※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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本当の後処理、7月の終わりへ

緊急クエストは終わった。というか、いつの間にか終わっていた。

 

現在時刻は夜中の3時を回ったところ。場所はいつもの病院だ。

 

偽ビルドを倒した後、アスナとフェイトさんに小言を言われ、逮捕者を回収する人たちと一緒に病院に戻ることになった。その車の中で、クエストを達成したことを知った。

 

違法研究者は全員逮捕。最終信号(ラストオーダー)の方は、なんと一方通行が動いてくれたらしい。

 

流石は第1位の超能力者。どんな思考回路を持っているのかはわからないが、この短時間で正解にたどり着いて見せた。

 

最終信号(ラストオーダー)のウィルスは起動直前で消去され、妹達が暴走することは無かった。そのおかげで、いつの間にか達成したことになっていたわけだ。

 

それと引き換えにして、一方通行が重傷を負ってしまった。タイミングよく六課の職員がたどり着いたおかげで一命はとりとめたらしいが。

 

原作の最終信号(ラストオーダー)の事件が、形を少し変えて起こるとは思わなかった。

 

そのせいで、一方通行がケガをするという結末は変えることが出来なかったな。体が1つしか無いのが恨めしい。

 

そして一方通行のケガというのが、原作通り脳みそにダメージが残るというものだった。

 

特に言語機能と計算能力に影響が出るという話だ。

 

特に計算能力への影響が痛い。ベクトル操作には計算能力が必要不可欠だからだ。一方通行は事実上の再起不能。

 

なのだが、

 

「まあでも、あの先生ならそのうちどうにかすると思うわよ。あの人、冥途帰し(ヘブンキャンセラー)って呼ばれてるくらいだから」

 

というのは御門先生の話だ。

 

あのカエル顔のお医者さんもこの病院にいるってのが分かってしまった。

 

この病院の医療体制が万全すぎて、安心感しかない。

 

その後の一方通行への対応も、大方原作と同じになりそうだ。ミサカネットワークを使って脳の機能を補う。その予定らしい。

 

原作とは違い、最終信号(ラストオーダー)と一方通行の面識が無いのが引っかかるけど、それはこれから解決していくしかないな。

 

次にティアーユ先生。

 

ビルドに似た怪物から元に戻ったティアーユ先生には、特に外傷はなかった。

 

調べた結果、かなり簡単な暗示がかけられていた。極端に行動を制限するタイプではなく、自分の行動に疑いを持ちにくくなるというものだ。

 

暗示というのは素直な人ほどかかりやすい。御門先生から聞いていたティアーユ先生の性格を考えれば、その効果は絶大だっただろう。

 

妹達の証言で、ティアーユ先生は妹達の生産のために木原 幻生に使われていたということがわかった。

 

ただでさえ失敗作だった妹達。モルモットとして利用するためには薬品を使って急速に成長させる必要があった。調整にはその分野に長けた、腕の良い科学者が必要だったのだ。

 

ティアーユ先生の名前はヤミの一件で知られていた。御門先生に会うために時々島に訪れている。

 

そこを狙われたという訳だ。

 

暗示が簡単だったこともあり、解除も容易かった。今は同じ病院のベッドで横になっている。

 

暗示をかけられた場合の犯罪行為はかなり判断が難しい。

 

『暗示にかかっていたから』という言い訳が、本当に正しいのか調べないといけないからだ。

 

能力や機械による精神分析、専門の先生による口頭での分析。

 

それらを総合して判断するのだが―――六課の皆さんのお話では、多少監視は付くが、罪に問われたり、刑務所に入るようなことは無いとのことだ。

 

暗示を解除する時に一緒に能力で分析してしまったが、結果はオールグリーン。むしろ暗示を解除した能力者のほうが、こんなに暗示にかかりやすい人がいるのかとびっくりしていた。

 

おかげで実験の記憶は全くと言ってよいほど残っていない。

 

今はベッドで寝ているが、ヤミとのことも考えないといけないな。

 

問題は、1万人近い妹達だ。

 

彼女たちはクローン、しかも様々な薬品を使って強制的に成長を促したものだ。そのため、ただでさえ寿命の短い体細胞クローンが、さらに短命になっている。

 

このままでは実験で死ななくても、彼女たちに未来はない。

 

それを回避するには、乱れた体内バランスの治療が必要だ。

 

いくら何でも島の医療機関だけで治療は行えない。各国に協力を仰ぐ必要がある。今は8月の会議のためにこの島に各国の要人が集まっている。この規模の事件を隠し通せるわけがないし、協力を取り付けるならその時以外にはない。

 

確実なのは、まず間違いなく会議の議題として挙げられることになり、この島の現状を糾弾されることだ。

 

「と、ミサカは事件のあらましを説明します」

「とりあえず、終わったって所か?」

 

先ほども言ったが現在は夜中の3時。こんな遅い時間にどうして起きているのかというと、御坂妹が訪れたからだ。

 

俺が一方通行と戦った場所にいた妹達、10031号だ。

 

