※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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御坂との話し合い

命からがら、俺たちは麦野から逃げきることが出来た。

 

滝壺がいたのなら攻撃は続いていたはずなので、彼女の体も限界だったんだろう。

 

だが、もう1つの研究所に行く気力は俺達にはなかった。ボロボロの御坂も体力の限界で満足に動けなくなっていた。脱出してすぐに『充電切れ』になってしまった。

 

流石に置いていくわけにはいかなかったので、今御坂が潜伏しているホテルの場所を教えてもらい、そこに連れて行くことにした。もちろんクローディアへの連絡は済ませてある。

 

戦闘に時間をかけすぎたため、すでに日付が変わってしまっている。

 

こんな時間に、女の子を背負ってホテルのカウンターに行けば通報されかねない。

 

幸い、カウンターはAIによる無人カウンターだった。

 

俺は御坂に指定された階に向かう。エレベーターの中では、お互いに無言だった。そもそも疲れていて、喋るのすら億劫だ。

 

「ここよ」

「ん、了解」

 

当然カードキーをかざして開くタイプのオートロックドア。御坂はカードキーを取り出して―――

 

「よっと」

「おわっ!」

 

御坂が伸ばした手から、一瞬だけ電撃が発射される。するとカチッ、とドアの鍵が開く音が聞こえた。

 

能力を使ってロックを解除したんだろう。

 

「お前、普通に開けろよ」

「こっちの方が早いんだからいいでしょ……」

 

それ以上言葉を交わすことなく俺たちは部屋の中に入る。

 

部屋は標準的なビジネスホテルの部屋だった。6畳ほどの部屋に、しっかりとベッドメイクされたベッド、テレビにデスクと椅子。お風呂とトイレが備え付けられている。

 

御坂の大きな荷物は見当たらない。御坂がいつも着ている制服が、無造作に脱ぎ捨てられているだけだ。

 

俺はベッドの上に御坂を下ろした。

 

「とりあえず、お疲れ様」

「ありがと。はぁ、今日の内に終わらせるつもりだったんだけどね。結局、もう1つの方には行けなかった……」

「しょうがないだろ、お前と同じレベル5がいたんだから」

「……ええ。まさか第4位があんな計画に加担しているなんて思ってなかったわ」

 

向こうは殺す気でこちらは不殺という、ある意味手加減をしている。大怪我も無く帰ってこれたのなら上出来だろう。

 

「ごめん。疲れた。寝るわ。色々話すのは明日にして。寝てる間に何かしたら、ぶっ飛ばす、から……」

 

本当に限界だったのだろう。そのまま眠ってしまった。

 

「ふう……」

 

ボロボロの服のまま、規則正しい寝息を立てる御坂を見下ろす。確かに、今日はお互い疲れ切ってるし、帰って寝ることにするか。俺が動いていることも知ってもらえたから、何らかのアプローチがあるだろう。

 

「俺もちょっと休んでいくかな……」

 

椅子に座り、背もたれに体を預ける。首まで預けると目を閉じて今日の戦闘を振り返った。

 

そうしているうちに―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ、ん……」

 

重い頭を振って起きる……のではなく、椅子に座っているのだと理解した。

 

「あれ……やっば……!」

 

もしかして、そのまま寝ちゃったのか。つまりは無断外泊。帰ったら色々と追及されることになるぞ! や、帰らなくてもそれは同じだ!

 

そうなるともう逃げられない。実験についてみんなに話さなくてはならなくなり、十中八九みんな揃って解決に動くことになる。ここまで密かに進めていたことが知れたら……

 

「何起きてすぐに顔青くしてんの、アンタ」

 

すっかり綺麗になった御坂が、後ろから声をかけてきた。ボロボロの格好から石鹸の匂いがする清潔な格好になっている。

 

首からタオルをかけているので、本当に浴びたばかりなのだろう。

 

「とりあえず、シャワー使いなさいよ。話はそれからでいいから」

「そうさせてもらうよ」

 

もうここまでくれば腹をくくるしかない。切り替えてやっていくことにしよう。

 

「ああ。そうそう」

「なんだ?」

「昨日は何もしなかったみたいだし、信用はしてるけど……変な気を起こしたら、黒焦げになるから」

「へいへい」

 

昨日あんなに疲れてたのに、もうケロリとしてやがる。言われなくても何もするつもりは無い。

 

そう言えば、俺ヤバいよな。みんなには内緒、や、一部の娘には言ってあるな。もしかしてその方がマズいかもしれないがそれは置いておいて……危険な事件解決に動き、無断外泊して女子中学生と一夜を過ごしたとか、普通にこれから死ぬかもしれん。

 

シャワーで頭をスッキリさせつつ、これからの運命について考える。

 

浴び合わると、コンビニの袋におにぎりや惣菜パンが詰め込まれ、デスクの上に置かれていた。

 

俺がシャワーに入っている間に、御坂が買ってきたようだ。

 

「朝ご飯。先に選んでもいいわよ。昨日は助けてもらったから、そのお礼に」

「常盤台のお嬢様のお礼なら、もう少し豪華でもいい気がするけどな」

「うるさいわね、嫌なら食べなくてもいいのよ?」

「いただきます!」

 

