※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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もう1人のお姫様 前編

パーティが中止になったことを理由にした無断外出も、今日で5回目だ。

 

最初の一日を超えてしまえば慣れてしまうもので、今では明日どこに行くのかを前日にしっかりと決めるようになっていた。

 

聖天子様、それとここに召喚されてまだ日が浅いコッコロを案内することを目的にして、俺たちは予想外に充実した夏休みを満喫していた。

 

聖天子様もこっそり外出にすっかり慣れてしまい、俺たちが行くとすでに準備万端。もはや現地集合になってしまいそうな勢いだ。

 

1日目はラ・フォリア達と一緒だったが、流石に2日目からは一緒ではない。向こうは向こうで用事があるらしい。王室だからね。

 

という訳で当初の計画通り、護衛対象は聖天子様1人。こんなので単位とお金を貰ってしまっていいんですかね。

 

雪菜とコッコロはすっかり聖天子様と打ち解けて、今ではすっかり友達。

 

性格がマッチしたのか、少なくともライネスよりも仲良くしている。コッコロは誰とでも仲良く出来るからね。心配ないね。

 

《ずいぶんとお気楽な護衛だな。人に調べ事を頼んでいるとは思えないぞ》

「そうだな。その分、気が緩まないようにするのが大変だよ」

 

俺は少し席を外し、ジャンヌと電話をしていた。

 

「それで、どんな感じだった?」

《ああ、そうだな……》

 

別に何かのお誘いをしているわけではなく、情報収集の依頼だ。

 

《島中に現れているようだな、例の正体不明の怪物は》

「みたいだな……」

 

例の怪物とは、あの時パーティ会場に現れた屑ヤミーのことだ。

 

送られてきた画像には、人を襲う屑ヤミーとそれと戦う管理局員、武偵の姿が映っている。

 

中には屑だけではなく、しっかりとしたヤミーの姿まであった。

 

「特に襲われる場所に共通点は無いよな……誰か特定の人が狙われてるってわけじゃないし」

《私にもそう見えるな。だが、日に日に出現頻度は増えている》

「……欲望が溜まってるってことか」

《ん? なんだと?》

「や、何でもない。この強い個体(屑ではなく普通のヤミー)ってのも増えてるのか?」

《そうだな。この個体になると、通常の火器ではまるで意味がない。貴様なら問題ないのかもしれないがな》

 

ヤミーの数も増えている……こりゃあ不味い事になる前に解決に動きたいな。聖天子様の護衛が終わるまで待っていては、取り返しのつかない事態になるかもしれない。

 

「ありがとな。今度店に行くから」

《おい、やめろ》

「聖天子様も連れて行くから。確か最近は毎日シフトに入ってんだろ?」

《いや、余計に―――あっ、はい! 今戻ります! とにかく、来るんじゃないぞ! 分かったな!》

 

その言葉を最後に、電話が切られた。席に戻ることにする。

 

今は海岸沿いのお店で一休みしていた。騒がしい中心部に比べると、ここはいくらか静かだ。

 

席に座っている雪菜、コッコロ、聖天子様は楽しそうに談笑していた。

 

「主様、何をされていたんですか?」

「ちょっと電話を」

「誰とですか?」

「ジャンヌだよ。この間のことを調べてもらってたんだ」

 

席に座った。

 

「あの時の……そうですか……私には何も情報は回ってきていないですね……」

 

聖天子様が申し訳なさそうに言う。

 

「や、一応ですから。何かあっちゃいけないので」

 

ジャンヌの話だと、首謀者のような人は見つかっていないらしい。本当に、何処からともなくヤミーが現れるのだとか。

 

「ん?」

 

端末に連絡が入った。

 

「んー……あー……」

「翔さん? どうかしましたか?」

「や、クロの友達がインターミドルに出場してまして。そもそもインターミドルは知ってます?」

「はい。試合を見たことはありませんが。確か……もうブロック本選の期間に入っていますよね?」

 

その辺りのスケジュールはしっかりと頭に入っているみたいだ。

 

「ええ。その試合結果が送られてきたんです」

「どうでしたか? この時間だったら、ヴィヴィオちゃんの試合ですよね?」

「確かヴィヴィオ様の試合相手は、主様の上司の……」

 

雪菜とコッコロも端末を取り出している。

 

「そ、八神部隊長の道場に所属してるミウラ・リナルディ。結果は残念だったってさ。あと少し、どっちが勝ってもおかしくない試合だったらしい」

「それは残念でしたね……」

「ですがヴィヴィオ様ならこの敗戦も必ず力に変えることでしょう」

 

聖天子様がぽつりと言った。

 

「見に行っても良かったですね」

「興味があるんですか?」

「有名選手も何も知りませんが、1度くらいは実際に見てみたいという気持ちはありますよ」

 

そう言うのならば。

 

「予定変更して見に行ってみます? 今日はこの後にも試合がありますから」

 

勝てない、とは思わないけど、ブロック本選は常勝出来るほど甘くはない。今日で大きく人数を減らしてしまうかもしれない。

 

「そうですね、行ってみましょうか」

 

依頼人の言葉は絶対ですからね。今日は試合観戦としましょうかね。

 

決まってしまえば行動は早い。

 

お店を出て、試合会場に向かう。向かおうとした。

 

「なんか聞こえてくるな」

「はい。騒がしいですね」

「何かトラブルでしょうか……」

「あっ! 皆様、あちらでございますよ」

 

騒ぎの大本であろう人達はすぐに見つけることが出来た。

 

1人の少女と、スーツ姿の男性3人が揉み合いになっている。特に少女が、とてつもなく特徴的な格好しているんだけど……!

