※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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インターミドル ヴィヴィオVSミウラ 後編

ミウラは踏み込むのではなく、その場で足を振りかぶった。

 

「抜剣、飛竜ッ!!」

 

それは足で放つ『飛ぶ斬撃』だ。衝撃波に収束魔力が乗せられている。

 

ヴィヴィオはしっかりと見切り、回転して避ける。

 

「ディバイン―――」

「ッ!!」

 

前に、前に出ていたミウラの回転蹴りが、チャージされていた魔力を発射前に霧散させた。

 

回転の勢いのままに繰り出すのは、収束拳打の拳である。クロスする腕に命中する。

 

しかし、

 

「(効いてない!?)」

 

ライフはあまり削れない。何度打ち込んでもガードを外せる気配がない。

 

これはヴィヴィオの技術だった。セイクリッド・ディフェンダーだけでなく、体を使ってうまく衝撃を逃がしている。

 

焦った攻撃を続けていれば、

 

「そこッ!!」

「ッ!? う、ぐ……!」

 

ヴィヴィオのカウンターが飛んでくる。攻撃ばかりで防御がおろそかになっていた顔面への膝蹴りだ。ギリギリまで耐えた分、ダメージも大きい。

 

「(しまった……! 焦りすぎだ! 一度離れて―――)」

 

ヴィヴィオのカウンターに逃げ腰になったミウラだが、後ろに下がる速度が遅すぎる。前に出るのとは勝手が違うのだ。

 

「アクセルスマッシュ!!」

 

ヴィヴィオの拳が顔面を捉えた。

 

《直撃! 直撃です!! ミウラ選手まともに喰らい―――ヴィヴィオ選手の連撃が止まらない! もはや立っているのがやっとなのか!!》

 

かろうじて防御はしているが、勢いがなくなってしまった。

 

「(開いた! これで……!)」

 

ガードを外し、顎まで一直線の道が出来る。

 

自分が絶対の信頼を置くアッパーカット。必殺の意志を持って放つ。

 

それが――――――ミウラに受け止められていた。しっかりと掴まれ、逃げることが出来ない。

 

「欲しかったのは、この距離です……!」

 

目が合った瞬間、ヴィヴィオの背中に冷たい汗が噴き出す。

 

今度誘い込まれたのはヴィヴィオの方だった。

 

ミウラの蹴りが、左腕ごと胴体を切り裂く。

 

「……ッ!!!」

 

《こ、これは強烈!! 相手のお株を奪うような強烈なカウンターだ!! ヴィヴィオ選手に深刻なクラッシュが発生しています!!》

 

左腕には亀裂骨折。肋骨は3本ほど折れてしまっている。

 

それに伴う痛みの再現も抜かりはない。シミュレートとはいえ、激痛が走っていた。

 

「(左手はほとんど動かない。泣きたいくらい痛いし、魔力も、もうほとんど空っぽ―――でも、最後の一撃分は残してある……ッ!!)」

 

感覚が鈍い左腕に魔力を通し、何とか動かす。唇を噛みしめて、構えを取る。続行の意思表示だ。

 

「行けるね、クリス。最後の必殺技! 右手に全部の魔力を集めて!」

 

その様子を見たミウラは、胸の高鳴りを抑えられなかった。

 

「(ヴィヴィオさんは本当にすごい。こんな強い人に勝てたら、僕はもっと……)」

「(ミウラさんの一撃にカウンターを―――『ブレイザー』を打ち込む!)」

 

これが本当に最後だ。

 

「(これで決めます!)」

「(撃ち抜いて見せる!)」

 

小細工はない。一直線に距離を詰める2人。

 

ぶつかり合い、そして――――――ミウラの蹴りが外れた。身をかがめたヴィヴィオの頭すれすれを空振りする。

 

「避けた!?」

「決まる!!」

 

両セコンドは思わず声を漏らしていた。

 

ヴィヴィオの残り魔力全てを集めた拳が、光り輝く。

 

「一閃必中ッ!! アクセル―――っ、ぅ!!」

 

