「てりゃああああぁぁぁっ――――ああ!??!?」
勢い良く斬りかかる俺だが、俺の剣はあっけなくアナザーゴーストをすり抜けてしまう。勢いをつけた分、前につんのめってしまった。
振り返る間もなく背中に斬撃を受ける。
「痛っ!!」
背中をさすりながら間合いを測る。
だが、アナザーゴーストは剣を下げ、俺を観察しているだけだ。それもそうだろう。俺は幽霊に対して攻撃手段を持っていない。攻撃を食らう心配もないのに警戒する奴はいないだろう。
だが、攻撃手段が無いのなら今から生み出せばいい。
「こいッ!!」
俺はアナザーゴーストへ向けて手を伸ばした。するとすぐさまアナザーゴーストの胸から光が発生し、まっすぐに俺の手に収まる。
「よし!」
その光の中心にあったのは、新たなウォッチ。ゴーストウォッチだ。
《GHOST》
《ARMOR TIME!》
《KAIGAN! GHOST!》
全身にゴーストのスーツのような装飾が入り、肩には眼魂をもした特徴的なアーマーが装着される。
そして頭部、時計の針を模したジオウの角の間に、ゴーストの角が装着された。マスクには『ゴースト』の文字が刻まれる。
「祝え!」
「「ッ!?」」
「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ、ゴーストアーマー。また一つ、仮面ライダーの力を継承した瞬間であるッ!!」
何処からともなく現れたウォズが祝辞を述べる。
予想していた俺と違い、完全に不意打ちだったウェイバーは謎の人物の登場に目を白黒させていた。
「な、なんだ、お前は……翔の知り合いか?」
「知り合い? わが魔王の友人といえど、その認識は改めてもらう必要があるな。私は知り合いなどではなく忠実な臣下。ロード・エルメロイ2世、あなたがかの征服王に抱いているものと同じ―――いや、それ以上の畏怖と敬愛を捧げている者だ」
「……はぁ?」
はてなを浮かべるウェイバーへの説明は後回しだ。
アナザーゴーストは突如光を発した自分の胸に手を当てていたが、変化した俺に何かを感じ取ったのか、今度はしっかりと剣を構えた。
今度はしっかりと打ち合った。
俺は綺凛の連鶴を模写したにわか剣術で、アナザーゴーストの剣劇に対抗する。
だが、早い。アナザーゴーストが圧倒的に。幽霊だからなのか、消えるようなステップであっという間に懐に入り込まれ、連撃を浴びせられる。
恐らく攻撃は当たるようになっているはずだが、俺の剣はかすりもしなかった。
「―――ッ!!!」
「うわ……ッ!!」
強烈な突きが俺の胸に突き刺さる。アーマーが火花を散らし、俺は後ろに吹き飛ばされた。一瞬呼吸できなくなったことで激しくせき込む。
「ゲホッ、ゲホッ!!」
つ、強い……!!
同じゴーストとは思えないぞ!!
や、そりゃそうだよな。なんたってあのアナザーゴーストに変身しているのはユウキ(仮)なんだ。や、(仮)なんてもうつける必要は無いな。こんなにすさまじい剣技の持ち主、そうそういる訳がない。間違いなく『絶剣』ユウキだ。
アリアがWに変身した時のことを思い出す。本人のセンスとライダーの力が合わさり、信じられない力を発揮している。この形態に限るなら、おそらく本人(天空寺 タケル)が変身した時よりも強いだろう。
「やああああっ!!」
「「っ!?」」
埃っぽい店内を死神の鎌が切り裂いた。
「援護します!!」
「イッヒッヒッヒ! 助けてやるぜ、あんちゃん!!」
それは身の丈ほどの鎌―――礼装であるアッドが変形した
グレイは対霊体のエキスパート。相手が例えゴーストであっても、いや、ゴーストだからこそ有利に戦うことが出来るはずだ。
だが、
「っ、まず、い……!!」
グレイの戦闘力は対人間を想定していない。幽霊であるアナザーゴーストに多少のデバフはかかるかもしれないが、それ以上に技量の差で追い詰められていた。
だが2人がかりならどうにかなるかもしれない。
そう思って立ち上がったところで、
「そう言えば、もうフォームチェンジ出来るんだよな」
俺はすでにゴーストドライバーを手に入れている。アイコンもあるのならば、
「馬鹿正直に剣劇に付き合ってる必要はないか。グレイ!! 少しの間、前を頼む!」
「っ、はい!!」
「マジか!?」
「すぐに終わるさ!!」
取り出した黄色い眼魂を起動させる。するとそれはゴーストウォッチに吸い込まれた。するとウォッチに書いてあるゴーストの絵柄が変わる。
《FORM TIME!》
《EDISON!》
右肩の眼魂型のアーマーから黄色いゴーストパーカーが出現。俺の周りを飛び回り、後ろから抱きつくように新しいアーマーを作成する。
ゴーストアーマーのエジソン魂だ。
変身が完了するとゴーストウォッチからガンモードのガンガンセイバーが出現した。
「祝え!! 全ライダーの力を受け継ぎ―――」
「突然大声を出すな……」
外で何か言っているみたいだな。
俺は気にせずアナザーゴーストに銃口を向けた。
「グレイ、避けろ!!」
俺の声にグレイは大きく横に飛んだ。
姿が変わった俺に、アナザーゴーストは剣先を向けているが―――その行為は命取りになる。
俺は引き金を引いた。だが、発射されるのは銃弾ではない。
店内全てを埋め尽くす勢いで放射されるのは黄色い電撃だ。剣先から吸い込まれる電撃。ネオンで彩られていた夜の街に、過剰な電気が供給される。
きっかり5秒。放射される電撃を浴び続けたアナザーゴースト。その体がふらりと揺れ―――
「はぁ!!!」
後ろから魔力砲撃が飛んできた。
それは大鎌を大槌に変形させたグレイからの攻撃だ。すでにフラフラだったアナザーゴーストは防御もせずにまともに食らい、壁をぶち破って吹き飛んで行った。
「結構しっかり攻撃するな、グレイ……」
砲撃と同時に舞い上がる土煙。あの奥にはアナザーゴーストがいる。まだ変身が解除されていなかったし、ここは俺が決めないといけない―――あれ!?
