この研究所は妹達の生産工場だ。表向きは治療用の人工細胞の研究所。多くの職員は裏の事情を知らず、裏の事情とは無関係の人たちだ。
俺の完全記憶能力なら、悪人の名前と顔が全てわかっていれば、そいつらだけを埋めてやることも出来る。だが、流石に1人1人までは調べられなかった。
誰が善人か悪人かが分からない。
だったら、誰1人殺さず、クローンの生産施設だけを破壊する。
設備を壊されるだけでも大きな損害だろう。関係ない職員からすれば最悪だ。俺がしていることは完全な正義の行いというわけではない。
だが、やると決めたからにはとことんまでやってやる。
「侵入者だ!」
「止まれ!」
「情報と違うぞ!」
「駆動鎧だと!?」
正面から突っ込むと、待ち構えていたように警備員が現れた。全員が同じプロテクターとアサルトライフルを持っているところを見ると、能力者はいないようだ。数は5人。
《想定よりも多いですね。突破出来ますか?》
「当然だ!」
「止まれと言っている!」
「管理局には連絡しているぞ! 今投降すれば、まだ……」
俺は速度を落とさずに、『ボクサー』を持っているのとは逆の手で拡張マガジンを取り付けた『ベレッタ・キンジモデル』を構える。
「―――撃てッ!!」
武器を構えたところで投降の意志が無いと判断したのだろう。相手の銃口が火を噴いた。闇夜を火薬で熱された鉄片が切り裂く。そのすべてが俺に向かって殺到している。
だが、それが俺に届くことは無い。
「ッ!!」
『ラムダ・ドライバ』が発動する。
空間が陽炎のように揺らめき、不可視の力場が形成された。
引力とは反対、斥力の力場は銃弾の衝撃を小石以下にまで抑え込む。
今度はこちらの番だ。
フルオートで撃ち尽くされた弾丸は、カタログスペック以上の威力を発揮した。あのプロテクターは、ハンドガン程度の弾丸では凹みすら出来ない。出来ないはずのことが出来てしまう。
この場には視認できる人はいないが、銃弾はすべてラムダ・ドライバによって、威力が底上げされている。
跳弾すら利用して四方八方から襲い掛かる銃弾は、一切の抵抗を許さない。俺に攻撃するどころではない。
怯んだところを抑え込み、気絶させる。
「いたぞ! あそこだ!」
奥からどんどん湧いてくる警備員。
「まだ来るのか」
《いくらなんでも多すぎますね。御坂さんの攻撃に警戒しているんでしょうか》
なら、電撃対策が施されたプロテクターなのだろう。だとしたら、
「なら相手が違うな。俺の対策にはなっていない。クローディア、目的の場所まで案内してくれ」
《分かりました》
「撃てッ、撃てぇぇぇッ!」
避けるまでもない。まっすぐに走り抜ける。
銃弾だけではない。振られるナイフも、繰り出される拳も、俺の前には等しく無力だ。
ただまっすぐ走るだけでも、俺の体自体がエネルギーを纏った凶器そのものだ。
警備員たちは、なすすべなく薙ぎ倒されていく。
《そこです。目標はその扉の向こうにあります》
「了解」
ここに来るまでに出会った警備員は全員無力化、逃げる職員には手を出していない。すでに施設はちゃぶ台をひっくり返されたような大騒ぎだ。
絶え間なくサイレンが鳴り響き、遠くでは人が逃げ惑う声が聞こえてくる。
管理局に通報されたのであれば、ぐずぐずはしていられない。クローディアの話では、俺の知っている人が捜査しているらしいからな。鉢合わせたら大変だ。
銀行の特殊合金の金庫でもなければ、俺の拳を止めることなど出来る訳がない。
ぶち破った金属製の扉が、壁に突き刺さっていた。
部屋の中央には、人工生命が入っていたと言われれば納得出来てしまうポットがある。
「それじゃあ、始めるぞ」
俺は銃を構え、引き金を引いた。
――――――――――――――――――
「……はい。はい。分かりました。後日、改めてお話を伺うと思います。後はよろしくお願いします」
「分かりました!」
現場の引継ぎを終えたフェイトとティアナは、車に乗りこの場を離れていた。
工場が見えなくなり、赤信号で止まった辺りで、ティアナが切り出した。
「どう思いますか。今回は」
「うん。多分、昨日までの襲撃者とはまた別人だよ。攻撃の手口が違いすぎるもん」
ハンドルを握ったまま、フェイトは返す。その顔はヴィヴィオのお母さんではなく、凶悪犯罪者を追いかける執務官のものだ。
通報を受けて駆け付けた管理局員というのは、フェイトとティアナ―――特務六課のメンバーだった。
六課設立の本当の理由は例の『3年後』に備えるためだが、表向きの理由というものも必要だ。
管理局の学園島支部、さらにその先の先頭に立って捜査を行う。それが特務六課の役割だ。科学と魔法が交差するこの島に対応するために、強い戦力と権限が与えられている。そう言う事になっている。
そんな六課だが、ここ最近では、工場やデータセンターへの連続襲撃事件の捜査をしていた。
「ですよね。痕跡と職員の証言を見る限り、犯人は高レベルの電撃使いの予想だった」
「でも、今日は銃が使われていた」
とても同一人物とは思えない。
「しかも、その銃の威力がでたらめですよね。あの壁を撃ち抜くなんて、反動が大きすぎて、まともな人間には扱えませんよ。駆動鎧を着ていたという証言がありますけど、能力も併用しているかもしれないですね」
「まだ確証は出来ないよ。仮に2人だとして、その2人は仲間なのかどうか。それに襲撃されている研究所、怪しいところがいくつもある」
六課は六課で、少しずつ真相に近づきつつあった。
研究所が狙われる理由、研究所の共通点を探していった時、とある共通点に辿り着いたのだ。そこから推測を重ねていった結果、御坂美琴の軍用クローンの実験に辿り着いたのだ。
これまでの襲撃者は電撃使いということで、クローンの元になった御坂美琴が一番の候補者として挙がってるのだが、今は連絡が取れないでいた。
そうして捜査が止まっているところで、今回の謎の襲撃者が現れたのだ。
「明日から、同じような研究をしている研究所をピックアップして捜査していこう。新しく現れた襲撃者についても、もしかしたら御坂美琴の知り合いかもしれないから、周りの人も調べてみないと」
「はい! わかりました! まずは御坂美琴ですね」
2人を乗せた車は、六課に向かって走っていくのだった。