※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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藍子の治療

翔と綺凛が去って1時間程。藍子による『おはなし』はずっと続いていた。

 

《何でこんなことしたの!? 人様に迷惑までかけてこんな……!!》

「め、迷惑って、一応悪い人しか相手にしてなかったし……」

《そうだよねぇ! なんたって裏路地の幽鬼サマだもんねー》

「うぅ……っ」

 

ユウキの声はどんどん小さくなる。

 

藍子はユウキの件を知ってから、ネットに転がっていた『裏路地の幽鬼』の記事を読みまくっていた。

 

ユウキ本人にそんな気はないのは分かっていたが、それでもダークヒーローだとか、義賊だとか書かれているのを見ると心配と同時に羞恥心がマックスだったのだ。

 

《それに今回だって、すごく危なかったんでしょ!!》

「……うん。翔さんがここにいて、綺凛さんが来てくれなかったら……」

 

自分は何をされていたのかわからない。

 

翔が病院にいなければ、藍子が人質に取られてユウキも綺凛もチンピラに手出し出来なくなっていただろう。そういう意味ではユウキもそうだが綺凛も危なかった。

 

結局管理局員が来たのは全ての戦闘終了後。人数は1人だったので、結局あのチンピラが最後まで好きにふるまっていたことだろう。偶然だが翔の功績は大きかった。

 

そして翔によって藍子の安全が確保された後。綺凛がいなければユウキは間違いなく人を―――

 

「……ホントに、ごめんなさい」

 

怒りに我を忘れ、復讐心に身を任せた結果、取り返しのつかないことをしそうになってしまった。落ち着いた今となっては自分のやろうとしたことの恐ろしさに体が震えるばかりだ。

 

《……それはこれから来る人に言いなさい。もうそろそろ到着だって言ってるから》

「え?」

 

ユウキが首をかしげる。

 

その時、病室の扉が勢い良く開いた。

 

「藍子、ユウキが見つかったって―――!!」

 

全身を汗だくにして飛び込んできたのは、

 

「はやてさん……」

 

こうして顔を合わせるのは家を飛び出したあの時以来だ。見たこともないくらいに狼狽したその顔を見て、どれだけ心配をかけて来たのかを悟るユウキ。直視できずに顔を伏せた。

 

「ユウキ……」

 

はやては静かに歩み寄り、

 

「良かった……無事で良かった……!!」

 

抱きしめるのだった。

 

同時にユウキの中で限界を迎えたものが溢れ出した。

 

「うわぁあっぁぁぁぁっ!!!! ごめんなさい!! ごめんなさい……っ!!」

 

大粒の涙を流しながら、その言葉を繰り返すのだった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ユウキが落ち着き、藍子の怒りもある程度霧散したところで、ユウキが口を開き始めた。

 

「……姉ちゃんを助けたかったんだ」

《ユウキ……ッ》

「藍子、な?」

 

呼ぶ名前にはまだ怒気が含まれていたが、はやてが窘める。

 

《八神さんは怒ってないんですか?》

「私は怒ってるより、心配したの方が大きいから」

 

はやてがユウキと会うのは自宅で養子の件を話した時以来だ。翔と綺凛がいなければ何も知らずに永遠の別れになっていた可能性が高い。

 

翔から話を聞いて、ずっと眠れない夜を過ごしてきたはやて。立場が無ければ自分だって夜の街に探しに行きたい気持ちだったのだ。

 

「ごめんなさい……」

「もうええよ。私が無神経やったんやから」

「違うよ……はやてさんがそんなこと言う訳ないのに。ボク、勝手に勘違いして酷い事言った……」

「うん……」

 

これ以上否定していても話が進まないと感じたはやては、ユウキの言葉を受け入れた。本心では自分の方が大人で、だから早く気が付くべきだったと猛省している。

 

「でも」

 

悲しみの中で、だが確かな強さと意思を込めたユウキの言葉だ。

 

「今でも姉ちゃんのことは助けたい。死んでほしくない」

「それは私も同じや」

《2人共……今その話をしたってしょうがないですよ。ユウキの使ってたゴースト? の力もなくなっちゃったわけなんだし》

「そやね。藍子の方もやけど、今はユウキのことも考えんと」

「え、ボク?」

「あたりまえやん。ネットでは色々と好き勝手言われとるけど、犯罪者といえど制圧したまま放置はアカン。今から出頭して厳重注意や」

 

それはかつて路上試合を行っていたアインハルトと同じような処分だった。

 