「い、いない……!!」
「まさか、逃げ―――」
だが近くに出口があるようには見えない、と考えたが、
「(壁の透過―――ゴーストの能力か)だったら俺も!!」
迷うことなく壁に突っ込む。俺の身体は壁に激突することはなく、壁を通り過ぎる。壁を通過したことで一瞬視界がふさがるが、すぐに電気の消えた無人のオフィスに飛び出した。
「ッ!!」
同時に銃口を向けようとするが、
「いない……!!」
部屋からは気配を感じない。どこかに隠れているというわけでもなさそうだ。幽霊には足音はないが、ゴーストアーマーを装着したことで幽霊の気配というものを感じ取れるようになっている。そのレーダーに全く引っかからないのだ。つまり、
「しまった……!!」
俺は急いで上の階や他の部屋を、壁を透過することで確認していく。だが、どこにもアナザーゴーストの姿はない。
どうやら完全に逃げられてしまったようだ。
―――――――――――――――――――――――――
「それで、色々と聞きたいことがあるのだが?」
「ああ。話すよ」
手ごろなハンバーガー屋に入った俺たちは、2階席の一番奥を陣取った。夜明け前という時間帯なので他に客はいない。
俺はビックな奴、ウェイバーはチーズな奴、グレイは特にバーガーは頼まず、俺達が頼んだポテトをちびちびちと食べるみたいだ。や、もしかすると、アナザーゴーストを逃がしてしまったことに責任を感じているのかもしれない。
あの後俺達はすぐにその場を後にした。管理局が駆けつけてきても面倒だったしな。あそこは治安が悪いし、そういう方々の抗争という形にしてもらおう。
ちなみに、ウォズもいつの間にか姿を消していた。
「まずはあのゴーストとお前の関係だ。今度はどんなことに首を突っ込んでる?」
推測だけど、と言って半ば確信している情報を告げる。
「あのゴーストは俺の義妹の友達だ。」
「つまり、意識だけが抜けだして行動していると?」
「いや、変身してるんだと思う」
「変身、ですか……?」
グレイが横から口を挟んできた。俺は頷き、懐からウォッチを取り出す。机に置かれたそれを、ウェイバーはしげしげと観察する。
「これは?」
「おそらく、これと似たようなものを使ってるんだ。これは―――」
俺は思案する。こいつのことを説明するってことはライダー関連のことを説明するってことになる。単なる能力の説明だけではなく、アナザーライダーの仕組みについても。協力してもらうのだから当然のことだ。
「仮面ライダー、か」
「そう。このライダーウォッチにはそれぞれのライダーの歴史が内包されてるんだ」
「歴史というと、この仮面ライダーというのは私が知らないだけでこの世界に存在していたということか? その力をお前が利用していると」
「あー……いや……」
まあいっか、ウェイバーにだったら。
「ちょっと」
「ん」
俺が手招きするとウェイバーが耳を寄せてくる。そこにささやいた。
「実は俺って」
「うむ」
「この世界じゃない、異世界から来たんだ」
「……ふう」
ウェイバーはそっと俺から離れ眉間をもみ始めた。
「反応薄いな」
「それを飲み込まなければ話が進まないんだろう?」
「そう言う事」
「……つまり仮面ライダーとはお前がいた世界の存在で、それが何かしらの理由でこの世界に来てしまい、お前はそれを追ってきたということか」
「や、全然違う」
「じゃあなんだ!!」
今頃混乱してきたのか、客のいない店内にウェイバーの声が響き渡った。
俺はさらに詳しく説明する。
「俺は確かに異世界から来たけど、俺の意思じゃない。ってか、どうやって来たのかもわからん。もともと一般人だしな。何でこんなことになったのか……」
「お前が一般人……?」
何を言いたいのかは知らないが話を続ける。
「で、仮面ライダーは俺の世界の物語上の存在だ。神話とか伝承じゃなくて、特撮番組の」
「待て、つまり創作物という事か? なぜそんなもの現実になっている?」
「この世界に来た時にそういう能力を身に着けたんだ。俺が使ってるのは、言っちまえば『創作物を現実にする能力』だからな」
もちろん制限はあるが、と付け加えておく。ちなみに、どうやって能力を生み出しているのかは秘密にしておくことにした。
