爆発の衝撃によって雨のように降り続けるセルメダル。だがそれは雪の様に、地面に落ちた瞬間に消えていく。存在を支えていたものがすべて消滅したんだろう。
「ふぅ……」
「翔、やったね……」
俺は操縦桿から手を放し、ホッと一息つく。腕の中にいる耀が、弱々しく笑っていた。
「体は大丈夫か?」
「うん……ごめんね、ちょっと力が入らないかも……」
「そうか……おっと!?」
話していると、乗っていたタイムマジーンが消えた。ディケイドが消したんだな。
耀を抱っこして着地する。
「助かったよ、ディケイド」
「気にするな。慣れていることだ。それに、まだ終わってないみたいだぞ」
「ああ。外ではまだ怪獣が暴れてる」
原因がアナザーオーズとは別物らしいから、こっちにもすぐに対応しないと。
「怪獣……この世界にはウルトラの戦士もいるってことか?」
「……まさかとは思うけど、まさかウルトラマンの世界にも行ったことが……?」
「さあ、どうだろうな……おしゃべりはここまでだ。二手に分かれるぞ」
銀色のオーロラに飲み込まれ、姿を消すディケイド。あのたくさんのオーズによる攻撃は疲れるって言ってたはずなんだけど、その行動は迅速だ。
いつの間にか、ウォズもいなくなっていた。
俺も行かなければ。
「お兄ちゃん!」
「クロ! 耀を頼む!」
「え? ちょ、頼むって―――」
「外もヤバい状況になってる。俺はそっちの応援に行かなきゃいけない」
「―――分かったわ。みんなのことは任せて」
クロはすぐに状況を理解してくれる。
俺は頷き、飛び立とうと―――
「よっと」
「うお!?」
俺達の周りを囲むように巨大な剣が突き刺さる。
「これを取って……」
ライドウォッチを外され、変身が解除される。
「ク、クロ? 何を―――むぐっ!?」
「んっ、ちゅぁ、えろぉ、ちゅぱ」
クロに飛びつかれ、唇を奪われる。飛びつかれた勢いで尻餅をついてしまった。
そして魔力が吸われていく感覚。
「人の前でするなんて、けしからん。今回は私がお姫様のターンだったはずなのに」
この状況でも、耀の軽口は健在みたいだな。半眼で俺を睨み、口を尖らせていた。
「さっき戦うのに結構魔力を使ったから。その分の補充ね」
「だったら言ってくれれば……」
「お兄ちゃん、いつも行動が突然だから。仕返しっ」
唇をぺろりと舐めたクロは、小悪魔のような笑みを浮かべた。
「ちょっと! 怪物を倒したことですし、状況の説明をして下さらないかしら!」
ガンガンと外から剣を叩いてくるのはヴィクトーリアだな。多分近くにエレミアもいるんだろう。
「ディケイドのヤツ、説明が面倒で先に行ったんじゃないだろうな……」
説明なんてしている時間は無い。
「じゃあ、行ってらっしゃい」
「ああ。そっちも気をつけろ。オープン・ゲットッ!!」
剣で作られた小部屋から飛び立つ3機のゲットマシン。ヴィクトーリアが何やら叫んでいるが、ゲットマシンのジェット音で何も聞こえない。
「チェンジゲッター、
ゲッター1に変身した俺はマントのようなウイングを展開、天井に出来た大穴を通って、外へ飛び出した。
空から見ると島中が酷い有様だった。
サイズはウルトラマンの設定よりも若干小さくなっているが、そのパワーには変化が無いんだろう。目の前にある建物を簡単に破壊して、それぞれ別の方向に進んでいた。
だったら、
「来てくれ、セイバー―――!!」
俺の令呪が輝き、2人のアルトリアが召喚された。2人共、部屋着ではなく見慣れた鎧姿だ。
「状況はどうなっている」
オルタは短く問う。
「見ての通り。1人だと対処しきれない。それぞれ別の方向に行って戦おう」
「しかし、私たち2人が同時に戦えば、あなたの魔力が……」
「今回、俺の魔力は全部そっちに回す。遠慮なく使ってくれ」
今回は魔法じゃなくてゲッターで戦う。
「良いだろう」
「はい。翔も気を付けて」
俺達はそれぞれ、3方向に散った。
――――――――――――――――――――――
怪獣が暴れだしたことによって島は大混乱に陥っていた。
少々物騒なこの学園島といっても、それに対抗するだけの戦力は整っていた。そのおかげで、今まで大規模なテロや犯罪は防がれていた。
だが今回の怪獣は、それを超えていた。こっそり事態を収拾することがすでに不可能なレベルだ。
怪獣も、1体1体が雑魚ではない。通常の拳銃はもちろんのこと、超能力もレベル3以下では傷1つ付けることが出来ないような相手ばかりだ。
