※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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報復の結末

時刻は少し巻き戻り、ユウキがチンピラ達の前に行く少し前。

 

それはいつも通り夢の中で特訓をしている時の事だった。

 

「ん、っと、ちょっと待って」

「はい? どうかしましたか?」

 

ムサシの一言で構えを解く綺凛。

 

「ちょっとね。こっちのムサシさんが話したいことがあるって。変わるわね」

「はあ……」

 

『こっちのムサシさん』と言われても綺凛にはいまいちピンとこなかったが、数秒後に纏う空気がガラッと変わったことで『変わった』のだと理解出来た。

 

「刀堂 綺凛よ、詳しい説明は混乱させる故、省かせてもらおう」

「は、はい。何でしょうか」

 

口調も男性のものに変わり、無意識のうちに背筋が伸びる。

 

「我が歴史の分け御霊が、今際の声を上げている。それは良い。それが定めだ。だがこのままでは身に着けている少女諸共、消えることになるだろう」

「身に着けている少女……もしかして、ユウキさんですか!?」

 

ムサシはゆっくりと頷いた。

 

「そ、そんな……!! すみません! すぐに起きます!!」

「うむ、それが良かろう。だがその前に。斬るべき時には迷うな。そのために我々が力を貸そう」

 

その言葉に送られ、綺凛の意識は急速に浮上していった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

目を覚ました綺凛はすぐに翔に連絡した。

 

その過程でムサシとの特訓についても話すことになってしまったが、必要経費だ。

 

《そうか……そろそろタイムリミットなのか……》

「そうみたいです。先輩はご存じだったんですね」

《まあな……ちなみに場所とかって分かるか?》

「いえ、それは……もう一度寝て聞いてみますか?」

《最初に言ってくれないってことは分からないんだと思うが……一応トライしてみて欲しい》

「分かりました。すぐに寝れるか分からないですけど」

 

そう言って電話を切り、張り切って布団に入って目を瞑るが―――眠れない。早く眠らなければと思うほど、頭が冴えてしまう。

 

と、冴えてしまった耳が障子の向こうの衣擦れの音を捕らえた。

 

「誰ですか?」

「夜分遅くに申し訳ない。私は夜月 翔を我が主と崇める者だ」

 

聞いたことの無い男性の声が聞こえて来た。

 

綺凛の警戒度はマックスまで引き上げられ、すぐに布団の近くにある刀に手を伸ばす。

 

「紺野 ユウキの件について、あなたに協力して欲しい」

 

綺凛の手がぴたりと止まった。

 

「どういう意味ですか」

「今夜、紺野 ユウキが向かう場所をあなたに教えよう。そこで、事態の解決してもらいたい」

「待ってください! あなた、ユウキさんがどこにいるのかわかるんですか!?」

 

綺凛は急いで障子を開けるが―――そこには誰もいない。ただ声だけが聞こえてくる。

 

「早く教えて下さい! 翔さんに伝えないと……!!」

「いや、我が魔王には別にやらなければいけないことがある。あなたが動かなければいけない、刀堂 綺凛」

「私が……? どうしてですか。 他にもっと、ふさわしい人がいるじゃ……」

「いや。君しかいない。その理由もわかるはずだ」

 

綺凛は自分の胸に手を当てる。これ以上ない理由が思い当たった。

 

「わかり、ました」

 

その言葉と同時に、デバイスに1つの住所が送られてきた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

夜の街を、レッドフレームを装着した綺凛が飛び回っていた。

 

送られてきた住所は、乗り物が無ければ時間がかかりすぎるほど遠い場所だった。翔から貸し出されているレッドフレームは、許可がなくとも運用可能なのでこれを使うことにしたのだ。

 

家に忍び込んでいた得体のしれない男の言葉。

 

だが近づけば分かる。前にユウキの部屋を訪れた時と同じく、胸の奥がざわつく感覚だ。

 