あの場では御坂姉に次いで軽傷だったため、こうして夜中に訪れたという訳だ。

 

「明日からは、検査で忙しくなるようですから。と、ミサカは明日からのスケジュールに辟易します」

「いいじゃないか。明日を気にすることが出来て」

「……はい」

 

本当なら、目の前の御坂妹はあの場で殺されるはずだった。明日なんてものは、来ないはずだったのだ。

 

余命が数分だったのに、いきなりすべてが未知になれば、誰だって戸惑うだろう。それが、学習装置の知識が主な妹達ならなおさらだ。

 

「実験、中止になったんだろ?」

 

ミサカネットワークで通知が来たそうだ。実験は完全凍結。二度と再開されることは無い。

 

「ですが、皆さんの世界に戻るには、もう少し時間が掛かりそうです」

「そりゃしょうがないさ」

 

治療は避けられないからな。

 

「どうして一方通行と戦ったんですか?」

 

それがここに来た本題だろう。

 

言葉に、いつもよりも力がこもっている。

 

「最後までわかりませんでした。なぜあなたは、替えの利かないあなたは、ミサカという単価18万円のクローンのために命を懸けたのですか?」

 

簡単な質問だった。

 

「18万円のクローンとか、価値があるとか、そんなのは関係ない。妹達が理不尽に殺されるのが我慢できなかったんだ」

「妹達を助けるために、あんな無謀なことをしたんですね。と、ミサカはあなたの考えなしっぷりを糾弾します」

 

ミサカネットワークで何か情報を集めたのか、たったそれだけでミサカ妹は納得してくれたみたいだ。

 

「ああ、でも」

 

ふと、思ったことがあった。

 

確かに俺は、実験で死んでしまう妹達を1人でも少なくするために戦っていた。それに間違いはない。

 

だが、

 

「あの場で俺が一方通行に立ち向かったのは、間違いなくお前がいたからだよ」

「ミサカが?」

「姿形が同じでも、名前が同じでも、DNAが同じでも、あの瞬間、俺としゃべったお前はやっぱり特別だった。そんな奴が殺されるって思ったら、色々考える余裕なんてなかったよ」

「……はい」

 

それでは、と言って御坂妹は立ち上がった。あまり病室を開けていては、都合が悪いんだろう。

 

「一方通行を退けてしまうあなたには必要のないものかもしれませんが」

 

去り際に。

 

「何かあれば言って下さい。1万人のミサカがあなたの助けになります」

 

それだけ言い残し、御坂妹は去って行った。

 

御坂妹が帰った後、俺はもう泥のように寝た。緊張が途切れて、一気に疲れが出たんだろう。次に起きた時には、お日様が空高く上っていた。

 

それにしても、だ。

 

何だかんだ言って事件は解決へと向かっている。今は本当に後処理をしている段階だ。

 

だが俺の中では、全く疑問が解決していない。

 

俺と御坂が麦野と戦っている時に現れたっていうゼットン。ティアーユ先生が所持していたビルドのライドウォッチ。

 

いずれもこの世界にはない技術のはずだ。

 

ゼットンは、偶然にも同じ見た目で能力を持った生物がいたのかもしれないが、ライドウォッチは言い逃れ出来ない。

 

何者かが、俺やデンジャラスゾンビと同じく異世界から来た人物が、事件に干渉したとしか思えない。

 

そう考えると、

 

「一番怪しいのはあの『ウォズ』ってヤツだと思うんだよな」

 

何せあいつはジクウドライバーとジオウ、龍騎のライドウォッチを俺に渡したっていう前科がある。や、まあ、前科って言うとかわいそうか。あの手助けのおかげで、俺はアゼンダを撃退する事が出来たんだし。

 

だが、だったら。

 

「あいつが他のライドウォッチを持っていてもおかしくはないよな?」

 

ヤツの目的が謎すぎる。

 

「うんうん。そうだよね」

「確かに、理論的に考えると、それが一番辻褄が合いますね」

「そうだよな。次に会った時は、あいつは敵かもしれない。だから―――」

 

言葉を続けようとした俺だが、

 

「でもそんなことはどうでもいいよね?」

「や、どうでもいいなんて―――」

「先輩?」

「―――……はい」

 

雪菜とアスナの『圧』に、それ以外の言葉が出てこない。目覚めた時にはすでにベッドを取り囲まれていた。

 

これは逃げられない。

 

「病院でじっとしてるように。八神部隊長からしっかり言われたよね?」

「はい、間違いなく」

「私達だけじゃなくて、部隊長にまで言われたのに、じっとしていられなかったんですか?」

「それは、皆さんが心配で……」

「へぇ……?」

「そうですか……」

 

こ、怖すぎる。

 

「そもそも、どうして1人で事件の捜査をしてしまったんですか?」

「あ、や、狂三と理子には言ってたんだけど……」

 

言ってて分かった。これは言っちゃダメなことだ。

 

慌てて軌道修正する。

 

「み、皆さんにお知らせするには、少しショッキングすぎる内容だと思いまして……」

「ふぅ……」

「はぁ……」

 

え、な、何? 何が起こるの?

