※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

193 / 383
大物たちの会議 2日目 裏

屑ヤミーの襲撃に会う少し前、会議はとある議題に入っていた。

 

下の華やかな政治の場とは違い、ひりひりとした緊張感が場を満たしている。誰も彼もが猟犬のように目を光らせている。

 

要人が大きな円卓に座り、その後ろには各1人の護衛が控えている。だが、そもそも護衛が必要な要人の方が少ない。

 

この混沌の島に来るのだ。自分の身は自分で守れるくらいには、それどころか、襲ってきた相手を返り討ちに出来るくらいには実力が無いと危ないのだ。

 

おかげで、単純な力の密度が凄まじいことになっている。

 

それが原因で、胃に大きなダメージを受けている者もいるが。

 

「(始まったばっかりだけど、もう帰りたい。昨日とは全然違うじゃんか……)」

「……っ」

 

それっぽい顔をしているウェイバーも、後ろに控えているグレイも同じ気持ちだった。

 

ロードの名前を冠しているとしても、本人の実力はたかが知れているのだ。唯一の救いは、魔術関係でなければ話を振られないことだ。

 

「えー……それでは次の議題ですが……」

 

司会が議題を進めようとする。ここまでは前年の会議の結果をだらだらと発表してきた。退屈な時間だった。これ以上なく、無駄な時間を過ごしてきた。

 

この場にいる人間が知りたいのは、わずか数日前、この島を世界の敵にするかもしれなかった大事件の真相だ。

 

「んで? そろそろ本題に入ろうじゃねーか、なぁ? みんな気になってんだろ?」

 

背格好は小さな子供。服装はスーツではなく、自国の民族特有のものだ。相手を切り裂くような鋭い眼光を備えた目が辺りを見回すと、いくつかの国が同意したように空気を作った。

 

行儀悪く机の上にあげていた足を下ろす少年。背もたれの後ろで、普通のホモサピエンスには無い器官……尻尾が揺れた。

 

ギド・ルシオン・デビルーク。ランドソルと同じく、ホットスポット上にある特別な国――――デビルーク王国。その王だ。

 

「そうですね。ぜひとも、詳しい話をお聞きしたいわ」

「はっ、よく言うな、極東の魔王。本当はもう全部知ってるんじゃーないのか?」

 

2人の女性が軽い調子で口を開いた、

 

1人は日本の代表、『四葉 真夜』。そこだけ闇が濃い。そう錯覚してしまうほど艶のある黒髪の女性だ。

 

異性を妖しく惹きつけずにはいられない、大人の可愛いらしさが同居した美しさを持つが、それに惹かれるほどヤワな、または命知らずな人物はこの場にはいない。

 

もう1人はイギリスの代表、王室第2王女である『キャーリサ』。

 

肘をついた手に顎を乗せるその姿からは、可憐な姫君という印象は全く受けない。顔は整っているが、挑発的な笑みを浮かべ、真夜とは違い少々荒っぽい、豪快な印象を受ける。

 

「……」

 

そしてなんと、その後ろにはアリアが警護として控えていた。

 

キャーリサは流し目を送るが、真夜はそれを涼やかに受け流す。

 

ここまでくれば、司会の役割は終わったと言っても良い。元より制御できる人物ではないのだ。

 

後は流れに任せて、まとまるまで話し合ってもらうだけだ。

 

「では私から、説明させていただきます」

 

その為にそこに居たはやてが名乗りを上げる。

 

「八神はやて……夜天の書の主か。ずいぶんとまあ、大物が出てきたもんだな」

「おいおい、あんまりイジメてやるな」

「……始めさせていただきます」

 

ギドとキャーリサの軽口に反応せず、モニターを起動させる。

 

流石のはやても、このメンバー相手に緊張を隠すことが出来ない。

 

騒がしかったメンバーも、はやての説明には質問せずに静かに聞き入る。自分たちの諜報部隊が仕入れていた情報と照らし合わせているのだ。

 

「……以上になります」

 

説明に一区切りつき、はやては席に着いた。

 

今回説明したのは、妹達を主軸にした、能力者量産計画について。それに伴う、最終信号(ラストオーダー)による暴走未遂だけだ。

 

レベル6シフト計画は闇に葬られ、証拠1つ無い状態。目の前の面々なら何かを掴んでいるかもしれないが、曲がりなりにもここは公式の場。事実報告で『妄想』を言う訳にはいかない。

 

「フーン、なるほどなぁ」

「じゃあ私たちは、けっこー危なかったわけだ? 暴走寸前って話だし?」

「私たち、というよりも、この島が、かしら? 今の時期、人がたくさんいますからね」

「……はい。そういうことになります」

 

3人の言葉を、唇をかみしめて肯定するはやて。自分のせいではなくても、自分たちが食い止めたとしても、こうした場では謝罪しなければならない。

 

それが責任者の辛いところだ。

 

「まあまあ、皆さん。こうして管理局の働きのおかげで、何事もなかったわけですから」

 

優しい声で諭すのはランドソルのアストライア王、つまりはペコリーヌのお父さんだ。

 