胸のざわめきを頼りに進むと、使われていない倉庫に辿り着いた。だが扉はしっかりと閉まっている。

 

ブースターを使い屋根に上り、設置されている窓から中の様子を確認する。かなり薄暗いのだが、ガンダムの機能によって昼間の様に見えていた。会話も聞こえる。

 

「ユウキさん……!!」

 

眼下にはたくさんの男性に囲まれているユウキの姿があった。ただ事ではない。

 

すぐにデバイスを取り出して管理局に通報する。

 

「あ、もしもし、管理局ですか!?」

 

綺凛は拙いながらも状況を説明するが、電話に出た管理局員の反応がイマイチだ。

 

「あ、あの? どうしたんですか?」

 

不安に思い聞くと、局員はため息を吐きながら答えた。

 

《最近多いんですよ。そう言う通報。ほら、裏路地のユウキって流行ってるでしょう。いたずらも多くなっていますからねぇ》

「ち、違います! いたずらなんかじゃ……! 本当に女の子が襲われているんです!!」

《はい。分かっていますよ。とりあえず、当番は全員で払っているようなので、手が空き次第向かわせますね》

「出来るだけ急いでください! 相手もたくさん、50人くらいいるので!!」

《50人、ですか。まあ、分かりました》 

 

綺凛としては今の危機を出来るだけ説明したつもりだった。だが、50人という非現実的な数値が局員の不信感を高めてしまったのは間違いなかった。

 

「だ、大丈夫かな……」

 

局員の最後の口調を思い出して不安になる。局員として、通報を無視することはあり得ないが、50人という人数に耐えられる局員が来るのか。1人2人では意味がない。

 

電話をしている間にも、ユウキはデバイスやウォッチを出すように言われ、何の抵抗もなく差し出す。

 

身体を触らされたことに怒り投げ飛ばしたことで、暴力を受ける。

 

それでおとなしくなったユウキに対して、セクハラ行為を再開する男性。

 

1分、2分……5分経っても、そのセクハラは終わらない。そして管理局員も到着しない。

 

歯を食いしばりながらその光景に耐えていたが、

 

「心配するな。この人数だからな。しっかり『順番』は決めてある」

 

『順番』とは? この50人を超えるチンピラが、順番でユウキに何をするつもりなのか。

 

「(行かないと!!)」

 

窓ガラスを蹴り破り、倉庫の中へ突入する。

 

チンピラとユウキの間に降り立ち、

 

「ユウキさんから離れて下さい!!」

 

そう叫ぶ。

 

「あっ、コイツ! コイツもインターミドルの選手ですよ! 紺野 ユウキと対戦した奴です! 確か名前は……刀藤 綺凛!!」

 

バイト子分が素早く綺凛の正体を看破する。

 

「ほう。助けを呼んでいた、って訳でもなさそうだな?」

「ユウキさんは関係ありません。もう観念してください。すでに管理局に通報してあります」

 

囲まれてはいるが、綺凛とユウキの実力なら耐え凌げる。逃げることも可能だろう。後は管理局に保護してもらえばよい。そう思っていたのだが、ユウキの反応が鈍い。

 

「……ダメなんだよ、綺凛さん」

「ああ。その通りだ、刀藤 綺凛。ちょうどいい、コイツを見ろ」

 

アニキはデバイスを取り出して2人に見せた。

 

その画面に映し出されたのは暗い廊下だ。綺凛には見覚えのないものだったが、横にいるユウキは『あっ!』と声を出して口を押えていた。

 

「ユウキさん? あそこがどこか分かるんですか?」

「あそこ、病院だ……姉ちゃんが入院してる、病院……!!」

「お姉さんが入院!?」

 

ユウキの姉の話を初めて聞いた綺凛は目を見開いて驚く。ユウキは姉のことについてここまで知られていることにより一層焦りを覚える。

 

映し出される画面は迷うことなく藍子の病室へ向かっている。

 