《それもありますけど、ね。アレもあるじゃないですか》

「アレ?」

「あ~……ま、別にそれは急ぐもんでもないしなぁ」

「あ―――」

 

藍子のからかうような声色に、はやてが居心地悪そうに言葉を濁す。その様子からユウキは何の話をしているのかを理解した。

 

《ユウキ、ほら》

「えぇ!? い、今言わないと駄目なの!?」

《今だろうと明日だろうと答えは変わんないんだからさっさと言っちゃいなさい! 私に心配かけたバツだからね》

「えぇ~……じゃ、じゃあ―――」

「う、うん」

 

一世一代の告白をするように、2人は向かい合った。実際、これは告白のようなモノだ。

 

「あの時の、養子のお話だけど、んんっ、ですけど。受けたいと、思います。ただ1つ、姉ちゃんも一緒にって条件はありますけど」

「藍子がそれでいいなら……」

《そりゃあもちろん、断る理由なんてありませんから!》

「―――っ、そ、か。ありがとうなぁ、ユウキ、藍子。受け入れてくれて」

 

はやては涙を浮かべながら、何度もその言葉を繰り返した。

 

その時、

 

「こんにちは~……」

 

遠慮がちに病室の扉が開かれた。扉を開けたのは仮眠室から戻ってきた翔だった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

休むつもりが体力を使ってしまった俺達は、シャワーを浴びて(当然2人別々に)病室に戻ってきていた。

 

そこにはユウキだけでなくはやてさんもいた。どうやら藍子が連絡を入れてくれてたらしい。俺は完全に忘れてたな。

 

目尻に涙をうかべたはやてさんが急いで、両目を擦って証拠隠滅していた。お取込み中だったらしい。

 

何事もなかったかのように話しかけてくるはやてさん。

 

「おはよう、翔君。よく眠れた?」

「ん、まあ、そうですね。区切りがつきましたから」

 

実は一睡もしておらず、ちょっとした運動もしてしまったんだけど。当然言うつもりは無い。

 

「綺凛ちゃんも、今回はありがとうなぁ。ユウキのこと止めてくれたんやろ?」

「いえ、ユウキさんが無事でよかったです」

 

綺凛は礼儀正しく頭を下げた。

 

そこから今まで話していた内容を聞いた。ユウキがしっかりと反省していて、今から管理局に出頭すること。この3人の間に特にわだかまりは残らなさそうだという事。そして、ユウキと藍子がはやてさんの養子になること。

 

「良かったです。丸く収まりそうで」

「うん、ホンマ翔君には、なんてお礼を言ったら良いか」

「翔さん、すみませんでした。ご迷惑をおかけしてしまって……」

「や、別にいいですよ」

 

ユウキの言葉に首を横に振る。

 

みんなに迷惑をかけることになったのはアナザーゴーストの力だ。それは俺の世界のものでありこの世界の異物。少し残酷な言い方になってしまうが、それが無ければユウキは何も出来ずに藍子の最後を見届けていたはずだ。それはそれでよかったはずなんだ。

 

だがそうはならなかった。そのせいで拗れてしまったのだ。

 

だから、ユウキが責任を感じる必要は無い。

 

「それで」

 

すべてはユウキにウォッチを渡した―――

 

「ユウキにウォッチを渡したヤツの事なんだけど」

 

アイツのせいだ。

 

「ごめんなさい。あの男とは一回しか会ったことが無くて……」

「そっか」

 

ま、ユウキの言う『あの男』が俺の知ってる『アイツ』なのかは分からないが、俺の世界のアイテムを悪用している奴が2人も3人もいて欲しくはない。今は同一人物だと思っておこう。

 

「この辺りのことは、また後日話します」

「ん、わかった」

 

こちらを見ていたはやてさんにそう告げる。その時にはライダー関連のことについても話さないといけないな。

 

「それで、はやてさん。ユウキを狙ってたやつらの事は聞きましたか?」

「ん。そこについては調査する予定や。ユウキの方はこれで大丈夫でも、あないチンピラに狙われちゃ安心できへんからな」

 

俺もチンピラが狙っているんじゃないかってことは予想してたけど、まさかガイアメモリを持ってるなんて思わなかったからな。

 

綺凛の話では、ユウキを呼び出した倉庫組はガイアメモリを持ってなかったそうだ(持っていたらユウキが暴れ出した時に使っているはず)。だから残党狩りはそこまで苦労はしないと思う。

 

すでに俺が倒したアイツは逮捕されて現在取り調べを受けている最中だ。そこから芋づる式に敵を壊滅させることが出来ればいいんだけど。

 