拳とは腕だけで放つものではない。体全体を使うものだ。それが決め技ともなればなおさら。

 

折れた肋骨のシミュレートで、一瞬だけ体の動きが鈍ってしまう。力がうまく乗り切らない。踏み込みも甘い。

 

命中はするが、意識も、ライフも、どちらも持って行くには足りない。しかしヴィヴィオの体は、これ以上動いてくれそうにない。

 

「一閃ッ!! 必堕ッ!!」

 

試合の流れは決まった。

 

「天衝星煌刃!!!」

 

星の蹴打を食らったヴィヴィオは意識を手放し、その体はリングの壁に叩きつけられた。

 

《決着! 3ラウンド残り10秒! 格闘技対決はミウラ選手に軍配が上がりましたァ!!》

 

――――――チャリン、チャリン

 

会場が大歓声に包まれる。その熱量は、もはやトップ選手と比べても遜色ないものになっていた。

 

いや、事実ミウラはすでにトップ選手に片足を突っ込んでいる。1回戦の時点で、トップ選手だったミカヤを下しているのだ。

 

そのミウラと良い勝負をしたヴィヴィオも、もはや無視できる選手では―――

 

《……と? どうしたのでしょうか。セコンドとドクターが何か……》

 

試合内容の興奮のままにしゃべっていたセコンドは、リングの様子を見て口調を変える。

 

リングでは、倒れたまま立ち上がらないヴィヴィオに、クロたちだけでなく控えていたドクターたちも集まっていた。

 

ドクターが何やら指示を飛ばすと、奥から担架が運ばれてくる。

 

倒された選手が起き上がらないことはあったが、ここまで言い争うということは無かった。

 

つまり、何かがあったということだ。

 

《ヴィヴィオ選手の安否が気遣われます―――!》

 

盛りあがっていた会場だったが、一気にその温度が下がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「心拍、脳波レベル正常。リンカーコアにも影響なし」

 

シャマルは自分のデバイスを操作しつつ続ける。

 

「ただし体の残存魔力は無し。脳震盪と体力と魔力の限界消費による一時的な昏睡……つまり、全力を出して疲れちゃったのね。治癒の魔法はかけたからもう大丈夫よ」

 

その言葉を聞いて、なのは達は胸を撫で下ろした。

 

あの後、ヴィヴィオは医務室に運ばれた。

 

観客席にいたなのは達は、全員で医務室に向かった。あわや病院に搬送するとかいうところで、シャマルが管理局員の手帳を提示。治癒に長けた彼女が診察を行ったのである。

 

「ありがとうございます、シャマル先生」

「いえいえ」

 

なのはとフェイトが頭を下げると、シャマルはやんわりと手を振った。

 

「あれ? それならどうして変身魔法は解除されないの?」

 

ベッドで横になるヴィヴィオはいまだに大人モードのまま、BJも解除していない。

 

「あ、それはね。クリスが非常防御モードのまま機能が停止しちゃってるの。ミウラちゃんの星煌刃を防ぐのに、機能維持のための予備魔力も使っちゃったんだと思う。そろそろ、復帰すると思うわよ」

 

その言葉通り、すぐにヴィヴィオの胸のあたりが光った。次の瞬間には、ヴィヴィオのいたるところは元の大きさに縮み、融合していたクリスが平らな胸の上でお座りしていた。

 

なのはがクリスをそっと抱きあげる。

 

「お疲れ様、クリス。ヴィヴィオを守ってくれてありがとうね」

 

優しい言葉に、しかしうさ耳は垂れ下がっている。全力を尽くしても守り切れなかったことを悔いているのだ。

 

「そんなに落ち込まないで。ヴィヴィオはすぐに元気になるから」

 

フェイトも頭を撫でた。

 

その様子を見たクロはもう大丈夫だと判断した。

 

「……それじゃ、みんなに伝えてくるから。ヴィヴィオもクリスも無事だって」

「大人やなぁ、クロちゃんは。あ、私も行くよ」

「私は係の人に伝えてくるね」

 

