綺凛を家まで送った翌日。昼休み、俺は土御門、矢瀬、メアと会話していた。
話題は昨日のこと、俺が綺凛を送って行ったことについてだ。
メアは大きな棒付きキャンディをぺろぺろと舐めていた。
「ふーん、じゃあ昨日は後輩の娘を家まで送って行ったんだ」
「そうだな。まあ、そうだな……」
少し言い澱む俺。
その後に何があったのかを考えれば、詳しく聞かれるのは……まあ別に不味くはないか。送っていったのは本当のことだし。その後のことを教えなければ。そもそも人に言う事ではない。
こいつらも学校の外までは監視していない、と思います。うん、思います。
そう、綺凛があんな下着をつけていたことを知っているのは俺と理子だけなのだ。そう思う事にしよう。俺だって、綺凛の家に着くまでは知らなかったんだ。
「なるほどな、それが、貴様が今日死ぬ理由か」
「何言ってんだお前は」
思わずその時の情景を思い出しそうになった俺は、土御門が暴走寸前になっていることに気が付かなかった。
「昨日は突然教室を飛び出していったと思ったら、そんな理由だったとは。後輩は雪菜って娘だけじゃ無かったのかにゃー!」
「んなことは誰も言ってない。後輩が1人しかいちゃいけない、なんてルールは無いだろ」
どうやら暴走の理由はくだらないことだったらしい。
「後輩キャラが2人も3人もいたら、属性被りで大変なことになるだろうがッ!! 加えて今にも『先輩』って呼んできそうな桜ちゃんもいるし! そこんところ、しっかり考えてるのか!? しかも、あんなバインバインのお姫様の面倒も見ることになるなんて……!
1人くらい分けてくれー!!」
「ホント知らんわ!!」
「えいっ」
キシャー!! と奇声をあげ出した土御門をメアが沈める。
「よ、容赦ねぇな、メアちゃんは」
派手に吹き飛んだ土御門はいくつかの机を巻き倒して床に転がっていた。時折痙攣しているため生きてはいるが、顔面に突き刺さった正拳突きで首が嫌な音を立てていたような気がする。
「えへへ、殺気を感じたからつい」
「つい、の威力じゃねだろ……」
矢瀬は顔を引き攣らせているが、俺も同意見だ。
「しょうがないよ。殺気には反応しちゃうもん」
ちなみに、その殺気を向けられていたのは俺なんだよな? 土御門はどんだけ本気だったんだ。
「黒崎 メア。あまり暴れないで下さい」
すると横から声をかけられた。読んでいた本を閉じたヤミだ。
「あはは、ごめんね、ヤミちゃん。あ、私も手伝うね!」
メアは倒れた机を直す作業を手伝い始める。
その隙にヤミが顔を寄せてくる。
「馴染んでいますね」
「ああ、そうだな」
メアに机を倒されたクラスメイトも、あまり嫌な顔をしていない。面白い騒動があったという程度の認識なんだろう。一緒に机の修復作業を行なっている。
「ヤミも話してみれば? 案外仲良くできるかもしれないぞ?」
「必要があるとは思えません。向こうは私を殺し屋に戻そうとしているんですよ? その辺り覚えているんですか?」
「いやいやいや! もちろん覚えてるって。ってか、ヤミのイメージ的には殺し屋はもう引退してるんだな」
「今の私は武偵高の生徒ですよ。武偵憲章を覚えていないんですか?」
武偵は人を殺しちゃいけないってことか? それは国にもよるからな。それよりも、この生活に馴染むためには人を殺しちゃいけない、って意識が強いんじゃないか?
