「それじゃあ、出撃!」
「はい!!」
俺となのはさんは特務六課基地から発進する。
禁書目録を輸送している輸送機が襲撃を受けた。それ以上の情報が入っていない。敵が誰なのか、今どの程度の被害なのか、送られてくるのはエマージェンシーコールだけだ。
俺達は戦闘服に着替えていた。
なのはさんは当然、見慣れたBJ姿。
俺はレプリカを纏い、その上からガンダムの装甲を装着する。さらに2機のガンダムを呼び出した。Zガンダムとウイングガンダムだ。それぞれウェイブライダー、バード形態に変形している。
変形している。
「レプリカ、制御は任せるぞ」
「心得た」
俺はガンダムのスラスターで飛び上がり、ウェイブライダーをドダイのように使う。
「翔君がいれば、1人で軍隊みたいなこと出来ちゃうね」
「そこまでではない。私のコントロールでは100%の性能は発揮できないだろう」
レプリカがやんわりと否定した。
俺達は空を飛び、救難信号を発している輸送機の場所を目指した。すぐに目標は見えてくる。
島の上空に差し掛かる輸送機。その周りには多数の卵型の機械がとりついていた。
「あれは……ガジェット!? どうしてガジェットが……!?」
「……確かに。何が起きてるんでしょうね」
なのはさんが驚いた声を上げている。俺も予想外の敵に驚いていた。
てっきり魔術師の襲撃だと思ってたんだけど、相手はまさかのガジェット。いったいどんな相手が襲撃してるんだ?
色々と分からないことがあるけど、いまするべきことは一つだ。
「ガジェットを破壊します!!」
「AMFがあるから気を付けて!! あと、輸送機への誤射も!!」
「了解です!!」
俺はビームライフルを両手持ち、背中にシールドを装備してウェイブライダーの速度を上げる。それに追従してくるウイングガンダム。
さらにプリンセスナイトの力でなのはさんの強化も始める。
「先行します!!」
「練習通りにね!」
AMFの影響で戦闘力が下がりにくい俺が前衛になり、なのはさんが俺のサポートを行う。ここ最近の練習でずっと行っていたシフトだった。
ライフルの有効射程距離まで近づく。機械の補正と能力(キンジの銃技)による補正がかかり、銃口が吸い付く感覚。
そのまま引き金を引いた。
なじみのある音とともに、ピンク色の閃光が一直線に発射される。狙い通り輸送機の壁面に張り付いていたガジェットを打ち抜いた。
仲間が破壊されたことで、ガジェット達が俺を捉える。色が変わったり音が出たりするわけでも無いが、怒っているようにも感じた。
「くらえ!!」
構わず引き金を引いた。
射線上に重なっていた2機を同時に吹き飛ばす。
この程度の相手なら俺の敵ではない。もちろん油断はしないが変な緊張もしない。
俺は淡々とガジェットの処理を続けるのだった。
――――――――――――――――――――
「うまいなぁ……」
輸送機の周りを飛び回りながらガジェットを撃墜している翔を見て、そう漏らすなのは。
ガジェットは輸送機にとりついている。それゆえに誤射に気を付けてと言ったのだが、この様子を見ているとそんな心配はいらないと思えてしまう。
まさに百発百中。どんなスレスレにいるガジェットに対してもしっかり当てている。SFS(サブフライトシステム)に乗っていて射線が限定されているのにだ。
しかもただ撃つだけじゃなくて、なのはの誘導弾を使ってビームの軌道を曲げる技―――訓練の中で
それだけでなくなのはへの強化まで同時にこなしている。
「(これは確かに、みんなが注目するわけだね……)」
翔を取り巻く環境の複雑さは、直接話を聞かなくても十分すぎるほど理解していた。スタンド使いというだけでなく、事件を引き寄せる体質があるのか、ことあるごとに厄介ごとに巻き込まれている。
そしてそのすべてに背を向けず、立ち向かっていた。
多少背負い込み易い性格という事も理解した。それがどことなく昔の自分に似ているとも思っている。
だからこそ教導官として、うまく導いていきたいと思っていた。
そして親友の恋の相手としても。
「(まあその辺りは、色々と難しいかもしれないけどね)」
翔は暴力沙汰だけでなく、色恋沙汰でも大変な状況になっていることを考え、なのはは苦笑した。
「アクセルシューター!」
考え事はしているが、もちろんなのはも遊んでいるわけではない。対AMFの加工をした誘導弾を多数飛ばし、翔が撃ち漏らしたガジェットに対して正確に撃ち込んでいく。
「レイジングハート、残骸の回収をお願いね」
