「良かったです。すぐに合流出来て」
「はい……本当に助かりました。ありがとうございます、聖天使様」
こうして落ち着くのは、今日何度目か分からない。
雪菜に制服を渡し、ララには新しい服を、ペケが作ったナノマシンの服ではなく、普通の防弾繊維で出来た服を買って、着てもらった。
お店にも説明は済ませたし、一件落着だ。ただ、時間がかかり過ぎたせいで、時刻は午後3時を過ぎてしまっている。
この時間から試合を見に行っても、ほとんど終了してしまっているだろう。それに、ララも無事に送り届けなければならない。護衛から無理やり引っ張ってきてしまった責任がある。
「えー? 私まだ帰らないよー!」
「そんなこと言わないで下さいよ。護衛の人もお父さんもお母さんも心配してますから」
駄々をこねるララ。こっちも簡単に言うことを聞いてくれるとは思っていないけど。俺たちから逃げられても困る。
「というか、どうして先輩はお店の外で待ってたんですか?」
「無用なトラブルはご免だったから」
俺が行くと絶対に何か起こる。そんな予感がしたんだ。
でも、そう思って残ったのは間違いないけど、それ以上の相手が俺に近づいてきた。
「先輩? どうしましたか?」
「……や、何でもないよ」
この場で話すことじゃない。言っても混乱させるだけだろうしな。とにかく、何かあったら頼りになるのは間違いない。
これが門矢士じゃなくて他のライダーでも、この安心感を得られるんだろう。
「本物のヒーローってことか……」
まさにレジェンド。次に会ったらサイン貰わないと……そんな暇あるかな。絶対、戦いになってるだろうからなぁ。
「じゃあそろそろ、デビルークの大使館に連絡を取りますか」
「だーかーらー、私は帰らないって」
「ララさん? 本当に、我が儘を言うのはやめましょう? 何かあってからでは遅いですし」
「それに帰らないというのは……今夜は何処に泊まるおつもりなのですか?」
聖天子様とコッコロも説得するがまるで効果が無い。
「いーの、いーの! 私良いこと思い付いたから!」
「いいこと、ですか?」
雪菜が首を傾げ、その先を聞こうとする、その時だった。
「ようやく見つけましたよ! ララ様っ!!」
「お」
この耳に残る超ベテラン声優のボイスは。
俺が目を向けると、部下を引き連れた長身かつイケメンの男性。俺の知っている男だ。
「あっ、ザスティン!!」
ララの声に聖天子様が立ち上がる。
「誰でしょうか?」
「デビルーク王室、親衛隊隊長。多分ララを連れ戻しに来たんだ」
雪菜の質問に小声で答える。
この圧。原作では残念キャラになってしまったザスティンだが、伊達に王室親衛隊の隊長ではない。偽物かと疑う方がバカだ。
後ろにいる部下の中には、先ほど雪菜がぶっ飛ばした人達がいる。
「学園島日本代表、聖天子です」
「聖天子様。この度はララ様を保護して頂き、ありがとうございます」
「いえ。こちらもララ様を無事にお引渡しすることが出来て良かったです」
ここはお互い、余計なことは言わず聞かずで終わらせるつもりなんだな。詳しく突かないほうが賢明なんだろう。
俺たちがララを連れ去ってしまったことも、王室の護衛が簡単にララを連れ去られてしまったことも。
お互いお辞儀をすると、ザスティンはこちらに、席に座っているララに歩み寄ってくる。
「さあ、ララ様! 私達と共に帰りましょう!」
「いーっ、だ! 私帰らないもんね! 帰れない理由が出来たんだから!」
「……帰れない理由とは?」
「主様? 何処に行かれるのですか?」
「や、ちょっとトイレに」
身の危険を感じた俺は、自然な流れで席を立とうとする。この流れ、どこかで見たことがある。原作とは全く状況が違うし、そんなフラグは全然立ってなかったんだけど。
しかしそれでも、『流れ』はある。その『流れ』に乗せられてしまっている。
その流れから何とか脱出を―――
「私、ここにいる翔の事、好きになったの!」
「「「はっ―――?」」」
出来なかった。
繋がりは持っておきたいとは思ったけど、出会って1日でここまで濃密なつながりが欲しいとは思っていない!
