「あいさつ代わりぢゃ」
パトラが指を上げると、自身が乗っている船―――
指を振り下ろすと同時に、その光が光線になって放たれた。
狙いはもちろん俺達の乗っている魚雷。強がりではなくパトラは俺達の場所は完全に理解していたらしい。
「ッ!!」
それを察知した俺は、発射よりも前に魚雷から脱出するためのボタンを押していた。
あと少し遅かったら、体が真っ二つになっていただろう。
眼下の海中に突き刺さる光線は、そのまま海面を切り裂いていく。海中にあった魚雷は真ん中から切断され、魚雷の爆発と沸騰した海水の水蒸気爆発が海面を押し上げた。
周りを見ると、全員無事に脱出できたみたいだ。コッコロと雪菜を同じ魚雷に詰め込んだのは正解だったのかもしれない。
「エクシア!!」
青い装甲が飛び出して俺の体に装着されていく。胸部と背中には特徴的なGNドライブ、そこから緑色の粒子が放出された。
左手にはGNシールド、右手には格納状態のGNソードが装備された。
対空能力を得たことで、周りを確認する余裕が出来る。
「これはこれは……」
空にはオジマンディアスのスフィンクス型の宝具、
森の奥には光り輝くピラミッド、
空を飛ぼうものならスフィンクスが撃滅し、地上から迫ろうにも犬男たちが無限に湧き出てくる。
厄介なもんだ。
だが俺達の味方である2人の男も、既に砂浜に辿り着いていた。士とウォズだ。
「変身」
《KAMEN RIDE DECADE》
士はディケイドに。
《WOZ》
《ACTION!》
「変身」
《投影!》
《FUTURE TIME!》
《スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!!》
ウォズはウォズに変身した……分かりにくいな、コレ!
2人のライダーは各々の武器を持ち、さっそく砂浜を埋め尽くしている犬男と戦い始めている。2人共、犬男に後れを取るようなことは無い。次々と相手を処理していく。
「先輩!」
「ああ!」
俺も雪菜とコッコロを回収し、砂浜へ着地した。ディケイドとウォズが無双してくれたおかげで、砂浜の真ん中には安全に着地出来た。
―――GYAAAAAA!!!
そこに襲い掛かってくるスフィンクス。だが、
「雪霞狼ッ!!」
雪菜が一歩前に出る。
ケースから取り出された槍が可動し、本来の姿になる。槍先に浮かんだ魔法陣が淡い光を放ち、襲い掛かってきたスフィンクスの足を難なく切り裂いた。
あらゆる魔力を無効化する神格振動波駆動術式は相手が宝具であろうと容赦なく発動する。いや、むしろ魔力の塊の宝具だからこそ、より力を発揮するのだ。
「やあぁぁぁぁっ!!」
ひるんだスフィンクスを雪菜は逃がさない。
雪菜の雪霞狼は難なくスフィンクスの胴体を貫いた。ダメージが許容量を超えたのだろう。そのままスフィンクスは消滅する。
「やるもんだな、あのお嬢ちゃんも」
いつの間にかジャグラスが近くに来ていた。
「そう言うお前も相当だけどな」
その後ろには、俺に近づくために邪魔だったのだろう犬男が何体も倒れている。音もなく全員切り裂いたんだ。
「そりゃどうも。それで、どうする? 上か下か」
「上だろうな……」
俺達はここから、パトラの所までたどり着かなければならない。そのためのルートを決めないといけないんだけど……
下の場合は森の中を隠れながら進むことになる。それだと生い茂った木々のせいで余計な体力が消費されてしまうし、しびれを切らしたパトラが
それにピラミッドの下までたどり着いても、パトラと戦うためにはそこから空に浮いている
だったら最初から空を飛んだほうがいい。
もちろん上は上で、狙い撃ちにされる可能性はあるんだけどな。
「コッコロ、頼む」
「お任せください、主様」
プリンセスナイトの能力で、この場にいる全員の強化を始める。
「ん?」
「これは……」
