※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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キーストーンゲート襲撃事件事後処理 前編

「そうか、良かった!」

 

俺がインデックスの首輪破壊成功の知らせを聞いたのは、いつもの病院のベッドだった。そこまで深い傷はなかった俺。

 

最後の方は結構ぼこぼこにされたと思ったんだけど、ハザードの防御力のおかげだろうか。手足は無事だし、手術も必要ないらしい。

 

「それでも、全身打撲で動くのも辛いはずだけど?」

「ですね……」

 

御門先生が呆れたように指摘してくる。

 

戦闘が終わって緊張が解けたからか、マジで動けなくなった。身体も痛いし、これは行かなくて正解だったと思う。足手まとい以外の何物でもない。

 

「うおぉぉぉ……っ」

 

身体を襲う鈍痛に耐えようと、変な唸り声が出てしまう。

 

「ま、これに懲りたら無茶してケガするんじゃないわよ。これから鎮痛剤と修復用ナノマシンが効いてくるから。明日の午後には完治してるはずよ。退院はその後の検査の結果次第ね」

「ありがとうございます。……や、まあ、今回は俺の無茶で怪我したわけじゃないんですけどね」

 

後半はぼそりと言う。

 

むしろそうだったら、どんなに良かっただろうか。実際は俺が散々周りに迷惑をかけ、命がけで止めてくれたのだ。この程度のケガは甘んじて受け入れるべきだ。

 

「そういえば、ここに運び込まれた3人は?」

 

影胤とオイスタッハのことだ。キーストーンゲート深部から最優先で運び出されたのは俺とインデックスだったが、その次は瀕死の重傷であるその2人とアスタルテだった。

 

「ホムンクルスの娘の方はもう大丈夫よ。レティシアさんが眷獣の制御を引き受けたから、後は安静にしてれば元気になるわ。他の2人は、今は集中治療室。しばらくは出てこれないでしょうね」

 

3人とも俺が手をかけた。捕まえたかったが殺したかったわけではない。

 

「……どうかしたの?」

「……いえ。なんでも」

 

俺の様子がおかしかったんだろう。御門先生が眉を寄せている。

 

3人は戦闘の結果、重体になった。そのことは当然、御門先生も分かっているだろう。だが、『どのような戦闘が行われたのか』については知らないはずだ。

 

「……と、はい、御門です」

 

御門先生の病院用端末に連絡が入る。

 

「……了解です。じゃあ翔君、私もそっちの応援に行かないといけないから。ゆっくりしてるのよ」

「分かりました」

 

そう言って、御門先生は病室から出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「そか、良かった」

 

インデックスの件については、キーストーンゲートで怪我人の救助に当たっていたはやてにも連絡されていた。

 

「うん、じゃ、そっちはそのままよろしく。無理にこっちに戻ってこなくても大丈夫そうやから」

 

はやては救助状況を見てそう判断する。

 

浅葱の仕事は完璧だった。始めは影胤達を先に進ませないために、下層へ至るために必要な通路の警備システムを奪い返し、次に六課が突入しやすいように侵入経路の確保を行う。

 

最後にキーストーンゲート全体だ。

 

その最終段階も終わり、システムは完全に復旧している。救助隊は魔力弾の一発も使うことなく、クリアリングができていた。

 

これから戦闘が起こる可能性は限りなく低いと言えた。

 

元々島中の管理局が集まっていたこともあり、救助隊の人数は飽和状態になっていた。

 

「逆に持ち場に戻って、警戒に当たれって話も出とるくらいやし」

 

キーストーンゲートが乗っ取られたという情報はとっくに島中に広がっている。その対応に管理局が追われていることも。その間に犯罪組織が動き出してもおかしくない。

 

「……うん。だからうちの部隊も戻ることになったんよ。戻る時には隊舎にお願いな」

 

そう言ってはやては通信を切った。

 

「結局、全部翔君の推理通りになったわけかぁ」

 

独り言を言うはやて。その後ろから近づいてくる女性がいた。

 

「今のは、ここを離れて行った連中からか?」

「千冬ちゃんか。そう。ちょーっと用事があったらしくてな」

 

レディスーツを着こなした千冬。その後ろには不満げな表情の少女が2人いた。

 

「ごめんなぁ。来てもらったわええけど、出番はなさそうや」

「いいさ。何事もなく事態が収まったのならな」

 

千冬はそう笑うが、夜遅くに無理やり連れて来られる形になった2人の少女にとっては溜まったものではない。

 

そう考えたはやては後ろの2人に視線を移す。

 

「後ろの2人もごめんな。こんな時間に無理やり引っ張られて迷惑やったやろ?」

「……まぁ、ちょっとは」

「わたくしは別に……代表候補性として、このようなことがあるのは覚悟していましたわ」

 

2人の少女の片方、小柄なツインテールの少女は、顔を背けつつもしっかりと不満を口にする。もう片方の金髪お嬢様ロールの少女は不満を口に出さない。出さないが、不本意であることは態度でわかった。

