※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

208 / 383
インターミドル 綺凛VSユウキ

《さあ、次の試合に参りましょう! ご紹介するのは、今大会、すっかり台風の目になってしまった2つのチームの選手です!》

 

すでに残っているのは実力のある選手のみ。事前に残ると思われていた選手を下し、そうでなくてもその地位を脅かす選手が何人もいた。

 

《まず入場してくるのは刀藤 綺凛選手ッ! 本日は素晴らしい試合を見せてくれているチームナカジマ、最後の1人です!!》

 

綺凛が手に持つのは、愛刀の『千羽切』一振りだけ。その後ろにはクロとノーヴェがいた。

 

《刀藤流の名前を、剣術家で知らない人はいないでしょう! 綺凛選手は弱冠13歳でありながら、その奥義である『連鶴』を使いこなす達人です!》

「綺凛、あんまり司会者の煽りを聞くんじゃねーぞ」

「大丈夫ですよ。集中してますから」

「イメージ違うわねー。アインハルトと真逆になると思ってたんだけど」

 

ノーヴェとクロの言葉に、落ち着いて返す綺凛。

 

周りの声よりも、目の前の強敵に意識が向ているのだ。

 

《反対からは八神道場の紺野 ユウキ選手ッ!! 超人的な反射神経と相手に吸い込まれるような剣技の持ち主です! 試合後のインタビューでセコンドにお聞きしたところ、あの剣技のほとんどはユウキ選手の独学らしいです!》

 

「いやー、八神道場も有名になっちゃったねぇ?」

「お前とミウラのおかげだ。他のメンバーと実力差がありすぎるがな」

 

セコンドのシグナムは、応援に来ている八神道場のちびっ子のことを考える。ミウラとユウキは突出しているだけだ。

 

「というか、いつの間にインタビューなんて受けてたの?」

「……それについては聞くな」

 

シグナムにとっては辛い時間だった。

 

自然体の2人が、リングの上で向かい合う。

 

《それぞれのチームメイトであるヴィヴィオ選手とミウラ選手は、素晴らしい格闘戦を見せてくれました! そしてこの2人も! 奇しくも獲物は刀と剣! 歴史ある剣術と独学の天才!》

 

間にはレフリーが立ち。試合開始前の最後の確認がされる。

 

《本日2回目となるチームナカジマと八神道場の直接対決! 果たしてどちらが勝つのでしょうか!》

 

「頑張ってください、ユウキさん……!」

「綺凛さん、ファイトですー!!」

 

応援席のヴィヴィオとミウラも声を張り上げて応援している。

 

「いやー、ずっと見たかったんだよね。この試合」

「そうですね、どうなるんでしょうか……」

 

ミカヤとアインハルトも、この試合の行方を見守っていた。

 

2人共魔力を持っているが、それを射砲撃に使うことは無い。ユウキはかろうじてBJを纏っているが、綺凛は服装を変化させず、防御膜だけを展開しているスタイルだ。

 

お互いに、使う獲物は手に持った実剣のみ。

 

綺凛は大技物の日本刀。ユウキは黒い刀身を持つ細い片手剣だ。

 

「純粋に剣だけで戦っている選手はそういない。中でもこの2人は別格だったからね。綺凛ちゃんとは一度手合わせしているから知ってるけど、あのユウキって娘も相当だよ。どっちが勝つのか全然予想できないね」

「ユウキさんも、今までの試合では一度の被弾も無し。全て1ラウンドで勝利していますからね……」

 

被弾なし、1ラウンドで勝利しているのは綺凛も同じだ。そんな2人の戦いなのだ。

 

2人が刀を抜いた。

 

《それでは、試合開始ですッ!!》

 

開始と同時に激突とはならず、2人はお互いに間合いを測っていた。

 

綺凛は刀を正面に構え、ユウキも剣を構えたまま動こうとしない。

 

「どうしたの、綺凛さん。ずいぶんと慎重だね?」

「あなた相手に油断できるほど、私は強くありませんから」

 

いつもよりも鋭い口調の綺凛と、いつもと変わらない様子のユウキ。

 

相手の間合いと自分の間合いはほとんど同じ。有効打を与えようとすれば、相手の反撃も覚悟しなければならない。

 

だが、

 

