チームナカジマも全員敗退してしまい、俺のインターミドルへの興味はほとんどなくなった。
護衛の任務も今日を入れてあと2日という今日は、みんなでプールに来ていた。
一年中夏のこの島では、プールも一年中やっている。大型レジャー施設のこのプールには、ウォータースライダーから流れるプールまでそろっている。
メンバーはチームナカジマと八神道場の面々、その保護者達。そして護衛の対象である聖天子様。もはや護衛しているのか遊びまわっているのか分かんないんだけどね。
俺の家の女の子達は雪菜とコッコロしかいない。例によって、みんなは他の仕事が入っていた。
やー、何かみんなに悪いね。こんなことになっちゃって。
だが、そんな楽しい時間はもう終わりだ。明日は会議最終日。今までの島の様子を見て、最終日だけ例のパーティが再開されることになった。
聖天子様が一緒にいるのは今日で最後だ。楽しんでもらわないと。
「やー、夜月君も連れてきたい人がいるゆうたから、いったい今度はどんな女性かと思ってみれば……」
「や、昨日連絡したと思うんですけど。というか、女性限定なんですね」
「まさか本当に連れてくるとは、ちゅー意味や。君が男友達連れてくるとは思えんもん」
俺が部隊長と話していると、聖天子様が前に出て頭を下げた。
「八神部隊長、本日はよろしくお願いします」
「ま、私は別に構へんけど」
この2人はいったいどこまで親しい間柄なのかは分からないけど、聖王教会で一緒にいたからなぁ。初対面ってわけじゃない。
「ま、子供たちが待ちきれないみたいなので、そろそろ入りましょうか」
俺は入り口を指さすのだった。
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女性は女性でも、子供たちの着替えは早かった。
ヴィヴィオ達年少組はさっさと着替えを済ませ、アインハルトと綺凛を引っ張っていった。同じくらい着替えの早いノーヴェもそれについて行っている。
残っているのは雪菜と聖天子様、そしてみんなの保護者であるなのは達だ。
「うーん……」
「はやて? どうしたの?」
同性だとしてもぶしつけな視線を向けてくるはやてに、フェイトは軽く体を隠しながら問いかけた。
丁度着替えが終わり、その体には水着しか身に着けていない。ビキニタイプのシンプルな紺色の水着だ。
それを見たはやての感想は、
「なんか、地味やなぁ……」
「えぇ? 何が?」
「その水着が、や」
世の女性が聞けば石を投げてきそうな言葉だった。確かに水着はシンプルで飾りっ気が無いと言えばそうだ。しかし、その豊満な肉体にはそれで十分だ。
普段から体を酷使している仕事だからこそ、鍛え上げられたしなやかな肉体。それでいて出るところは出ていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいる。
水着をこれでもかと着こなしているのだ。むしろシンプルな水着だからこそ良い。
だが、はやてが言いたいのは、別に水着が似合っていないとか、そういう事ではなかった。
「その水着、前に海行った時もおんなじの着てたんやない?」
「あー……確かにそうかも。前に行ったのっていつだっけ?」
「前の六課の解散の時じゃないかな? 3人一緒に揃ってなんて、それ以外ないと思うよ?」
なのは達はそれぞれに思い出す。前の六課が解散した時となると、もう3,4年前だ。ゆっくり休暇を取れたことなんて、1年間働き続けたあの時以来だった。
同じ職場になったのもその時以来だったのだ。世界各地を飛び回る仕事をしている3人は、集まってご飯を食べる機会も少なかった。
「たしかあの時買ったんだよね?」
「そやな」
「3人揃って海で遊ぶなんて、中学生以来だったからね」
その時は、中学生の時よりもさらに育ったなのはとフェイトが、水着が合わないと言い、特に違和感のなかったはやても新調することにしたのだ。
「ふむー……ということは、や」
はやては気が付いた。フェイトにだけ指摘したが、なのはも自分も数年前に買った水着を着ているということになる。
それは、まだまだ二十代の、ぴちぴちの乙女としてどうなのか。
「ここは来月からの部下にちょっとサービスするのも悪くないかもなぁ……」
「はやてちゃん?」
「よし! 2人とも―――!」
はやては2人に指令を出した。
その数分後、着替えを終えた雪菜は妙なものを目撃した。
「あれ? 八神さん? どこに行くんですか?」
「ん、ちょっとな~、雪菜ちゃんは先に行ってて」
「は、はい。分かりました……?」