「姉ちゃんに何するつもりだ……!!」

「何もしないさ。お前ら達が大人くしているならな」

「……っ」

 

チンピラ達にあの男性が教えたユウキの弱点、それは藍子の事だった。

 

どのような病状でどこの病院の何号室に入院しているのかを詳細に。

 

ただし、あの病院は警備が厳しく、危険物―――例えば爆弾などを設置してもすぐに撤去されてしまう。侵入しても、警備員に見つかればすぐに捕まってしまうだろう。

 

かといって病院を占拠できるほどの戦力で攻め込めば、武偵や管理局に目をつけられてしまい本末転倒だ。

 

必要なのはユウキに報復している間、確実に藍子を人質としておく環境を作り上げることだ。

 

その為に必要なアイテムも男は提供してくれた。

 

何度も何度も回数を重ねる必要は無い。回数を重ねれば油断でぼろを出すようになってしまうかもしれない。この1回だけで完璧な形で報復するのだ。

 

とうとう画面が病室の目の前に到着してしまう。

 

「姉ちゃん……!!」

 

病室の扉が開けられる。そこに映し出されたのは、

 

「え!? 先輩!? そっか……!!」

 

首を傾げている翔だった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

張り込みを始めて数日。俺の謹慎期間があと3日となった10月中旬になっても、ユウキが藍子のもとを訪れることはなかった。ゴーストとしてだけではなく、普通のお見舞いにすら来ない。藍子によれば、こんなに期間が空いたのは初めてのことらしい。

 

「まずい、早く来てくれ……!!」

《ユウキ……》

 

クソっ!! やっぱり待ちの作戦は失敗だったのか? ……いや、落ち着け。ウェイバーと話して今回はこの方法が一番良いって判断になったんだ。それを信じるしかない。

 

でも、決着をつける前にユウキが一線を越えてしまっては意味がない。情報を聞く限り、まだ被害にあっているのは犯罪者だけのようだが。万が一、罪のない一般の人まで襲い始めたら本格的に指名手配されてしまうだろう。

 

それに消滅の件もある。はやてさんの話では連絡も取れなくなっているようだ。人知れず消滅して……なんて嫌な想像をしてしまいそうだ。

 

と、不安でたまらなかったのだが、さっき綺凛から連絡があった。

 

夢の中でムサシと特訓しているとかいろいろと聞きたいことがあったが、一番重要なのかはどうやらアナザーゴーストはまだ消滅していないらしい。だが、危険な状況ではあるらしい。

 

すぐにでも探し出したいのだが、浅葱や御坂からの連絡もない。

 

流石のスペシャリストも、相手が幽霊では難しいらしい。カメラに映ったり映らなかったり、地形を無視した移動をしたり、チンピラを探してふらふらと動き回られては、予測を立てるのも難しいらしい。

 

かと言って、これ以上打てる手がない。

 

こうして祈りながら待機してるしかないのだ。今夜も、昨日やおとといと同じように。

 

いつしか俺と藍子の間には会話がなくなっていた。

 

そんな時だった。病室の扉が開いたのは。

 

「ッ!? ユウキ―――!?」

 

ドアを開けて入ってきたのは、

 

「あん?」

「……は?」

《……誰?》

 

扉を開けて入ってきたのは、見たこともない男だった。俺よりも少し年上だが、二十歳は越えていないように見える。派手に染められた金髪だが、染められてからだいぶ時間がたつのか、根本の黒が目立っていた。

 

意味の分からない来客に戸惑う俺。

 

右手に持っているデバイスのカメラはしっかりと俺達に向けられている。

 

何やってるんだ、こいつ。明らかにドクターではないことは分かるけど。こんな深夜に、関係者以外が病院を徘徊している……?

 

「アニキ、どうしましょうか……はい、はい、了解っス!」

 

見ると耳にはイヤホンが付けられている。誰か―――アニキって奴と話してるらしい。まず違いなくアニキも医者じゃないだろう。了解って何が? 何をするつもりなんだ?