昨日は散々動き回って、すでにお腹はペコペコだ。特に好き嫌いが無い俺は、適当におにぎりを摘まむ。

 

食べながら、おしゃべりは始まった。

 

俺は今自分が話せることをすべて話した。実験阻止のために動いていること、管理局のこと、その他諸々を。

 

「なるほどね……まったく。バカね、アンタは」

「はい?」

「バカよ、バカ。それも相当のね。気になって調べたってのはわかるけど、しっかり実験について知ってわざわざ動くなんて、お人好しを通り越してただのバカじゃない」

 

それもそうだ。

 

こんな厄介事、正義感で首を突っ込むものじゃない。

 

「バカかどうかはともかくとして、心配はしたぞ。いくら調べても何処にいるかわかんないんだから」

「別に心配されるほどヤワじゃないわよ。第4位なんて出てこなければ、十分に1人でやれてたんだから」

 

何処まで行っても、今回の第4位は規格外だったという訳だ。そりゃあ、第3位の超能力者を苦戦させるような相手が、そういる訳もないか。

 

「それで、これからどうするわけ?」

「うん?」

 

それはどういう事だろうか。とりあえず、あと1つの研究所を壊さないといけないと思うんだけど。

 

「これ見て」

 

御坂はこっちに端末を投げてきた。

 

「ん、なになに……って、これって……!?」

 

端末に映し出されていたのはネットニュースの記事だった。俺たちの最近の活動、研究所襲撃も載っている有名なサイト。御坂が見せてきた記事には、俺たちが襲うはずだった最後の1つの研究所、それがもうすでに、この世には存在していないと書かれていた。

 

出所不明の怪物が暴れまわり、研究所は倒壊。移送準備の真っ最中だったが、研究機材はもちろんのこと、資料の半分も紛失することになったらしい。

 

怪物自体は管理局の部隊が撃退。現在までで同種の怪物が暴れたという報告は無い。

 

「管理局のアンタには何の情報も回ってきて無いの?」

「や、俺は管理局って言っても、まだ採用が決まっただけで、具体的に働いてるわけじゃないからな……」

 

そんな情報が入ってくるわけでは、ちょっと待てよ。

 

俺は端末を取り出す。

 

「来てるな」

 

頼もしいクローディアから、連絡が来ていた。どうやら六課に実験についての情報提供者が現れたらしい。

 

「何だって?」

「俺が所属する予定の部隊が、実験についての情報を手に入れたらしい」

「ふーん……ま、管理局じゃ難しいわね。こんな狂った実験、正面からやり合ってもしょうがないから」

「そうだなぁ……」

 

でもあの面々なら、多少強引にでも解決に持っていくかもしれない。

 

しかし、一筋縄ではいかないのは確かだ。時間はかかるだろう。向こうからの妨害、権力で押さえつけられれば、どうしようもなくなる。

 

そして、時間がかかればかかるほど、犠牲になる妹達の数も増えていくのだ。

 

そんなの待ってられない。

 

「ほら、見て」

「ん?」

 

御坂が画面を操作すると、ネットニュースが切り替えられた。映し出されたのはこの島の地図だ。もちろん地図のいたるところに建物の名前が書かれているが、その数が少ない。書かれている建物の名前も、これは。

 

「研究に協力している研究所、追加されたみたいよ」

「マジかよ……」

 

クローディアが調べた場所、残り2つだって喜んでたのに……

 

ピックアップされている名前は、ざっと見て20はある。

 

こちらはこちらで、煙に巻かれている気分だ。俺たちのやり方で実験を止めるには、この島の研究施設すべてを壊さないといけないんじゃないか? 

 

「それしか無いならやってやるわ」

「それ以外の方法があれば良いんだけどな」

「それがあったら、そっちにしてるわよ。私だって、こんな時間のかかる方法なんて取りたくない」

「……」

 

時間をかけるだけかけて、結局は何の役にも立たない。そんな方法のように思えるけどな。今俺たちがやっていることは。

 

永遠にトカゲの尻尾斬り。いくらでもいる代わりの研究者が、妹たちの命を対価としたデータを積み上げていく。

 

一発で勝負のつく方法、そんなものがあれば―――

 

「あ」

「何? どうしたの?」

「なあ御坂、お前ってさ、実験の情報を持ってるんだよな?」

「当たり前でしょ? 最高位の電撃使い(エレクトロマスター)の私に、電気的なロックは意味無いから」

 

そうだろう。クローディアとは違った方向の強力な情報収集能力だ。

 

だったら、

 

「実験のスケジュール。次の実験がいつどこで行われるのか、分かるか?」

「分かるけど、それが――――アンタ、まさか……!」

 

実験のスケジュール。それさえわかれば、取れる手段が1つ増えることになる。

 

「直接乗り込んで実験を止めるんだ」

「……無理よ、そんなの」

 

御坂とは思えないほど、小さな声だ。

 

「そもそもアンタ、一方通行(アクセラレータ)の能力を知ってるの?」

「運動量・熱量・電気量・魔力etc……自分に触れたありとあらゆる『向き(ベクトル)』を操作する、だろ?」

「なんだ、知ってるんじゃない。それなのに分からないの? アイツと戦うってことが、自殺しに行くようなモノだって」

 