ディケイドとウォズの動きが目に見えて変わった。斬撃の一振りで、打撃の一発で数体の砂男をまとめてブチのめす。
「へえ? お前、こんな能力も持ってたのか」
ジャグラスも急激に増した自らの力に驚いていた。
「まあな。なるべく早く移動しないと……」
全員で固まっているこの状況はよくない。あらゆる敵がここに集まり、攻撃が集中する。こうして喋っている間も、GNソードのライフルモードで犬男を牽制する。
一番負担が大きいのは雪菜だ。さっきから襲い掛かるスフィンクスの相手を1人でしている。
「はあああああっ!!」
雪菜が気合とともに、再びスフィンクスの胴体を貫いた。今は何とか霊視のおかげで優位に立てているが、スフィンクスが学習すればその均衡が崩れる。
何故なら
だからその前に動かなければいけない。
その要はコッコロだ。
コッコロの風の精霊が森から木の葉を集めて、それを編み合わせていく。ここから大きく飛翔するための、木の葉で出来たグライダーだ。
完成まではもう少し時間がかかる。
「雪菜! 合わせるぞ!」
「はいっ!!」
スフィンクスもだんだんと雪霞狼の特性に気付き始めている。無暗にその刃に触れないように立ちまわり始めたのだ。
だが警戒されているのは、まだ雪菜の雪霞狼だけだ。エクシアの機動力を生かして雪菜との間合いを測るスフィンクスへ突っ込んでいく。
パキンッ! と俺の右手がスフィンクスの術式を破壊する感触があった。
その直後に、スフィンクスがバラバラに崩れ落ちる。
「次だ!!」
その場で急旋回し、俺に攻撃しようとしていた別のスフィンクスに触れて消し去る。
さらにそこから2,3体消し去ったところで、俺もスフィンクスに近寄れなくなる。俺の危険性を理解したらしい。
だが、時間は十分に稼ぐことは出来た。
「主様! 完成いたしました!」
コッコロの方向を見ると、全員で乗ってギリギリの広さのグライダーが完成していた。葉っぱで作られているだけあって全て緑。強度もそこまでではないだろう。
犬男やスフィンクスも出来上がったものに興味を示し始めている。壊される前に飛び立たなければ。
「よし! みんな乗り込んで―――ッ!?」
俺はとっさに盾を構えた。
その直後、凄まじい衝撃と共に盾が弾き飛ばされてしまう。
その攻撃に全員が身構える。犬男の海が真っ二つに割れ、その人物が姿を現した。
「カナ……いや、遠山 金一か……!」
その手に持っているのは古いタイプのリボルバー銃。そこからうっすらと煙が昇っている。
ビリー・ザ・キッドを
「なるほど、空を選ぶのか」
「……っ」
金一の呟きに俺は息を呑む。全員がかかれば行けるか? このメンバーなら、流石に金一といえど……
「行っていいさ。お前以外はな」
金一の言葉は予想外のものだった。金一は俺を指さしている。
「その右手、予想以上に厄介のようだ。スフィンクスには任せておけない」
俺の
この右手で触れば、クラスカードの
とは言え、こんなにあっさりと行かせてくれるとは……戦力を分散させたいってことなのか?
でも、行って良いと言うのなら甘えさせてもらおう。無限の魔力を持っているパトラ相手にはとにかくスピード勝負をしなければスタミナ負けしてしまうのだ。
「みんな、行ってくれ!」
「先輩!」
「主様!」
雪菜とコッコロが叫ぶが、ディケイドとジャグラスが2人を抱えてグライダーに乗り込んだ。
カナは行っても良いと言っているが、周りの犬男はそうではないらしい。何かをしようとしていることを感じ取ったのか、攻撃を集中させようとしている。
「コッコロ!」
「っ!! 風の精よ―――!!」
俺の大声を聞いて、コッコロは槍を掲げる。
プリンセスナイトの力を受けて一回り大きくなった風の精が、強力な上昇気流を発生させた。
『4人』を乗せたグライダーが浮かび上がり、空に昇っていく。
……あれ? 4人? 雪菜、コッコロ、ディケイド、ジャグラス。あれ!?