 

うん? うん!?

 

「三度見している先輩。あれが誰かご存じなんですか? 知り合いですか? ……またですか?」

「知り合いではないけど、誰かは分かる」

 

危ない声色の雪菜を抑え込む。

 

「聖天子様も知ってますか?」

「は、はい。公の場に出てくることがあまりないので、直接会話はしていませんが……」

 

なるほど。いることは分かってたけど、パーティには出席してなかったもんな。

 

それにしても、あの格好は一体何と形容すればいいのか。俺の語彙では説明出来そうにない。少なくとも、あれを普段着にしている人は絶対にいない。いたら普段からコスプレだ。

 

そして何よりも、そんな突飛な恰好なのに見覚えがある。その揺れる『尻尾』も。

 

「あの方は、デビルーク王国、第一王女のララ・サタリン・デビルークです……!」

「「っ!?」」

「……やっぱりか」

 

雪菜とコッコロの顔色が変わる。

 

その王女様が、黒服の男たち数人と揉み合いになっている。この状況は、どう見てもアレだ。

 

「はい、なんというか、とても特徴的な服装の方ですね。ですが、ここはっ!」

 

雪菜はギターケースから自らの獲物を取り出す。

 

「雪霞狼ッ!!」

 

変形し、光を反射する。

 

「はいっ! 雪菜様、参りましょう!」

 

コッコロも自らの槍を取り出す。

 

「あ、ちょっと―――」

 

そのまま2人して突撃していく。

 

「はーなーしーてー!!」

「いい加減に―――ッ!?」

 

ララの手を引っ張る黒服の間に割り込む雪菜。

 

「な、何だ貴様は!」

「ここから先へは行かせません!」

 

油断なく槍を構える雪菜。

 

「え? え?」

「王女様、こちらへ」

 

その後ろではコッコロが、困惑しているララを誘導して俺たちの方へと連れてきていた。

 

「夜月さん!」

「……なるようになるしかないな」

 

真横で叫んでいる聖天子様と、目の前で黒服を一網打尽にしている雪菜を見つつ、そう呟くだった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「ええぇぇぇっ!? あ、あの人たち、護衛の方々だったんですか!?」

「うん。そーだよ? 私の護衛」

 

お店の中に雪菜の声が響き渡る。

 

インターミドルの会場に向かうつもりが違うお店に逆戻り。ララというメンバーが増え、余計に賑やかになった。

 

主に騒がせているのはララなんだけどね。

 

「あの方々がララさんの護衛だとして、何故逃げていたんですか?」

 

聖天子様が最もな疑問を問いかける。

 

あの場だけ見れば、まあ誘拐現場だと思っても仕方がないからな。お粗末すぎる手際の誘拐に。

 

「お見合いが嫌になっちゃって! ちょっと家出しちゃったの!」

「「えぇー……?」」

 

親に勉強しろとしつこく言われたから家出した。そのくらいのノリで王女様が家出をしている。

 

でも、まあ、予想通りなんだよな。これは。そもそもララだったら、多少の相手くらい自分で撃退できるし。

 

「だってパパ酷いんだよ! 今年に入ってからずっっっとお見合いお見合い。この島に着たら遊べると思ったのに結局お見合い。もうイヤになっちゃったんだもん」

「そ、それはあまりにも無責任ではないですか? お父様やお母様も心配しますし……」

「最近のパパは嫌いだよ~。会うたびにその話しかしないんだもん」

「聡明なデビルーク王です。いつでも国の未来を憂いているのでしょう。確かに、強要は良くないと思いますけど」

「そーめい?」

「頭がいいという事ですよ」

「えー? パパが? そうかなぁ?」

 

真面目な聖天子様が、ララと言い合いになっている。そんな時、

 

「せ、先輩。どうしましょう……!」

 

雪菜は青い顔をして俺を見てくる。襲われているところを助けたと思ったら、実はこっちが誘拐していた。

 

しかも、一番多く護衛をぶっ飛ばしたのは雪菜だ。

 

「だ、大丈夫ですよ! 私も口添えしますから!」

「うんうん。私も言うから大丈夫だよ? あのくらいいつものことだから」

「そ、そうですか? お願いしますっ」

 

雪菜は何度も何度も頭を下げている。

 

そんなことを話していると、あることに気が付いた。

 

「うん?」

 

なんだ、これ。

 

ララの服、とても先鋭的なデザインだとは思ってたけど、あんなところにスリットあったっけ?