巨体を生かした剛腕でビルを破壊するものもいれば、口から火球を吐くもの、電撃を放射するもの、体中に備え付けられた兵器を乱射するものまでいる。
それは1国の軍隊を壊滅させるに足る戦力だった。
だが、それに対抗するために用意されていた島の戦力も、伊達ではない。
怪獣が現れたことで、島中の管理局と武偵にスクランブルが出された。その中でも一番早く動いたのは特務六課だった。
7人の機動部隊員が現場に向かうヘリに乗っていた。
「皆さん! そろそろ現場に到着ですよ!!」
そう言って後ろに叫ぶのは、六課専属のヘリパイロットであるヴァイス・グランセニックだ。
出撃の瞬間を今か今かと待ちわびている7人―――なのは、フェイト、ヴィータ、シグナム、ティアナ、スバル、クローディアはすでにBJを纏い、最後のブリーフィングをしていた。
《それじゃあ、今こっちで拾ってる情報を伝えます》
ディスプレイ越しのはやては普段のふざけた態度をおくびにも出さない。7人も今がどれだけ非常事態なのかを理解している。重苦しい雰囲気だ。
《現在、島には7体の怪獣が出現しています。すでに何人かの死傷者が出ていて、崩れたビルの中には取り残されている人も多数おる》
画面上には怪獣の進行方向がわかるように、島の地図と矢印が映し出されていた。
「まずは人命が優先。だよね?」
「だが脅威も排除する必要がある。奴らを止めることが出来なければ、怪我人が増えるばかりだぞ」
なのはの言葉に頷きつつも、シグナムは腕を組んで意見を述べる。
「むしろ、アタシらが怪獣をぶっ飛ばして、救助は武偵とか他の管理局員に任せたほうがいいんじゃねーか?」
「そうだね。あの怪獣、前に戦ったやつと同じくらい強いんだったら、相手を出来る人も限られてるだろうし……」
この中では一番小さい、というか小学生の様な体つきのヴィータだったが、一番ヤル気に満ち溢れている。
怪獣の強さを身をもって体験したことのあるフェイトも、その意見に賛成した。
「こうしてみると、私たち全員が出勤のこの日でよかったですね」
「そうだね。こうしてみんなで動けるんだし!」
「元々この日は、何かが起こりやすいと一番警戒されていますからね」
ティアナはすっかりと仕事モード。スバルは普段とあまり変わらないが、それが逆に場の空気を盛り上げていた。
そしてクローディアは、この状況でもニコニコと余裕のある笑顔を浮かべている。
クローディアの言う通り、みんなの疲れが最高まで溜まる会議最終日は、狙われる可能性が高いとして警戒の度合いが上げられる。
もっとも、クローディアは他の要因で警戒することが出来るが。
「でも、他の所も手一杯だから、やっぱり1匹1匹確実に対処していくしかないね。増援もいつになるのか分からないし」
なのはの言葉に全員が頷いた。
《それでええと思う……それともう1つ。私らにとっては、かなり嫌な報告が上がってきたんや》
はやては言いにくそうに口を開く。
「嫌な報告?」
《新しく怪獣が出現したらしい―――インターミドルの会場に》
「「「ッ!!??」」
クローディアを除く全員が息を呑み、クローディアも顔つきを鋭くする。
インターミドルに出現した怪獣というのはもちろんアナザーオーズのことだ。もちろん厳密には違うものなのだが、六課にとってはどうでも良いことだ。
「そんなっ! みんなはどうなったの!?」
今日はインターミドルの決勝戦。チームナカジマや八神道場の面々が観戦に行っていることはみんなも知っている。
なのはが多少取り乱すのも、仕方のないことだ。
《分からへん。向こうも相当混乱してるみたいで》
「……っ!!」
なのはは唇を噛みしめ、浮かしかけた腰を下ろした。自分の職務を思い出したのだ。他の者もなのはの様子を見て自分を押さえる。
《仕事に私情は厳禁、やけど、インターミドルは人が多く集まってる場所でもある。出てると分かってる場所を放ってはおけないなぁ》
「では隊を2つに分けましょう。比較的機動力のある私とテスタロッサがインターミドルの会場に。高町は空から支援砲撃を。スバルとヴィータで怪獣に打撃を与える。ティアナとクローディア下に降りて状況の報告と怪我人の救助を」
《ん、それでええよ》
最後に動き方を決めたのは『烈火の将』の異名も持つシグナムだった。はやても賛成したところで、現場に到着した。
開いていくヘリのハッチ。
《それじゃあみんな、よろしくな》
「「「「了解ッ!!」」」」
号令を返した7人は、それぞれの戦場へ飛び立っていった。