 

「バカ者共が。国からISを『専用機』として貸与されるという事は、不測の事態が起これば休暇や時間を問わずに呼び出されるという事になる。そのことを頭に入れておけ!」

「「ッ!!」」

 

千冬の一喝に2人の少女は身をすくませていた。

 

「ま、まあまあ。千冬ちゃんもそんなに怒らんといて」

「自覚が無いのなら早めに覚えさせるべきだ。我々も前とは違うのだからな」

「それは……そやけど」

 

はやては苦笑いする。

 

はやての場合、夜天の書の件で無理やりにこの世界に引き込まれたが、自覚を持つのは早かった。それは個人の違いだろう。

 

「ふむ。それで、だな。少し相談があるのだが……」

「ん、なんや?」

 

千冬の言葉に、はやては耳を傾けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「ん……あれ……?」

 

インデックスが目を覚ました。

 

「「インデックス!!」」

 

落ち着かない様子で部屋を行ったりきたり、タバコを吸ったりしていた神裂とステイルが、すぐに駆け寄ってくる。

 

インデックスはきょとんとした顔で2人を見返している。

 

「え? あ、れ……? 火織、ステイル? 私、どうして……?」

 

インデックスは小比奈に誘拐されてからずっと意識が無かった。その直前の頭痛から、記憶消去のリミットを考え、『今の自分』はもう二度と起きることはないと思っていた。

 

それがこうして、記憶を保持したまま再び意識を取り戻した。

 

「良かったです。なんともなさそうで」

 

後ろにいたフェイトがホッとした様子で言った。

 

首輪を破壊してそのまま帰るというのはいささか無責任だ。そう感じた六課組は、インデックスが目を覚ますまで、とはいかなくても安否が確認できるまでは教会に留まることにしたのだ。

 

それが、予想以上にインデックスが目を覚ますのが早かったのだ。

 

「はい。本当に、ありがとうございます……!」

「この術については、こちらでも調べて報告する……礼を言おう」

 

2人は六課に―――特に術を破壊した耀と雪菜に―――対して頭を下げた。

 

その様子を見てインデックスは何かを悟ったのだろう。寝台から起き上がり頭を下げた。

 

「私からも、ありがとう、なんだよ」

「うん。元気になってよかった」

 

耀が微笑みながら言う。

 

その声につられてインデックスの視線が耀に向き―――

 

「ッ!?」

 

その目が見開かれた。

 

「ちょ、ちょっと! そのペンダントちょっと見せて欲しいんだよ!!」

「……え? これを?」

「どうした、インデックス」

 

ステイルが問いかけるが、インデックスの興奮は収まらない。寝台から身を乗り出しそうになり、ステイルに抑え込まれていた。

 

耀が見せるくらいならとインデックスにペンダントを差し出した。もちろん首にかけたままで。

 

見開かれた目が生命の目録(ゲノムツリー)を読み解く。その頭の中にある10万3千冊の魔導書の知識が、生命の目録(ゲノムツリー)という恩恵(ギフト)の構造を理解させる。

 

「すごい……生命の円環と系統樹をこんな形で纏め上げるなんて……!! でも、これって……」

 

5分前まで寝ていたとは思えないほど深刻な顔で、生命の目録(ゲノムツリー)を睨みつけるように凝視する。

 

「あの……?」

 

自分の世界に入ってしまったインデックスに、耀は声をかけた。返ってくるのは返答ではなく質問だった。

 

「このペンダント、いつから持ってるの?」

「いつから? ええっと……結構前、から?」

 

原作では年単位で持っているものだが、耀がこの世界に召喚されたのは数カ月前だ。その辺りは曖昧になっているため、ぼかした表現になった。

 

その返答を聞いたインデックスはさらに少し考えこみ、

 

「……みんな、ちょっと私とこの娘だけにしてくれないかな?」

 

そのような要求をした。

 

「行くぞ」

「そうですね。言う通りにしましょう」

「そう、ですね」

 

ステイルと神裂は、モードの切り替わったインデックスの声に素直に従う。六課組は困惑しながらも部屋の外に出て行った。

 

2人きりになった耀とインデックス。

 

「改めて、私を助けてくれてありがとうなんだよ」

「ん、私1人だけの力じゃないけどね。雪菜も手伝ってくれたし、翔の情報が無かったら何もできなかった」

 

インデックスは『そうだね』と笑い、本題に入る。

 

「そのペンダントがあなたの力の源だよね」

「そうだよ」

「能力は、『接触した生物の能力を解析して、あなたに付与する』で合ってるよね?」

「合ってる、と思う。正直、私もよくわかってないから」

 

耀の理解は非常にふわっとしたものだった。

 

「このペンダント、危ないと思う」

 

それに対して、インデックスは耀以上にこの恩恵を理解していた。

 