「そっちから来ないなら、こっちから行くよっ!!」

《ユウキ選手踏み込んだッ!!》

「っ!!」

 

お互いの刀が火花を散らした。

 

綺凛の刀身が滑り、少しの間も無く、次の斬撃を繰り出していた。と思えば次。さらに次。

 

「やはりすごいな、連鶴は……」

「はい、攻撃の切れ目がありません……」

 

ミカヤとアインハルトはその技術に驚嘆していた。

 

綺凛はミカヤのように重い一撃で相手を切り伏せるタイプではない。斬撃と斬撃を繋げる連鶴を駆使して細かくダメージを重ねていくタイプだ。

 

そしてそれは、ユウキも同じだ。

 

綺凛が折り鶴を折るような正確な斬撃なのに対して、ユウキは自らの反射神経と反応速度を生かした、ギリギリを責めた戦いだ。

 

自分の体に吸い込まれそうになる斬撃を、すんでのところで剣で払う。いかに完全な連続攻撃が出来る連鶴と言っても、一度振り切った刀から派生できる技には上限がある。

 

そこが、普段では弱点にすらならないものが、ユウキの勝機になる。

 

体を捻り、鼻先ギリギリで次の斬撃を避ける。

 

「そこッ!!」

「っ!?」

 

綺凛の刀と交差するように、ユウキの剣が綺凛の胸元を掠めた。

 

綺凛は慌てて距離を取る。ユウキも追撃することなく力を抜いていた。

 

「ひゃー、ギリギリだったね、お互いに」

「そうみたいですね……」

 

綺凛は自分の体を見下ろす。

 

服を内側から押し上げている大きな2つの膨らみ、その一番上のブレザーが横一文字に斬られていた。

 

体に直接当たっていないため、ライフは削れていないが、この試合で始めて出た攻撃の『ヒット』だ。

 

当然会場の盛り上がりも当然凄まじいことになっている。

 

「そんなにおっきなおっぱいじゃなかったら、掠りもしなかったかも」

「私も、連鶴の間に攻撃を挟まれるなんて思っていませんでした」

《す、素晴らしい攻防です! 綺凛選手の連鶴が破られてしまったのか! それともユウキ選手のイチかバチかの攻撃が成功したのでしょうか!》

 

魔法が飛び交う派手な戦いではないとはいえ、あまりもレベルの高い試合に会場は熱狂している。

 

「何なのあの娘……!」

「マジで半端ないな。聞いちゃいたがここまでとは……!」

 

それはクロとノーヴェも同じだった。

 

「だが、あの綺凛という娘も相当だ。あれだけ撃ち合って、ユウキに1度しか反撃を許さないとは」

 

会場全体では、先に攻撃を当てたユウキに歓声が傾いている。だが、シグナムにとっては違った。

 

並の相手なら、あれだけ密着して斬り合っていれば、10回は反撃の餌食になっているだろう。

 

「いや、そもそも攻勢に出ることが出来る者が何人いるか」

 

シグナムは試合の勝敗よりも、ユウキの同年代でこれだけ競い合える相手が現れてくれたことを喜んでいた。

 

「はやてちゃん、ユウキちゃんの防御力はどのくらいなの?」

「んー、そこまで高くはないよ? 防御するっていうよりは、全部避けるって感じかな?」

 

なのはの質問に、はやては顎に指をあてて数瞬考えて答える。

 

「私みたいな感じ?」

「そーそー、フェイトちゃんみたいな感じ。魔力もそこまで多い訳じゃあらへんから。シールドも最低限しか使わへんよ」

「じゃあ、先に入れたほうが勝つね」

 

なのははそう断言する。

 

あの鋭い剣戟。ヤワなシールドなんて役には立たないだろう。防御ごと切断され、大量出血のクラッシュまで入るかもしれない。

 

「せやなぁ。1回でもまともに入れば、クラッシュで動きが相当鈍くなる」

「今の2人の戦いぶりを見ると、確かにちょっとの差でも決まっちゃいそうだよね」

 

はやてとフェイトもその判断に頷いていた。

 

そしてそれは、今戦っている2人が一番よく理解していた。

 

だからこそ慎重になる。どちらも紙一重だったのだ。ユウキの勝機は、さっきも言ったように連鶴の間にあるわずかな隙だけだ。しかしそれは綺凛も理解している。今の斬り合いで、理解させられた。