向き(ベクトル)操作のどこが強いんだと思う人もいるかもしれない。

 

この能力、酸素や重力など、必要最低限のモノ以外は、普段は反射に設定されている。するとどうなるか。単純に、殴ったら、そのパワーがそのまま自分に帰ってくるという訳だ。拳だけではなく銃弾も。

 

普段生活しているときも能力は発動しているので、不意打ちも不可能。

 

御坂の代名詞、コインを音速の3倍で飛ばす超電磁砲(レールガン)も、撃てば撃っただけ自分に帰ってくる。

 

恐ろしいのは、この世界ではしっかりと技術として根付いている『魔法』に対しても能力が発動するところだ。

 

何か魔術で直接呪う方法は効くかもしれないが、そういった方法は本人の髪の毛とか、体の一部を入手する必要があることが多く難しい。そういった能力は持っていないし、体の一部を手に入れるのも不可能だ。

 

そしてこの能力は防御だけでなく、攻撃にも使える。

 

些細なエネルギーを一点に集中させて莫大な攻撃力、移動力を生み出す。そもそも人相手になら、直接触れて生体電気や血流を逆流させれば、それで終わりだ。

 

攻撃はすべて自分に帰ってくる。そもそも、触られたらお終い。戦いにすらならない絶対的な能力だ。

 

御坂がどんなに手を尽くしても、逆立ちしたって勝てっこない。だからこそ、こんな回りくどい方法をとっていた。

 

だが、俺は違う。

 

一番の切り札を切る。

 

「俺の右手には、どんな異能力も無効化する、幻想殺し(イマジンブレイカー)が宿っているんだ」

「……幻想殺し(イマジンブレイカー)? 第4位の能力を消したのはその能力って訳?」

「そうだ。この力なら、一方通行(アクセラレータ)の反射を無視して攻撃出来る」

 

これ以上ない抜け道だ。

 

「そんな都合のいい能力、何かデメリットがあるんじゃないの?」

「そりゃあ、あるけど」

 

言うまでも無く、他の能力を使えなくなるって言う事だ。

 

一応アーバレストを装備することは出来るから、完全な生身じゃないけど。ああ、ラムダ・ドライバは斥力を発生させる関係上、向こうに悪用されかねないな。

 

「つまりはほとんど生身で、拳1つで、アイツに挑むってこと? 無理に決まってるじゃない」

「勝負に必勝は約束できないだろ」

「でも、必敗するのはわかるわ。樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)でも、私の敗北は決定している。185手で敗北するっていう演算結果がね」

 

それでも、俺の意思は無くならない。

 

「悪いことは言わないわ。やめなさい。もうこの件から手を引いて。向こうは本気よ。狂ってる。妨害に第4位まで出てくるなんて思ってなかったわ。これからはいったいどんな妨害があるか分からない」

 

それは御坂の言う通りだ。第4位より上があるとは考えにくいが、今度は周りの人たちが襲われるかもしれない。

 

「これ以上、私の蒔いた種で人が死ぬのは見たくないの。アンタが良い人だってことは分かったから―――」

「御坂。頼む」

「……っ、ぁ……!」

 

絞り出された答えは。

 

「……出て行って」

 

それを言われてしまえば、終わりだった。

 

「もう、関わらないで。実験にも……私にも」

 

話し合いはそこで終わりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈み始めた。

 

御坂の止まっていたホテルを後にした俺は、あてもなく街をさまよっていた。

 

「どうするか……」

 

だがこうなってしまっては、仕方がない。御坂の教えたくないという気持ちも理解できる。

 

でもこのままでは、あまり効果のない研究所襲撃を続けないといけない。

 

クローディアの『パン=ドラ』の性格の悪さというのは、こういう所に出ているのかもしれない。都合よく引き継ぎ先の研究所の情報は集められるのに、スケジュールの情報は集められない。

 

こうなったら、常盤台の学生寮に忍び込んで情報が無いのか探るしかないか。確か原作では、御坂のベッドの下に資料があったはずだ。

 

少々強引な手段でも、今とは違う一手を打たないといけない場面になったのかもしれない。

 

と思ったが、御坂の部屋がどこにあるのかわからない。寮の場所は分かっても、部屋番号までは分からない。

 

「クソ……っ!!」

 

右手を血が出てしまうくらい強く握った。

 

そのとき、視界の隅に捕らえた。コンビニの近くにいる御坂を。

 

「あれは……っ」

 

しかし、額にゴーグルが着けている。

 

「御坂!」

 

思わず声をかけていた。

 

「ミサカのことでしょうか、とミサカは確認をとります。あなたは……」

「やー、待たせてごめんね? ちょっと時間がかかっちゃって」

 

割り込むようにコンビニの自動ドアが開いた。そこから1人の少女が出てくる。

 

聞いたことのある声だ。

 

視界の端に、赤いおさげがゆれ、それを追っていくと見慣れた防弾制服が目に入る。

 

「あれ、翔君。どうしたの?」

 

メアだった。

 

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