 

いや、無いよな!! というか、服にどんどん穴が開いてきたんだけど!?

 

「あれ?」

「ラ、ララさん!?」

「な、何が起こって……」

「どんどん、服に穴が開いて……」

 

聖天子様と雪菜、コッコロ、ララも異変に気が付く。

 

「も、申し訳ありません、ララ様。バッテリー切れです……」

 

ララの頭に帽子のように乗っかっているペケが言う。コイツはララの発明品である万能コスチュームロボット。コイツが生成しているナノマシンによって、ララの服は成り立っているのだが……

 

「あ~、そういえば昨日、充電してなかったっけ?」

「はい……昨日は5回のお見合い。その都度コスチュームチェンジをしましたので……」

「そっかぁ~」

 

どんどん布地が無くなっているというのに、当の本人は暢気なものだ。朗らかに笑ってジュースを飲んでいる。

 

「ちょっ! な、何でそんなに落ち着いてるんですか!? あっ、見え……っ!」

「ら、ララさん! どうにかできないんですか?」

「えー? そんなこと言ってもなぁ。ペケの充電はホテルじゃないとできないし……」

「先輩、何とかなりませんか!? あっ、あまり見ないで何とかしてください!」

「な、何とかって言われても……黒影(ダークシャドウ)で包んでみる?」

 

そうすれば一応見えなくなるし、その間に代えの服を買ってくるか。こんな美少女を黒い影に包んでいれば、服が届く前に管理局を呼ばれそうだな。

 

デビルーク王国の王女様のストリップを晒すよりはいいだろう。

 

「そ、そうですね! とりあえずはそれでっ! ああっ! もうほとんど布が! え、下着も消えてますっ!」

「全部ペケに作ってもらってるからねー」

「ホントに呑気だな」

「主様、お早く! 周りの方々の目がだんだんと集まってきています!」

 

ほとんど悲鳴のような声色で聖天子様とコッコロが急かしてくる。

 

「黒影(ダークシャドウ)」

(マタコウイウ役目カ……)

 

お前が便利なのがイカンよ。いつも助かってます。

 

「わわっ! へー、これはあなたの能力?」

 

鳥型の影がララを包み込んだ。これで一応見えてはいない。それでも目立っているのは変わらないんだけど。

 

「じゃあ次は服だな」

「別に気にしなくていいよ? すぐにホテルに戻れば全然へーきだし」

「気にしますよ!」

 

いくらなんでも、もう少し恥じらいを持ってくれ! 

 

「一番近いのは、っと……ここだな」

「行きましょう! ララさん!」

「はーい! お洋服かぁ……自分で選ぶなんて久しぶりだなー」

「え、この格好で連れて行くのか? 職質受けるぞ?」

 

黒影(ダークシャドウ)に包まれて大事なところは見えないとはいえ、逆の意味で目立っている。

 

「誰かが買って来るしかありませんね」

 

となると必然的に聖天子様とララは除外。黒影(ダークシャドウ)の維持で俺は動けなくなる。コッコロもこの島に慣れていないため、時間がかかりすぎてしまうだろう。

 

「分かりました。それでは私が……」

「じゃあコレを使えばいいよ!」

 

ララがどこからか取り出すのは、ララがさっきまで着ていた服に似た意匠が施されたブレスレッド。

 

また嫌な予感がしてきた。

 

「それは?」

「これはね、『ぴょんぴょんワープくん改』。これを使うと行きたい場所にワープできるんだよ! 前までは目的地の指定が出来なかったんだけど、この前改良してね~」

 

嫌な予感は的中した。

 

「それを使えばここまでワープできるんですか!?」

「そう言えばデビルーク王国のララ王女は、その頭脳で発明も行っているとか……」

「うんっ! これも私が発明したんだ~」

 

この世界でも、ララの頭脳は健在らしい。でもそれはそこまで知られていない。こんな小型の装置で人間のワープを可能にしているのなら、それは大発明のはずなのに。

 

つまりは、重大な欠陥があるということで、

 

「……はい、目的地の設定は出来たよ。私に掴まって!」

「や、それは絶対にやめた方が……」

 

俺は止めようとするが、慌てふためく女性陣には届かない。

 

「先輩、行きましょう!」

「いや、ダメだって―――……」

「じゃあ、いっきまーす!」

 

躊躇する俺、ララは静止を聞かずにぴょんぴょんワープくん改を起動させる。ララと一緒にワープするのはすでに掴まっていた雪菜だけ―――

 

「あーあ……」

 

光と共に2人はその場から消え失せた。

 

「え、どうして……?」

「主様、これはどういう事でしょうか……?」

 

確かに2人共、その場からいなくなっていた。

 

その場に残されていたのは、武偵中の制服。雪菜がさっきまで着ていた制服だけだった。

 

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