※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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夜月翔のハーレムな謹慎⑤

「「「ただいま」」」

 

玄関から3人分の声が聞こえた。六課に行ってる3人だ。1人分少ないけど。

 

「おかえり~……なんかあった?」

「ただいま、翔」

 

返事をしていなかった1人―――耀が手を振ってきた。

 

「別に変なことはなかったよ? 外で友達に会っただけだから」

「友達?」

 

耀の友達? ってもしかして。

 

「メアか?」

「当たり」

「とりあえず家に入ってもいいかな?」

「あ、そ、そうだな」

 

アスナに言われて気がついた。ずっと玄関で立ち話をしているわけにはいかない。横に避けると、アスナ、雪菜、桜の3人は無言で俺の横を通り過ぎて行った。

 

「なんか、怒ってるな……」

「そうだね」

「メアがなんか言ったんだろ?」

「心当たりある?」

「まあ……」

 

メアが何を言ったのかは知らんが、さっきの行為について何か言ったのだとすれば、3人が怒るのも……でも、メアとの行為はみんなにも許可されてることだしな……

 

「だから口には出さないんじゃない? 言いたくても言えないんだよ」

「そっか……そうだよな」

 

実は最近、ララが家にいるせいでなかなかそういうコトをするのが難しくなっているのだ。

 

事情を知らないってこともあるし、同じく俺の事情を知らなかったアリアと比べて、ララはノックなしに突然部屋に入ってくることもあるのだ。

 

しかも夜中にこっそりと布団に忍び込んでくることもある。そういうはしたない行為はしないようにしましょうと教えている身として、他の娘と一緒に寝ているところを見られると都合が悪い。

 

だからと言って、ヤるためだけにララに出て行ってもらう訳にはいかない。出て行ってもらうことは出来ても、その理由を説明出来ないからな。

 

「いっそのこと、ララさんにも説明したら?」

「それで『私もやりたい』って言いだしたらどうするんだよ」

「してあげれば?」

「軽く言うな」

 

そんなことしたら結婚まっしぐらだ。

 

結婚が嫌という訳じゃないが、ん~、そういうと語弊があるな……とにかく! 今はそこまで先のことは考えられないってことだ。

 

「じゃあ、わたしもその内、ね?」

「は!?」

 

耀の言葉に素っ頓狂な声を出してしまう。

 

「私とするのもイヤ?」

「いや……ぁ、『いや』ってのは『嫌だ』って事ではなくてだな……」

「ふーん。そうなんだ」

 

耀はにやにやしながら、リビングへと向かっていった。

 

「からかってるのか本気で言ってるのか、判断できん……」

 

俺はそう呟きながら、みんなの後を追うのだった。

 

ちなみにその夜は何もなかった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

《以上になります》

「報告ご苦労様です、八神部隊長。今はゆっくりと休んで下さい」

《はい。それでは失礼します、聖天子様》

 

はやてが映っていた画面が消えた。それと同時に椅子の背もたれに首を預け、息を吐きながら天井を見上げる聖天子。

 

キーストーンゲート占拠事件について、そして影胤の件についてを報告した。事件発生から数日が経過したことで、より詳細な資料をまとめることが出来たのだ。

 

当然、事件の詳細については各国へと通達されている。はやてがしていたのは六課内部の報告だ。

 

後援者である聖天子には部隊の動きについて詳細な報告が必要だったのである。

 

「翔さんが謹慎だなんて……」

 

聖天子が呟く。

 

影胤やオイスタッハを無力化したまでは良かったが、そのまま楯無に暴力を振るい負傷させたことによる処分。

 

翔がそんなことをするとは思えなかったが、謎の男の乱入があったとすれば納得出来た。

 

「いったい何者が……やはり予言に関係があるのでしょうか……」

 

所属不明、それどころかどのセキュリティにも補足されていない。どの組織に繋がりがあるのかも分からないのだ。

 

予言に関係しているのではと考えられている翔に接触してきた謎の人物。それだけで警戒に値する。それに加え、翔や楯無を全く寄せ付けない異次元の実力を持っているのだ。

 

「はぁ、前途多難ですね……」

 

そう言って背もたれに預けていた頭を起こす。と、同時に部屋のドアがノックされた。

 

入室の許可をすると、入ってくるのは見知った顔―――天童 菊之丞だ。

 

「お疲れのようですな、聖天子様」

「天童閣下。いえ、これくらいは」

 

菊之丞が入ってきたことで、居住まいを正す。

 

お疲れである、という言葉の否定はしない。してもすぐに瘦せ我慢だとわかってしまうだろう。何せこの数日間、ロクに寝ずに事件の後始末をしていたのだから。いくら聖天子の美貌でも、目元の疲れはごまかせない。

 

「本日はお早めにお休みになるとよいでしょう。これ以上はお体に障ります」

「ですが……いえ、そうさせていただきます」

 

聖天子は素直に頷いた。自分がここで数時間頑張るよりも、その数時間を休息に当てて体調を万全にする方が有益だと考えたのだ。

 

