※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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キーストーンゲート突入②

《KNIGHT》

《ARMOR TIME!》

《ADVENT! KNIGHT!》

 

ISを展開した楯無さんに追加でナイトの装甲が付与される。

 

「なるほど……OK。いけるわ」

 

身体の調子を確かめた楯無さんが頷く。ISを展開していても、特に問題なく装着出来たみたいだ。

 

「(他人への能力付与か……しかも基礎能力じゃなくて、一般ではレアスキル扱いされても当然の能力を)」

 

楯無さんが何か言いたそうにしているが、口は開かない。他人へのアーマータイムを六課で披露したのは今回が初。大方、また新しい能力を、だとか、危険な力を、だとか思っているのだろう。

 

だが、事件解決に出し惜しみするつもりは無い。その評価は甘んじて受け入れよう。

 

「行きましょうか」

 

楯無さんを先頭に鏡の中に入る。

 

そう、アーマータイムしていないはずの耀も。『何の問題も無く』鏡へ侵入する。

 

全てが反転した鏡の世界へ。誰一人いないこの世界は、俺たち以外の物音はしない。ビル群の中で車一台、人っ子一人いないというのは正直不気味ではあるが、危険が無いのは分かっている。

 

俺達はキーストーンゲートにまっすぐ走る。AMFも防衛設備も起動していない。障害物は何もなかった。

 

一直線に進めば、キーストーンゲートの入り口まで5分もかからない。

 

「ホント、反則ね……」

 

楯無さんの呟きが聞こえる。

 

「作戦を考えるのが馬鹿らしくなっちゃうわ」

 

と思ったら俺へ話しかけてきた。ここまであっさりキーストーンゲートまで近づけたことによる感想だろう。

 

「俺からすれば、耀も反則だと思うけどな」

「そうかな?」

 

耀は首を傾ける。流石、世界最高の問題児の1人のギフトだ。

 

「私から見れば、どっちもどっちよ」

 

楯無さんが呆れを含んだ口調で言った。

 

丁度到着する。

 

キーストーンゲートの玄関口、大きなガラス張りの自動ドアだ。近づいてみたが開かない。どうやら電気系統は動いていないらしい。

 

「これって壊してもいいのかしら?」

「良いですよ。現実には影響はありませんから」

「なら、遠慮なく」

 

楯無さんがランスのバルカンを連射した。ガラスは粉々に砕け、扉としての役目を終える。

 

俺達は進む。

 

無人のロビー。誰もいない受付。監視カメラの映像では、ここで影胤達が警備システムを作動させていた。銃撃に倒れた人が何人もいたはずだ。その証拠に、マシンガンの砲座が起動していた。

 

「楯無さん」

「無駄な戦闘をしている時間は無いわ。私達の目的は影胤達を足止めすること。一刻も早く追いつかないといけない。そうでしょ?」

 

分かってはいるが……撃たれて出血している人もいたのだ。砲座から隠れていては応急処置も出来ていないだろう。助かる命も助からないかもしれない。

 

「うん。せめてここだけでも、この銃を破壊するだけでもしておきたい」

 

耀も俺に賛同してくれる。

 

実際にはこのロビー以外にも人はいる。ケガをしている人もいるかもしれない。その人たちのことを考えれば、優遇することになるのかもしれないが。

 

「……はあ、分かったわ。言い合う時間がもったいない。あのタレット4台くらいなら大した時間にならないしね」

「ありがとうございます!!」

 

俺達は行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、どうなるんだろうねぇ……」

「そうだね……」

 

最初の銃撃からずっとカウンターの後ろに隠れていたエイナは、同僚のミィシャと肩を寄せ合っていた。

 

幸いこのカウンターは、有事のことを考えて装甲車と同等の耐久力がある。ハイパワーライフルでも貫通するのは難しい。

 

だが依然として、マシンガンの銃座が展開し身動きが取れない事実は変わらない。

 

他にも物陰に隠れて凌いでいる人は何人もいた。誰一人として物音を立てていない。ロビーにはタレットの駆動音、そして、そのタレットに撃たれた人のうめき声だけが響いていた。

 

「うう、気持ち悪くなってきたかも……」

「ちょっと、大丈夫?」

 

ミィシャは顔を青くして口元を押さえていた。

 

それも無理はない。ロビーには血濡れで倒れた人が何十人も転がっている。適切な処理をされることなく出血を続けているため、すでに死んでしまった人もいるかもしれない。

 

その匂いも充満していた。気分が悪くなってもおかしくはない。

 

「……ん、大丈夫」

「無理しないで言ってね」

 

エイナは背中をさすりながら考える。

 

「(こんな規模のテロ、管理局が動いてないわけない。AMFのせいでうまく動けてないんだ。あの人達は何処に向かったんだろう。管理局との交渉かな……でも、わざわざ私達を人質にする意味なんてないよね。キーストンゲートの警備システムを乗っ取るなんてコストに見合ってないし……)」

