デアラとラストエンブリオ(問題児の続編)の新刊も出てしまいましたしね。
次は気を付けます。
アリアとパーティーを組んで4日が過ぎた。武偵殺しには全く動きがなく、俺たちは相変わらず暇な日々を過ごしていた。
シリアスなイベントも、Hなイベントも起こることなく、正に日常といえるような日々だ。元の世界と比べて非現実的なのはアリアが照れ隠しに銃をぶっ放す程度。それにも慣れつつある自分がいる。
アスナと交わった後は誰ともHなことはしていない。なんていうか……お互いに恥ずかしがって何も言えなくなってる状態だ。
俺もしたくないかと言われればノーなんだけど、なんて誘えばいいのかわからない。2回とも向こうから来てくれたからなぁ。
こんな感じで割と穏やかに日々を過ごしていたわけなんだけど、古今東西、事件というのは突然起こるものらしい。
ま、つまりそういうこと。事件の始まりは突然だった、ってね。
その日はこの世界に来て初めての雨が降った。しかも大雨。地面に落ちた雨粒がはね、ズボンの裾をどんどん濡らす。
みんなはそれぞれ早く行く用事があるらしく、俺は1人だ。
傘をさして歩いていると携帯電話がなった。
「もしもし?」
《翔。今どこ?》
電話の相手はアリアだった。
時刻は8時10分。いうまでもなく、学校に行けば学年が違うとはいえすぐに会うことができる。それなのにわざわざ電話を使って連絡してくるなんて、よほどのことがあったのだろうか。
「
俺はすぐに場所を確認してアリアに伝える。
『ちょうどいいわ。武装して女子寮の屋上に来て。今すぐに』
「……何があった?」
俺の問いにアリアは簡単に答える。
『事件よ。武偵殺しが現れたわ』
「ッ!?」
とうとう来た。
『武偵殺しがバスジャックを起こしたの。みんなにも連絡したから翔も来て』
「わかった。すぐ向か―――えなさそう」
いつの間にかゾンビのような奴らに囲まれていた。気が付かなかったのも無理はない。こいつらは現れたのではなく、出現したのだ。俺以外の誰かが作り出したゲームエリア内に。
俺を取り囲んだのはゾンビのような装いのバグスターウイルス。
つまり、ゾンビゲーマーレベルXが作り出したバグスターウイルスだ。
「……先に行ってくれ。後から追いかける」
《ど、どうしたの? 何があったの?》
「悪い、武偵殺しのオモチャに囲まれたんだ」
武偵殺しはこの世界ではゲンムになれる。もしくはその力を持っている奴が力を貸しているんだ。
「こっちを片付けたらすぐそっちに向かうから。そっちはそっちで、バスジャックを解決してくれ」
《でも……!? 》
「……武偵憲章1条は?」
《……仲間を信じ、仲間を助けよ?》
「そういうことだ」
声が重なった。
「これが終わったら、すぐに助けに行くから」
『それはこっちの台詞よ』
「そう? じゃあ、また後で」
電話を切り、ガシャットギアデュアルを取り出す。
《PERFECT PUZZLE》
《What's the next stage?》
《Dual up!》
《Get the glory in the chain! PERFECT PUZZLE!》
「ちゃっちゃと片付けようか」
不死身のゾンビ。どこに本体がいるのかはわからないが、こんな雑魚だけをよこしても意味がないことを教えてやろう。
指を鳴らす。
すると、すべてのバグスターウイルスが消え去った。
ま、こんなもんだ。レベル50を舐めないでいただきたい。
……で、ゲンム本体は?