レイジングハートには、破壊したガジェットの残骸の回収を任せている。それは残骸からこの襲撃の手がかりが得られるのではないかと思ったことと、残骸が街に落下したことによる二次被害を押さえる為だ。
次々と機能を停止して落下していくガジェット。それがある一定の高度に達するとピタリと空中で止まる。
レイジングハートが制御している浮遊魔法だ。
「変な乱入者がいなければこのままで問題ないかな……フラグにならないよね?」
翔君じゃないんだし、そんな翔に対して非常に失礼なことを考えるなのは。
なのはの考え通り、ガジェットは着実に数を減らしていた。
―――――――――――――――――――
ガジェットは残り少ない。順調そのものだ。攻撃を受けているのかと思っていた輸送機だけど、思ったよりも損傷が少ない。中にいる人が防御しているのかもしれない。
そんな時、レプリカが声をかけて来た。
「翔。どうやらこの輸送機。ハッキングを受けているようだ」
「何処から?」
「これは遠隔ではなく直接ハッキングを受けているな。コクピット近くのガジェットだ」
「了解!!」
センサーで調べた結果、人がいないとわかっていたコクピット周辺の安全確保は後回しになっていた。そのためコクピット周辺には、俺達が到着した時と変わらない数のガジェットが群がっている。
俺が周りのガジェットを倒していても、そこのガジェットだけは攻撃に加わることが無かった。
「なのはさん、周りはお願いします!!」
《うん!!》
レプリカとの会話は、なのはさんとの念話に乗っている。今の会話も伝わっていた。
サーベルを引き抜いた俺はウェイブライダーから飛び上がる。攻撃対象になったことでようやくコクピットのガジェットは戦闘態勢を取ろうとしているが、もう遅い。
ビームが発射されるよりも早く、ガジェットを串刺しにした。
「よし……!」
《こっちも終わったよ》
周りを見ると、輸送機の周りにいたガジェットはすべて撃墜されていた。
増援の気配も無し。
「これで終わりか……?」
「そのようだな。ずいぶんと中途半端な戦力だ」
レプリカの言う通り、襲撃するにはずいぶんと中途半端だった。この程度で終わりなのか……?
釈然としないが、敵は全滅したらしい。
輸送機は問題なく空港への進路を取り始めた。
どうやらこれで終わりらしい。
―――――――――――――――――――――――
全てのドローンを撃墜した俺達は、そのまま輸送機を護衛しながら空港に向かった。
滑走路に着陸していく輸送機を見ながら、俺達は専用の着地スペース(飛行機用の滑走路と、飛行魔法その他を使って飛んでいる人の着地場所は違う)に向かう。
管制塔の指示に従い、なのはさんがふわりと着地した。
俺は10メートルほど上空でウェイブライダーから飛び降りる。ガンダムのスラスターを使い、ガション! と着地した。
「よし。レプリカ、Zガンダムとウイングガンダムは閉まっておいてくれ」
「了解だ」
その声とともに、飛行形態の2機は光の粒子に分解されて消える。格納庫に戻ったんだ。俺もガンダムの装甲を解除した。
残るのはBJ状態のレプリカだ。なのはさんもBJは解除していない。まだ安全確保が終わったわけではないのだ。
「翔君、スバル達が護衛対象と合流したって。私達も向かおうか」
「了解です」
とくに寄り道することなく歩くこと5分。空港の一室に辿り着いた。
扉を開けると、
「なのはさん! お疲れ様です」
「お疲れ、ティアナ。えっと……」
なのはさんがティアナさんの後ろに視線を移す。
そこには先ほど六課で会った神裂に加えて、2メートルという体格と真っ赤に染めた髪、目元にはバーコードのタトゥーという出で立ちの派手な男。
その男が部屋に入ってきた俺達を見ると、近くにいたスバルさんに目を向けた。
「あっ、この人達は私と同じ部隊で、さっきまで飛行機の護衛をしてたんです!」
「なるほど……」
男は俺達を正面から見て、
「先ほどは助かった。
「管理局特務六課所属、高町 なのはです」
「同じく、夜月 翔です」
見た目と名前の確認が出来た。
そしてさらにもう1人。
「で、その娘は……」
ステイルが大きな体で隠しても、なのはさんは見逃さない。その後ろに小柄な人影があったことを。
「……」
なのはさんの質問にステイルは答えないが、
「大丈夫だよ、ステイル」
後ろの人物がはっきりした声で言った。そして前に出る。
「シスター、ですか?」
なのはさんは見たままの感想を述べている。