「それが良い。幸い、事件の方は落ち着きました。これでしばらくは静かになるでしょう」

「だといいのですが……現場の方が、疲労は溜まっているでしょうから」

「あの武偵……いえ、今は管理局員でしたかな。あの者は確か謹慎中のはず。心配なさらずとも、休息は取れているでしょう」

「……」

 

翔の謹慎について、聖天子もたった今聞いたところだ。別のルートからの報告があったのは間違いなかった。聖天子には知らされていないルートが。

 

今の自分がお飾りであることを再認識させられる。だがそれを口には出さない。

 

「……そうですね。彼にも、今度のことで何か報酬を差し上げなければいけませんね」

「必要ありますまい。彼奴は職務を全うしたまでです」

「だとしても、日本の不始末を彼が収めてくれたのは事実です」

 

菊之丞相手にも聖天子は引かなかった。

 

「……お好きになさるとよろしい。ですが、軽はずみな褒美を与えるようなことはありませぬよう」

「……はい? いったい何を……」

「彼奴を前にして―――例えば、出来る限り望みの物を与える、などと口走らないように」

 

意味を理解して、聖天子の目つきが厳しくなる。

 

「それは彼に対して失礼ではありませんか?」

「そうでしょうか? こちらで調べたところによれば、彼奴は非常に多くの女性と『交遊』があるようですからな。まあ、あの年頃の男児ならば、そのくらいの方が頼もしいとも言えますが」

「……」

 

聖天子もその意見は否定できなかった。翔の周りに女性が多いことは否定しようのない事実だ。

 

菊之丞も翔を聖天子の相手にと考えたこともあったが、あまりにも女性関係にふしだらなのであれば、関係を断つことも考えなければいけなかった。

 

「……だとしても、彼が私に対してそのような要求をするとは考えられません」

 

それは聖天子が自分に女性としての魅力が無いと考えている―――訳ではなく、翔の精神がそんな要求をするはずがないと考えているのである。

 

聖天子は自分の美貌を理解している。周りからどのような評価を得ているのか知っているし、それを武器として使うために様々な努力をしている。それによって向けられる視線―――男女問わず―――にも慣れてしまった。

 

だが翔からは一度もそのような視線を向けられたことはない。

 

「(そう、ない……あれ?)」

 

いや、あったかもしれない。8月にプールに行った時に。

 

「(いえいえ、あれは私ではなく私の恰好のせいであって……決して私を見ていた訳では)」

 

それはそれで、どうなんだという気分にもなるが。

 

「では仮に、もしも彼奴からそのような要求があった場合、毅然とした態度を取っていただけるのですね?」

「当然です。私と彼は、そのような関係ではないのですから」

 

頷きながら聖天子は思い出す。

 

「(そう言えばプールに行った時、どさくさで私の……)」

 

聖天子は視線を下ろす。そこには形よく膨らんだ2つの双丘がそびえ立っている。

 

「(あれはもしや、やはりわざとだったなんてことは……いえいえ、そんなことあるはずが―――)」

「―――様? 聖天子様?」

「っ、は、はい。何でしょうか?」

「……やはりお疲れのようですな。今夜は早くお休みになって下さい。報酬の件はくれぐれもお願いしますぞ」

「承知しました。それでは」

 

部屋の外に控えている護衛を引き連れ、自室に戻る聖天子。

 

流石に自室の中までは護衛も入ってこない。カメラや魔法による監視の目もない完全なプライベートの空間だ。(ちなみに保脇はレッド・ホット・チリペッパーの能力でこの部屋の中まで覗いていた)

 

誰の目も無くなると、疲労が一気に押し寄せて来た。

 

備え付けのシャワー室に入り、自らを聖天子たらしめている衣装を脱ぎ去る。聖天子はこの服を着ることでマインドセットを行い、弱冠16歳でこの大役に従事していた。

 

衣装を脱ぎ去った聖天子は心まで少女になる。少なくとも、『聖天子』としてふるまっている時とは、心の持ちようが変わるのだ。

 

一糸まとわぬ姿で、シャワー室へと足を踏み入れた。

 

シャワーを浴びることで汚れと疲労を落とし、身を清めることで疲労を眠気へと変換していく。

 

聖天子の自室にある物は基本的に白を基調としたもので統一されている。壁や家具だけではなく、衣類にいたるまで。

 

シャワーを浴び終わった聖天子はクローゼットから白に精緻な刺繍が施された下着を身に着け、上はシルクのナイトブラを身に着ける。その上にパジャマを着てすぐにベッドに潜り込んだ。

 

目を瞑る。

 

自室に帰ってからベッドに入るまで、菊之丞の言葉をずっと考えていた。

 

――――

「では仮に、もしも彼奴からそのような要求があった場合、毅然とした態度を取っていただけるのですね?」

「当然です。私と彼は、そのような関係ではないのですから」

――――

 

「(そんなこと、ない……私は聖天子で、だから、そんなことはない……)」

 

とは言い切れないかもしれない。

 

そう考えながら、聖天子はまどろみの中に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

日付が変わる直前、まっとうな人ならば寄り付かない路地の奥にあるお店。目立たないそこは、スキルアウト達のたまり場として重用されていた。

 