「そりゃもちろん。やってくれないと困る訳だし? いざってときに役に立たない軍隊なんて、金の無駄でしかない訳だし」

「ですから、その責務をしっかり果たしたと言っているんですよ、私は」

「……ハッ」

 

キャーリサは鼻で笑う。

 

「私もそう思いますよ」

 

険悪な雰囲気になってきたが、そこに割って入るのは、そして意外にもアストライア王の味方をする四葉真夜だ。

 

「責務をしっかり果たして、人的被害を最小限にとどめた。結果を見ればそれがすべてではなくて?」

「へー? 意外だな、極東の魔王。そっちの味方になる訳か?」

「今回の管理局に、責めるべき点が見当たらないというだけですよ」

「だがまあ、そんな大事な説明を部下に任せるってのは、いただけないけどなぁ」

 

この島の管理局を取り仕切るアレイスターは目の前におらず、画面越しにもいない。今この場での管理局代表は八神はやてだ。

 

各国の代表が集まる場に出席しない。例年であれば「ああいつもの事か」で流せるのかもしれないが、今回はそうもいかない。

 

それほどの大事件だったのだ。

 

「……ま、ここで文句言っても仕方がないっていうのは分かってる訳だし? 特務六課にはこれからも期待してるってことで。次に行こーか」

 

ギドも同意したことで、キャーリサはそれ以上何か言うのをやめる。

 

「(ぷはー! なんとか、なんとか乗り切ったー!)」

 

実際、事件をこの規模に抑えられたのは一方通行のおかげだったりするのだが、余計なことまで言う必要は無い。事実が大切なのだ。

 

「(というか多分、このメンツなら、夜月君が一方通行に勝ったことも知られとるんやろうなぁ……イギリスのあの王女サマとか、明らかに)」

 

その後一方通行がどうなったのかも、場合によっては知られているのかもしれない。同じ時間、別の場所で戦っていた翔の事も、アナザービルドのことも。

 

「(何人かには見逃してもらってる。って考えたほうがええかもなぁ)」

 

管理局を糾弾するよりも、もっと別のことに時間を使いたいということだ。だがそれは、自分たちが握っている情報を共有するという意味ではない。

 

はやての説明にあった内容についてだ。

 

「それよりも大きな問題があるだろう」

 

野太い声で場の空気を変えるのはルーカス・リハヴァイン。ラ・フォリアの父親であるアルディギアの国王だ。

 

「問題はこの島で、そんな研究がされていた件だ! 『学会』は何をやっているんだ!」

 

机を叩くドン!! という音が響く。

 

『学会』とは、この学園島の最高議会だ。超能力を含めた科学技術開発を取り仕切っている。

 

学生への超能力開発から危険な研究の監視など、管理局が外部からの監視役なら、『学会』は国で言えば政府のような役割までしている。

 

この島が作られたのには2つの理由がある。

 

1つ目はもちろん世界平和だ。

 

それぞれの国がそれぞれに、秘密裏に技術研究をしては、それが新兵器となり、争いの火種になりかねない。

 

1か所に集めそれを常に世界に公開することによって、争いを防ごうという狙いだ。それにはもちろん、超能力開発も含まれる。

 

2つ目は篠ノ之束対策だ。

 

1人で世界を滅ぼしかねない『天災』に対抗するために、世界の英知を結集させているのだ。

 

「その見返りが、世界大戦では笑えないですけどね?」

「ま、しゃーねぇんじゃねぇの? 研究者ってのは変態が多いからなぁ。しかも樹形図の計算者(ツリーダイヤグラム)なんてオモチャまで与えてんだ。遅かれ早かれ、暴走すんのは目に見えてたさ」

 

ギドは分かっていたと言わんばかりにニヤニヤしている。

 

実はデビルーク王国も、極端に高い科学力を持った国である。この島を作る時にも技術提供していた。

 

「しかし今更この島を解体などできないでしょう?」

 

アストライア王の発言に、今度は誰も嚙みつかない。

 

単純な科学者なら問題ない。その人たちはさぞかし母国の発展に力を尽くしてくれるだろう。

 

問題は異常な科学者。問題を起こすのはこいつらだ。今はここに集められているが、解体ともなれば世界中に拡散し、スポンサーはこぞって彼らを囲うだろう。

 

好きに研究させ、場合によってはその暴力を振るう。

 

科学技術という誰にでも使えるモノという点がさらに厄介だ。

 

「ならどうする? 現状維持か? 今回が最悪かもしれないなどという楽観視は出来んぞ?」

「まー確かに? 管理局内部に問題があるかもしれないって話も出てるからねぇ?」

「そのことについて、アレイスターから説明が欲しかったトコだがな……野郎、まさか逃げやがったのか?」

「(まさか、そんなことは無いと信じたいんやけど……)」

 

はやては、あの感情の読めない上司のことを考える。

 

その時、会議室のドアが勢い良く開かれた。

 

「申し訳ありません! 至急、皆さまのお耳に入れたいことがッ!!」

「騒がしーぞ。いったい何の騒ぎだ?」

 

転がり込んできたスーツの男が口にするのは、屑ヤミー襲撃の知らせだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