「……とにかく、私が必要以上に関わる必要はないはずです。近況なら、すでに仲良くしているあなたから聞けばいい」
それもそうだが。
「どうしたのヤミちゃん。なんか怒ってない?」
おしゃべりな矢瀬が会話に混ざってくる。でもまあ、俺もそんな感じがしていた。俺だったら間違っても口には出さないが。
「あなたには関係ないことです、矢瀬 基樹」
案の定、ヤミの鋭い視線を向けられてしまう。
その視線にぶるりと体を震わせた矢瀬は、
「おっと、先輩からの呼び出しだ。ちょっと行ってくるぜ」
わざとらしくそう言って席を立った。多分命の危険を感じたんだな。
「夜月 翔」
「何だ」
「まさかとは思いますが、矢瀬基樹の言葉を真に受けてはいないですね」
「受けてない。ヤミは怒ってない。俺に忠告してくれただけ」
「それはよかったです。いえ、そもそもアナタが黒崎メアと関わりすぎているのが問題です。普通に学友として接するだけではなく、まさかあんな関係にーーー」
「あんな関係とはどんな関係だにゃー!! ぐふッ!?」
飛び起きた土御門の顔面に、ヤミが変身させた髪の毛の拳を突き刺さした。鼻血を出して倒れる土御門を誰も気に留めない。
「とにかく、黒崎メアと仲良くするのはいいですが、あまり深入りしない方がいいです」
そのセリフを聞いて、お前やっぱり怒ってるだろ、と思うのは極めて自然な事だと思う。でもこれ以上喋ることはないとばかりに、ヤミは読書に戻ってしまった。
周りから人がいなくなっちゃったし、俺もトイレにでも行っとくか。
―――――――――――――――――――――――――――
「翔くん!」
「メア? 何だよ、こんな所で」
トイレから出ると、メアに待ち伏せされていた。
「え? やだなぁ、私たち『オトモダチ』でしょ? 最近忙しそうだし、色々と溜まってるんじゃないかな〜、って」
「おいおい……」
メアは笑顔だ。笑顔で『誘って』きている。
周りには人がいないといえ、ここは武偵高だぞ? 那月先生に見つかったら殺されてしまう。
「ふ〜ん? そうなんだ。昨日は綺凛ちゃんとしたんだ」
「あ、お前、俺の記憶を……!」
いつの間にかメアの髪の毛が俺に接続されていた。昨日のこともバッチリ読み取られたらしい。
「うわぁ、綺凛ちゃん、すっごくえっちぃじゃん! 翔くんの記憶だけでも、ドキドキが伝わってくるよ! しかも……ふふふ、みんなには家に送るから六課に遅れるって言ったんだね。ホントはセックスしてたのに」
これはまずいですね。
俺の背中に冷や汗が流れる。
「メ、メアさん?」
「ね? しよ? 大丈夫、この時間使われてない教室は調べてあるから。それに翔くんには、気配遮断? っていう能力もあるんでしょ? だったら見つからないよ! 万が一、那月先生に見つかった時は、2人で戦お?」
「わ、わかった」
俺はコクコクと頷いて、メアの後ろについて行くのだった。
こういうことしてるから、ヤミが怒るんだよな。
「(ま、どっちにしても報告はするんだけどね? そういう約束だし?)」
「メア?」
「んー、なんでもなーい」
メアに連れてこられたのは、無人の教室だった。鍵を変身で開け、もう一度施錠する。
「ここは午後の選択授業でも使われないから、今日は誰も来ないハズだよ……私たちみたいに、隠れてこそこそする人じゃなければ、ね」
メアの瞳が怪しく光っていた。獲物を狙う目だ。ここまで連れてこられた俺はさしずめ、自分から罠に飛び込んだウサギだろう。
「じゃ、始めよっか?」
その一言で、俺の視界の景色が変わる。
「っ! サイコダイブか?」
俺の視界が一瞬にして切り替わる。揺れる床と車窓の外で流れている景色。ここは電車の中だ。それもただの電車ではない。俺は『覚えていた』。ここは昨日、綺凛と一緒に乗った電車だ。座席に座っている男性も、吊り革に捕まっている学生も、俺には見覚えがあった。
「そうだよ〜。でも、ちょっといつもの奴とは違うんだよね」
「というと?」
「今回は翔くんの五感に働きかけて、ここが昨日の電車だって誤認させてるだけだから。実際にはここはさっきの教室だし、適当に歩いてると机にぶつかるよ」
わざわざこんな場面にしたってことは。
「うん。ほら」
メアはスカートをまくり上げた。
身に着けていた下着は、綺凛が昨日身に着けていた下着だ。あのエッチな下着。真ん中部分がぱっくりと割れてすぐさま挿入できるようになっているモノ。
