いろいろなれなくて大変でした。
特に時間を取られたのは、MGSVですかね。
俺は今、とある場所に来ていた。必要以上にフリフリな衣装を着た女の子に案内され、店内を歩く。行先はこの店の個室だ。
ここには俺の意思で来たわけではない。呼び出されたのだ。
わざわざ高い個室を指定したのも、いろいろと人に聞かれては困る話があるからだろう。こう言った店の個室は、密会するのに便利だからな。監視カメラも緩いところが多いらしいし、その辺も計算に入れているんだろう。
いい加減白状すると、俺を呼び出したのは『峰 理子』だ。理子は原作では武偵殺し。つまり今回の犯人、のはずだ。変なイレギュラーがない限りは。
そんな娘の呼び出し。
どこで知ったのか俺の端末にメールがあった。少し聞きたいことがあるから来てほしいと短く。場所まで指定されてた。
非常に悩んだのだが、俺はこの世界で理子に全くと言っていいほど接点がなかったため、この話を受けることにした。
そもそも、理子は俺のことを調べつくしてるだろうしな。お互いに、文字の上では相手を知り尽くしている状態になっている。
証拠がないために会ってすぐ逮捕はできないが、もしかしたら、俺を消すために呼び出したのかもしれなかったからだ。そうすれば現行犯逮捕ができる。
一つ懸念があるとすればゾンビゲーマーだが、レベルが
連れてこられた扉の前で、ガシャットと拳銃の確認をする。
深呼吸してゆっくりと扉を開けた。
ほんの少し爆弾の警戒もしていたが、扉を開けた瞬間爆発することはなく、本人が部屋の中にいるのを確認したことで、爆弾への警戒を緩める。
俺が入ってきたにもかかわらず、数人掛けのソファーに横になってゲームをしている。
金髪をツーサイドアップに結った、ゆるい天然パーマ。この店の店員ほどではないにしろ制服にはフリルがあしらわれており、短いスカートで足をパタパタしているため、下着がばっちりと見えてしまっている。
部屋には甘ったるい匂いが充満している。見ると匂いの発生源は、加湿器のように水蒸気を発生させているものだった。あれに何かしらを混ぜているのだろう。
テーブルには食べかけのケーキやお菓子が所狭しと並んでいた。
「峰さん?」
俺は少し早くなってきた心臓を抑えながら声をかける。
「え? あ、来てたんだ! ゴメンね~、集中してたから気が付かなかったよ~」
ゲームの電源を切ってソファーに座りなおす理子さん。そして自分のすぐ横をポンポンとたたく。ここに座れと言っているんだな。
俺はもちろん対面に座った。あんな近くに行ったら、小さいナイフで簡単にのどを掻っ切られてお陀仏だ。
「あれ~? そっちに座っちゃうんだ。せっかくいろいろサービスしようと思ったのに」
「や、別に気を使わなくても大丈―――」
「じゃあ、私がそっちに行っちゃお!」
驚くほど軽い身のこなしで、テーブルを飛び越え、俺に飛び込んできた。
完全に不意を突かれる形になった俺は、とっさに銃に手を伸ばし、
「うっ!」
理子とソファーにサンドされる形になった。
しかし、別に攻撃されたわけではない。体はどこも痛くない。それどころか、理子の身長にしては大きなものがこれでもかと押し付けられて、下半身に血液が集まってしまう。
「くふっ! かわいい反応」
身動き取れずにいると、クスリと笑った理子は俺の横に収まった。スプーンを手に取り、近くにあったケーキを柔らかく救い上げる。
「はいっ、あーん♪」
そういって俺の口元にケーキを寄せてくる。
「いや、いいって―――」
「彼女さんがいるから遠慮してるの?」
薬が入っている可能性がある食事には手を付けない。そんな初歩的なことを理由に断ろうとしたところで、またしても理子に遮られた。
「……調べたんだな」
「もっちー。『夜月 翔』君。今は4人の女の子……今は5人かな、と同棲してるでしょ? 若い男女が一つ屋根の下で暮らしてたら、そりゃあ、恋の一つや二つ、三つや四つして当然だよね!! しかも、男は翔君だけだし。とんだハーレムの王ですなぁ~このこの」