雪菜の問いに笑顔で応えたはやて。先ほどまで水着を着ていたはずの3人が、何故か服を着て更衣室の外へ、入り口の方へ行こうとしている。
「雪菜さん? どうかしましたか?」
「いえ、何でもないんですけど……って、その水着……!」
振り返った雪菜は、聖天子の姿に衝撃を受ける。あまり着替えをじろじろと見るのは失礼だと見ていなかったため気が付かなかったが、まさかその水着をチョイスしていたとは。
しかし当の本人は特に気にしていない。
「はい? 何かおかしなところがありますか?」
「ありませんよ? ありませんけど……本当にそれで?」
「はい。側近の方が無難にこれが良いと」
「無難……?」
側近というと、ちょくちょく出てくるあの3人組の女の子か。雪菜は3人の顔を頭に思い浮かべた。
「無難……」
首を傾げつつも、雪菜は聖天子とプールの方へ向かうのだった。
一方、外へ出たはやて一行は、
「ちょ、ちょっとはやてちゃん? 別に私達まで買わなくても!」
「そうだよ、はやて! そもそも私だって、わざわざ買い替えなくても……!」
「まあまあ、せっかくの機会なんやし!」
引っ張られるなのはとフェイトは抗議するが、はやては全く意に返さない。
「こういうレジャー施設には、そういう売り場があるって相場が決まっとるんよ」
はやてはニコニコと笑いながら、とあるお店へと入っていくのだった。
―――――――――――――――――
一番最初に出てきたのはちびっ子達だった。旅行の時もそうだったけど、やっぱり子供は着替えるのが早いね。それに元気も有り余ってるから。
「お兄さん! お待たせしました!!」
「うんうん、全然待ってないよ」
駆け寄ってくる子供達。
水着は、以前学校指定の水着を着ていたコロナちゃん以外、前と同じだ。ちなみにコッコロの水着は、プリコネの水着だ。こうしてみんなが並んでいると、旅行先で川遊びをした時のことを思い出す。
でも子供達の体つきは、前に見た時とは明らかに違う。あまり無理に筋肉が付くようなトレーニングはしていないと聞いていたんだけど、それでも健康的な魅力が増しているように感じる。決して変な意味じゃなくてね。
アインハルトと綺凛は特に変化は無いかな……その、数日前に全身確認しちゃったから。
「子供は成長が早いってことか……」
「変態ですね」
何を今さら。
「ヤミか」
「幼い子供たちを視姦。万死ですね」
「だから違うっての」
前に見た時と変わらない黒い水着を身に着けているヤミ。
視線は相変わらず冷たいが、それは以前ほどの温度ではないように思う。少しは心を許してくれたのか? まあ一緒に寝た仲だしな。
「今回もヴィヴィオちゃんに説得されたのか?」
「そうですっ!」
「でも今回は……」
「すぐにオーケーしてくれたんです」
「ほーん」
ヴィヴィオちゃん達は3人でセリフを分けて説明してくれる。
「別に……もう断る理由がありませんから」
そう言って顔を背けるヤミ。
「断る理由が無かったのか」
「そうですね」
「ごみごみしているところは好きじゃないと思ってたんだけどな」
「好きじゃないですよ。でもそのくらい、別に断る理由にはなりませんから」
ほーん。
そう言ってヤミは向こうに行ってしまった。あらら、ヴィヴィオちゃんをおいて行っちゃったよ。
すると、ヴィヴィオちゃんが駆け寄ってきた。
「お兄さん、お兄さん」
「ん、どうしたの?」
しゃがんでヴィヴィオちゃんの身長に合わせる。
「もしかして、ヤミさんと仲良くなりました?」
「ん、どうして?」
感覚じゃそうかもしれないなんて思ったけど、ヴィヴィオちゃんから見てもそうだったのか?
「ヤミさん、今日お兄さんが来ること知ってたんです。お誘いするときに説明したので」
―――――――――
「ヤミさんっ! この日なんですけれど、みんなでプールに行きませんかっ!?」
「プール、ですか?」
「はい! ママが、みんな大会を頑張ったからお休みをとって連れて行ってくれるって、言ってるんです!」
「みんなというのは、チームナカジマのメンバーですか?」
「あっ、それと、八神道場の人もいますけど……」
「それだけですか?」
「ルールーも来ますよ! 前に行った旅行の時にいた!」
「それで全員ですか?」
「あ、あとぉ……お兄さんも来ますけど……」
―――――――――
ヴィヴィオちゃんにも色々と気を使われていたと思うと情けなくなるな。年上の俺たちの不和を気遣って配慮してくれていた。
まあそれはそれとして、
「じゃあヤミの奴、俺が来ること知ってたのか」
もしかして向こうに行ったのって、『断る理由が無い』って、俺が来ることはもう断る理由にはならないって事になって、恥ずかしくなったからか?
