※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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蛭子影胤戦、事後

「つまり島の制御権を渡しちゃったってコト!?」

「そ、そうなるわね……」

「それは……」

 

浅葱の告白にクローディアも渋い顔をしている。

 

現在は他の管理局員がやってくるまで、家の中で休ませてもらっていた。めちゃめちゃになってしまった家だが、その広さのおかげで休むスペースは確保出来た。

 

そこで、何があったのかを簡単に解説してもらっているのだ。

 

だがその内容は、一歩遅かったというモノだった。重要なPCはあの時のどさくさで持ち去られてしまっていた。

 

「はい、どうぞー」

「あ、どうも」

 

浅葱のお母さんがお茶を淹れてくれた。そのまま座る母親に浅葱は微妙な表情になるが、文句は言わない。代わりに浅葱のお母さん―――菫さんが頭を下げた。

 

「ごめんなさい。私が捕まったせいで」

「謝らないで。別にあたしはあなたのためにした訳じゃ無いから」

「いや、この状況でそれは無理があるだろ……」

 

浅葱の態度に俺はボソリと呟く。

 

聞いたところによれば、浅葱は最初に拒否していたところに、縛られた母親を見せられて相手の要求に従ってしまったらしい。まあ、下手なことは言わないようにしよう。

 

「何か言ったかしら?」

「いや別に。あー、だるいー」

 

コンボのだるさは抜けてきたが、ちょっと仮病を使って切り抜ける。

 

それにしても、

 

「コンボか……」

 

変身後の疲労がそのままってことは、変身した時のデメリットはそのままってことなんだろうか。

 

コンボで疲労するのは別にいいが、古代のオーズの様に暴走するのは勘弁だ。ここぞという所に取っておかないといけないな。

 

他のライダーでも変身すると深刻なデメリットがあるモノがある。それを考えると、安易にアイテムを使うのは危険かもしれない。

 

もちろん、いざというときにそんなことを言うつもりは無いが。

 

俺が密かな決心を固めていると、

 

「ですがそうなると、のんびりしているわけにもいかないですね」

 

緩みかけていた空気をクローディアが引き締めてくれる。

 

「だな。どちらにせよ相手にピースは渡っちまったんだ。此処からはいつ行動を起こされても不思議じゃない」

「あいつらの目的ってもう分かってるの?」

 

浅葱が次々とスナック菓子を口に放り込みながら聞いてくる。クローディアは質問で返した。

 

「予想はつきますか?」

「少しはね。わざわざ島の制御権を欲しがったってことは、キーストンゲートでテロでも起こすつもりなんじゃ無い?」

「80点ですね。正確にはキーストンゲートの最下層。要石に用事があるみたいですよ」

「要石に? どんな用事よ」

「どうやらあの方々は、要石が欲しいらしいです」

「ほ、欲しいって……そんなホイホイあげられるようなもんじゃないでしょ、アレ」

 

浅葱は顔を引き攣らせながら茶化す。要石がなくなるとどうなるのか、浅葱には説明されるまでもなく理解しているのだ。だからこそ、そんなことをする人間がいる事が信じられないのだ。

 

「残念ながら事実です。このままではこの島は、あと1日半で沈みます」

「そんな……」

 

浅葱は顔を青くしていた。自分が、その凶行に実行のピースを与えてしまったことを後悔しているのだ。

 

「大丈夫だ。そうならないために俺達がいる」

「ですね」

 

いくらピースが揃ったところで、パズルを完成させなければ問題ない。

 

「あと1日半なんでしょ? アンタ、ぶっ倒れたけど大丈夫?」

「それまでには回復するよ!」

「翔は間違いなく今回の戦いで重要になります。しっかりと体力を回復させなければ」

 

重要になるってのは、影胤がAMFを使うからだろう。

 

実際、AMFを武器にする影胤は本当に厄介だ。今回の戦闘ではっきりわかった。俺も魔法関係の能力が役立たずになってしまった。それは他の魔導士でも同じだろう。

 

だが、

 

「翔、実際戦ってみてどうでしたか?」

「勝てないとは思わない。あの時が全力だったらな」

 

コンボもそうだが、ラビットタンクスパークリングでも最終的にはどうにかなったと思う。

 

「AMFといえば」

 

浅葱が思い出したように口を開いた。

 

「キーストーンゲートにもAMFの防御機能があるわよ」

「そうなのか?」

「ええ。理論上はSランク魔導士でも魔法行使が困難になるレベルのね。それに加えて学園島の化学兵器が大量に配備されてるわ。アンタんとこの隊長陣が攻め込んでも落とせないはずよ」

 

そいつは凄い。

 

「……で、影胤はそれを自由に使えるわけだ」

「……そうなるわね」

「そうなると私も突入は厳しいですね」

 

つまり、キーストンゲートに踏み込まれる前に影胤たちを捉えられなければ、魔道士は戦力外になるって事か。

 