そういって、理子は俺を小突いてくる。
まったく冗談になってないのが冗談みたいだ。
「で? で? 翔君としては誰が一番好みなのかなぁ?」
理子はハイテンションで、俺たちの個人情報をべらべらしゃべってくる。俺たちが異世界から来た人間だということは口に出さなかったが、もしもの時の切り札に取っておいているのかもしれない。
それにしてもグイグイくるな。
お酒、お金、女には気を付けないといけないって授業で習ったけど、俺ぐらいの年頃の男子がこんな美少女に迫られて平静を保っていられるわけない。
俺だって、この娘が武偵殺しの犯人だとわかっていなかったら、やばかったよ。
「それよりも、用件ってなんだ?」
「もうっ! せっかちなんだなぁ、翔君は。早い男の子は嫌われちゃうぞ!」
今度こそ話を進めようとするが、ゆるりと躱されてしまう。しかも下ネタで。
「えっとね、今日、翔君に来てもらったのは、理子のことを売り込んでおこうと思ったからなんだよ」
「売り込む?」
「そう。理子は
「なんで俺に?」
わかりきっている質問をする。
「もちろん、翔君が持ってる仮面ライダーに興味があるからだよ」
だろうな。今日の目的は仮面ライダーについての情報を聞き出すことだったのね。
「あんなタイプの装備なんて見たことなかったからね。この前のバスジャックの時もいたでしょ? 報告書、読んだよ。ほかの人に手を出される前に理子が唾つけてとこっかなーなんて」
ぬけぬけと言ってくれる。
だったら俺もきっぱりと言ってやろう。
「残念だけど今は間に合ってるから。それと、この武装についても言えることは何もないぞ」
そっぽを向いてやる。もちろん意識は全く緩めない。もし理子が攻撃しようものなら、
しかし、反撃できなかった。
あまりにも無防備に、意識を張り巡らせていた俺の気が、一瞬緩んだ時に、押し倒してきたからだ。
本日二度目。理子とソファーでのサンド状態。
俺は男としてはちびだがそれ以上にちっこい理子は俺の上に乗っかり、体を密着させてきた。
少しずつ、下から理子の温かさが制服越しに伝わってくる。
胸元が少し開けられている理子の制服からはちっこい体には不釣り合いなほどの大きな胸が谷間を作っているのが見える。
男の性として思わず目が奪われてしまい、慌てて目線を違う方向に向ける。と、理子の顔しか見えなかった。
そのくらい近くに理子の顔があった。
近いだけじゃなく、緩いパーマがかかった髪の毛が外の空間を隔てている。手もいつの間にか顔にやさしく添えられている。それほど力が入っているわけではないため少し暴れれば抜け出せそうだが、そうはさせてくれないだろう。
「ねえ、どうしたら話してくれるの?」
「や、だから、話さないって―――」
「……ん」
「……っ」
鼻先をなめられた。
それだけで、すっかりがちがちになってしまう。
理子の髪の毛からバニラのような甘ったるいにおいがして、それが部屋の甘いにおいとまじりあいくらくらしてくる。
すっかり下腹部に血液が集まり、苦しさを訴えてくる。そんなことを知ってか、理子は意味深に腰を動かしてくる。
初めのころのおバカキャラはすでに影も形もない。まさに2つの顔を持つ女だ。
「ねえ、どうしたら、話して、くれるの?」
軽い吐息でもはっきりと感じられる距離で、見つめあいながら妖しく問われる。
そういって、少しずつ顔が近づけられていく。唇が触れ―――
そんな時。
ポケットに入っているものが音を鳴らした。
その音に反応してし越し身を固くした理子。そのすきに理子の拘束を何とか脱出し、電話に出た。
《あ、翔君? 私だけど》
《アスナ? どうかしたのか?》
《うん。アリアちゃんなんだけど、今日の夕方の飛行機で少し実家に戻ることになったんだって》
な、なんだって!?