「危ない?」

「うん。この礼装は、持ってる人に収集した生物の情報を継ぎ足していくもの。下手に使うと、その内、人じゃなくなっちゃうかもしれない」

「……っ」

 

インデックスの真剣な表情に、流石の耀もつばを飲み込む。

 

「(そういえば)」

 

耀の頭に閃くことがあった。

 

「(コレの使い方について、今回はあの男に教えられたけど、本当は翔も知ってたんじゃ……それで今まで教えてくれなかったってことは、危険だってことも分かってたのかも)」

 

だが、生命の目録(ゲノムツリー)が無ければ耀はまともな生活を送ることが出来ない。だからこそ、伝えていなかったのかもしれない。

 

「それ、いつも持ってないといけないかな?」

「……うん。これは私の大切な人からもらった、大切なものだから」

「そ、っか……でも気を付けて。何かあったらすぐに周りの人に言ってね。何かあってからじゃ遅いかもだから」

 

インデックスの言葉に耀は頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

そんな会話をしている時、部屋の外では。

 

「彼はどこの病院に? 今回のことで、直接お礼を言いたいのですが」

「あ、そうですね。個人情報なので、翔に聞いてみないと……明日以降にご連絡しますね。もしかすると、退院しちゃっているかもしれないですけど」

「分かりました」

 

神裂とフェイトがそんな話をしていた。

 

「神裂」

「どうかしましたか?」

 

険しい表情のステイル。

 

「インデックスにかけられていた術について、本国に問い合わせてくる」

 

インデックスの無事は確認できた。次はいったい誰が、こんな悪趣味な術をかけたのか。そこに一体どのような意図があったのかはっきりさせなければいけない。

 

インデックス本人に聞ければ早いのだが、残念ながらその時の記憶は消されてしまっている。その時にどのような契約が交わされていたのか、知る術はない。

 

だが、

 

「必ず見つけ出して灰にしてやる……!!」

 

犬歯をむき出しにして、そう吠えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。事態は終息したようだな」

「ああ、そうみたいだな」

 

学園島のもう一つの中枢、窓の無いビル。その中央を貫く円柱状の水槽に浮かぶ人物―――アレイスター・クロウリーが口を動かした。水槽を満たす液体がごぽごぽと気泡が発生する。

 

それに応えるのは金髪グラサンの男、土御門元春だ。

 

「今回はずいぶんと危なかったな」

「そうでもないさ。いざという時の備えは準備してある。管理局がしくじってもテロリストの思惑が成功することはなかった」

「そうかい」

 

その『いざという時の備え』を土御門は知らされていない。だが、ここまで自信満々に言うという事は、ハッタリではないのだ。

 

「それで、今回の事件はどこまで予想通りだったんだ?」

「さてね。事件が起こることは分かっていたが、どのような結末になるのかは予想していなかった」

「つまり、今回の事件はアンタの『プラン』には影響を及ぼさないってことか?」

 

管理局の調査によって、オイスタッハの犯行動機はすぐに調べられることになる。その狙いは学園島の要石として使われている聖人の右手だ。

 

違法建材である聖人の右手を使わずとも、今の技術なら学園島は十分に形を保つことが出来る。オイスタッハの罪とは別に、学園島には遺体の返還命令が下るだろう。拒否権はない。

 

超ド級の聖遺物をみすみす手放すことになる。

 

「それを君に答える義務はないが……だが、そうだな。面白い人物の干渉はあったな」

 

乗っ取られていたはずのキーストーンゲートのシステム。だがアレイスターには別の回線からその時の映像が送り込まれていた。

 

キーストーンゲート下層で起きた戦闘について、彼には筒抜けになっていた。

 

だがその映像は土御門には見えていない。アレイスターの浮かぶ水槽の内側に表示されているからだ。

 

つまり情報共有するつもりは無いという事だ。

 

「そろそろ迎えが来る頃だろう? 引き続き、彼の監視を続けてくれ」

「……仰せのままに」

 

土御門は余計な事は聞かず、その場を離れていった。

 

そうして『窓の無いビル』は一時の静寂に包まれるが、すぐに別の場所から連絡が入る。電話ではなく魔術通信だ。

 

「私だ」

《首尾よく事は進んだりけるわね》

 

それはイギリス清教の最大主教、ローラ=スチュアートだった。

 

「良かったのかね。君が禁書目録に刻んだ首輪が、こうもあっさり解除されてしまって」

《まあ、それ自体は想定通りではありたるけど、今部下に鬼電されてたるのよ。ああ、またかかってきた……》

 

言うまでもなくステイルだ。

 

長々と雑談を行うつもりは無い。確認さえできればそれで十分だ。

 

「そちらの事情には干渉しない」

《そうね。我々は我々で、お互いをお互いに利用したるだけだから》

 

2人の黒幕は暗闇で笑うのだった。あと、ステイルの電話に対応するのだった。

 

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