 

考えることはいくらでもあるが、いくら考えても答えは出ない。

 

「ッ!?」

 

その考えを中断するように、タレットの銃声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

鏡から飛び出した俺達。4つの銃座が一斉に俺達に狙いをつける。

 

防御は楯無さんに、攻撃は俺と耀が担当する。

 

「はっ!!」

 

楯無さんが腕をかざすと、ISの一部になっていた水のヴェールの一部が分離し、発砲よりも前に銃座を包み込む。

 

そこまで分厚い膜ではないのだが、銃弾のエネルギーのほとんどが水のヴェールに吸収されているようだ。ヴェールの外まで到達した銃弾は、その表面をころころと転がって地面に落ちる。

 

「私は向こうの奴をやるね」

「分かった」

 

耀が大きく跳躍した。狙いをつけたタレットの水膜を、楯無さんが解除する。

 

耀の攻撃は、なんと、

 

「ぼあーー!!!」

 

口から火を噴いた。

 

大道芸のレベルではない。鉄すら溶解させる5000℃の火球―――ドラグレッターの攻撃だ。

 

「ゴジラかよ……」

 

俺はその光景に思わずつぶやいていた。

 

火球が命中したタレットは派手に爆散―――する前に再度水の膜に包まれる。その中で爆発することで、周りへの被害は出ない。

 

分かっていたこととはいえ、耀の真価をこの目で見ている気分だ。

 

生命の目録(ゲノムツリー)は『接触した生命体の情報を採集、情報を解析し模倣、融合させて新しい力を生み出す』という能力を持った恩恵(ギフト)だ。

 

そう、『生命体』。ミラーモンスターも生命体とみなされるのなら、生命の目録(ゲノムツリー)の収集対象になりうる。

 

それが耀の考えで、結果が今の光景だった。

 

耀の生命の目録(ゲノムツリー)はミラーモンスターもしっかりと対応していた。そのおかげで各モンスターの能力や一番基本のミラーワールドへの出入りなど、わずか数分で能力を得てしまった。

 

そうしている間も、耀は次の敵に狙いを定めていた。

 

そして俺はというと、

 

「俺も行きます!!」

「ええ!!」

 

走り出した。

 

「コンボは使えないけど」

 

銀色のメダルを1枚弾く。メダルが吸い込まれたウォッチを起動させた。

 

《OOO》

 

「変身!!」

 

《ARMOR TIME!》

《TAKA! GORILLA! BATTA! OOO!》

 

タカゴリバのオーズアーマーを装着する俺。

 

連射されるマシンガンを両手のゴリラアームを使って防御する。強大なパンチンググローブになっているそれは、銃弾の衝撃を大きく吸収し、ダメージを軽減する。

 

銃弾を受け止めつつ、前へ。タレットとの距離を詰める。

 

「ふんぬ!!」

 

タレットの銃身をぶん殴り、へし曲げる。

 

残るタレットは少し離れている。

 

「よし!!」

 

俺はベルトを操作した。

 

《FINISH TIME! OOO SCANING TIME BREAK!》

 

「はぁッ!!!」

 

バッタレッグの能力で大きく飛び上がる。装填を済ませたマシンガンが発砲を始めてきた。

 

被弾も気にせず、両腕を引き絞る。

 

タカの目がタレットの装甲のつなぎ目をロックオン。

 

「セイヤーーー!!!!」

 

発射されたゴリラアームがタレットに突き刺さり、爆散した。

 

「ふい~……」

 

地面に着地した俺は息を吐いた。

 

耀も破壊を完了していた。タレットすべて破壊したことで辺りが静かになる。

 

「ん……?」

 

周りの人が俺を警戒―――まではいかないが、俺への接し方を測りかねている空気を感じる。当然か、突然、仮面をつけたヤツが現れたんだからな。

 

俺は一度、変身を解除しようとして―――

 

「待った」

 

楯無さんに止められる。

 

「忘れたの? 一般人の前でライダーの正体を明かしちゃダメ」

「そ、そうでしたね」

 

大勢の目の前でアナザーオーズと戦ったことで、ジオウのことは島中に知られてしまっている。その評価は微妙な物だ。

 

大半は怪物を倒したヒーローだが、少数とは言え怪物を使ってマッチポンプを行ったとも言われている。武偵高で流布されている『女好き』という噂とは比べ物にならないだろう。

 

俺はベルトから手を離した。

 

近くに着地した耀が腕を引っ張ってくる。

 

「翔、先に行ってよ?」

「そうね。翔君は向こうに行ってて。この場の責任者には私から話しておくから」

「分かりました」

 

俺は耀に腕を引かれ、周りの視線を逃れるように奥へ向かう。

 

「耀、周りには誰もいないよな?」

「うん。大丈夫」

 

誰の視線も感じないことを確認し、

 

「ふぅ~……」

 

再度息を吐き、変身を解除した。

 