雪菜、クロ、アスナ、アリアは女子寮の屋上に集合していた。着陸していたヘリコプターに乗り込み、アリアが事件の説明をする。
「えっ!?」
そして、翔が襲われていることを聞く。
「多分、翔のパワードスーツが計画に邪魔だったのね。現場に行けないように、時間稼ぎしてるのよ」
「で、でも、私たちはそのこと誰にもしゃべってないし……」
「調べる気があれば簡単に調べられるのよ。この島、道沿いにたくさん監視カメラあるんだから。武偵ならすぐよ。武偵殺しができないわけがない」
誰にもしゃべらなければ隠し通せるほど、武偵は甘くないということだ。
「………犯人は車内にいるんですの?」
「たぶんそれは無いわ。バスには爆弾が仕掛けられてるから」
狙われたのは通学バス。中にはたくさんの子供が乗っている。
「もう武偵殺しの好きにはさせないわ」
アリアの言葉にみんなが頷いた。
「作戦を言うわ。あたしと雪菜、アスナがバスに乗り込み人質の救助と爆弾の解除。クロと狂三はヘリから援護して頂戴」
「あらあら、わたくし、ここにいたままでは、あまりお役に立てないかもしれませんわ」
「今回はいいわ。あんたの力はもう少し使うところを考えるから」
実は狂三は自身の精霊の力を100%出せるわけではない。この世界の力を受けたのか、空を飛ぶことができず、原作でいうところの限定霊装しか使用することができない。
さらには
アリアはこのことあらかじめ聞いていたため、特に目立った遠距離攻撃の手段を持たない(
残りは単純に近距離攻撃の雪菜とアスナ、遠距離もこなすことができるクロ、とこの一週間で得た情報をもとに最適な陣形を組んだ。
雪菜は雪霞狼、アスナも
しばらくヘリに揺られていると、ヘリの操縦者がバスを見つけた。
「見えました! あれです!」
その言葉に従うと、町中にもかかわらず、猛スピードを出すバスが目に飛び込んできた。
「私たちが一番乗りね」
この事件は発生と同時に情報が公開され、動ける武偵はすぐに準備を開始していた。が、その前から網を張っていたアリアが一歩早かった。
通行止めになっているため、バスはスムーズに道を走っている。通行人ももちろんいないため、多少無茶な運転をしても大丈夫だ。
雪菜とアスナ、アリアは強襲用のパラシュートを使ってバスの屋根に降り立った。
「二人は中に行って。私は車の外側に爆弾がないか調べてみるわ」
「こんなにスピードを出してるんですよ!?」
走行中に車の外側を調べると言い出したアリアをたまらず制止する雪菜。しかしアリアは何でもないように言い返した。
「仕方ないわ。この人数を外に運ぶわけにはいかないもの。場合によってはすぐに解体しないと大変なことになるかもしれないわ」
「それは……! そう、ですけど……っ」
まだ納得してない雪菜にアリアは、
「ああもう! 武偵憲章1条!」
「……仲間を信じ、仲間を助けよ、です」
「そういうことよ。わかった?」
「……はい」
その答えを聞くとアリアはすぐに調べに行った。
「……それじゃあ、私たちも行こうか」
「アスナさんは平気なんですか?」
「……こういうことをやってると、どんなに準備しても、どんなに作戦を立てても、危険をゼロにはできないから。ここにいるみんなのことと、私たちができることを考えて、一番いい作戦を決めたら、あとはみんなを信じるんだよ。信じなきゃいけないの」
それはアスナの体に刻まれている血盟騎士団副団長として出た言葉だった。
「私たちは私たちで、精一杯がんばろ?」
「……はい!」
その言葉にようやく雪菜が顔を上げた。
2人は素早く窓から中を覗き込み、犯人がいないことを確認、開けてもらった窓から、車内へ入った。
するとすぐに女の子が携帯電話を差し出してきた。
「どうしたの?」
「あ、あの……っ、私の携帯が、気が付いたら私のじゃなくなってて……っ!」
《速度 ヲ 落とす ト 爆発 シヤガリマス》
すり替えられた携帯電話から機械染みた声が聞こえる。
アスナは連絡用のインカムに手を当てる。
「アリアちゃんの言った通りだよ。バスの爆弾は遠隔操作されてるみたい。そっちはどう?」
《こっちも見つけたわ! 爆弾よ!》
「どこ!?」
《バスの下よ! この量……武偵殺しは電車でも吹っ飛ばすつもりかしらね!!》
その意味を理解し顔を白くさせるアスナ。
《今から潜り込んで解体を―――》
「みんな伏せて!!!!!」
雪菜が叫んだ次の瞬間、大通りにつながる道から、6台のゼグウェイが飛び出してきた。もちろん無人で台座には機関銃が取り付けられている。
それらが一斉に火を噴いた。
壁面は特殊な構造になっているため弾丸はめり込むだけだったが、バスの防弾ガラスが無数の銃弾ですべて粉々になる。
銃撃がやむ。ヘリの中にいるクロが狙撃したのだ。
雪菜の指示のおかげで直接当たった子供はいなかったが、ガラスの破片が降り注いだことで、車内はパニックになる。
雪菜とアスナは何とかみんなを落ち着かせようとする。が、バスが妙な動きをしていた。まるで酔っぱらっているかのように蛇行しているのだ。
運転手を見ると負傷していた。運転手は雪菜の指示通り伏せることができなかったのだ。右腕に当たったようで脂汗を流していた。
「私が代わります!」
「うん、お願い。アリアちゃん、そっちは大丈夫? ……アリアちゃん?」
アスナが問いかけるが、インカムからは何も帰ってこない。
まさか、と思ったアスナはバスの窓から体を出し、屋根に上がった。そこには、ちょうど屋根に上ったアリアがいた。
「アリアちゃん! 大丈夫!?」
「アスナ!? どうして来たの!?」
「インカムから返事がなかったからだよ! 大丈夫なの!?」
「ええ。銃撃で車が揺れたときに頭ぶつけてね。その衝撃でとれたのよ。それより外は危ないわ。爆弾の場所は分かったけど、あんな妨害があったんじゃ解体なんてできない。中で待機して―――後ろ! 早く伏せて!」
「え?」
アスナの後ろ、新たにセグウェイが4台脇道から現れた。そして銃座の銃はアスナを狙っていた。
ガガガガガガガッ!!!