ただでさえ色々あってキャパオーバー寸前なのに、この上さらにデビルークだと!?
「だから翔と結婚してここで暮らす! だから帰らない!」
俺が口を挟む暇も無く、ララは自分の決意を高らかに叫んでいた。
その音量に、通行人が全員こちらを見る。こんな道端で結婚だなんて、気にしないほうが難しい。
「なるほど、そういう事ですか……」
そして素直に頷き始めるザスティン。
何故そこでもっと疑わないのか。ララの性格的に、そのくらい唐突な、突拍子もない行動は日常茶飯事なのかもしれない。
「わかったら帰ってパパに伝えて! 私はもう帰らないし、お見合いする気も無いって」
「……、……、はっ! ララさん!? いったい何を言ってるんですか!? こんなに突然!」
フリーズから復帰した雪菜がツッコむ。
「ごめんね、雪菜。でも大丈夫だから」
「何も大丈夫じゃありませんよ!?」
「考えってもしかして、翔さんの家に泊まるってことだったんですか……?」
聖天子様はまさかと問いかけると、返ってきたのは満面の笑みと肯定だった。
「もちろん! だって結婚するもんね! だったら、別に一緒に住んでも問題ないでしょ!」
「あります!」
「それに主様の家には、今でもたくさんの女性が一緒に住んでおりますし……」
「え、夜月さん……?」
「シェアハウスです! シェアハウスですよ聖天子様!」
聖天子様の訝しげな視線を、何とか躱す。
「そーなんだ! じゃあ私1人が増えても全然大丈夫だね!」
「大丈夫じゃありませんって!!」
もはや誰の声にも耳を貸さないララ。本当にわがままなお姫様だ。
「……ララ様、もしかしてですが、このペケ、ララ様の魂胆が見えてしまったような……」
節電モードで今まで黙っていたペケが口を開く。
「ちょっとペケ、変なこと言わないでよ。私は本当に翔のことが好きなんだから」
ララの魂胆は俺も知っている。
原作でも主人公、結城リトに対して同じことをしていた。
好きな人が出来たことを理由として、王族としての窮屈な暮らし、様々なお勉強、お見合いから解放されようというのだ。
問題は、何で大したフラグも立てていない俺がその相手に選ばれたのかだ。誰でも良かったっちゃあ、そうなんだろうけど。
まあ手ごろな相手だったんだろうな。
だが、結婚すると言われてこの場から離れられる訳がない。自分のいないところで話が進むのは困るし、そもそも俺がどこかに行ってしまわないように、ザスティンの部下達が道を塞ぎ始めている。
「ですが、このまま帰る訳にはいきません」
黙って考え込んでいたザスティンが口を開いた。
「このザスティン、得体の知れない人物との結婚を認めて帰っては、王に会わせる顔が無い。それに結婚するというのなら、それは国に関わることです。ララ様の意志が固いというのなら、王に挨拶していただかなくては」
そりゃそうだ。
「えー……」
明らかにララのテンションが下がった。
「当たり前でしょう。認められれば国に来ていただき、王としての帝王学を身につけなければなりません。見たところ彼は一般市民。そもそもデビルークの王の器かどうかも分かりません」
「じゃあどーすればいいの? 翔はここで暮らしたいって言ってるよ?」
「そりゃ言うけどさ……」
でもそれは、さ? 結婚云々は全然意識の外なんですが?
それに、俺がここで暮らしたいって言うよりも、ララが王宮を離れたいって気持ちの方が大きいんじゃないのか?