―――――――――――――――――――
活躍するのは管理局だけではない。ここで活躍すれば、後々管理局から報酬が出る。稼ぎ時だと判断した武偵がこぞって行動を開始していた。
しかしその中でも、お金目当てではない集団がいる。
原作では迷宮都市オラリオ有数のファミリア、この世界では聖王教会の懐刀になっている―――
「ロキ・ファミリア、行けッ!!」
フィンの一言でメンバーたちが一斉に飛びかかっていく。
一番槍のベートが撹乱し、怪獣の重い攻撃をガレスが受け止める。動きが止まったところにティオネとティオナの連携が突き刺さる。
その戦いの様子を、フィンはビルの屋上から観察していた。
「ただ倒すだけなら容易いが、こうも街中で暴れられるとね……リヴェリア! 救助はどうなっている!?」
《もう少し待ってくれ。怪我人を最低限動かせる状態まで回復させている》
「急いでくれ。ここだけに時間はかけられない……さて」
ロキ・ファミリアのメンバーなら、崩れかけてビルを怪獣から守りながら、怪我人を救出することは出来るだろう。その後になって、怪獣を倒すことも。
だが、ただ状況に対応しているだけでは埒が明かない。そう判断したフィンは手元に残しておいた団員に指示を出した。
「アイズ、君は遊撃だ。この怪獣、見た目や能力こそ違うが、出現した時間はほとんど同じ。とすれば、召喚者が近くにいてもおかしくはない」
「わかった。行ってくる」
フィンの指示に、アイズは小さく頷く。
「―――目覚めよ(テンペスト)」
その一言で、アイズの体が疾風を纏った。
ロキのステイタスによって発現した魔法『エアリエル』、風属性の付与魔法だ。自身と武器に『風』を纏うシンプルな魔法。
武器に纏えば『攻撃力と攻撃範囲の拡大』、体に纏えば触れる事すら出来なくなる『鎧』に転じる。攻防で万能の威力を発揮する魔法だ。
飛び立とうと足に力を込めたところで、フィンに呼び止められる。
「ああ、そうだ、アイズ」
「……?」
今まさに飛び立とうとする直前、フィンが声をかける。
「今回の相手は『怪物』だけど、くれぐれも『あの力』は使わないようにね」
「……わかった」
小さくうなずいたアイズは飛び去って行った。
――――――――――――――――――――――――
4階建てのビルの屋上から島の騒ぎを見物していたジャグラスは、怪獣を出す手を止めていた。
「出した先から倒される、か。流石は学園島。実力者がそろってるねぇ」
特にすごいのは抜群の砲撃能力を生かして怪獣のヘイトを一身に受けるなのはだ。誘導弾を使い怪獣に絶え間なく弾丸の雨を降らせる。それでも興味を無くしてしまいそうになれば、大威力の砲撃だ。
そのおかげで4体の怪獣はそれ以上前に進むことは無くなっている。
段々と怪獣の足元には武偵や管理局が集まり始めている。この状況をひっくり返すには、さらなる怪獣を投入する必要があるが……
「こんだけ暴れさせれば十分だろ。あいつらも無事逃げ切ったみたいだし、俺も退散しようかね」
ジャグラスにはそこまでする必要がない。適当なところで切り上げるのが吉であり、この辺りが潮時だ。
ジャグラスはダークリングを仕舞おうとして、
「動かないで下さい」
「ん?」
鋭い声で呼び止められた。武偵高の制服を着た少女だ。
「(確かこいつは結城 アスナ。あの夜月 翔の女だったな……面倒な奴に見つかったもんだぜ)」
「その手に持っているモノは何ですか?」
「ああ、こいつはな……別に、アンタにゃあ関係ないだろ?」
ジャグラスはとっさに良い答えが思いつけない。おもちゃだ、なんて言ってもごまかせるとは思えない。
その不自然な様子に、アスナの疑問は膨らんでいく。
「(あの女、思った以上に強かみたいだなぁ。俺を見て物怖じしないとはな)」
「(この人、多分何か知ってる。もしかすると、犯人なのかも)」
見た目で判断するのは失礼かもしれないが、アスナは確信しかけていた。目の前の人物が今の騒ぎの元凶であると。
「お話、聞かせていただいてもよろしいですか?」
「嫌だ、と言ったら、その腰にあるもんを抜くのかい?」
「場合によっては、そうなりますね」
「ハッ!」
その言葉をジャグラスで笑った。
「嫌だな」
「忠告はしました」
アスナはレイピア、ジャグラスは刀をそれぞれ抜いた。
「ちょいとばかし痛い目を見てもらうぜ、お嬢ちゃん。あんまり抵抗しないでくれよ」
「それはこちらのセリフです」
お互いの刀身が太陽の光を反射し―――次の瞬間、打ち合わされた。