《ジカンデスピア!》
《カマシスギ!》
「ふっ―――」
「―――っ」
カナが使っているのは長い三つ編みの中に隠し持っていた大鎌、
それに対抗して、あえて同じ鎌で受けて立つウォズ。専用武器である『ジカンデスピア』を鎌モードにして打ち合っている。
時折カナの腰のあたりが何度か光る。それは腰のホルスターにおさめられている拳銃で行った
ウォズはジカンデスピアを回転させ、盾を作り出して防ぐ。
お互いに余裕がある戦いだった。
カナはその様子を見て首を傾げる。
アリアを取り戻すという明確な目的があるにもかかわらず、ウォズは形の上でしか戦っていない。適当に時間をつぶしているのではないかという錯覚すら覚える。
特に何かを言い合うわけでも無く、淡々と獲物をぶつけ合う2人。
「むっ!!! こ、これは……!」
ウォズは突然、何かの電波を受信したのか、明後日の方向を見た。その方向はインターミドルの会場だ。
「これは、祝わなければ……! すまないがこれで失礼する、カナ」
「どういう意味かしら。あなたが私と戦っていたのは、アリアを取り返すためのはず。ここでいなくなったら、私はアリアを連れてこの島を離れるわよ」
「ああ、それで構わない」
ウォズの答えは、聡明なカナの思考でも読み切れるものではなかった。
「元々、囚われの眠り姫を助けるのは私の役目ではない。むしろ、ここで私が神崎・H・アリアを奪還してしまう方が問題になる」
変身を解除したウォズに、カナも武器を下ろす。
「王子様の役目は夜月 翔って事かしら? この後で、アリアの奪還のために私達の所に来ると?」
「そういう事だ。我が魔王は間違いなく、君達から神崎・H・アリアを取り戻すだろう」
「すごい自信ね。それだけ信頼してるって事かしら」
「違うな。これは確定した未来だ。そしてもう1つ予言させてもらう。我が魔王は、君たちのボス、『教授』すら打倒し、この世界に新しい秩序を作り出すと」
「……何ですって?」
ウォズの口調は『教授』が誰なのかを知っているものだ。それなのに、こうも言い切る。カナはその根拠に少しだけ興味を持った。
だがその気持ちはウォズにお見通しだった。意地悪に口元をゆがめ、一礼する。
「すまないがその質問に答えていては歴史的な瞬間を見逃してしまう。再び言うが、ここで失礼する」
ウォズのマフラーが体を包み込んだ。次の瞬間、ウォズはその場から消え去ってしまう。
追手がいなくなったのであれば、もたもたしているつもりは無い。疑問を振り払ったカナは、アリアを抱え、島から脱出するのだった。
――――――――――――――――――
アナザーオーズから放たれた光は俺の手に収まり、一つの形になった。
迷わず起動させる。
《OOO》
「変身ッ!!」
《ARMOR TIME!》
《TAKA! TORA! BATTA! OOO!》
ビルドの時とは違い、タカ、トラ、バッタ、それぞれを模した物体が出現し、体に装着されていく。
頭、胸部、足、3色に分かれた見た目が特徴的だ。胸部にある、原作では使ったコアメダルの動物の絵が描かれているはずの部分には、ジオウらしく『タカ・トラ・バッタ』と書かれていた。
何はともあれ、仮面ライダージオウ・オーズアーマーに変身し―――
《祝えッ!!》
「「「「「「ッ!!???」」」」」」
会場中の人が―――変身完了した俺も含めて――――耳を塞ぐ。どう考えてもボリュームを間違えたとしか思えない大音量で、実況用のスピーカーからウォズの声が聞こえてきたのだ。
《ちょ、ちょっとあなた、何を―――》
《黙れ》
誰かの声が割り込むが、ウォズが一喝して黙らせている。
《全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者ッ!! その名も仮面ライダージオウ、オーズアーマー!! また一つ、王たるライダーの力を継承した瞬間であるッ!!》
会場中に響き渡るウォズの祝詞。
今まで怪物への恐怖で大混乱だった観客たちは、一言もしゃべらず唖然としていた。エレミアも、ヴィクトーリアも、ハリーもエルスも。
あ、あいつは……っ。って言うか、カナの方はどうなったんだ!? ここに来てるってことは……どう言う事なんだよ!? アリアは奪還できたのか?