「ふむ……」
ザスティンが俺をジロリと睨んでくる。
「貴様も、本当にララ様と結婚したいというなら、その気概を私に見せてみろ。王へ紹介するに値するのか、この場で試させてもらうぞ」
「や、あのですね? これは―――」
言うよりも早く、剣閃が俺を襲った。
「ほう……!」
「こう言っちゃなんだけどな……!」
「正直あんたのことを見た時から、こうなるんじゃないかと思ってたよ!」
「一度も顔を合わせたことは無かったはずだがな!」
そのまま力で押し切られ、宙に飛ばされる。
「やっべぇ! マジで殺すつもりか!」
「相手は本気だ。手ごわいぞ」
セットアップしたレプリカ先生も、厳しめの口調で忠告してくる。
下手なサーヴァントよりも強いかもしれんぞ。デビルークの王室護衛はやっぱり格が違う。
「あれは魔法ではないな。魔術でもないだろう」
「超能力でもない。デビルーク人の血筋ってわけだ!」
ホットスポット上にあるデビルーク王国。そこの人たちは普通のホモサピエンスにはない尻尾と、未知のスーパーパワーを持っている。
それに加えて科学力もあるというのだからとんでもない。
「未知の力には未知の力で対応するしかないな!」
「君の持っている力は、ほとんどが未知の力だと思うが……」
「細かいところは気にするな!」
俺は家の格納庫にアクセスする。
「どうした! 来なければこちらから……む?」
ザスティンの体にバインドが巻き付く。レプリカでコピーした魔法だ。
「なんて貧弱な魔法だ……この程度か」
「ザスティンさん! やめてください! こんな場所で……! それにあの方はわたしの護衛です! ケガをさせられては明日以降に支障が……!」
「ご安心を、聖天子様。すでに結界は張ってあります」
気が付いた時には、関係者を残して人はいなくなっていた。
「お前たちは手を出すな。皆さんを安全なところへ」
「「「はっ!!!」」」
部下達は反重力装置を使いふわりと浮かんだ。雪菜たちも一緒に、手ごろなビルの屋上へ移動する。
「ずいぶんと優しいな。他の人を巻き込まないようにしてくれるなんてよ」
「当たり前だ。王と会わせるのかを決める大事な儀式。生半可な気持ちでは、ケガでは済まんぞッ!!」
本当はこっちの話を聞いてほしいんだけど……コイツは一回落ち着かせないとだな!
「行くぞッ!!」
「ああ―――オープン・ゲットッ!!」
「ッ!?」
俺の背後から3機のマシンが現れる。3色の小型の飛行機だ。
ゲットマシン(イーグル号)(初代)
ゲッターロボを構成する3機のマシンの1つ。3機が変形合体することで、ゲッター線を動力にするスーパーロボット『ゲッターロボ』になる。
例によって体に纏うタイプのパワードスーツになっている。合体した時の大きさは2メートルほど。
ゲットマシン(ジャガー号)(初代)
ゲッターロボを構成する3機のマシンの1つ。3機が変形合体することで、ゲッター線を動力にするスーパーロボット『ゲッターロボ』になる。
ゲットマシン(ベアー号)(初代)
ゲッターロボを構成する3機のマシンの1つ。3機が変形合体することで、ゲッター線を動力にするスーパーロボット『ゲッターロボ』になる。
サイドバッシャー
仮面ライダーカイザの専用マシン。
普段はサイドカー付きのバイクだが、変形することでバトルモードになることが出来る。
予選突破のご褒美で手に入れたアイテム。6つの内の4つ。後の2つはあげてしまったので、もう手元には無い。
今回はこいつで行くッ!