今宵も明らかに未成年の学生に酒がふるまわれていた。バカ騒ぎする彼らに、店主は何も言わない。彼らは大切なお客様なのだ。バレなければ店にも被害は出ない。それどころか、彼らからのおこぼれもあり、積極的に受け入れていた。

 

「で、そっちはどうだったよ」

「ああ、予定通り体で払ってもらうことになったぜ」

「何が予定通りだ。ちゃっかり味見も済ませたんだろ?」

「へへ、まあな」

 

ゲスな笑いをこぼす男に対して、舌打ち混じりに酒を煽った。

 

「良いよなぁ、そっちは。こっちは金の取り立てだぜ」

「今度そっちにも恵んでやるよ」

 

彼らは落ちこぼれのスキルアウトとして、違法業者の取り立て屋の仕事をしていた。武偵がヤクザと言われる所以にもなっている。

 

周りでも似たような会話が繰り広げられていた。内容は最低だが、全員が楽しそうに酒と会話を楽しんでいる。

 

そこに、

 

「グギャ!?」

 

悲鳴が響き渡った。

 

椅子に座っていた男の1人が突然浮き上がり、壁に叩きつけられたのだ。

 

一瞬で静まり返る店内。全員自分の獲物に手を伸ばす姿は、腐っても彼らが武偵であることの証明だ。

 

「あそこだ!」

 

1人の声に従い、全員の銃口が向けられる。だが発砲されることはなかった。それはそこに居る存在が、

 

「なん、だ……? ぼやけてる……?」

 

霞の様にぼやけた、不安定な存在だったからだ。そこに居るのかいないのか、しっかりと目を凝らさないと分からない。男たちの中には全く視認できていない者もいた。

 

「なんだ? 鬼種のガキ、か……?」

 

ぼやけた体だけでなくフードを目深にかぶっているせいで顔が全く分からない。かろうじて体格がわかる程度だ。フードからは一本の角が伸びていた。

 

全員から銃口を向けられているというのに、その子供は全く動じていなかった。

 

ゆらり、と子供が体を縮める。

 

「ゴガッ!?」

 

店の誰も反応出来なかった。子供はいつの間にか自分たちの懐に入り込んでいた。手に持った何かで、男の1人が攻撃されたのだ。

 

「コイツ……!! 刃物だ! 気を付け―――!!」

 

注意した男が切り裂かれる。

 

「この……ッ!!」

 

銃を連射する者もいるが、

 

「ッ!? 何で当たんねぇんだ!?」

 

避けられているわけではないのに子供の向こうの壁に着弾する。

 

「この野郎……!!」

 

1人が能力を発動させる。レベル2程度の発火能力者の手に、野球ボールほどの火球が作られ、発射される。

 

だがそれも銃弾と同じ結果を招いた。違うのは着弾したのが炎という事だ。壁に火がつく。

 

幸い出力が低かったせいで、一瞬で燃え広がると言った事態にはならなかった。だが、騒ぎになるのは間違いない。

 

男達は逃げ出そうとするが、出口にあの子供が立ちふさがった。

 

「どけっ!! テメェ!!!」

 

素手で掴みかかろうにも相変わらず通り抜けるだけだ。通り抜けるのなら子供の存在自体を無視しようとする者もいる。

 

それらに等しく、剣による攻撃が襲い掛かった。

 

壁の火と暴れる子供によって、店内はパニックに陥る。

 

「ひいっ……!!」

 

店長は厨房に引っ込み、頭を抱えて震える。

 

しばらくすると、音が聞こえなくなった。

 

店長は這いつくばりながらフロアに向かう。フロアでは何人もの男が倒れ、うめき声を上げていた。壁で燃えていたはずの火も消えている。

 

暴力が渦巻いていたフロアは、ひっそりとした静けさに包まれていた。

 

あの靄のような子供もいなくなっていた。いや、見えていないだけかもしれない。

 

店主は色々なことを考えた。

 

床に転がっている男たちは生きているのか、先ほどのボヤ騒ぎは通報されたのか、あの子供は本当にいなくなったのか、自分の身の安全は確保されたのか。

 

そんな店主を現実に引き戻したのは、店の扉を乱暴に叩く音だった。ここは客層もあり、外からは中が見えなくなっているのだ。

 

「通報を受けてきました! 管理局です!」

「あ、ああ! はい!」

 

通報はされていたらしいと、震える脚で立ち上がり扉を開ける。

 

扉を開けると確かに管理局の制服を着た男女が立っている。

 

「匿名での通報を受けました」

「はい、それが―――」

「ここに違法業者の依頼を受ける武偵がいると」

「―――はい……ぇ?」

 

てっきりボヤのことだと思っていた店主の口から、間抜けな声が漏れる。

 

「すでに鎮圧されているとの話でしたが―――これは」

 

男性の局員は店内の様子を見て眉を顰める。

 

「これは詳しくお話を聞く必要がありそうですね」

 

男性局員は店主を見てそう言うのだった。

 

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