「や、無いな。ナイナイ」
「そうですか?」
無いって。ヤミだもん。大方、俺の事なんて眼中になかったんだろう。
「ヤミだったら、言葉よりも早く変身が飛んでくるから」
「もー、お兄さんは~。そんなことないですよ。ヤミさんは優しいんですから」
そうかもしれないけど、その優しさが俺に向けられることは無いんだけどね。
「ヴィヴィオ~、早く行こー!」
「うんっ、今行くよ~! お兄さんは……」
「一応仕事だから。聖天子様が来るまで待ってるよ」
「はいっ、それではまた後で!」
ヴィヴィオちゃんは元気よく走っていった。
その後ろ姿を見送っていると、
「翔さん」
後ろから声をかけられた。護衛対象である聖天子様だ。
「ああ、聖天子―――え」
振り返った俺は言葉を失った。
聖天子様だけではなく、その横には雪菜がいた。当然だが雪菜も水着を着ている。水色を基調にしたシンプルなビキニタイプの水着だ。引き締まった体が太陽の光を反射して、うん、色々と我慢するのが大変だ。
そんな雪菜だが、しきりに周りを警戒している。
「先輩。あまりジロジロ見ないで下さい」
「そ、そうですね。私もあまり見られるのは恥ずかしいですから……」
雪菜がじろじろ見るなと言っているのは果たして『自分』なのか、それとも『聖天子様』なのか。
雪菜はジトッとした目を向けてくる。分かってるだろと言いたげな目だ。そんなものは『どちらも』に決まっている。
聖天子様も、落ち着かない様子で自分の体を抱いていた。
問題は聖天子様の水着だった。
今までで一番露出のある格好だ。なんせ、太ももの付け根まで見えてしまっている。雪菜の健康的な白さとは違い、透き通るような、透明感のある白さだ。
この人の立場を考えたら、同性にこんなにも無防備な姿を晒したのは初めてだろう。
自分のボディラインを見せつけるようなこの水着、誰が考案したのか、こんなものを成人前の女の子達が、学校という集団の中で着ているなんて信じられないな。
そう、聖天子様が着ているのは学校のプールの授業でおなじみ、スクール水着だった。
スク水だ何だと言っても、同年代のスク水なんて、実際に見る機会は絶無だからなぁ。
でも実際ヤバいな。こりゃ下手な水着なんかよりもよっぽどだわ。周りの男が前かがみになる理由もわかる。
着てるのが聖天子様だからってこともあるんだろうけど、ボディラインがごまかせないってのがこんなにえっちだとは。
「いやはや……」
「先輩……」
上から下までじっくりと眺めてしまった俺は、雪菜は心底軽蔑したと言われた。絶対言われた。心の中で。
「や、だってさ……」
コロナちゃんとかの年齢ならともかく、高校生になって公共のプールでスク水は……軽く犯罪では。というか犯罪では?
え、何? もしかして聖天子様っていじめられてるの? 違うよね?
「そういう訳ではありませんよ。水着はこれしか持っていなかったので」
「そりゃそうかもしれませんがね……」
聖天子様の立場では、気軽にプールに行くなんてことも出来ないだろう。あったのは在籍はしていても、ほとんど行けていないお嬢様学校のスク水だけ。
聖天子様の立場ならすぐに用意出来るのではとも思ったが、こっそりお出かけしている立場だったな、俺たちは。
「別に、この水着で公共のプールに行っちゃいけない決まりがあるわけじゃないもんな」
「はいそうですね、先輩」
「でも、しっかりと警護しないとな。コッコロには今日は楽しむように言ってあるから、俺たち2人で」
こんな美少女2人だ。謎の襲撃者だけではなく、ナンパ男にも注意しないとな。
「でも先輩―――」
「周りの目もあるしな。みんな開放的な気分になっているだろうし―――」
「先輩?」
「何か?」
雪菜が何か言いたそうだ。
「今日は聖天子様、こういう恰好なので、私が警護しますね?」
「こういう恰好って、お仕事なんだし、そんなこと言ってられないでしょ」
「今、はっきりとわかりました。今日の聖天子様に先輩を近づける訳には行けません」
「雪菜さん?」
聖天子様の前に立ちふさがる雪菜。聖天子様の手を取り、
「それじゃあ先輩、先輩もゆっくり休んで下さい。くれぐれも知らない女の子を引っ掻けないで下さいね?」
そのまま2人で向こうに行ってしまった。
ま、まあ? 雪菜もなんだかんだ言ってこういう場所は初めてだろうし? 知り合いの目を気にしないではしゃぎたいって気持ちもあったりするのかもしれないね! 護衛の仕事はあるんだけど!
「はぁ~……」
一人残された俺は、これからどうしようかと考えるのだった。
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「ゆ、雪菜さん!? 本当に良かったんですか!?」
「別にいいんですっ。今日は先輩抜きでっ」
「そうですか……」
翔の姿が見えなくなると、雪菜は引っ張っていた手を離した。
雪菜は聖天子をちらりと見る。
すらりと均整の取れた体形がくっきりと浮かび上がるスクール水着は、雪菜目線から見てもかなり危ないものだった。
だが、実際の反応は予想以上だった。それは周りを見ればわかるし、何より翔の反応も劇的だった。
何より、せっかく水着をお披露目した雪菜よりも、明らかに聖天子に視線が奪われていた。
「まさかとは思いますけど、ワザとじゃ……」
「違いますよ!?」
周りの視線を集める少女2人は、ただの友達のような会話を交わすのだった。