目覚ましが鳴っている。
「もう朝か……」
俺は目覚ましが無くても起きれるタイプなんだけどな……今日は無理だった。それだけ昨日の疲労が大きかったってことなんだろう。
でも今日も朝練はある。あのまま別れてしまった綺凛のこともあるし、休むわけにはいかない。
「あぁ~……あれ?」
目を閉じながら体を伸ばすと、布団の中に明らかに俺以外の人のぬくもりを感じる。これは、誰か入ってるな。や、それにしても、人肌が人肌過ぎる。我ながら意味の分からない表現だな。
でも、そうとしか表現出来ないのだ。俺と相手、2枚の寝間着越しに伝わってくるにしては暖かい体温。これはもしや……
そう思って手を伸ばす。すると、何やら細いものを掴んだ。
「ひん!?」
「え……?」
耳元で聞こえた声に俺の意識が一気に覚醒する。
「ひぁ、あぁ、っ、し、しょうぅ? し、っぽはダメぇ、ああっ!」
「ラ、ララ!? 何でここに……!?」
昨日帰ったはずじゃなかったのか? や、確かに帰ってたよな!?
「しょれよりもっ、っしっぽ、はなし、いぁ……っ」
もじもじと体をこすり合わせるララ。甘く湿っぽい吐息が、ララのものとは思えない甘い声と共に俺に吹きかけられる。
しかもララは何も着ていない。布団のおかげで下は見えないとしても、豊かなふくらみが作る谷間が、俺の目に飛び込んでくる。
や、だからヤバいって……!!
俺は急いで尻尾から手を放すが、時すでに遅し。朝という事もあり、俺の息子がおっきしてしまった。
漫画だからそんな描写が無いだけかもしれないけど、リトさんマジヤバいよ。これを耐えてたのか。リトさんの誠実さは度を越えてるよ!
尻尾を触られていたことで荒くなっていた息を整える姿も、見方によっては……というか、どう見ても行為を致していたとしか見えない。ララ、裸だし。
もちろん、身体が正直に反応していたとしても、欲情のままに襲い掛かるなんて馬鹿な真似はしないけどな! そんなことをしたら婚約者を通り越して夫になってしまう。
息を整えたララに、俺は懇願する。
「ララ、これからはこうやって布団に忍び込むのはやめてくれ……」
「え? どうして?」
いまだ固く反り返った俺のイチモツがララに触れないように、少し体を離しながら口を開く。
「色々と、俺の我慢の問題で……」
「え?」
当然の様にララは意味を理解できていない。性知識があったら、裸で忍び込んだりしないな。や、忍び込む場合はあるか。完全に夜這い目的で。
「や、だから……そもそも何でここにいるんだ? 昨日は帰ったよな?」
流石に王女様に性教育するつもりは無い。詳しい説明は避けて状況の説明を求める。
「あの後、ママとも話してね、こっちに来たんだ」
「来たって、部屋は!?」
まさか、これからずっと俺の部屋に住むつもりなのか!?
「この建物の上空に、私の飛行船を泊めてあるからそこに住むよ。あ、廊下の奥にワープポータルは置かせてもらうね?」
「あ、な、なるほど」
つまり、『ToLoveる』原作のようになるわけか。
「うん! これからずっと一緒に住もうね!!」
「うんうん、それは良かったね?」
あれ、何か、似た声が全然違う声色で聞こえたんだけど?
視線を移すと、エプロン姿の女の子がベッドの脇に立っていた。
「ア、 アスナさん……? おはようございます?」
「おはよう、翔君。そろそろ朝練の時間だから起こしにしてみれば……昨日の今日で『コレ』なんだね?」
俺とララを交互に見たアスナがにこりと笑う。
それは絶対に誤解してる。けど、
「否定できる材料が無い……!!」
同じ布団に裸の女の子がいて、下半身はびんびんに反応しているとなると……たとえセフィさんでも言い訳出来ないだろう。
「あ、おはよう、アスナ~」
ララは目を擦りつつ、布団から起き上がる。その時、裸体にタオルケットを巻きつけながら、布団に女の子座りになる。
そうすれば当然、俺の身体からは布団がはがれてしまう訳で。
「ふ~ん、そうなんだ?」
「いや、これは……」
見事なテントを作った俺の下腹部が、アスナの視線を受けて少しだけ力を失う。
朝から誤解を解くために時間を使うことになった。
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何とか説得に成功した俺は、ギリギリで朝練に間に合った。
朝練開始前に、昨日あったことを2人に説明した。綺凛が襲われたことはアインハルトも知っていたみたいだ。つまり今回説明するのは、ララとの婚約関係の話になる。