「上もそうなんだけど、こっちは全然サイズが違うからね~。トランスでおっきくは出来るけど、気持ちよくなると集中出来なくて萎んじゃうちゃうんだよね」
メアは、一度自分のおっぱいを大きくしてすぐに元に戻した。
「完全に同じシチュエーションよりも、綺凛ちゃんじゃ出来ないコトのほうが翔君も興奮するでしょ?」
「ノーコメントで」
嘘です。確かに興奮します。
「ふふーん。翔君、嘘ついても駄目だからね? 今、アタシは翔君と繋がってるんだから。翔君が何考えてるのか、分かるよ?」
そうだった。今の状態のメアに隠し事は無意味。記憶どころかその場の感情すら読み取られてしまう。
「ほらほら、綺凛ちゃんの時はスカートをまくり上げたらキスしてたじゃん。私は、もっと無理やりな方が好みかもしれないけど?」
「……まったく」
他の娘との行為を知られているというのは本当にやりにくいな。
「じゃ、始めよっか」
その時、地面が揺れた―――いや、電車が止まった。
「え?」
後ろにある電車の扉が開く感覚。振り返るとたくさんの人がなだれ込んできた。
「お、おいおい!」
「あ~れ~」
その人ごみに押し流され、俺達はあっという間に反対側のドアまで押し込まれてしまった。メアは楽しそうに俺にしがみついていた。
「ど、どうなってんだ!? 昨日はこんなことなかったぞ!」
「うん。この人たちは本物じゃないから心配しないで。こういう事も、前にあったんだよね?」
思い出されるのはアリアのお母さんに会いに電車に乗った時のことだ。
その時のことを思い出していると、ズボンのチャックが下ろされ、肉棒が外に露出させられる。
「ふふっ、カチカチになってる。やっぱり興奮してるんだね。この状況に」
「……そうだな」
体は正直で嘘はつけない。すでに女性を貫く準備は万端になっている。
「私もそうだよ」
メアがスカートの中に肉棒を招き入れる。外と比べて、一段階湿度が高いような錯覚を覚える。
その奥では、すでにしっとりと濡れた秘部が、物欲しげに口をパクパクさせていた。
「前にシた時から、ずっと次のこと考えてたんだ。私としては毎日シたいくらいなんだけど……あ、私も翔君の家に住もうかな?」
「それはヤミに聞いてくれ」
「あー……、そうだよね。ヤミおねえちゃんが反対するかな? それに翔君の家に住んだら順番待ちとか有りそうだもんね? 女の子たくさん住んでるし。だったら、こうやってこっそりする方が回数は多くなるのかな?」
喋っている間も、俺達はお互いの性器を刺激し合っていた。
下着にある割れ目から、その奥の肉を割り裂いて、割れ目に沿って俺達は腰を前後させる。お互いが気持ちよくなることを考えて動く。硬く膨張した俺のイチモツが、メアのふやけた秘部を擦りあげている。
メアの愛液でコーティングされ、滑りが良くなった先っぽが、とうとう入り口に引っかかる。
「メア」
「ん、入れて……」
その言葉に頷き、腰を前に突き出した。
「はい、って、きたぁ……!!」
メアを壁に押し付けるように、一気に奥まで突き入れる。
立ったまま、抱き合いながら、俺達はつながった。俺の肩に顔を押し付け、メアは湿っぽい吐息を漏らしていた。
「あは、この圧迫感、また味わえるなんて―――最ッ高……っ」
子宮口に亀頭がキスするジャストフィット状態。腰を小刻みに動かせば、チンポの先端に痺れるような快感と、ねちねちといういやらしい音が満員電車に響く。
「もっと……っ、もっと激しくして……っ! あっ、そこ、おっおぁ……!!」
電車の揺れも再現しているのか、揺れたことで挿入角度が変わる。それでいいところに当たったらしい。
「ここか?」
「うんっ、そこ、ああ、ぃぃー……、激しいのもいいけど、こういうのもいいー……」
メアに言われたところを何度も何度も擦りあげる。
メアに言われたメアの弱点を重点的に、肉棒のヒダでこすり、先端で舐めあげる。
いつもよりも快感のたまりが速いと思う。
このシチュエーションが原因かもしれない。
人に押しつぶされながら、俺達は行為にふけっていた。これは現実ではないというのに、背徳的な感覚が頭を満たしていく。
変に意識して周りを意識して、なるべく目立たたないように腰を動かす。この電車に乗っている人にはバレないと分かっていても、そうしてしまうのだ。