クロ、はやて、フェイトが部屋を出ていく。

 

「一応、近くの病院に精密検査の予約を入れてくるわね。なのはちゃんは、ついててあげてくれる?」

「はい、わかりました」

 

そう言ってシャマルは部屋を出ていった。

 

残ったのは、なのはだけだ。

 

椅子に腰かけ、眠るヴィヴィオに優しく語りかける。

 

「心配したけど、無事でよかった。立派だったよ、ヴィヴィオ」

「……」

「そんなところにいないで、部屋に入ってきたらどう?」

 

数秒ののち、控えめにドアがスライドした。

 

「応援に来てくれてたんだね、ヤミちゃん」

「……はい」

 

こっそりだが、ヤミはずっと応援に来ていた。ヴィヴィオの試合だけではなく、チームナカジマ全員の試合を、予選からずっと。

 

毎日練習に付き合っていれば、ヴィヴィオ以外の女の子も応援したいと思ってもおかしくない。

 

あのヤミがしっかりと応援に来ているのが何よりの証拠だ。

 

「ヴィヴィオ、頑張ったね」

「……そう、ですね」

 

練習を近くで見てきたヤミだったが、まだ戦闘を競技にするという感覚に慣れることが出来ないでいた。

 

そのせいであいまいな返しになる。

 

なのはもそれを理解しているのか、それ以上は何も言わない。

 

「ヴィヴィオ」

「っ!」

 

目を開けるヴィヴィオを、なのはは穏やかな声で迎える。ヤミは口から洩れかけた声を飲み込む。

 

「ママ……ヤミさんも……えへへ、負けちゃった……」

「うんうん。頑張ったね。立派だったよ」

「……はい。よく頑張りました」

 

ヴィヴィオは悔しいだろうに、それでもすべてを出し切った笑顔を浮かべている。

 

そこにもう1組、病室を訪ねてくる女の子達がいた。

 

「あ、あの……!」

「よう……」

 

俯き、目尻に涙を溜めたミウラと、その後ろで済まなそうな顔をしているヴィータだ。

 

「あっ! ミウラさん!」

 

その姿を見つけると、ヴィヴィオはベッドから飛び上がった。ミウラの手をみぎり、手をぶんぶんと振る。

 

「ありがとうございました! いい試合でしたね!」

「ぁ、ぇ?」

 

思った以上に元気だったヴィヴィオに、目を白黒させるミウラ。

 

「色々気にしてたんだが、大丈夫そうだな」

「だね」

 

ヴィータとなのはは頷き合う。

 

「ヤミさん! 行きましょう! みんなの試合が残ってます!」

「え、わ、私も一緒に行くんですか?」

「もちろん! ヤミさんも、ミウラさんも一緒ですよ! みんなで応援に行きましょう!」

元気を取り戻したヴィヴィオに引っ張られ、全員そろって試合会場に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

《次の試合に参りましょう。独特の魔法技術と格闘戦技『春光拳』の使い手。規格外のルーキーの揃うチームナカジマのメンバー、リオ・ウェズリー選手!!》

 

一方こちらは会場、リング。ヴィヴィオが担架で運ばれるという非常事態はあったが、それはそれ。その程度で大会の進行を止める訳にはいかない。

 

セコンドのディードと共に入場するリオだったが、その顔は暗い。

 

《迎え撃つは押しも押されぬトップファイター、砲撃番長(バスターヘッド)、ハリー・トライベッカ選手ッ!!》

 

片手をあげて歓声にこたえるハリー。その顔は引き締まっているが、内心ではリオに対して複雑な感情を持っていた。

 

「仲間が意識不明……アイツ、気が気じゃねーだろうな……」

「誰にでも優しいのはリーダーの素敵なとこッスけど……」

「ダメですよ! 試合に集中しないと!」

 

いつもハリーを取り巻き、大会ではセコンドも務めている一昔前の暴走族風の少女に、気のゆるみを注意される。

 

「本戦では雷帝のお嬢様やジークさんが待ってるんですから!」

「分かってるよ!! 心配すんな! 手ェ抜いたりはしねぇからよ!」

 