「空想具現化、いや、まさかな……」
「さ、さあ? 難しい話は俺にはわかんないな……」
そんなこと言ったら、目の前のウェイバーやグレイだって創作の人間だし。
まあ、ディケイドも本物がいたからな。あまねく並行世界にはそういった可能性もあるってことなのかもしれない。
「一番の問題は、俺みたいな人間が、この世界には他にもいるってことだ。そいつが俺と同じ能力を持っていて、悪さをしている可能性が高い。それを止めたいんだ。ライダーの力は悪用されちゃいけない」
「ライダー、か……」
俺が言ったのは仮面ライダーの『ライダー』であって、サーヴァントの『ライダー』ではない。だがそれでも、その単語だけで何か感じ入るものがあったらしい。
「わかった。そういうことならば協力しよう」
「アナザーライダーを倒すのは俺じゃないといけない。だから見つけ次第俺に報告してほしい」
「だが見つけてから報告では逃げられてしまうのではないか?」
「それもそうだな……」
幽霊としての壁を透過する能力が想像以上に厄介だ。アレを使われたらまともに追跡なんて出来っこない。発信機の類も不可能だ。
「とすれば、待ち伏せか」
「それしかないだろう。お前はそのユウキという娘のことをどれだけ知っている?」
「まあ、そこまでは……」
原作とは大きくかけ離れたこの世界だ。特にユウキ関連については分からないことが多い。とはいえ分かっていることがある。
「でもゴーストになって人を襲うような性格じゃない―――と思う」
「となればやはり、何か理由があるんだろう」
「お得意のホワイダニットって奴か」
「何故知っている。桜か? まあそうだ。お前の話を聞く限り、お前と同じ能力を持った人間が手を貸している可能性が高いんだろう? ならば、細かな理論など考えても仕方があるまい」
超常的な能力を持つ相手はまともな理論での推理は難しい。そのためウェイバーは『何故を行うのか』(魔術師なら根源を目指すなどの目的)から、因果関係を見通す能力に長けている。
俺は今の段階で確定している情報をウェイバーに伝えた。ユウキの事とゴーストの事を。だが、その情報を微々たるものだ。
「情報が少ないな」
「妹の友達のことをそんなに知ってたらおかしいだろ」
「お前なら知っているのではないかと思ったのだがな。多少は調べていたのではないのか?」
「いや、俺今、謹慎中だから。出歩くなって言われてるんだよ」
「たった今、出歩いてるだろ……」
流石のウェイバーも手詰まりらしい。
この世界のユウキの立場、原作からめっちゃ変わってるからなぁ。
でもそれ以外となると、原作知識になるからなぁ。それを踏まえて考えるとなると……スリーピングナイツはこの世界に存在しているか分かんないし。とりあえず八神道場にはいなさそうだ。
そもそも原作だとユウキは病気。でもこの世界では、
「ユウキも元気だしなぁ」
何気ない一言だった。
アナザーゴースト被害者はみんなひどく衰弱していた。恐らく魂やらマナやらを抜かれてるんだろう。それを集めてどこかに注いでってところだとは思うんだけど。
「元気だしなぁ、とは? その口ぶり、まるでそうではない者がいるように聞こえるが?」
「……ん、いや、もしも自分が不調だったら、そういうことしちゃうかもな~なんて」
「そうだろうか。ずいぶんと軽率な行動だと思うが……それに他人のマナを送り込んでも病気の回復は出来ない。過剰に注ぎ込めば命を無理やり繋ぎとめるくらいは出来るかもしれんが……そうでもしないと生きることが出来ないとなると、普段は満足に体も動かせないぞ」
ユウキは生身でも普通に活動してるし、その線はないか。や、待てよ……
「自分じゃなくて、誰かほかの人のためにやっている?」
「なるほど、あり得るな。心当たりは?」
「うーん……」
ユウキの家族は全員死んでしまってるはず……や、これは原作の事か? この世界では違うのか?
分からんな。聞いてみないと。聞くとすれば、はやてさんあたりか。
「それが良い。集めた魂を何に使っているのか。目的さえわかれば、待ち伏せは容易になるだろう」
「だな。明日にでも聞いてみるかな。今夜はこれでお開きにするか」
そう言って俺達は別れるのだった。