「チェンジ、ゲッターッ!!!」
3機のゲットマシンが変形し、俺の体を包むように合体していく。迸るゲッター線が3機それぞれの金属に作用。成長進化させることで、まるで粘土の様に形を変える。
「
完成したのはゲッターロボの第1形態。ゲッター1。赤い装甲に、同色のゲッターウイングがまるでマントの様にはためいている。
「機械仕掛けのロボットかッ!!」
「ただのロボットだと思うなよ!! スーパーロボットだッ!! ゲッタァァァトマホォォォクッ!!!」
肩から飛び出す無骨な斧。ゲッターロボの象徴ともいえる武器、ゲッタートマホークだ。
互いの獲物が交錯する。
叩きつけるような豪快なスイングが、トマホークに乗せられる。単純な鉄板なら容易に斬り裂けるだろうザスティンの剣を、しっかりと受け止める。
パワーも十分ザスティンと渡り合えている。
「なるほど、良い機体のようだな!」
「そいつは―――どうもッ!!」
力任せに腕を振りぬいた。
ザスティンはその力に逆らわず後ろに下がった。
「トマホォォォォク、ブゥゥゥゥメラン!!!」
「武器を投げるとは愚かな!」
剣を一振りしただけで、ブーメランを叩き落とすザスティン。
愚直に向かって来るザスティンに対し、俺はニヤリと笑った。
「オープン・ゲットッ!!」
俺の体に合体していたゲットマシンが分離し、ザスティンに殺到する。同時に浮遊能力を失った俺が、地上に落下し始めた。
「ザケルッ!!」
電撃を放ち、ゲットマシンが再び集まるまでの時間を稼ぐ。
「チェンジ、ゲッター―――
再び集まるゲットマシン。着地までのわずかな時間で変形合体する。しかしその姿は、ゲッター1ではない。左手に巨大なドリルを携えたゲッター2だ。
ゲッターの陸戦形態。超スピードで地上を駆け回り、右手のパワーアームと左手のドリルで敵を粉砕する。
ドリルなんてものを獲物にしている相手なんて、そうそう相手にすることは無い。唸りを上げるドリルの連続突きに、ザスティンはしかめっ面だ。
向こうからの反撃の気配を感じると、すぐさま距離を取り、再度突撃する。
地上を走破するそのスピードは、明らかに俺の方が早い。しかし攻めきれない。
「スピードはあるがパワーが足りてないなッ!!」
「パワーが見たいっていうなら―――オープン・ゲットッ!!」
あくまで俺の力を見るつもりなのか、今度は変形を待ってくれるザスティン。
「チェンジ、ゲッター―――
またしても形態が変わる。
ゲッター3。2本足ではなくキャタピラを装備した水中戦形態だが、ゲッター随一の力を持つ。
自在に伸びる腕がザスティンをからめとった。剣を振りかぶっていた腕も、拘束から逃れようとする足も、全て抑え込んだ。
抵抗を物ともせずに持ち上げ、
「うおおぉぉぉぉ!?」
そのまま宙へ放り投げる。
「オープン・ゲットッ!! チェェェェェェェンジ、ゲッタァァァァァァ―――
もう一度ゲッター1に変身する。空を飛び追撃するのではなく、ゲッターの必殺攻撃を放つ。
「ゲッタァァァビィィィィィム!!」
ゲッター1の腹部から、収束されたゲッター線が発射された。
「うぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
ザスティンは投げられる中でも態勢を整え、剣を振りかぶり、あろうことかビームを斬り裂いた。
「ぐうううぅぅぅぅぅッ!!!」
少し焼け焦げているが、2本の足でしっかりと着地した。
「その程度か……!」
「上等。だったらここからは闇の魔法も追加して―――」
「ザスティン、ストーーーップ!!!」
「ぷげっ!?」
「あー……」
ララの静止の声が、というか、静止のタックルが入った。
「もうやめて。分かったから、今日はもう帰るから」
「わ、分かっていただけたのなら、よかった、です……!」
今のあなたの一撃で結構ヤバ目だと思うけど。な、なんてパワーだ……ゲッタービームよりも強いんじゃないか?
「翔も、今日はゴメンね」
ララの一言で、この戦いは終わりを迎えるのだった。
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「皆さん、お騒がせいたしました」
「それじゃあみんな、またね!!」
ザスティンは頭を下げ、ララは手を振りながらその場を去っていった。
「お姫さまっていうのは、皆さんあんな感じなんでしょうか……?」
「さあね……」
絶対に今日一番疲れただろう雪菜が、その疲れを言葉にしてくる。
サンプルケースが少ないとはいえ、今月に入って知り合ったお姫様がみんなあんな感じだからな。
それにしても。
「ううん……」
またね、かぁ。
そんなことを思いつつ、今日の護衛任務は終了するのだった。