純白の布に金の刺繍。大きめのサイズの修道服を着ているせいではっきりとは分からないが、十分に華奢と思える女の子だった。
エメラルドのような翠眼をまっすぐとなのはさんに向けて、言った。
「私はIndex-Librorum-Prohibitorum―――イギリス清教の
「……え、っと?」
なのはさんは言われた言葉の意味が理解出来ないのか、先に合流していたティアナさんやスバルさんの方を見ている。
「はい……」
「らしいです……」
なのはさんも絶句している。
イギリス清教のトラの子で、魔術に対して絶対の力を持つ禁書目録。不透明だったその正体が、まさかこんな少女だとはなのはさんも夢にも思っていなかったんだろう。
「これからよろしくお願いします、なんだよ」
インデックスも精一杯丁寧な態度を取ろうとしているのか、お辞儀してきた。
「うん。よろしくね、インデックスちゃん、でいいのかな? 本名?」
「うん。私のことはインデックスって呼んでくれればいいかも」
なのはさんはインデックスの気持ちを汲み取ったのか、すぐにしっかりとした態度でインデックスに向き合った。
「よろしくね!」
「よろしく、インデックスさん」
なのはさんに倣って、スバルさんとティアナさんも挨拶していた。この2人も妙な偏見を持ったりすることはない。たとえ相手が禁書を所蔵した魔導書図書館だったとしても。
その様子に、神裂やステイルは安心していた。この2人はずっとこの島にいる訳ではない。現地のイギリス清教、そして貸出先の特務六課のお世話になる。事情を理解してくれる相手ができるのは好都合なんだろう。
「じゃあ、そろそろ移動しましょうか。ずっとここにいてもしょうがないですし」
「翔君はあんまり驚いてないんだね?」
「え? ええ、まあ……そう言う事も、あるんじゃないですかね」
だって知っていることだし。
俺が気にしているのは、これから何が起こるのかってことだ。
『とある魔術の禁書目録』第1巻とはまるっきり状況が違っている。インデックスはステイルや神裂との記憶としっかりと持っている。この2人が敵にならないのなら、その辺りのイベントはまるっきりカットってことになるのか?
それはそれで楽でいいんだけど、だったらインデックスの一番の問題がどうなっているのかが気になる。
でも初対面で聞くことは出来ない。無理無理。絶対無理。こんな重要機密、どうして知ってるんだって話になる。
今日の所はここまでにするしかないのだ。
「じゃあ、宿泊先に向かいましょうか。移動は私の車で」
「わかりました」
ティアナさんの言葉に神裂が頷いた。
「なのはさん、俺達はどうしますか?」
「一度襲撃もあったし、最後までついていこうか」
「了解です」
こうして全員そろってイギリス清教組の宿泊先に移動する。ティアナさんの車には全員は乗れない。元々、空港からの移動はティアナさんの車での予定だったが、俺やなのはさんが乗ることは想定されていなかったからだ。
なので俺達は空を飛んでの移動だった。
特に何も起こらず、宿泊先に到着する。この島のイギリス清教の教会だ。
車から降りてくるスバルさんとインデックスが楽しそうにしゃべっている。移動時間中に仲良くなったみたいだ。でも、インデックスの表情がどこかぎこちないように見る。
ステイルがインデックスの肩を押して教会の中に入っていく。
「それじゃあね! インデックス」
「……うん。それじゃあ、さようなら」
スバルさんが元気に手を振っていた。
その様子を横目に、神裂がこちらに向かってきた。
「本日はありがとうございました。おかげで無事、輸送が完了しました」
「いえ。トラブルはありましたが、無事に終わって何よりです」
「インデックスとは次はいつ会えますかっ!? 六課のみんなにも紹介したいんです!」
「……申し訳ありませんが、色々と手続きが必要なので。おそらく1週間は連絡が出来ないかと」
「……そうですか」
スバルさんは子供っぽくしょんぼりした。
「スバル、向こうにも都合があるんだから」
「うん……分かってるよ、ティア」
その様子を見て神裂は優しく笑った。
「どうか、これからもあの娘と仲良くしてあげて下さいね……1週間後の、あの娘とも」
「はい! もちろんです!!」
「コイツだったら、誰とでも仲良くなれるので心配しなくても大丈夫ですよ」
スバルさんは元気よく返事を返した。
だが俺は神裂の言い方に引っかかりを覚えていた。
「1週間後のあの娘、ね……」
だがその場でそれ以上の追及はしなかった。
こうして禁書目録輸送任務は割とあっさり終了するのだった。