それはメアもそうらしい。
「今回ヤバいかも……さっきから、ずっと甘イキしてる……どんどん気持ちよくなってるのに、まだまだ気持ちよくなる……」
周りの空間が歪んでいく。
メアの集中力が切れて、変身が解けてきているのだ。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ……!」
そのメアは俺の首元にかぶりついて荒い息を押さえている。ここは学校で周りにばれてはいけないというのを理解しているからだろう。メアなりの配慮だ。
少し痛いが、そのお返しにキツく抱きしめ、腰のふりを早くする。
「あっ、あっ、あっ、くる、くるよ、クルクルクル―――!!」
「俺も、そろそろ……っ」
2人そろって全長のために貪欲に快楽を求める。
――――――ごぷっ、びゅるるるぅ、ごごぷっごぴゅるるぅっ
「ふぐううぅぅぅぅぅっ!!??」
「いたっ! うぐぅっ……!」
首元に立てられていた歯が、少しめり込む。足がカクカクと震え、背中に回されている手の力が強くなった。その反応はメアも絶頂したことを示していた。
「ん、ちゅぱっ、ちゅるうぅ、んんっ、うちゅっっ……」
お互いの体が落ち着くまで、俺達は舌を交えたキスをしていた。尿道に残った精子がすべて搾り取られ、メアに飲み干されるまで。
「んぁ……えへへ、気持ちよかったぁ……」
「ああ、俺もだ」
汗に濡れた顔でにへら、と笑うメア。
いつの間にか、教室の風景は完全に元通りになっていた。
「正直もっとしたいんだけど……」
「2回目をするには時間が足りないな」
「ん~、残念」
メアは名残惜しそうに身体を離した。そして乱れた衣服を整えていく。
わざとスカートをたくし上げ、見せつけるように、メアは青白のストライプ柄の下着を身につけていく。だが直前まで愛液で塗れ、精液が滴っていた部分だ。あんな布切れ、すぐにシミが出来てしまうだろう。
その感覚はメアも受け取っているらしい。
「あは! 翔くんのがナカに入ったままで、私は午後の授業受けちゃうんだ。垂れてきたらどうしよう?」
「バレないようにしてくれよ……」
「それはもちろん! 私もこの学校から追い出されちゃうのは困るからね!」
「全く……」
俺はため息を吐いた。
この態度のせいで、どこまで本気なのか分からないな。
「とりあえず、戻るか」
「そうだね。もうそろそろ授業が始まっちゃうし……それに翔くんは六課に行かないといけないもんね? ふふ、今日も遅れちゃ大変だよ?」
「そうですね……」
挑発するんじゃないよ。正しいことだけどさ!
でもメアの言う通り、何度も遅刻はいただけない。
でも、今から行けば十分に間に合う時間だ。
俺たちは並んで自分達の教室に戻る。
「おい、メア」
「ん~? なあに?」
「何でそんなにくっついて来るんだ?」
ふらふらとした歩みのメアは、時折俺に寄りかかるようにその体を押し付けてくる。さすがに帰り道には生徒の目があるから、恥ずかしいんだけど。
そんなメアはさらにくっつき、耳に顔を寄せてきた。
「もう、翔くんのせいでしょ? あんなに激しくパンパンして、イかせてきて。私じゃなかったら立てなくなってるよ? ホント、クセになっちゃうよ」
「お、おう」
そんなコメントに困ることを。
ヒソヒソ、ヒソヒソーーー
周りから囁き声が聞こえてきた。
「……」
俺はなんとか無視して教室への道を急いだ。
周りの目は痛かったが、特に何か起こることもなく教室までたどり着くことが出来た。
教室はそれぞれの選択授業に移動しようとする生徒で慌ただしくなっていた。土御門も矢瀬もいない。
「随分と長いトイレでしたね」
「……う、うん。まあ……」
「ね?」
メアはニコニコ。ヤミの視線がすごく痛い。ナニをしていたのか、予想がついたのだろう。
「そんなに気になるなら、お姉ちゃんも混ざればいいのに」
「誰が」
ヤミに近寄ったメアは、小声で何か言っている。おそらく俺のことで、間違いなく俺が全面的に悪いのだ。
「さて」
俺も六課に移動する準備を始めなければ。
と、
「翔。メールだ」
みょん、と首元に飛び出したレプリカ。
「ん、サンキュー、誰からだ?」
「それなんだが……」
レプリカの返答を聞いた俺は、すぐさまメールを開封した。
そこに写っていたのは、
『水』に縛られた綺凛だった。