2人はリングに登り、試合が始まる―――その直前、アナウンスが入る。

 

《試合開始前ですが、ここで皆様に朗報があります! 先ほどの試合で意識不明になってしまったヴィヴィオ選手ですが、健康上の問題は全くないとの事、間もなく目を覚ますそうです!》

 

その報告に、リオの表情が一気に明るくなる。

 

それを見て、ハリーもにやりと笑った。

 

試合の流れを止めるアナウンスは、ともすれば選手の集中を邪魔するものだ。だがこの2人にとっては、パフォーマンスを上げる大切なものだったようだ。

 

「ったくよ、一気に元気になりやがって」

 

ハリーは気合のハチマキを巻く。

 

「オレ様の砲撃ですぐに泣きっ面に変えてやるけどな! 覚悟しろよ、ちびっ子ォ!!」

「残念ながら泣きません! ヴィヴィオのためにも、チームのためにも! アタシ勝っちゃいますから!」

 

試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおぉぉぉっ!! 燃えとけえぇぇっ!!」

「はぁぁッ!!」

 

ハリーの炎熱砲撃『ガン・フレイム』と、リオの炎熱砲撃『紅蓮拳』がフィールドの中央でぶつかり合う。

 

強烈な熱波が風になってリング全体に吹きわたるが、防護フィールドに阻まれてそれより外には出ない。

 

《強力な砲撃のぶつかり合い! しかし威力は全くの互角です! 両者の砲撃は完全相殺!!》

 

1ラウンドが始まってから3分が経過していた。

 

ハリーは得意の射砲撃で攻め、リオはそれに付き合うように闘っている。

 

何発もの砲弾が飛び交っているにもかかわらず、2人はいまだにノーダメージだった。魔力消費も熱気も凄まじいはずだが、涼しい顔をしていた。

 

「ちぃ、やるじゃねぇかよ、ちびっ子ッ!!」

「はい! 頑張ってます!」

 

あの砲撃番長(バスターヘッド)相手に撃ち合っていまだにノーダメージ。ストライクアーツ選手とは思えない戦いだ。

 

それもそのはず、リオはストライクアーツ選手だが、春光拳の使い手でもある。

 

春光拳は射砲撃も武器戦闘もある『魔導武術』だ。

 

「雷光縄ッ!!」

「いいっ!?」

 

リオが右足をリングに叩きつけると、地面から無数のバインド縄がハリーの体に巻き、体を地面に縫い止める。

 

リオが仕掛けておいた電撃でできたバインドだ。拘束した相手を痺れさせる効果がある。

 

「あーもう!! ウチのリーダー、バインドかかり過ぎぃ!!」

「ううぅっ!! 素直すぎる性格が仇に……!!」

 

セコンドが騒いでいる。そんな取り巻き達に、ハリーが声を張り上げた。

 

「騒ぐな、おめーら!! この程度のバインド、なんてこたぁ……あ?」

 

強力なバインドは、第1試合でハリーが戦ったエルス・タスミンの方が怖かった。この程度なら数秒もあれば解除出来る。

 

だがそれよりも、重大なことが起きた。

 

リング全体が揺れた。

 

その原因は。

 

リオが拳をリングにめり込ませたからだ。

 

「よっ……こい……」

「おいおい、お前、それは……!」

 

あまりの光景に、ハリーはバインドから抜け出すことを忘れてしまう。

 

凄まじい握力によって指がリングへとめり込み、

 

「しょおーーー!!!」

 

一気に持ち上げた。

 

負荷に耐えられなかったリングに亀裂が入り、リオの手には、手ごろなサイズと言うには大きすぎる岩塊が出来上がる。

 

「チームのみんなで約束したんです! 負けちゃったチームメイトの夢は、残った人が叶えるんだって! だから番長にだって負けません!!」

「っ!!」

 

ハリーは息を飲んだ。次にされることが容易に想像出来たからだ。

 

「行きますっ!!」

 

リオの気合と共に岩塊がハリーを襲った。

 

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