※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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インターミドル リオVSハリー

《り、リオ選手、リングを破壊し巨大な岩塊に! しかもハリー選手はバインド状態! これは絶体絶命か―――!?》

「行きます! 龍王破山墜ッ!!」

「うおおおおおっ!!」

 

ハリーが雄叫びと共に全身に力を入れる。あれを喰らってしまえばひとたまりもない。全身に巻き付いた雷縄がブチブチと千切れ始めるが、

 

「どおおおっりゃああぁぁぁっ!!」

 

それよりもリオの投擲の方が速い。

 

迫りくる巨大な岩塊に向かって、

 

「パイルバンカーッ!!」

 

唯一脱出させた右腕を繰り出した。

 

只の拳ではありえない、硬い者同士がぶつかり合ったような音が響く。

 

「ブチ抜けぇぇッ!」

《砕いた! 単車砲撃で、巨大岩塊を粉砕!!》

 

一カ所が千切れてしまえば、縄を解くのはたやすい。まとわりついた縄を振り払うが、リオはすでに動いている。

 

「ちぃっ……!」

 

とっさにハリーが右手に用意した弾丸。それは踏み込んだリオによって腕ごと逸らされ、明後日の方向に飛んでいく。

 

「虎心掌ッ!!」

 

リオの掌底がハリーに炸裂する。サラシの中心を打ち据える一撃だが、ハリーは一歩も下がらず、リオの袖をつかむ。

 

「こ、の……!」

 

しかしここは反撃ではなく、一度後ろに下がるべきだった。

 

掌底だったリオの掌は、いつの間にか完全に開かれている。

 

「絶招―――」

 

その掌に魔力が集中し、

 

「紅蓮吼牙!」

 

発射された。

 

弾丸を撃ち込むつもりが逆に撃ち込まれていたハリーは、大きく吹き飛ばされる。だが、攻撃はそこで終わらない。

 

「砕(さい)ッ!!」

「ぐあああ!!」

 

リオが印を結ぶと、その魔力弾が炸裂した。

 

《ほ……砲撃!! 岩塊攻撃から格闘戦、そして近接砲! 変幻自在につながる技とあふれるパワー! これが春光拳の戦い方なのでしょうか!!》

 

リオの予想以上の健闘に、会場全体が盛り上がる。

 

《ハリー選手はダメージ甚大! 右腕にクラッシュも発生してます!》

 

今の攻防について、観客席にいるコロナはミカヤと話していた。

 

「ハリー選手って、上位選手の中では比較的、被弾やクラッシュが多いですよね」

「魔力を防御に回すくらいなら、それを弾丸に回しちゃうような娘だからね。それでも不思議とKOされないし、ライフも無くならない。不思議なタフネスの持ち主なんだよね」

 

つまりは桁外れに我慢強いタイプだということだ。

 

タイプでいえばミウラに近いものがある。

 

クラッシュしていた右肩をかばっていたハリーだったが、すぐに軽く回し、調子を確かめている。

 

実際にケガをしているわけではなく、あくまで痛みのシュミレートだ。可動自体には問題ないが、気にせず戦える人はなかなかいない。

 

「侮ってるつもりはなかったんだがな。心のどっかでルーキーだって、ちびっ子相手だって油断があったのかもしれねぇな」

 

ハリーは左腕に巻いていたチェーンを解く。

 

「悪かった。ここからは出し惜しみも様子見も無しだ」

 

チェーン全体に魔力が通され、熱によって赤く染まる。

 

「全力でぶっ潰すぜ!!」

「(赤熱鎖(ヒートチェーン)!! しかもこの距離でも伝わるほどの超高熱!!)」

《リオ選手も剣を装備! ここから武器戦か―――!!》

 

意志を持っているかのように、鎖はハリーの手から伸びた。

 

「レッドホークッ!!」

 

リーチでは完全に負けているリオが迎え撃つ形だ。

 

「はあああぁぁぁっ!!」

 

刀身と鎖の先端の重りがぶつかり合い、甲高い金属音が響いた。拮抗することなく、鎖は逸れていくが、

 