「な、なるほど。そうなんですね……こ、婚約者候補ですか……」
「……」
アインハルトは何とか飲み込んだようだが、綺凛からは反応が無い。
「でもまあ、別に何か変わるわけじゃないぞ。みんなとも会っちゃいけないって言われてる訳じゃないし。あくまでそう言う目で見られるようになっただけだ」
それはそれでどうかとは思うけどな。
「そ、そうですよね!! 別に翔さんがその気にならなければ……!! ……なりませんよね?」
「アハハ……でも先輩、いろんな女性とお付き合いされてますからね」
「はっ! そうでした……!! このままだと、翔さんがこのままだと、翔さんがデビルーク王国に……!?」
ようやく口を開いた綺凛の冗談も、どこか覇気がないように感じる。や、言ってる内容は全然冗談じゃないんだけど。
綺凛の様子に、動揺しているアインハルトは気が付いていない。
「綺凛。昨日のことはもう気にするな。全然迷惑じゃないからな」
俺は改めて念押しする。すると綺凛はかすかに微笑んだ。
「はい。ありがとうございます。それじゃあ、練習始めましょうか」
何となくよそよそしい綺凛は、そう言って背中を向けてしまう。そうして朝練の最初のメニューであるジョギングを始めた。
「私達も行きましょうか」
「……そうだな」
まだ昨日のことを気にしているのは明らかだが、今これ以上何か言っても無駄だな。少し時間をおくしかないか。
そう考えた俺は、綺凛の後を追って走り出すのだった。
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いつものジョギングコースを走る最中、前を走る綺凛に追いついたアインハルトは、声をかけた。
「綺凛さん。改めて私からも、ご無事で何よりです」
「……はい、ありがとうございます」
「その……」
こうしてまじかで見ると、流石のアインハルトも綺凛の異変に気が付いていた。そう言う相手を元気づけるという経験が少ないアインハルトは、それ以上の言葉が出ない。
「アインハルトさん」
「は、はいっ。何でしょうか?」
アインハルトが何も言えないでいると、綺凛の方が口を開いた。
「アインハルトさんは、ご先祖様の無念を果たすために強くなろうとしていたんですよね? 昔、戦いに向かう聖王様を止めることが出来なかったから」
「そうですね。今も、それは残ってしまっていますが……」
インターミドルの大会で、エレミア相手に暴走してしまったのは記憶に新しい。過去の記憶で我を忘れてしまったのは、自分が過去を乗り越え切れていない証拠だ。
「その気持ち、少しだけ分かったような気がします」
「え?」
「自分の力が足りなくて、悔しい思いをして、強くなりたいって、そういう気持ちになることが」
それだけ言うと、綺凛はさらにスピードを上げるのだった。
―――――――――――――――――――――――――
「おいっす。昨日は大変だったな」
学校に到着するなり、笑みを浮かべながら矢瀬が声をかけて来た。
コイツ、絶対昨日のことを分かって聞いてきたな。
「よく知ってんな、お前」
「そりゃ話題にもなるだろ? ララ王女の誘拐未遂が武偵高の中で起こりそうになったんだぞ? 知らないヤツの方が珍しいぞ」
それもそうだ。話題にされても不思議じゃない。何も不自然じゃない。
だから俺もこう言わせてもらう。
「ああ。そうだな。でも、事件の詳細は話せないぞ。口止めされてるからな」
「でも、今日も変わりなくララ王女が登校してきたってことは、護衛の仕事はしっかり果たせたって事かにゃー?」
いつの間に来ていたのか、土御門が混ざってきた。胡散臭いサングラスがきらりと光る。
「その辺りも言えないな」
その問いに対しても、肩をすくめる。何も言いません。君達みたいな諜報のスペシャリストに問い詰められたら、いらんことまで喋ってしまいそうだ。
「ま、そりゃそうか」
「他の連中が向こうにも聞いてるが、全員撃沈だからにゃー」
土御門がヤミを指さして言った。
丁度声をかけられているが、
「私から言う事はありません」
そう言って対話を完全に拒否していた。
ヤミは俺よりもプロだからな。言っちゃいけないことをしゃべることは絶対にないだろう。そこは安心出来る。
「でもまあ、あと1人いるからな」
「そうだな。ある意味、一番口が軽そうなヤツが」
そう問題は、
「おはよー!」
メアが登校してきた。
問題はこっちだ。言わないよな?