「……この世界でもあるのか、あの意味不明な祝いの言葉は」
ディケイドは何か呟いている。
「おい。色々と言いたいことはあるのかもしれないが前を見ろ。オーズの力を使えるようになったのはいいが、まだ敵はいるんだからな」
「わ、分かってるよ!」
そうだ。色々と言いたいことはあるが、まずは目の前のアナザーオーズを倒すことに集中しなければ。
「ディケイド。俺たち2人で技を合わせよう。さっきは弾かれたけど、2人のライダーキックを合わせれば行けるはずだ!」
「ああ。それはいいが……」
何だ? 妙に歯切れが悪いな。
「アイツが化け物過ぎて忘れていたが、中に取り込まれている奴がな……」
「中に、取り込まれた人……?」
俺もすっかり忘れていたことだ。
アナザービルドの時はティアーユ先生が怪人化していたけど、今回は誰なんだ? 全く見当がつかないぞ。
でも、その辺の一般人ってことは無い、そんな予感がする。
「その通りだ、我が魔王」
「ッ!? ウォ、ウォズ!? お前……!」
音も無く後ろに現れたウォズ。もはやこいつがワープしてきたとしても驚きはしない。それよりもこいつには、聞きたいことがありすぎるぞ。
「まず神崎・H・アリアだが、申し訳ない。私の力及ばず、連れ去られてしまった」
「……」
俺はウォズを観察する。
力及ばずっていう訳にはどこもケガしているようには見えない。呼吸すら乱れていない。あんなに感極まって祝っていたくらいだ。体は何ともないんだろう。
胡散臭い。素性の知れないコイツに任せたのは失敗だったか。
「そう言わないでくれ。私は何時でも、君の味方だ」
「……胡散臭いことは言わなくていい。俺の知りたいことに答えろ」
「なんなりと」
「アリアは無事なのか」
「ああ。少なくともすぐに危害を加えられることは無いだろう。そう、この事態を対処してからでも十分に間に合う」
ウォズは本を開きながら俺の質問に答える。
「そうか、じゃあ次だ。アナザーオーズには誰が変身している?」
「変身者は、春日部 耀」
「耀が?」
全く予想外の名前だった。
「知り合いか?」
「まあ……一緒に住んでる娘だ」
「ああ、お前の女か」
ディケイドの呆れたような声に俺は顔を背ける。
「それよりも、どうして耀が?」
「彼女が一番適任だったからだ」
欲望の王には似合わないと思うが。や、ある意味欲望に忠実とは言えるけど。ビルドがティアーユ先生って言う科学者だったことを考えると、もっとふさわしい人がいたんじゃないかとも思える。
「だが、このレベルの欲望を受け止められる人材となると、そう簡単には見つからない。しかし、仮面ライダーには変身者が必要だ。欲望以外で、オーズの力と結びつくことが出来る者。その力を、彼女は持っていた」
「力……
俺はハッと思い当たった。
耀の力の源であるペンダント、『
「元々アレはあらゆる異能と策略に対抗するために造られた、
オーズも3枚のメダル、3種類の動物のパーツを組み合わせる。そういう意味じゃキメラみたいなもんだ。
そう言う意味じゃ、筋は通っているってことなのか。
「だが逆に、春日部 耀を選んだことがデメリットになっている部分もある」
「何?」
「春日部 耀にはもう1つ能力がある。ノーフォーマー。何者にも成れない者。本来は
「つまりなんだ、こいつを使ったやつはマヌケだったってことか?」
「さて、そこまでは。知らなかったのか、計算の内なのか」
ディケイドの質問に、ウォズは肩をすくめた。
「す、すみません! お話、まだ続きそうですか……っ!! 私のバインド、そろそろ限界で……!」
エルスが切羽詰まった声を出してくる。
「うぐぐぐ……っ!! あっ!!」
―――GYAAAAAAAA!!
凄まじい熱波とともに、アナザーオーズを拘束していたバインドがすべて砕け散った。
でもまあ、倒さなければいけないことに変わりはない。
「すみません、拘束が……! 多分、後1回が限界かと……!」
「なら、あと1回で決めるだけだ。そうだな、ジオウ?」
「ああ! もう1回みんなで―――」
―――チャリン、チャリン
メダルの落ちる金属音がした。見るとアナザーオーズの体から、メダルが落ちている。そのメダルは4足歩行のキメラになる。
サイズをそのまま小さくしたようなアナザーオーズが大量に生産された。
おそらくガタキリバコンボの能力。本体がそのままコピーされなかっただけ優しいもと言えるが、それが逃げ惑う人々を襲う脅威になることは変わりない。
「どうやら、あまり時間が無いらしいな」
「ああ! クロ! そっちは頼むぞ!」
離れた場所にいるクロは、弓の代わりに二振りの剣を作りだして斬りかかっている。
「ヴィクター、ウチらも!」
「ええ! 不良娘! 無暗に撃つんじゃありません!! 無関係の人に当たるでしょう!」
「分かってるよ!! クソッ! ちょこまか動いてんじゃねーよ!!」
他のみんなも分身体の処理に回り始めた。だが、元を絶たなければいずれ押し込まれる。
「おい、メガネ娘。もう1回拘束しろ。他の奴らは手が離せないらしいからな。俺とこいつで決める」
「メ、メガネ……わかりました……!」
苦虫を嚙み潰したような表情で了承するエルス。ディケイドはこういう人だから、許してあげて欲しい。
ウォズは呑気に本を開いている。やっぱりここで手を貸すつもりは無いらしい。
「でも、俺達だけで行けるのか?」
「当たり前だ。この世界の奴に花を持たせてやろうかとも思ったが、そんな余裕は無くなったみたいだからな。ここからは全力で行くぞ」
なんとも頼もしい言葉だ。
「お前にも少し手を貸してやろうか」
ディケイドは一枚のカードを取り出した。
《ATTACK RIDE TIMEMAZIN》
「は!?」
召喚されるのは見たことの無いエアバイク型のライダーアイテムだ。俺が全く知らないってことは、
「何を驚いてるんだ。お前のマシンだろ?」
「だよな……」
でも使わせてくれるってんなら有難く!