《帰ってくるのはいつになるかわからない、ってメールで来たんだけど……翔君?》
《ゴメン、かけなおす》
そういって俺は通話を終了する。
「悪い、用事ができた。今日のところはこれで帰ることにする」
携帯の音に救われた。
あのままだったら……その、うん。
一瞬、このまま理子のことを見張ってることも考えたけど、もしものことがあるしやっぱり空港にいるはずのアリアと合流したほうがいいな。
空港に行くとするか。
……すべて終わった後に思い返せば、俺は何で、この時みんなに応援を頼まなかったんだろうか。焦ってたんだろうか。ま、後になって後悔することになるけど。
空港に着いた。が、ここで問題が発生した。
アリアが乗っている飛行機に乗ることができないのだ。
チケットは完売しているし、滑走路に飛び出すこともできない。警備員に止められてしまったからだ。
武偵証をみせてアリアが乗っている飛行機だけでも飛ばないようにしてもらおうとも思ったが、それも無理だった。なんでも上に確認を取らないといけないとかなんとか。
通常の便なら捜査のために欠便にしてもらう(もちろん間違いだった場合の費用は払わなければならない)ことはできるがアリアのは、いろいろとお偉方の圧力がかかったものでこれが通じないとか。
パラドクスで強行突破しようものなら、この空港のすべてを敵に回すことになる。そんなのを相手にしていたら、飛行機は飛び立ってしまいタイムオーバーだ。
悩みぬいた末に、すでに検査の終わった荷物とともにベルトコンベアーでこっそりと進むことにした。
その為に人のいないところで変身し、縮小化のエナジーアイテムを使った。
2重、3重の検知器があったが、難なく躱し、広いところに出た。貨物置場のようだ。
しかしその場所は、どう見ても普通の状態ではなかった。
異様に気温が低く、ところどころに氷も張っている。そして空港職員が誰一人として見当たらない。
不審に思った俺は伸縮化を解き、あたりを見回す。と、どこからともなくナイフが飛来した。
パラドクスにこの程度の刃物は通用しない。左胸にあたったが痛みはなかった。そこが凍り付いたことを除けば。
「ふむ。やはりこの程度では意味がないようだな」
そこにはありえない人物がいた。もっと後に、少なくとも、今回登場するはずのない人物。
「貴様が夜月 翔か」
「……そういうお前は
西洋風の甲冑に身を包み、手には西洋剣。銀髪を結い上げ、体の周りにはダイアモンドダストが舞っている。
「よく調べているな、と言いたいところだが、その名前で呼ぶのはやめてもらおうか」
不機嫌そうに目を細め、
「私はジャンヌ・ダルク―――ジャンヌ・ダルク30世だ」
「お前が出てくるなんて予想外だったよ。ここで都合よく待ち伏せしてることもな」
「貴様が馬鹿正直に滑走路に向かう男なら、私も楽ができた。いくら私でもこの空港の警備を相手取るのは面倒だからな。正面突破ができない場合どの位置を使うかを考えたまでだ」
そういってジャンヌは俺に剣を向けてくる。初めから臨戦態勢。話し合いの余地も時間もない。
「武偵殺しに頼まれたか?」
「ああ。まともに戦うには奴には荷が重いらしいから、な!」
ジャンヌは一気に間合いを詰め、切りかかってきた。切り口は滑らかで、明らかに剣の大きさよりも大きい。おまけに氷が張っている。
ただの剣ではない。食らったらパラドクスでもダメージを受けるな。
どうパズルを―――
「……いや、違うな」
今使うべきなのはパーフェクトパズルではない。
俺はダイヤルを180度回転させる。そうすることで、ガシャットギアデュアルのもう一つのゲームがスタートする。
《KNOCK OUT FIGHTER》
《The strongest fist Round 1 Rock & Fire!》
「変身!」
《Dual up!》
《Explosion Hit! KNOCK OUT FIGHTER!》
いつもとは違うパラドクスに変身する。
肩にあったパーツを手に持ち、顔はいつもと反転している。青が基調だったボディは燃え上がるような赤になっていた。
仮面ライダーパラドクス・ファイターゲーマー レベル50だ。
「武偵殺しの前哨戦だ」
俺は燃える拳を構えながらそう宣言した。
来週はとうとうパラドクスがレベル99に。震えて待ちます。