「っ!?」

 

速度を落とさずに急旋回。もう一度襲い掛かってきた。

 

《高速で伸びるハリー選手のレッドホーク!! 赤熱の鎖が変幻自在の軌道を描き、リオ選手に襲い掛かります!!》

 

剣で弾いても、リングに激突しても、魔力弾を当てても、速度は落ちることなくリオに襲い掛かってくる。

 

しなる鎖はそのまま鞭に、先端の重しは打撃に。鎖全体が高熱を纏っているため、どの部位に触れても大ダメージだ。

 

いつの間にか鎖に囲まれ始めている。取り囲んだ鎖はそのままリオを閉じ込める檻になる。

 

「(鎖の攻撃も厳しいけど、それ以上に―――)」

 

リオはちらりと、鎖の大元であるハリーを見る。

 

攻撃を始めてから動くことなく、そこに立っているハリー。左手は鎖のコントロールに割かれているが、右手は完全にフリーだ。

 

「(こっちの動きが止まるのを狙ってる……!)」

 

足を止めれば、フルチャージされている右手の砲弾が飛んでくることになる。

 

しかし、いずれは鎖に取り囲まれ、逃げ場が無くなる。

 

「(なら、追いつめられる前に、まだハリー選手には見せてない雷攻撃でスタンさせる!!)」

《リオ選手突撃! ハリー選手、防御は……》

 

武器をしまい、電撃が付与された拳をスタンバイさせるリオ。

 

「へぇ―――」

 

静電気の様にバチバチと見える電撃に、ハリーは目を細め、頭を振りかぶる。

 

「雷光拳!!」

「ふんッ!!」

《頭突きだぁっ!!》

 

鈍い音が、リオの拳の方から聞こえた。

 

「う、ああ……!」

 

衝撃を無理やり返されたような感触に、拳を抑えて後退する。

 

《リオ選手、拳にダメージ! ハリー選手は軽微だ!!》

「炎と雷のダブル変換資質。うらやましいぜ。スゲェ才能だ。だが悪いな。今年の俺は電撃じゃ倒れねぇよ!!」

 

構えるリオだったが、

 

「遅えッ!!」

 

生半可な防御では、フルチャージの砲撃を防ぐことは出来ない。

 

右手に溜められていた魔力が解放され、極大の『ガン・ブレイズ』が放たれる。

 

「ぐっ……!」

 

それでも何とか直撃を避けることが出来たリオだったが、無意味に飛び上がってしまったせいで、レッドホークに狙い撃ちにされる。

 

「うああああっ!!」

 

みるみるうちにBJがボロボロになっていく。

 

攻撃だけでは終わらない。

 

リオの体中に鎖が巻き付き、体の自由を奪われる。そのまま遠心力を使って振り回され、リングに叩きつけられてしまった。

 

《ハリー選手の連続攻撃! これは強烈だ!! リオ選手はダウン、1ラッシュでライフは危険域!》

 

息を切らし、女の子座りになっているリオ。その体にはいまだ鎖が巻き付いている。

 

《しかも判定はバインディングダウン! このまま立てなければ試合終了。立ったとしてもバインド状態からの再開になります!!》

 

リオが優勢だった時も盛り上がっていたが、やはりトップ選手であるハリーが活躍するとまた別の盛り上がりになる。

 

その観客席の一角、

 

「ハリー選手、あんな技も……」

「あの子は自分の経験を力に変えるのがうまいんだ」

 

コロナのつぶやきにミカヤが応える。

 

「何度も戦っているエルス(エルス・タスミン)ちゃんの操鎖術、去年苦汁を舐めさせられたヴィクター(ヴィクトーリア・ダールグリュン)の電撃への対策」

 

いずれも苦汁を舐めさせられた相手の得意技、代名詞ともいえる特性だ。

 

「自分の受けた技を1年かけて分析して、組み立てて、自分のものにしていく。ああ見えてまじめな努力型なんだよ」

 

話していると、

 

