「さ~てと……だれがいいかな、っと……」
ロキは顎に手を当て、自らのメンバーを見定めていた。
リヴェリアには結界を張ってもらう予定だったから除外。フィンは色々と余計なことに気が付きそうで面倒。
「(や、そもそも、ウチのメンバーといい勝負できるかぁ? や、あの吸血鬼が言うくらいやし、う~ん……)」
となると、むしろ手加減が過ぎると翔の実力を見れないかもしれない。
そう考えたロキは。
「よしっ! ベート! 今からちょっと戦ってくれへんか? あの坊主と」
「あぁ? んで俺がそんなことしなきゃなんねぇんだよ。つかなんなんだよ、あの野郎はよぉ」
「うん? あー、そやな……」
ロキはまだまだ不確かだった予言のことは話していない。
「(説明、面倒やったからなぁ……)うーん……あれや、アレ。あの坊主、ロキ・ファミリアへの入団希望者なんよ。だからちょいと腕試しして欲しくてなぁ」
「あの子さっき、ロキ・ファミリアのことは知らないって……」
「細かいことはええんよ! アイズたん!!」
今一番のお気に入り出るアイズの言葉を、びしっとせき止めるロキ。そのままベートの肩に腕を回す。その絡み方はまるで酔っ払い、表情は詐欺師だ。とても胡散臭い。
「なぁベート、考えてみい?」
「……何をだよ」
「自分、アイズたんにぃ、思う所があるやろぉ? あの入団前に『わからせる』のもアリやと思わん? やー、活躍したらアイズたんも惚れ直すかもしれんなぁ。あ、惚れてへんかったかぁ」
ロキの言葉に青筋を浮かべるが、ギリギリのところで抑え込むベート。
「やらねぇっつってんだろーが」
「何でや!! イケズ!! 分からずや!」
それでも、ベートは承諾しなかった。
「ベート」
「あぁ?」
フィンが声をかける。
「頼む。今回は僕の顔に免じて、受けてくれないか?」
「……しょうがねぇか、アンタがそう言うならな」
「なんでウチの言う事は素直に聞かないのに、フィンの言う事は聞くん?」
だがこれで、ベートの説得は終わった。
一度は結界を張ることを拒否するリヴェリアだったが、何度も頼み込まれ、ため息をつきつつ結界を張った。
「よーし、ベート! 一発カマしてきいや!!」
ベートを送り出したロキは、阪神タイガースを応援するおばちゃんのように、腕を上げて声を張り上げる。
そんな神(仮)の姿を、リヴェリアはため息を吐きつつ眺めていた。
「フィン、どういうつもりだ? どうしてこんなことを……」
隣にいる小柄な少年……に見えるロキ・ファミリア団長、フィン・ディムナに問いかける。
リヴェリアはロキの頼みを聞くつもりは全くなかった。渋々ながら了承したのは、フィンからの合図があったからだ。知恵者の彼が許したのだ。ベートを促したのも彼。何か裏があると判断したのである。
「なに、僕も興味が出ただけだよ。ロキと雪姫が興味を持つ存在に。それに―――」
フィンが自らの親指を見る。
「―――さっきから親指の疼きが止まらない。間違いなく、面白いものが見れるよ」
―――――――――――――――――――――
「それじゃあ夜月さん、頑張ってくださいね!」
「カッコいいとこ見せてよね!」
「ん、頑張ってくるよ」
右手にはめている指輪から、黒い物体が現れた。俺の新しい仲間にして、頼れるアドバイザー、レプリカ先生だ。
「レプリカ先生、行きましょうか」
《ああ、翔。我々の初陣だ》
「トリガー、オン」
言葉とともに、俺の体を包み込むようにレプリカ先生が変形する。黒を基調に赤いラインが走った服。BJというよりも全身がデバイスになっていると言ったほうが近いのか。
とにかく、これで変身は完了した。
ここで、前回の行為で手に入れることの出来た能力を紹介する。なぜか行為の記憶が無いんだけど。なんで完全記憶能力をすり抜けたのかな? でも5ポイントも手に入れていたからね。
プリンセスナイト
『プリンセスコネクト! Re:Dive』の主人公が持つ能力。
効果は仲間の能力強化、バフ。特定の項目を強化するわけではないため、味方と認識したあらゆる人物に対して効果を発揮する。
仮面ライダー博物館(ダイオラマ魔法球)
仮面ライダーに関するあらゆるアイテムを展示するための空間。展示ケース内は湿度、温度調節機能付きで、埃も積もらない。目指せコンプリート!