「大丈夫? 疲れてない?」

「ん、ああ。大丈夫」

「六課に来た時にはずいぶんと疲れてるみたいだったけど」

「動けるようにはなってるから大丈夫」

 

コンボの疲労は、まあ、多分大丈夫だ。耀にも言ったように動けないわけじゃない。

 

「無理しないで、もしもの時は私が前に出るから」

「おい。ミラーモンスターの力を使えるようになったからって、あんまり油断するなよ?」

 

強くなったのは間違いないが、前線に出ても問題ないとは思うが、だからと言って油断できる相手ではない。

 

「翔こそ、いつまでも自分が『護る側』だと思わないでよ」

「それは……」

 

別にそんなつもりは無いが……

 

しかし生命の目録(ゲノムツリー)なら、俺が一方的に守られる展開もあり得るのかもしれない。

 

「うん。今回は責任もって翔の面倒を見ます。それにみんなから、特にコッコロから言われてることだからね。翔にケガさせないで、翔が知らない女性を引っ掻けないようにって」

「おい! そんなこと本当に―――言われてるかもしれないな……」

 

女性云々はまあ、いつものことだとしても、ケガさせないでか。それもいつも思われていることかもしれないが、今回は耀に言いつけられているのか?

 

コンボで疲れ切ってたのが原因か? その辺りは説明してなかったからな……

 

「じゃあ、楯無さんが来るまで任せる」

「うん、そうして。周りの警戒は私がしておくから」

 

妙に張り切る耀にこの場を任せ、俺は体を休めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「む……」

「どうかしましたか?」

 

PCを開きながら歩いていた影胤は、そこに映し出された内容に眉を顰める。後ろを歩いているオイスタッハが問いかけた。

 

「ロビーに設置されているタレットが破壊されたようだ」

「反撃を受けたという事ですか?」

「そうだね。問題は誰がやったのか、だが。これは……」

 

影胤は監視カメラの映像を確認して声を詰まらせる。

 

何も答えない影胤を、オイスタッハは後ろから覗き込んだ。そこに映っているのは3人だ。

 

「彼らは……もしや特務六課ですか?」

「そのようだね」

 

影胤は説明していく。

 

「ISを纏っているのは更識 楯無。だが、情報とはISの武装が違うな……決戦に合わせて特殊装備をしているんだろう」

「日本の更識家ですか。あなたを執拗に追いかけていた人物でしたね」

「この少女は正規隊員ではないな……春日部 耀か……? 特務六課の候補生のようだね」

「候補生まで動員して来るとは……」

「島が沈むかどうかの瀬戸際だからね。魔導士ではない戦力を出し惜しむことは出来ないんだろう」

 

そして、

 

「この全身装甲を纏っているのが夜月 翔だ。まさかこんなに早く戦線に復帰して来るとは……」

「この少年が……」

 

オイスタッハが初めて見た翔を見て感想を漏らす。

 

「正確には彼の使っている全身装甲だがね。どういう技術なのかは不明だが、空間の切断やおそらく重力の制御までやってくる」

「危険ですね」

「だが対応方法もある」

 

それは? というオイスタッハの視線を受けて続ける。

 

「どのような手段を隠し持っているのかは不明だが、能力を使う起点はある。ベルトの操作だ」

「ベルトの……?」

 

オイスタッハの視線がジオウのベルトに向けられる。

 

「この映像でも分かるが、姿が変わると能力も変わる」

「確かに。ベルトに何かを装着して、回転させていますね」

「つまり、ベルトを操作させる隙を与えなければ、この全身装甲も性能を発揮できないという事だ」

「なるほど……」

 

影胤は翔との戦闘で、変幻自在に姿と能力を変えるジオウの戦闘をしっかりと見ている。結果的に退却することにはなったが、情報は生かされていた。

 

「更識 楯無は君のホムンクルスの眷獣の敵ではない」

「そうですね。薔薇の指先(ロドダクテュロス)の神格波駆動術式はAMFとはわけが違いますから」

 

AMFの影響を無効化するISも神格波駆動術式を使われてはどうにもならない。

 

「もう1人の春日部 耀に関しては情報が少ない。人数合わせの苦し紛れか、それとも未来ある新人か」

「相手が誰でも、我々の道は変わりません」

「それはもちろんだ。今のうちに最深部まで到達しなければ」

 

影胤が制御権を握っている間に先に進まなければいけない。浅葱を確保できなかったことで、彼女が制御権を取り戻す可能性が出てしまったことを。

 

「(彼女の腕前は予想以上だ。このアプリケーションもいつまで機能するか……)」

 

今は正常に動いているが、表示されていない時間制限がある。

 

要石の封印を解除してしまえば、管理局や武偵は住民の避難に対応するしかない。影胤達を追いかける暇はない。解除さえしてしまえば。

 

「時間との勝負、という訳か」

 

戦場で味わうゾワリとした感覚に武者震いしつつ、影胤達は歩みを進めるのだった。

 

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