「制御権を奪い返せないのか?」

「出来ない事はないわ。でも設備がね……さっきの戦いであたしの部屋吹っ飛んじゃったわけだし。持ち歩いてるノートPCすらあいつに持ってかれたし」

 

ノートPC1台あればスパコン5台に対抗出来るのか? ま、出来るんだろうな。電子の女帝だし。

 

「自由に動けるようになったら六課に行こう。あそこだったらある程度の設備がそろってるはずだ」

「そうですね。もちろん、浅葱が協力してくれるのなら、ですが」

「当たり前でしょ。アタシのせいで島が大変なことになりそうなのに、何もしないわけにはいかないわ。幸い、得意分野だしね」

 

浅葱は闘志をむき出しにしている。

 

そうしていると、

 

「お」

 

通信だ。相手は蛇倉さん。

 

「はい。こちら夜月です」

《おう。研究所に向かったはずの翔。ずいぶんと寄り道したみたいだな?》

「……や、それは……」

 

浅葱からの通報が入った時間は、甘く見積もってもすでに研究所で捜査していなければいけない時間だ。

 

病院に行ってアスタルテ関連のお願いをしていた所が響いた。

 

「け、研究所に行ったみんなはどうですか?」

《残念ながら全部空振りだ》

「そうですか……」

《やっぱ、お前んとこが当たりだったんだな》

「いやいや、実際そうだったのかは分かりませんからね!」

《そうだな。お前の代わりで捜査員が向かった時には、すでに研究所はもぬけの殻。設備には稼働した痕跡が残っていたらしいが》

 

それでも、シュレディンガーであることに違いはない。他の犯罪者だったのかもしれないから。

 

……ま、多分、影胤からの連絡を受けてオイスタッハが慌てて逃げたってところなんだろうけど。

 

つまりは二分の一というか、二兎追うものはとか、つまりはどっちかしかどうにかできなかったんだろう。

 

だったら人の命がかかっている浅葱の方に来た方が良かった。

 

《ま、そうだな。そういう事にしておこうか。そっちの状況もすでにこっちに入って来てる。とりあえずお前らは六課に戻ってきてくれ。必要な奴を連れてな。こっちにも動きがあった》

 

必要な奴っていうのは捕まえた小比奈の事だろう。

 

「それなんですが……」

 

俺は追加で浅葱のことを説明した。

 

《そうか。部隊長に話は通しておく。お前はすぐに、寄り道せずに戻って来いよ》

「了解です。すぐに戻ります」

 

蛇倉さんとの通信を終了する。

 

俺はその場の人たちに内容を説明し、藍羽宅を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「さてと」

 

翔との通信を終えた蛇倉は立ち上がった。向かう先は部隊長室だ。メッセージを飛ばしても良かったのだが、あいにく今は取り込み中。だがこちらも火急の案件だ。

 

すぐに部屋の前に到着した。開ける前に一言。

 

「部隊長! 取り込み中ですか?」

「ん、ええよ。入って」

 

許しを得た蛇倉は部屋の中に入る。はやては部屋の中央奥にある部隊長の机ではなく、お客さんに対応するための対面ソファーに座っていた。

 

「すみません、取り込み中に」

「や、大丈夫。話は一通り聞き終わったから。そっちも急ぎの話やろ? 研究所の件?」

「いえ、翔の件です」

「ああ……なにかした?」

 

翔の件と言っただけではやては何かを察したらしい。話題を指定しないで聞き返す。

 

「アイツが蛭子影胤と接敵したらしいです」

「……ふー」

 

はやては大きく息を吐いて、

 

「どうなったん?」

「結果だけ言えば、蛭子小比奈を拘束、現在こちらに向かっています」

「彼の悪運もここまで行くと一級品やね……」

 

はやてが苦笑いして言う。

 

「その悪運をこっちにも分けて欲しいもんやわ」

 

はやては目の前のソファーに座っている相手に視線を向けた。

 

「「……」」

 

はやての正面に非常に厳しい顔で座っているのは、ステイルと神裂―――イギリス清教の魔術師だった。

 

この2人は重要な用事があってここに来た。その用事というのはもちろん。

 

「それでインデックスちゃんの事やけど、全然心あたりが無いってことでええよね?」

「……はい。お恥ずかしながら」

 

はやての言葉に神裂が苦々しく頷く。

 

「いなくなったのに気が付いたのは今日の朝。それまで誰も気が付かなかったと」

「はい」

 

確認するようにはやてが言葉を並べていく。

 

インデックスが攫われたことが発覚して、イギリス清教の教会は大騒ぎになった。が、複雑なこの島の交通網を魔術師が使いこなせるわけもなく、神裂の脚力で捜索していたところ、街中で能力を不正使用していると勘違いされて検挙されてしまったのだ。

 