また、ケースの中に入ったアイテムはどこでも呼び出し可能。
GN-001 ガンダムエクシア
機動戦士ガンダムOOに登場する兵器。
合計で7本の剣を装備することが出来るため開発時には『セブンソード』というコードが付けられていた。
セブンソードの名前の通り、近接戦に特化した機体である。
なお、本編に登場していないものも含め、多数のバリエーションがある。
ビルドドライバー
『仮面ライダービルド』、およびビルド系列のライダーに変身するためのベルト。『フルボトル』を使うことで仮面ライダービルドに変身することが出来る。
ラビットフルボトル
仮面ライダービルドに変身するためのアイテムであるフルボトルの一種。
兎の力が封入されている。
プリンセスナイトの能力は腐ることは無い良い能力……かな? 考えてみれば、俺ってみんなと一緒に戦ったことほとんどなくない?
そんな俺がこんな能力持ったって宝の持ち腐れになるのでは? 今回だってまったく使えないし。
もしかすると、手に入れる能力の方から、もっとみんなで戦いなさいって言われてるのか!?
……まあそれはそれとして、とうとう待望のガンダム枠が手に入った。ガンダムエクシア。コイツは小回りが利くし、無限に空を飛べる。多分俺が使うことになると思う。と言うか使いたい。
今回出番があるかは分かんないけどね。
ビルドドライバーはビルドドライバーだ。とりあえずもう1本ボトルを当てないと変身することも出来ない。現在は博物館の肥やしになっている。
まあ、今回出番は無いだろう。
俺はベートと向かい合っていた。
向こうの顔には明らかにやる気がない。上役に言われてしぶしぶ出てきたのが丸わかりだ。
「それじゃあ、2人とも準備はいいか? ―――始めッ!!」
合図と同時に、蹴りが迫ってくる。やる気を出していなくてもこのスピード、流石だと言える。
だが、渡り合えないほどじゃない。
「お?」
ベートの表情が少し動く。
すると、どんどんペースが上がってくるが、俺も負けてはいない。風を切る拳が行き交うが、お互いがお互いを捕らえられない。
流石、格闘センスはずば抜けているみたいだが、今の俺は身体能力だけで渡り合えている。まともな戦闘なら、サーヴァント戦を超えた俺に恐怖はない。
ベートは蹴り技を中心とした素早い攻撃。俺は武偵高校の対人格闘訓練で学んだ格闘術に、周りの人からパクった格闘技のブレンドミックスだ。
周りの目も変わった。ロキ・ファミリアからは驚きが、ヴィヴィオちゃんからはキラキラするような目が、より一層強くなった。
少し試してみるか。
「
足元に現れる魔法陣。幾何学模様ではなく、漢字のような模様が描かれている特別品だ。
対象を跳ね上げるトランポリンのような効果を持つそれで、大きく空に―――
「逃がすか、よォ!!!」
「うおおお?!」
飛び上がる俺の足を掴み、そのまま地面に投げられた。何とか着地できたが、
「あっぶな……」
「彼の前で不用意な行為は命取りだ。技の試し撃ちはやめた方がいいだろう」
レプリカ先生が俺を諫めてくる。
「おいおい! つまんねぇ小細工なんざすんじゃあねぇよ!!」
対するベートはずいぶんと楽しそうだ。くだらない見世物に付き合わされたと思えば、思った以上に俺が戦えてうれしくなっているんだろう。
「翔。分かっているな」
「もちろん―――風精召喚!!」
呼び出した精霊が、ベートに攻撃を開始する。
わざわざ相手に付き合うことは無い。突けるのなら、徹底的に弱点を突く。それが俺の戦い方だ。こざかしい手だっていくらでも使ってやるさ。
「よし、いいぞ。君の戦い方は私に馴染むぞ」
「それは良かったよ!」
「カスみてぇな魔法だなぁ!!」
しかし、ベートはタフだ。多少攻撃しても、ひるまず突進してくる。
「ラシルドッ!!」
「っ!?」
無理矢理間に壁を作ることで、進撃を止める。
「しゃらくせぇ!!」
壁を壊した先にいるのは、
「
印を構えた俺だ。
3重に重ねられた『印』から、ベートを拘束せんと鎖が飛び出す。
「つまんねぇことしてんじゃねぇよッ!!」
それを纏わりついていた風精ごと、蹴りで粉砕する。
「うそぉぉぉ……?」
「翔、来るぞ」
「ザケルッ!!」
電撃を放射することで近づけさせない。ここで一度仕切り直しになった。
「おーい、つまらんぞー。もっと派手な奴でズバッと決めろー」
「そやそやー、ベートも顔のニヤつきが押さえられんくなってるでー」
「ッチ! なんなんだアイツらはッ!! 闘り合ってる最中につまんねぇヤジなんざ飛ばしやがって……!」
ベートが相当にイラ立っているのがわかる。ベートはロキに無理やり戦わされて、そんなヤジを飛ばされてるんだ。気持ちは分かる。
でも俺には違う意味に聞こえる。というか、テレパシーが飛んできてるから普通に聞こえる。