待ってましたと言わんばかりに生徒が殺到するが、
「ごめんね~、そのことは言うなって言われてるんだ~」
口調は軽いがそれ以上のことは言わない。笑顔で生徒の壁を突破したメアは、自分の席に座った。そして昨日の事件のことで声をかける人はいない。今の一瞬で、メアから情報を引き出すことは無理だと悟ったんだ。
「意外だにゃー」
「ああ。てっきり、もう少し思わせぶりな態度を取るかと思ってたんだが」
そう言う2人だが、余裕綽々だ。メアが最初からこうすることを知っていたみたいだ。
そういえばこの2人って、メアのことも知ってるのか? 立場的に知っていてもおかしくなさそうだけど。
俺はメアの席に近づく。
「ん? どーしたの、翔君?」
「昨日のこと、変なことは言わないでくれよ」
「もちろん! そんなことしたら、こわーい人に捕まっちゃうもんね~? そうしたらここにもいられなくなっちゃうし。それは困るもん。何も言わないよ、安心して」
それは一安心だ。
「そうじゃないと、翔君も気持ちいいことも出来なくなっちゃうしね。あ、でも別に私は学校じゃなくてもいいんだよ? 外でも呼んでくれれば―――」
「はいはい。それじゃあよろしくな」
昨日のことは、俺達の口から外に漏れることはなさそうで安心した。
――――――――――――――――――――――――――
「昨日はすいませんでした」
「いやいや、ええよ。そっちも大変だったやろ?」
「そうだよ。そっちが落ち着くまで無理に出勤しなくても大丈夫だよ?」
俺は六課に出勤して一番に八神部隊長となのはさんに頭を下げた。
昨日のごたごたのせいで、俺は六課に行けなかったのだ。もちろんそのことは連絡済みだし、特に事件もなかったから、実害は訓練に参加しなかったくらいだけど。
「いえ、そういう訳には」
事件からまだ1日しか経っていないとはいえ、捜査はかなり難航していると聞いている。やはりスタンド使いの本体が死んでしまったことが大きいようだ。
身元は島の外で手配されている犯罪者ということが分かったが、どうやってこの島に来たのかがわからなかった。
入島履歴にも監視カメラにも、どんな記録にも残っていないのだ。島の誰かが手引きしたにしても、ここまできれいにセキュリティをすり抜けるのは尋常ではない。
スタンド能力についても、持っていたという記録はないため、ここ最近で手に入れたのは間違いない。だが、その入手経路もわからないままだった。
「スタンド能力か……島の外の人間も持ってるっちゅうんは少し怖いな」
「そうだよね。いつの間にか島外の人にも発現するようになってるなんて……」
「……どうなんでしょうね」
と言う俺だったが、可能性は2つに一つだと思っていた。
1つは耀をアナザーオーズにしたヤツの仕業。もう1つはゾンビのスタンドであるホワイト・スネイクのDISCだ。どちらの可能性も十分にありうる。
どちらにせよ、これまで以上に悪意を持ったスタンド使いの攻撃に備えないといけないのは確かだ。今回はララだったが、前はヤミやフェイトさんが狙われたこともあった。
2人とも実力者のはずだが、スタンドの前では遅れを取っている。もともとは取るに足らないような相手だったにもかかわらず、スタンド能力を手に入れたことで、相手を一方的になぶれるようになってしまった。
「改めて恐ろしい能力だね、スタンド能力」
「そやな。でもこうしてみると、夜月君のスタンド能力が少ししょっぱいようにも思えてくるなぁ」
「ははは、そうですね……」
部隊長の遠慮のない言葉に、俺は苦笑いを返すしかない。
そう言えば、俺の
コイツを手に入れてから結構経っているけど、やっぱりACT4は俺1人の力じゃ発動できないんだろう。そのためには相棒が必要だけど、騎乗スキルがあればその条件も満たせるんだろうか。
「で? そろそろそっちのお方について、説明して欲しいんやけど?」
「そうだね。とりあえず、1回離れたほうがいいかな? 後ろの人も睨んでるし、ね?」
「や、俺が自分から近寄っているわけじゃないので……ララ、ちょっと離れて欲しいんだけど……」
「はーい」
俺の腕を取り抱きついていたララが、ニコニコと俺から離れた。
そう、学校からここに来るまで、ララはずっとこの態勢で俺にべったりくっついていたのだ。
学校を出るところから電車に乗る時も、さっきのあいさつの時にもずっとこの態勢だ。
「注意しなかったん?」
「しましたけど……」
「すぐに元に戻ってしまうので」
雪菜とアスナのボルテージは限界寸前だった。俺にはもう後ろを振り向く勇気はなかった。
俺は婚約のことについて説明した。
「ははぁ……」
「ええ……」
「そう言う事になってしまって」
「えへへ~」
ララが笑いながら俺に抱きついてきた。注意してもすぐに元に戻るというのはこの事だ。
「や、君も来るところまで来たなぁ……」
「そうだよね。王族の婚約相手なんて……」
「候補ですからね。まだ決まったわけじゃないですから!」
八神さんとなのはさんは驚くと言うより、もはや感嘆している。
「あ、翔。来てたんだね。2人共、どうしたの?」
そんな場面でフェイトさんが顔を出した。
「あのですね」
俺が説明しようとして、
「夜月君、婚約したんやって」
「え―――えええええええええぇぇぇぇぇぇっ!!??!?!!?」
無駄を省いた八神さんの間違った説明によって、フェイトさんの絶叫が響き渡るのだった。