《立ちました! リオ選手、カウント8で立ちました!》

 

「ち、そのまま座ってりゃいいものを」

「ありがとうございます。それ、『立ってほしくなかった』って意味に受け取ります」

 

リオの足元に魔法陣が浮かび上がる。自らを拘束している鎖をどうにかしようという訳ではないらしい。

 

「……因果なもんだよな。俺達はよ。ボロボロになっても、痛くても、動けんなら勝ちにいく。相手が誰でも、負けたくないってな」

 

ハリーの足元にも魔法陣が浮かんだ。

 

「オレも同じさ。負けて泣きたくねぇから必死だぜ」

 

右手に小型の太陽のような密度の魔力、砲撃魔力が顕現する。

 

「勝ちたいからずっと一生懸命です! 今だって、まだ勝てるって信じてます!」

 

リオの後ろには炎と雷の魔力、それが龍を模してハリーを威嚇していた。

 

お互いに最大魔力。リオはバインド状態のため、その場を満足に動けない。正面からの撃ち合いだ。

 

「ガンブレイズ・フルバーストッ!!」

「双破龍神翔ッ!!」

 

フィールドの中央で2人の砲撃がぶつかり合った。ミウラの『抜剣』とはまた違った魔力の波動が、リングに吹きわたる。

 

「ぐ……、うぎぎ……っ!!」

 

思った以上の威力に、ハリーが押し切れないでいる。

 

観客やセコンドは、砲撃番長(バスターヘッド)相手に砲撃の威力では勝ち目が無いと考えている。

 

それは正しく、リオ自身もそう考えていた。その上で、砲撃番長(バスターヘッド)に勝つために、正面からの撃ち合いという選択をしたのだ。

 

「行きますッ!」

 

リオは鎖をしっかりと握りしめ、そう宣言した。

 

「せえーのぉっ!!」

「っ!?」

 

左手に持ったレッドホークに強烈な力が加わったことに、ハリーはギョッとする。

 

「よいしょおーーー!!

「おおお!?」

 

何とリオは、自らを拘束している鎖を引っ張り、ハリーを引き寄せようというのだ。

 

リングを持ち上げるほどの怪力だ。少しでも気を抜けば、ハリーの体は持っていかれてしまうだろう。

 

さらに言えば、リオの双龍破は出してしまえば自動発射。龍の形になっているのは伊達ではなく、砲撃自ら相手に食らいつこうと動くのだ。

 

対するハリーの砲撃は、オーソドックスなモノだ。右手を砲身として維持し続けなければならない。

 

リオは両手で、ハリーは片手。砲撃と腕力の力比べだ。

 

「リオお嬢様! 引っこ抜いちゃってください!!」

「リーダー!! ド根性ーーっ!!」

 

セコンドからも激が飛ぶ。

 

「んんんん~~~~ッ!!」

「でええええぇぇぇっ!!」

 

2人の踏ん張りで、足元にヒビが入る。

 

両者一歩も譲らない力比べは、金属が砕ける音によって終わりを迎える。鎖が真ん中から千切れたのである。

 

「この野郎……っ!」

 

砲撃が避けられる。

 

鎖が千切れたということは、リオの拘束も無くなったということだ。砲撃を維持する必要がないリオは、その場を素早く動く。

 

爆炎を切り裂き、ハリーの目の前へ。

 

「これでフィニッシュですっ!!」

 

その両手には炎の魔力が集中している。

 

「絶招ッ!! 織炎虎砲(しえんこほう)ッ!!」

「う、お……っ!!」

 

ハリーは右手で庇うが、重度の熱傷のクラッシュが発生している。ライフも残り5%だ。

 

「(いけるっ! もう1発入れば―――!!)」

「どォらァッ!!!」

 

もう1発入る前に、右手の炎弾で足止めされる。しかしそれは、ほんのささやかな威力だった。今の攻撃で、もう右手は使い物にならないことを表していた。

 

ハリーはリオの襟をつかんで引き寄せる。

 