「私はここに残ろう」
ウォズはグライダーに乗り込んでいなかった。
「お前……」
「遠山 金一は我が魔王に興味がある様子。ならば私は臣下として、群がる羽虫を掃わなければ」
わらわらと寄ってくる犬男を切り伏せて一礼した。
上に飛んだグライダーを迎撃するためか、スフィンクスの攻撃は無くなった。しかしその代わり、地上の犬男全てがこちらに向かってきている。
確かにカナが犬男の影から銃撃してくるのは厄介だ。それを食い止めてくれるウォズの行動は確かに有難いけど。
「お前……」
だったら俺も、カナをどうにかしないとだな。
「(あのウォズとかいう男、やはり……だが)別に俺は、逃げも隠れもするつもりは無い。それに、俺としても都合がいい」
「なんだと?」
「俺は俺で、あの男が言ったことを確かめないといけない。お前の腕を見せてもらおうか」
そう言って金一は大鎌『スコルピオ』を構えた。
「望むところだ」
GNブレイドの二刀流を構える。
次の瞬間、俺達はぶつかり合った。
――――――――――――――――――――――――
「先輩―――!!」
「雪菜様、乗り出さないで下さいまし!」
雪菜の声はグライダーを上空に運ぶ風にかき消される。
空まで運ばれたグライダーは、パトラの乗る
風の精霊によって進みたい方向へとグライダーが進んでいく。
「妾と同じ空まで登ってくるとは、あまつさえ、妾よりも高い位置から見下ろすとは―――不敬じゃな」
それを、
「雪霞狼ッ!!」
雪菜の持つ槍の一閃が、真っ二つに切り裂いた。
「先輩はいつもそうやって……! もういいです! 先輩がそのつもりなら、先輩抜きでどうにかして見せます!」
「はいっ! 全力を尽くしましょう!」
目の前を飛び回るスフィンクスとパトラに向かって、コッコロと雪菜は宣言するのだった。
――――――――――――――――――――――――――
俺と金一の武器が打ち合わされ、何度も火花が散る。
「このっ!!」
「ふ―――」
金一は俺を倒そうというよりは、戦いを長引かせたいように見える。
俺の斬撃は難なく躱され、下から救い上げられたスコルピオが俺の手からGNブレイドを奪い取った。
回転して打ち上げられたGNブレイドが、地面に突き刺さる。
「ふむ。余程の強敵と戦ったことがあるらしいな。思い切りがいい。しかし勢いや度胸はあるが、技量はまだまだといったところか」
これがヒステリアモードの金一か……!
『緋弾のアリア』の主人公、遠山キンジとその一家が持つ特殊体質、『ヒステリア・サヴァン・シンドローム』。キンジはヒステリアモードと呼んでいる。
性的興奮をトリガーにして神経伝達物質を媒介し、大脳・小脳・精髄といった中枢神経系の活動を劇的に亢進させる能力だ。
ヒステリアモード時には思考力・判断力・反射神経・視力・聴力などが通常の30倍にまで高まる。
そりゃあキンジも、生身の素手で銃弾を跳ね返したり、音速を超えた打撃を行っていたからな。
金一も、するりするりと俺の攻撃を受け流すくらいやってくるだろう。
「世の中は常に変化の中にある。だが、今起ころうとしている変化はこの数百年で一番大きなものだ」
呑気にもお話を始めた。
空いてしまった片手にGNソードを持ち、それに応える。
「そもそも君は、イ・ウーについて何を知っている?」
原作知識として知っている部分はあるが、せっかく説明してくれるんだ。話を聞こうじゃないか。
「理子に聞いた話じゃ、無法者の学校だろ? お互いのスキルを学び合うとか」
「そうだな。それも間違いではない」
俺は不意打ちに備えて構えているが、金一は実にリラックスしている。
「組織での活動目的は自己の鍛錬や目的の実現など、各自の自主性に委ねられている。組織内には法規が存在せず、またいかなる国家の法律もイ・ウーでは無意味。真の意味で『無』法者の集団だ」
「自分の目的のためなら何をしてもいいってことか。メンバー同士でも、自己の目的の障害になるなら排除しても良いって?」
そんなものはもはや集団ではない。
「イ・ウーは今まで、トップである『教授』の絶対的な力によって束ねられていた。だが、彼の死期が近づいている」
徹底した実力主義、そのトップに立つ人間が圧倒的だからこそ、なんとか集団の形を保てていた。それが今なくなりそうだってことだ。
「今、イ・ウーは2分されようとしている。教授の気質を継ぎ純粋に己の鍛錬を目的とする
この世界、様々な作品のおかげで猛者は多い。いくらイ・ウーの
俺の知らないメンバーがいるかもしれない。いや、確実にいる。
「それで、アリアのことをどうするつもりだ」
「パトラがイ・ウーのリーダーになるために利用する。それはさっき言った通りだ。あいつはああいう性格だが、戦争を望んでいるわけではないからな。だが……」
金一を俺へスコルピオを向けてくる。
「それと同時に、お前の実力を知りたかったというのも本音だ。あのウォズという男は、お前は教授すら倒しうると言った。それを確かめたい」
「……だったら存分に見せてやるよ!」
俺と金一は再びぶつかり合った。