俺はそのマシンに乗り込んだ。騎乗スキルのおかげで、初めての乗り物でも難なく乗りこなせる。ファイズが初めてジェットスライガーに乗った時の様にはならないぜ。
「おおっ!! ロボットにもなれるのか!!」
変形してロボットになる。それだけではなく、オーズのライドウォッチが頭部に埋め込まれた。
「ただロボットになるだけじゃなくて、そのライダーの能力も使えるってことか……」
「それと……こいつは俺も疲れるが、あれ以上となると出さない訳にはいかないな」
《FORM RIDE OOO! GATAKIRIBA!》
ディケイドはタトバコンボを介さずに、直接ガタキリバコンボに変身する。そしてその固有能力『分身』によって数が増える。
その1人1人が、さらに新しいカードを取り出していた。
「マ、マジで……!?」
こ、これはかの伝説の……!? ディケイド1人で再現できてしまうのか!
原作の様にきれいに丸く並んではいないが、ディケイドの姿が変わっていく。
《FORM RIDE OOO! RATORATA!》
《FORM RIDE OOO! SAGOZO!》
《FORM RIDE OOO! SYAUTA!》
《FORM RIDE OOO! TAJADORU!》
《FORM RIDE OOO! PUTOTELIRA!》
《FORM RIDE OOO! BURAKAWANI!》
《FORM RIDE OOO! TATOBA!》
「うわぁ……!!」
圧巻の光景だった。
ベルトは違うが、オーズのコンボがすべてそろっているこの光景。映画館で見た時の興奮を思い出すな!
「なにボーっとしてる。ほら、お前も変わっておけ」
《FORM RIDE TIMEMAZIN! TAJADORU!》
「は?」
ロボットの頭部に装着されていたオーズの顔が、タジャドルコンボのものに変化し、背中に翼が生成される。
フォームチェンジまでできるのかよ、このマシン。そしてそれをすんなりとやってしまうディケイドさん。
「ほら、決めるぞ」
「ああ!」
同じ電子音がいくつも重なる。
「メガネ娘、やれッ!!」
「はい!!」
合図と共に再びアナザーオーズの周りに出現する魔法陣。
しかし、
―――GYAAAAAAAAA!!
アナザーオーズは咆哮と共に強烈な熱波を全方位に放射する。先ほどバインドを破壊したラトラータコンボの能力だ。
今度は拘束される前に、手錠型のバインドは魔法陣を含めて全て破壊される。
「そんな……!」
自身の魔法が全く通じないことに、茫然とするエルス。
「問題ない。行くぞ、ジオウ!! お前は女を引っこ抜け!!」
「ああ、分かった!!」
力を解放したプトティラコンボが頭部から強力な冷気を放射した。それはアナザーオーズが発する熱気と拮抗し、逆に押し返していく。
さらにサゴーゾコンボが重力操作を行い、動きを封じる。だがそれも、同じ重力操作で打ち消されるのは時間の問題だ。
その前に完全に動きを止める。
ラトラータとブラカワニは足に向かって飛びかかった。
ラトラータはその俊足とトラクローを使って、ブラカワニはスライディングとワニに変形させた足で、アナザーオーズの足をズタボロにする。
その間に空に飛んでいた俺は、
「はあああぁぁぁぁっ――――」
ロボットの足が、猛禽類を思わせる形に変形する。鋭い爪先が炎の纏い、相手に向けて急降下だッ!!
動きを止められ、胴体だけになっていたアナザーオーズ。
何処を狙うべきかは、タカの頭部が教えてくれる。
「セイヤーーーー!!!!」
正確に、アナザーオーズの体を削り取る。
「耀!!」
ロボットのハッチを開けて飛び出す。
「翔……?」
意識はあるのか、ぼんやりと返してくる耀。
「今助ける!!」
俺はトラクローZとジカンギレードを使って、ウゾウゾと耀の手足を拘束していたセルメダルを切り離す。
抱きかかえてロボットの中に飛び込む。
俺が飛び去ったところを確認したディケイドオーズ達は、一斉に飛び上がった。
ガタキリバコンボが分身し、シャウタコンボはタコの様に8本になった足をドリルの様にして、タジャドルコンボはロボットと同じく足を猛禽類を思わせる形に変形させ、そしてタトバコンボはもう一度タトバキックを。
何発ものライダーキックが叩き込まれていく。
その攻撃を受けたアナザーオーズは、セルメダルをまき散らして爆発四散するのだった。