「(おい、わかってるんだろう? 早く見せてみろ、オマエの
「……ふぅ」
毒を食らわば皿まで。
「お望み通り……!」
見せてやることにしよう。
「―――暗き夜の型」
黒いBJから滲みだすように黒いオーラが現れる。
ベートと目が合った。
「(コイツッ! いきなり目つきが―――!!!)ッ!!」
俺の纏ったドス黒い闇のオーラに本能的な恐怖を感じ取ったのか、攻撃に移るまでが早い。ほとんど本能で動いでいる。
本能が叫んだのだ。今のこれは危険だと。
だが、今の俺にはスローモーションに見える。
「
印を3重、周りに浮かぶ11の光球。それをすべて右手に束ねる。
「桜華―――」
狙いはがら空きのベートの腹だ。
その寸前、
「コラーーー!!!! 何をやっているんですかっ、あなたたちはーーーッ!!!」
鬼の形相のシスターが殴りこんできた。
その大声で、俺の拳は当たる寸前で止められる。
「シャンテ!! またあなたですかっ!! 今度はいったい何を―――って、ロキ・ファミリアまで!? リヴェリアさん! あなたがいながら何ですか! この騒ぎは!」
「すまない、シスターシャッハ。ロキにどうしてもと頼まれてしまってな」
「リヴェリア!? や、確かにうちが頼み込んだのはあるんやけど!」
ロキは勢いよく隣を指さす。
「もともとはこの年齢詐称吸血鬼の提案で―――……あれ?」
そこにはすでに、エヴァンジェリンの姿は影も形もなかった。
「とっくに帰りましたよ」
「あ ん の ク ソ 吸 血 鬼 ィ !!! 自分だけ逃げおったなァ!!!」
すでにリヴェリアによる結界が解かれ、手合わせの空気ではなくなっている。
俺もエヴァンジェリンがいなくなってしまったのでは、これ以上戦う理由が無い。
「ベート、行こう。夜月 翔。またいずれ」
「ッチ!! クソが……!」
フィンから声がかかり、ロキ・ファミリアが建物に消えていく。
結局、勝敗はお流れになった。
舌打ちして背を向けるベートを見つつ、俺も能力を解除するのだった。
―――――――――――――――――――――――――
エヴァンジェリンは迎えの車に乗り込んでいた。
「待たせてすまなかったな、真壁」
「いえ。何か問題がありましたか?」
ハンドルを握るのは、給仕服を着た青年だ。メガネをかけたその男は、自らの主人がしっかりと腰を落ち着けたことを確認して、車を発進させた。
外見では何処にでもいそうな東洋系の少年だが、その実態は不死身集団『UQホルダー』の一員。ある種の不死身能力を持つ男だ。
それだけに、エヴァンジェリンの口から出た言葉は、彼に驚きを与えた。
「実はな、新しい
「ほう、それは……」
ハンドルを握る手が一瞬動く。
「どうするおつもりで?」
「様子見だ。今はまだな。どうにもアイツは今、厄介なことになってるらしいからな。そもそも、アイツが本当に不死身なのかまだ分からん」
「こちらも準備を進めましょう。色々と。この夏は忙しくなりそうですね」
「まったくだな」
車は、2人のホームへ向けて走り続けるのだった。
――――――――――――――――――――――――――
腕試しを終えた俺は、シャンテに連れられて、聖王教会の中に入っていた。高級そうな絨毯を踏みしめて進んでいく。
「いやー、夜月さん強いんだねぇ。まさかあのベートさんと引き分けるなんて。インターミドルとか興味無いの?」
「無いなぁ。そういうのに出るのは興味ないんだ。みんなの応援はするけどな」
流石に大観衆の中、能力をお披露目するのは避けたい。それよりも、絶対に起こると確信している事件に備えたいのだ。
「でも災難だよねぇ。厄介だよ、あの神様達に目を付けられると。ってか夜月さん、何かやったの? 無礼なこととか」
「無礼って……何かした覚えはないぞ。向こうに何か思う所があったんじゃないか?」
俺自身、その辺りは望んでいた所があるからな。
そんなことを話していると、とある扉の前まで連れてこられた。
気さくな態度だったシャンテだったが、態度が変わる。
「それではお客様、こちらでございます」
扉の前で礼儀正しくお辞儀をしたシャンテ。開けられた扉。その向こうにいたのは聖天子様だけでなく。
「あれ……?」
何人かいた。しかも全員知っている顔。
もちろん呼び出した張本人である聖天子様はいる。それに加えて我らが部隊長、八神 はやて。そして直接の面識は無いが、原作知識で知っていたカリム・グラシア。
そして、
「お前えぇぇぇぇ……!」
「ウェイバーじゃん。何でこんなところにいんの?」
「こっちのセリフだ!!」
何故かものすごく嫌そうな顔をしている。なんでだ。せっかくの再会がうれしくないのか?
すっかり大人の顔になったウェイバーの叫び声が、部屋に響いたのだった。