 

「これはしっかりお話したほうがいいね」

「そうですね。先輩は何も分かっていないみたいですから」

「い、いや。俺、一応ケガ人だし……? 遠慮したいなー、なんて……」

「都合の良いときだけ、病人になるのはやめてくださいね、先輩?」

 

その後めちゃくちゃ怒られました。

 

それから数時間後。2人にこってり絞られた後に病室に来たのは、

 

「あー……お医者さん呼んでこようか?」

「ここ、病院ですよ、八神さん……」

 

忙しいだろうに、わざわざここに来てくれた八神さんだ。

 

「ま、ここには、妹達だけじゃなくて最終信号(ラストオーダー)もいるからね。ちょくちょく様子は見に来ないと。もちろん、夜月君の様子もなぁ」

 

そしたらこんなにボロボロだったという訳だ。

 

「見回りに来た先生に何か言われない?」

「や、それが……」

 

この入院回数と、お見舞いの女の子の多さが院内で話題になり、どうやら俺は有名人になってしまったらしい。

 

たびたび病院を抜け出していることも知られてしまった。

 

おかげで、お医者さんにケガをスルーされるっていうレアな状況になっている。

 

「うん? 流石の僕も、バカにつける薬は持っていないね?」

 

とまで言われてしまう始末だ。

 

「ま、そこらへんは全部自業自得やな」

 

それは言われるまでもなく分かっていることだ。だが、今回の行動に後悔はない。

 

「それは結構。私からは最終報告や。自分から動いてたみたいやし、事の顛末は聞いておきたいやろ?」

「もちろんです」

 

原作とは大きく違う状況になった今回の事件。何か大きな差異があったのか気になる。

 

「結果的に言うと、絶対能力者進化計画は立件できそうにない」

「えっ!? それはどういう……?」

 

しっかり研究者は捕まえた筈なのに……

 

「大きなところで、実験データが全て消されてしまっていたことや」

 

どうやら、操られていたティアーユ先生の指示によってデータ消去されてしまっていたらしい。

 

今はもう欠片も残っていないのだとか。

 

「その代わり、妹達の軍事利用計画のデータは丸々残ってた。黒幕はこれをスケープゴートにするつもりらしい」

「ふむふむ」

「残ったデータによると、生産された妹達は『約一万人』。話では『2万人』だったはずなんやけどね?」

 

数を調整して証拠隠滅か……

 

「でも研究員の証言があるじゃないですか。読心能力者とかでどうにかならないんですか?」

「ん、そうしたかったのは山々だったんやけど……タイムリミットが来てしもうて」

 

タイムリミット。

 

上層部からの圧力が、六課の動きを止めるまでのタイムリミットだ。

 

「テレスティーナ・木原・ライフラインっちゅう女がな? スーツ着こんで六課に来るんよ。そして、『あなた方が逮捕した研究員、全員を引き渡してもらいます』……ふざけんなっちゅうの!!」

「うげぇ……」

 

八神さんの声マネもさることながら、そんな名前をここで聞くことになるとはな。まだまだ終わりじゃないってのが嫌でも意識させられるな。

 

「じゃあ、一方通行は?」

 

この世界では管理局という警察組織が介入した。逮捕者も出ている。クローンといえど、1万人の人を殺害した一方通行も、罪に問われることになるんじゃないかと思ってたんだけど。

 

「その『人を殺す実験』自体が無かったことにされたからなぁ……罪に問われることは無いと思う。ま、今は本人が大変な状態やし。この島は彼に救われたしなぁ」

「……それもそうですね」

 

一方通行がいなければ、妹達の暴走は止められず、今頃は大惨事になっていただろう。

 

聞いた話によると、俺に負けたことで計算狂いが生じ、実験は失敗に終わったそうだ。明確に失敗となったことで、後顧の憂いを断つことが出来た。

 

「一方通行のことは憎い?」

「はい?」

 

予想外の言葉が飛んできた。

 

「君は妹達を救うために一方通行と戦ったんやろ? 何の関係もないのに、命を懸けた。一方通行はそれまでにたくさんの妹達を殺しとる。そんな相手、憎んでいてもおかしくはない」

「それは……」

 

そんな気持ちはなかった。一方通行には彼なりの事情があり、俺はそれを(多少原作とは違うかもしれないが)知っている。

 

「別に、誰かを恨んではいませんよ。俺はただ、実験を止めたかった。それだけですから」

「……そっか」

 

それを聞ければ十分だと言わんばかりに、八神さんは立ち上がった。

 

「それじゃあ、お大事に。8月は忙しくなるよ」

「了解です、部隊長」

 

手を振って病室を出て、

 

「ムフフ」

「は?」

 

何であんな変な笑い方を?

 

「やー、まー、な? それはもう、達者でな~」

 

それはもう楽しそうに去っていった。

 

去り際にバチバチという何かが弾けるような音がしたが―――その理由はすぐに分かった。

 

「おいっす」

「御坂か」

 

見慣れた制服姿の御坂が、手に何やら持って顔を出したからだ。

 

 

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