その際、六課の名前を出したところ、ここまで流されてきたという訳だ。簡単な説明を受けた蛇倉は

 

「こちらも、単純な人探しで片づけるのは難しいですね。対象が対象ですから」

「そうやね。まさか島についてこんなに早く厄介ごとに巻き込まれるなんて」

「我々の警備が甘かったことが原因です……」

 

神裂は悔しさを滲ませている。

 

「でも、教会の警備魔術にはなんも引っかかってなかったんやろ? ずいぶんと手慣れていると思うんよ。心当たりはある?」

「狙ってくる相手はいくらでも考えられる。だが、この島についてすぐにとなると、今回の移送計画がどこかから洩れていたとしか思えない」

 

ステイルが答えた。

 

「内部に裏切り者ってこと?」

「可能性は高い。見つけ次第、灰にする」

「……そっちの組織のやり方に口を出すつもりは無いけど、管理局員の目の前でそういうことはあんまり言わんといてな?」

 

ステイルの口調は冗談ではない。その相手に明日はないだろう。

 

そんな中、蛇倉は考え込んでいた。

 

「(イギリス清教の教会といえば、魔術師の工房とほぼ同等。そこにあっさり侵入して人1人を攫う、か……それこそ特殊部隊の人間じゃなきゃ不可能な芸当だ……関わってるのか、アイツらが?)」

 

蛇倉の目が鋭くなり、元に戻る。いつもの仮面をかぶり、口を開いた。

 

「それで、翔の件には続きがありまして」

「ん、何?」

「蛭子影胤の目的について、予想がついたそうです」

 

蛇倉はキーストーンゲートの件について報告する。

 

「島の制御権……そら本当にまずいなぁ」

「はい。一刻も早く彼らを逮捕しなければ、大変なことになります」

「人命に優劣はない。申し訳ないけど、インデックスちゃんの件は他の部署に任せるしかないかもなぁ……」

 

他の部署への引継ぎを考えれば、動き出しが遅くなるのは間違いない。だが六課としては、島の危機とあればその解決に全力を注がなければならない。

 

優先度を考えれば、そうなってしまう。

 

「それは……くっ」

「……」

 

神裂は口を開きかけたが、管理局の事情を考えているのか何も言えないでいる。ステイルは最初からあまりアテにしていなかったのか、あまり表情を変えない。

 

「……案外、繋がっているのかもしれないですね」

 

そこに、蛇倉が差し込んだ。

 

「繋がっている……?」

 

神裂は蛇倉をみてぽつりとつぶやいた。

 

「ここ数日、禁書目録移送や島の外部からのテロリスト侵入が続きました。いや、重なりました。これらがすべて繋がっているのでは、という事です」

「なるほど……」

「島の要石は科学だけではなく魔術も使われていたはずです」

「そうだな。地下の龍脈と風水を使っていると聞いている」

 

ステイルも流れが変わったことを察知したのか口を出してきた。

 

「だとすれば、目的を遂げるまでのどこかで、インデックスちゃんの力が必要になる場面が出てきてもおかしくはない、ちゅう事?」

「可能性があるのでは、と思っただけです。教会に侵入して攫ったという話も、影胤のような元特殊部隊の人間なら現実味がありますからね」

「なるほど。一理あるなぁ」

 

はやてが唸り始める。

 

「推測の域は出ないですし、だからと言って影胤を早急に捕らえなければいけないことに変わりはありませんけどね」

 

そう言って締めくくった。

 

「可能性が高いというのなら、我々も捜査に加わります。良いですかステイル」

「……それであの娘が助けられるのなら」

 

神裂は乗り気になっているが、蛇倉が首を振った。

 

「やめた方が良い。向こうには知り合いがいるんだ。いいように利用される可能性がある。特に今回の相手は、どんな悪辣な手段を取ってくるか分からない」

 

単純な話、インデックスの身柄の代わりに管理局の妨害を命じられたらこの2人がどのような行動をとるのか。それを考えると、捜査に加えることは出来ない。

 

「それは……」

 

神裂も否定できなかった。流石に管理局員を虐殺して回るような真似はしないが、戦況を見てどちらにつくのかを判断する可能性はあった。

 

ステイルは躊躇なく燃やすだろう。

 

「ま、詳しくはみんなが帰って来てからってことにしよか? あ、蛇倉さん、キーストーンゲートに連絡して欲しい。今回の件について。インデックスちゃんのことも、他の部署に連絡しとこか。全く関係ない人に誘拐されたって線もまだ残っとる訳やし」

「了解しました」

 

一礼して部屋の外に向かおうとする。その直前。

 

「し、失礼します!!」

 

青い髪のメイドさんが、部屋に飛び込んできた。

 

「レム? どうかしたん?」

「たった今連絡がありました! キーストーンゲートが―――襲撃されています!」

 

それは早すぎる攻撃だった。

 

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