 

俺は警戒して身構えると、男は突然腕まくりした。それも左腕だけ。

 

「へへっ、驚いて腰抜かすんじゃねーぞ……!!」

 

ポケットから何かを取り出し、

 

《BIRD》

 

「は?」

 

聞き覚えのある音声が聞こえたと思ったら、男はそれを自分の左手に突き刺した。次の瞬間、男の姿が変わる。

 

それは、

 

「バ、バードドーパント……?」

 

突然の珍客が思いもよらない姿に変貌し、俺は目をぱちくりとさせる。

 

「悪いなぁ、兄ちゃん。ちょっとばかし痛い目見てもらうぜぇ~」

《しょ、翔さん……!!》

 

藍子も事の重大さを理解したらしく、心配そうな声を出しているが、

 

「ユウキを待ってたはずだったのに、なんでお前みたいな奴が来るんだよ……」

 

《ZI-O!》

 

ぼやきながらも俺はウォッチを起動させる。

 

「変身!!」

 

《RIDER TIME! 仮面ライダーZI-O!》

 

「はぁ!? な、何だ、そりゃ―――ごはっ!?」

 

姿を変えた俺に狼狽しているところに、しっかりと拳を叩き込む。

 

「お前には、色々と聞かなきゃいけないことがあるみたいだな」

 

俺は拳を握り締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「ああ、そっか。先輩がいるんだ……」

 

そんな綺凛の声を聴いたアニキはニヤリと笑った。

 

「なるほどな。コイツはお前の知り合いなのか。面白い。これでお前の方にも人質が出来たわけだ」

「いえ、そうではなくてですね……」

 

どこか勘違いしているアニキが少しかわいそうになる綺凛。このチンピラ達がどんな計画を立ててきたのかは分からないが、翔がいる時点でうまくいかないことは確定だ。

 

《アニキ、どうしましょうか》

「その男も知り合いらしい。死なない程度に痛めつけろ」

《了解っス》

 

そう。計画ではあの男からもらったアイテム―――ガイアメモリさえあれば、1人潜入しても十分だったはずなのだ。適当な警備員など相手にならず、BIRDドーパントという事で自力で飛行も可能。何も問題ない、はずだった。

 

だが、

 

「何だと!?」

 

画面の中の翔がジオウへと変身。バードドーパントに拳を叩きこんだことで、持っていた端末が床に転がり天井しか映さなくなる。

 

いまだに音声は聞こえてくるが、その内容はお世辞にもチンピラが優勢とは言い難い。

 

倉庫内部に微妙な空気が流れ始める。

 

「あ~……やっぱり……」

 

ただ1人、綺凛だけは翔が画面に映った瞬間にこうなるだろうと思っていた。適当なチンピラが翔に敵うわけがない。

 

想定外の出来事に、しばらくの間誰もが硬直していた。

 

一番最初に動いたのは、

 

「ふふ」

 

腹を抱えて笑い出したユウキだった。

 

「あはははははははははっ!!」

 

広い倉庫の中に、ユウキの狂った笑い声が響き渡る。

 

ユウキは安堵した。姉へ危害を加えられる心配がなくなったことに。

 

ユウキは解放された。姉のためにこれから自分に降りかかる仕打ちを耐えなければいけないという状況から。

 

ユウキは自分の奥底から湧き上がってくるドス黒い感情を受け入れた。

 

ユウキが手を伸ばすと、アニキがもっていたゴーストウォッチがその手を透過してユウキの元へ飛んでいく。

 

「なっ!?」

 

全員が焦って武器を取り出すがもう遅い。

 

ユウキだけならともかく、藍子に手を出そうとした時点でこのチンピラたちの運命は決まっていたのだ。

 

「お前ら全員残らず―――」

 

《GHOST》

 

「―――殺してやる」

 

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