襲撃があって、会議をまともに続けられるわけがない。安全確保のため、その日はお開きになった。

 

「ふーっ」

 

キャーリサはホテルの部屋で椅子に座り、天井を仰ぎつつ深く息を吐いた。

 

「王女殿下、本日は―――?」

「ん、ああ―――」

 

護衛のアリアの声に体を起こす。

 

「ま、少なくとも今日は、仕事はないだろーさ。かと言って外を出歩くわけにもいかない。っち! これだから、どうせだったら姉上に任せておけばいいものを」

「第1王女……リエメア様ですか?」

「ああ、そーそー。あの偏屈者、『自分の身分を知っている人間は一切信用しない』ときた。会議中ならまだしも、夜はどこをほっつき歩くか分かったもんじゃない。扉の前で護衛している騎士すら信用していないからな。根本的に『海外に行く外交』には向いていない」

「はあ……」

「かと言って、妹も無理だ。あんな場所にいたら5秒で失神する」

「第3王女のヴィリアン様は、非常に人徳に優れた方だと伺っていますが」

「人徳であのメンツと渡り合えるものかよ……まあつまり、消去法で私しかいなかった訳だ。まったく、例年通り、お母さまが出席すればよかったものをッ。何が経験だ。忌々しい!」

 

再度舌打ちしたキャーリサは着ていたスーツの上着を乱暴に脱ぎ捨てた。首元を飾っていたネックレスも。まるで酔っぱらったサラリーマンだ。

 

「という訳で今日の仕事は終わり。明日のことは追って連絡させる。もう帰っていいぞ」

「……キャーリサ様。帰る前に、1つ質問をしてもよろしいでしょうか?」

「好きにすればいーし」

 

暇つぶしと言わんばかりにキャーリサはアリアの方を向く。

 

「何故私を殿下の護衛に? それこそ騎士……別室にいる騎士団長(ナイトリーダー)に比べれば私は……」

「別に兵隊としての能力で、お前を護衛につけた訳じゃないし? 個人的に、ホームズ家の長女と繋がりを持っておきたいと思って」

「……家、ですか」

 

アリアは嫌そうな顔をする。

 

今回の護衛も、家を通しての指名だった。それが無ければ、今頃はバカンスだったのだが。

 

「そう嫌そーな顔をするな。お前が本家でどんな扱いを受けているのかは噂で知っているが、どんなに頑張ったって、自分の名前から逃げることは出来ないぞ」

「それは分かっていますが……ホームズ家としての『出来の良さ』なら、妹の方が……」

「お前の妹は、どちらかと言えばリエメア姉さま向きだろう? 裏でこそこそするのは私の趣味じゃないし、使いこなせない。お前が仮に『R』ランクの武偵になれば、本家の連中は最高の意趣返しになるし―――母親を救う手がかりになるかもしれないぞ?」

 

Rランク。本来武偵の最高ランクは『S』だが、それ以上―――例えば王室直属などの武偵には『Royal』の頭文字をとってRランクが与えられる。

 

その誘いを、今、こんなにも軽く受けている。

 

しかしそれ以上の条件を、キャーリサはちらつかせていた。

 

「ッ!? マ―――母の冤罪について何かご存じなんですかっ!?」

 

流石に平静を保っていられず、語尾が荒くなる。

 

「流石にこの場じゃー答えられないが……母上と姉さまだな。こう言った私も詳しいことは知らないし? ま、考えておいてくれ」

「……わかりました。失礼します」

 

アリアは扉を開ける。

 

「気が変わったらいつでも連絡しろ。私は優秀な人材は拒まないからな」

 

結局アリアは、この話を家の誰にも出来なかった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

首からトイカメラをぶら下げた男―――門矢 士は、人込みを縫うように会場を後にしていた。

 

20分にもわたる襲撃によって、会議が行われているビルからは煙が昇っていた。それにやじ馬が引き寄せられ、交通整理をしている武偵は苦労している。

 

「あの男、エグゼイドに変身していたな」

 

翔の目の前に士が現れたのは、もちろん偶然ではなかった。翔も思っているように、そんな偶然があるわけがない。

 

予め目星をつけていた。士はライダーの波長を感じ取ったのだ。

 

その予感はズバリ的中。

 

戦闘の一部始終を、士は目撃していた。押されはしないものの、攻めあぐねている状況。それを変えようと、少し手伝ってやるかと行動を起こすその寸前、エグゼイドに変身した翔が現れたのだ。

 

周りにいた兵隊と一緒に怪人を倒すその姿は、正しく仮面ライダーのものだった。

 

だからと言って短絡的にそのライダーの世界と結びつくほど、士は簡単な旅はしていない。

 

「エグゼイドに変身してはいたが、アイツはエグゼイドじゃない」

 

はっきりと断言出来ることだった。

 

どうしようもない違和感があった。

 

「ライダーのいない世界かと思えば、ライダーがいて、でもそいつは正しいライダーじゃない……中々分かりにくいな、この世界は。もう少し、見極めてみるとしようか」

 

そう呟き、士は姿を消した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。