 

だとすれば、あとはどちらの集中力が先に切れるのかだ。

 

先に剣先が鈍ったほうが負ける。

 

「でもさ」

「はい?」

「全力を出さないで負けるっているのは、どうかと思うんだよね」

「ユウキさんは全力ではないという事ですか?」

「まさか! そうじゃなくてね?」

 

ユウキは軽い調子で核心をついた。

 

「綺凛さん、何か隠してるんじゃない? 切り札的な何かを」

「っ、それは……」

 

確かにあった。アインハルトにあったのだ。綺凛にだって、新しい切り札が出来ていた。

 

でも目の前の相手とは―――ここまでの剣の達人とは、純粋に剣の力だけで競いたいという気持ちもある。それは事実だった。

 

命のかかった『死合』ではないのだ。せっかくの『試合』、自分の実力だけで戦いたい。

 

《紙一重の攻防を経たことで両選手さらに慎重になっています! 攻めたほうが勝つのか、迎え撃つ方が勝つのか!》

 

リング上の音声までは拾っていない司会者が煽る間も、2人の会話は続く。

 

「むしろ、このままボクが勝ったら、負けた理由になっちゃいそうで嫌だから。あっ、もちろん綺凛さんがそんなことするなんて思ってないけどね!」

 

あくまで自分の気持ちのために、全力を、持てる全てを出してほしいとユウキは言う。

 

「……わかりました、そこまで言うなら―――!!」

《おおっと!! これは―――!!》

 

司会者は見覚えのある光景に興奮した声を出す。

 

「来てください、レッドフレーム!!」

 

 

 

 

 

 

ガンダムアストレイ・レッドフレーム

機動戦士ガンダムSEED ASTRAYに登場する兵器。

ビームライフルやビームサーベルなどのガンダムにとって基本的な武装はもちろん装備されているが、一番特徴的なのは『ガーベラストレート』という銘の日本刀。ビームを切り裂き、MSを一刀両断するこの武装を使いこなすことが、このMSを使いこなすという事である。

日本刀を最大限に使うことが前提になっているため、翔から綺凛に譲渡された。

また、原作パイロットがジャンク屋ということもあり、オプションパーツが充実している(別アイテム)。

 

 

 

 

 

 

「わぁ、派手派手だね! でも、刀藤さんにはあんまり似合ってないかな?」

「それはちょっと思ってます……」

 

レッドフレームの名前の通り、フレームの骨格が赤くなっている。制服の上から身に着けた形になっているのが非常にアンバランスだ。

 

そしてその腰には新たな刀―――『ガーベラ・ストレート』の姿があった。

 

「(2刀目……)どこかアインハルトさんが使ってるヤツとも似てる気がするけど……もしかして同じスポンサーなのかな?」

 

刀が2本あるということは、否応にも二刀流を意識させられる。事前にシグナムと研究した限りでは、刀藤流に刀を2本使った技は無かった。

 

「(とすれば、綺凛さんのオリジナルってこと? 二刀流の連鶴ってことかな?)」

「えっ!? いえ、それは……」

「うん?」

 

分析のための時間稼ぎのつもりで振った話題に、綺凛は大きく反応していた。

 

確かに同じ相手から貰ったものだ。自分の憧れの人から、予選突破のご褒美として。

 

始めはそんな高価なものは貰えないとアインハルトと2人で拒否していたのだが、そこで翔は自分の能力の秘密を打ち明けた。

 

翔もそのことは言っておかないとフェアではないと思ったのだ。

 

「(あの時は驚きましたけど、別に先輩がそういうことが目的じゃないのは分かりますし……)」

 

だが1つ気になったのは、

 

「(先輩が知らない能力とか道具を持っていたら、それってつまり、誰かと、え、えっちなことしたってことなんだよね……はぅぅぅ……!!)」

 

翔の能力の秘密がわかると、周りにいる女の子達が翔とどういう関係なのかも分かってしまう。

 

それを承知で翔に告白したとはいえ、悶々とした気持ちになってしまう。

 

「――さん? 綺凛さん?」

「は、はいっ!」

「大丈夫? もう始めてもいい?」

「(わ、私は、試合中になんてことを考えて……!)ごめんなさい! 気を使わせてしまって!」

「別にいいけど……」

 