4つの銃が同時に放たれたことによる音がアスナとアリアを襲う。いくらアスナといえども、銃弾を切り払うことはできない。どっかの黒の剣士のようにはいかないのだ。
それでも超人的な反射速度でレイピアを抜きかけているのは流石だが、間に合わない。
アリアが急いでアスナを押し倒そうと駆け寄る。
「え」
目の前に何かが降り立った。
それが盾となって銃弾をはじいた。
そのおかげで、2人は無傷だ。
「ごめん。遅くなった」
軽い様子で手を挙げる。
「翔!」
2人の目の前には、パラドクスに変身した翔が立っていた。
何とか間に合った。
あの後、ゲンムの本体が襲ってくるのではないかと思い2~3分無駄に警戒してしまった。それでも何もなかったため、いくらなんでもおかしいと思った俺は、すぐにアリアに指定された場所に向かった。
でもその時は、すでに出発した後。仕方なく走ってここまで来たというわけだ。
「翔、あんた―――」
「あれ、壊してくる」
《伸縮化》
俺はエナジーアイテムを取得してバスを飛び下りる。腕を某ゴム人間のように伸ばし、
「
加速した。
高速化のエナジーアイテムを使わなかったのは、ここまでで使ってきたためだ。
伸ばした腕を振り回して、銃を支えている骨組みをへし折る。こうしてしまえば、こいつは無力だ。
火花を散らしながら着地しつつ、そんなことを思う。
と、セグウェイが起爆した。
「うわぁぁぁぁぁ!!??」
油断しきっていた俺は視界が一気に真っ赤になったことに驚く、ダメージはないけど。
ば、爆弾ですか。そうですね、忘れてました。爆弾は武偵殺しの十八番でしたね。
「ええ……」
やかましい音が聞こえてきたと思ったら、頭上にヘリが近づいていた。しかも見る限り無人の。翼にはミサイルが装填されているようにも見える。多銃身機関銃も回転数を上げている。
どう見ても味方じゃない。
さっきから俺に対する殺意が高すぎる気がするんですが気のせいですか?
《鋼鉄化》
「くぅ……っ!」
防御力を上げるが、ミサイルを完全には無力化できない。何とか耐えきり、
《ジャンプ強化》
《マッスル化》
ヘリが飛ぶ空中までジャンプ。フロントガラスを破り内部に手を入れ、操縦席の計器ごと、ヘリの前側を引きちぎった。
コントロールを失ったヘリは道路に墜落していく。周りの建物も道路も、結構壊されてるんだけど、これ俺に請求来たりしないんだよな。
どうでもいいことを考えながら、俺はバスに向かって走り出した。
一方、バスの上ではアリアの大立ち回りが始まっていた。
追加で現れるセグウェイの車輪を現れたそばから打ち抜き、攻撃を許さない。それでも強引に銃を撃とうとする場合は、空からのクロの狙撃ですべて破壊される。
「あのクロって娘、いったい何者なの? あの年でこの技術って……」
「……そういえば、私も詳しくは知らないかも……あ!」
攻撃の最中、こんな雑談をする余裕すらある。と、こちらにも、翔が倒したのと同じヘリが現れた。
銃弾では厳しいと瞬時に判断したアスナは、レイピアを抜き飛び上がった。まさに閃光のような一突きで、ヘリを落としてしまう。
「……あんたも大概よね」
着地したアスナにアリアは顔を引きつらせる。
《あーちょっと? 二人とも聞こえるかしら? 今からそのバス、大きな橋の上を通るから、私が狙撃して爆弾を海に落とすからね》
「「え?」」
突然のインカムからの通信。しかも、内容を理解できない。狙撃して爆弾を海に落とすというのは一体どういうことか。
「ちょ、ちょっと!? それってどういうこと!?」
質問している間にも、バスは橋に差し掛かる。
《え? どういうことって―――こういうことよ!!》
神業だった。
クロの射た矢は銃弾を超えるスピードをたたき出し、爆弾を固定している金属だけを破壊した。
支えがなくなった爆弾は当然地面に落下する。
その落下した爆弾をいつの間にやってきていたのか、パラドクスが橋の外に全力で投げ捨てた。
センサーが感知し爆弾が爆発するが、そこは誰もいない空中。爆弾による死傷者はゼロだ。
《ふぅー、さすがお兄ちゃん。タイミングばっちり》
こうして事件は終わりを告げた。