だが襟をつかんでいるのは右手だ。少し力を加えれば放してしまいそうなほど、弱い力しかない。

 

両手でつかみ、思いっきり力を込める。

 

だが、

 

「(外れない!?)」

「右手はいらねぇよ。その代わり―――」

 

鎖が巻き付いた左手を振りかぶり、

 

「―――こいつを喰らっとけッ!!!」

《ハリー選手、左ストレートォ!! さらに追撃だァ!!》

 

レッドホークは中距離用の武器だが、拳を守る防具にも打撃武器にもなる。

 

砲撃番長(バスターヘッド)の異名を持つハリー。当然、砲撃能力が警戒される。試合では距離を詰めようとする選手が多い。

 

接近戦まで詰められたハリーの反撃技が、左手の―――利き手の拳打である。

 

今の連撃で、リオのライフも10%を切るが、

 

「(そんなの分かってる! 試合のビデオは何回も見たんだから!!)」

 

それを分かって、リオは前に出る。

 

「(だからって負けられない! ストライクアーツと春光拳の本領は打撃戦なんだ!!)」

 

お互い、ライフは残り少ない。近接戦ならこちらに分があると、果敢に前に出るリオ。

 

しかし、

 

「油断も加減もしねぇって言ったぜ!! テメェのスタイルにゃ付き合わねえ!!」

 

ハリーは後ろに後退する。

 

左の拳打はあくまでも近寄られたときの反撃用。砲撃番長(バスターヘッド)のレンジはあくまで中、遠距離なのだ。

 

千切れた筈のレッドホークをリングの地面に突き刺す。

 

「ッ!?」

 

それは地面を突き進み、リオの真下から顔を出した。

 

「真ん中からブチ切れた程度じゃ、オレのレッドホークは死なねぇんだよ! 俺と同じでしぶとくってなぁ!!」

 

それはリオの雷光縄の使い方によく似ていた。体に巻き付き、動きを止める。

 

「(動けない!?)うああああぁぁぁッ!!!」

 

この土壇場での拘束。渾身の力を込め、何とか脱出しようともがく。鎖が悲鳴を上げ、1つ、また1つと音を立てて壊れてく。

 

「こいつで終わりだ!!」

 

ハリーの足元に、これまでで一番大きな魔法陣が描かれる。

 

「爆烈ッ!!」

 

拳を地面に叩きつける。

 

「ヴォルガニック・ブレイズッ!!」

「ッ!?」

 

リオの足元、直下から、とんでもない熱量が吹き上げ―――

 

《試合終了!! 1ラウンド残り2秒!! 文字通り、熱戦を制したのはハリー選手です!!》

 

会場から大歓声が巻き起こった。

 

正面からではなく、遠隔で砲撃を発射するハリーの新技だ。ジークリンデ・エミリアや、ヴィクトーリア・ダールグリュンと戦うための技だったが、本戦前でお披露目することになった。

 

試合は終わり、選手は退場するのだが、

 

《おっと、ハリー選手がリオ選手の所へ……?》

 

ディードに抱きかかえられるリオの近くで腰を落とす。

 

「よう、このチビ助め。オメーのせいで出し惜しみしとくはずの隠し玉を2つも使っちまったぜ。まったく、とんでもねぇチビだ」

「……っ」

 

試合が終わり、負けたという事実を認識したリオ。目頭が熱くなり、唇は嗚咽を漏らすまいと震える。

 

「な、なんだよ。そんな顔すんな! 泣かねぇんだろ?」

「うぅ……っ」

 

ぐしゃぐしゃと、乱暴に頭を撫でたハリーは立ち上がった。

 

「強かったよ、オメーは。また近いうちに、今日みたいなケンカをしようぜ」

 

背を向けて歩き出す。

 

「試合でも、どこでも、オレぁいつでも待ってるからよ」

 

振り返って、ニヤリと笑った。

 

「またな、リオ」

「はいっ! ありがとうございましたっ!!」

 

そんな2人の姿に、会場から惜しみない拍手が送られるのだった。

 

――――――チャリン、チャリン

 

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