気持ちを切り替える綺凛。試合再開だ。第1ラウンドは残り1分。だが、次に切り合った時が決着になることを2人は直感していた。

 

レッドフレームには他のMSにはない特徴的な武装がある。腰に装備された日本刀である『ガーベラストレート』だ。

 

だが、その刀を抜くことは無い。その手に持っているのは相変わらず千羽切だけだ。

 

「はぁっ!!」

「(これ、連鶴だけど……!)」

 

剣筋は変わっていないのに、先ほどとはスピードが違う。

 

レッドフレームのアシストによって身体能力を向上させ、さらに防御を補うMSの装甲。単純に自らのパラメータを増幅させたのだ。

 

ユウキにとって救いなのはSEEDのガンダムの多くに搭載されているフェイズシフト(PS)装甲が、アストレイには採用されていないことだ。

 

フェイズシフト(PS)装甲は実剣や実体弾の衝撃をほぼ無効化するトンデモ装甲だ。これがあった場合、実剣がメインのユウキはかなり厳しい戦いを強いられることになっていた。

 

それでもユウキにとって厳しいことにかわりない。

 

「(装甲がある。1回じゃ斬れないかもしれない。もし弾かれてそれが隙になったら、その隙は絶対に見逃してもらえないよねっ!!)」

 

ユウキの望みは連鶴に対するカウンター。それも、装甲相手に有効な、装甲の継ぎ目の関節を狙うという高等テクニックを要求されている。

 

「(当たらない……私のパワーも上がってるはずなのに……!!)」

 

だが綺凛も、レッドフレームを使いこなしているとは言い難かった。

 

アインハルトの様に覇王流の中に次元覇王流の技の一部を取り入れるならまだしも、二刀流の練習をするには流石に時間が足りなかった。

 

しかしそれは、技の1つや2つなら実戦でも使えるようになるということだ。

 

「多少無理にでもッ!!」

「それは迂闊だよッ!!」

 

装甲が削られることもいとわず、綺凛は前に出る。

 

その隙を突いて刀を弾き飛ばす。それでも、もう1本の刀が腰にあるが、

 

「(大丈夫、2本目を抜くには時間がかかる! 私の方が早い!)」

 

狙いは右肩。綺凛の利き手を潰してしまおうというのだ。

 

次の刀を抜きに動くと思われた右手は、ユウキの予想外の動きを見せる。

 

掌はガーベラストレートの柄を握るのではなく開き、ユウキに押し付けるように迫る。その手が光り輝く。

 

それは掌から放出されたビームサーベル用の荷電粒子を球状に固定、相手に叩き付ける技。

 

その名も。

 

「雷光球ッ!!」

「ッ!?」

 

光り輝く光球がユウキに叩きつけられる。

 

光が弾け、その衝撃でユウキの体ごと残っていたライフがすべて消し飛んだ。

 

《決まりましたッ!! 勝者はッ! ここにきて隠し玉を見せてくれた刀藤 綺凛選手ですッ!!》

「いやー、負けちゃったねー」

 

プレートアーマーが吹き飛び、その奥にあったBJも大きく破れている。ともすれば危険な捲れ方をしてしまいそうなそれを、手で押さえている。

 

ふらつきながらもユウキは自らの足で立ち、綺凛の近くに歩いてくる。

 

「ごめんなさい。こんな裏技で勝っちゃって」

「そんなことないよ。ボクの方から使ってって言ったんだもん」

「それは、そうですけど……」

 

でもそれでも、やっぱり剣だけで勝負するべきだったのかもしれない。そんな気持ちが、試合が終わってから湧き出してくる。

 

剣での勝負なら、勝てるとも負けるとも思えない。本当に、最後まで分からない試合だったはずだ。

 

見かねたユウキは、

 

「もー……そんなに後悔があるんなら、今度は本当に、剣だけで勝負しようよ。別に試合じゃなくても、勝負の機会なんていくらでもあるんだから」

「……はいっ! その時はぜひ!」

 

その提案に、綺凛は笑顔で応えた。

 

こうして、綺凛とユウキの試合は終わりを告げた。

 

――――――チャリン、チャリン

 




もはや大会が翔のアイテムゲーになりつつある……

まあ、もともとの力にプラスされると、どうしても強くなりますからね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。