そうだ。浅葱と御坂にも連絡してそっちをお願いするか。ユウキのことはもう探さなくてもいいしな。

 

2人に連絡を送った。

 

「浅葱さんはあの時の娘やろ? あれだけのスキルがあったらすぐに見つかるかもしれへんな。美琴さんもレベル5としての能力があるし。翔君はホンマいろんな人と繋がりがあるなぁ。今回の事、こうしてみんな無事だったんは全部翔君のおかげや」

「いえ……今回のことは綺凛がいなかったらヤバかったですよ」

 

今回ばかりは本当にギリギリだった。

 

「いいや。ここ数カ月、六課の関わった事件もそうじゃないモノも。君がいないと解決できひんモノばっかりやった」

 

否定は出来ない。俺の世界の持ち込み物以外でも、この島の事件を解決したのは事実だ。

 

「その上で、恥を忍んで聞きたい。翔君、藍子を助ける方法、何か心当たりはない?」

「んー……」

 

全員の視線が俺に集まる。

 

そんなことを言われてもな。この病院の医者にどうにもできない以上、正攻法で藍子の病気を治すのは不可能だ。かといって治癒系の能力で直そうにも病気を治したケースが思い浮かばない。治癒能力と病気ってめちゃくちゃ相性が悪いイメージがある。

 

ドラゴンボールですら病死や自然死した人は生き返らせることは出来なかったはずだ。今回手に入れた仙豆も病気には効かないしな。

 

……ああ、そういえば眼魂を15個集めると願いをかなえることが出来る―――少なくとも『人を生き返らせる』程度の願いは問題なく―――って設定もあったっけ。この世界で出来るかはわからないけど。

 

直接の治療ではなく治療法を聞くのはどうだろうか。この島の科学力なら短い期間で治療法を完成させられるのでは?

 

どちらにせよ捕らぬ狸の皮算用か。ドラゴンボールも眼魂も足りないんだ。

 

ガチャの排出形式を考えると、ドラゴンボールが7個いっぺんに出てくることはない。たぶん1個ずつになっている。眼魂は通常英雄の分は3個で1パックになっていた。とすればあと4回。闇鍋ガチャで揃えるには中々に厳しい数値だ。

 

もちろん出るまで回すのであれば話は別だが、俺も1日に何十回も出来るワケではない。いくら永遠に枯れない能力があっても性欲は無限ではないのだ。そのペースでアイテムを獲得して、物がそろうまで藍子の身体がもつのかという問題もある。

 

話を聞くに、今使っている薬では体調の維持すら出来ないって話だしな。

 

となると俺に打つ手は無し。なのだが、俺の思考の時間に何かを感じ取ったのかはやてさんが俺を真剣な目で見つめて来た。

 

「翔君? もしかして何か考えがあるん?」

「え? いや……」

 

俺の能力について詳しいことは話していないが、今まで様々な能力が飛び出している。俺が何か隠し持っている能力があると思ってもおかしくはない。

 

「翔さん! 姉ちゃんを助けて……!! そのためならボク何でもするから……!!」

 

『何でもします』。倫理観を捨ててこの言葉の意味を咀嚼すると、目的のアイテムが出るまでセックスに付き合うという意味になってしまう。今のユウキにそれを伝えたら普通に承諾してしまいそうだ。だが、そんなことはさせられない。

 

何より藍子が許さないだろう。

 

そうなると残る手段は、

 

「そうだ―――」

 

俺は最後の手段を思いついた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

俺は少し席を外して電話をしていた。

 

「―――って訳なんだよ。なんとかならないかな」

「そっか~。う~ん……」

 

深刻な内容に反してその声色は緊張感に欠ける。そう思う人もいるかもしれない。だが普段を知っている身とすればこれ以上なく真剣に考えてくれているのが分かった。

 

電話の相手はララだった。

 

世界の最高峰である学園島の科学力や医療では藍子の治療は不可能。とすればまともな方法での治療は諦めるしかないかとも思ったが、何事にも例外はある。

 

他えば『天災』篠ノ之 束。彼女なら鼻息交じりに治療してしまうのかもしれない。だが彼女に頼む手段がない。

 

例えば『デビルーク王国』。ララの故郷であり国でありながら学園島に匹敵、あるいは上回る科学力を持っていると言われる国。

 

それしかないと思って連絡を取ってみたのだ。

 

「じゃあちょっと聞いてみるね~」

「頼んだ!!」

 

さらに待つこと30分。

 

はやてさんと一緒にここに来るはずの人物を待っていた。と、向こうに目的の人物が見えたので俺は手を振った。

 

「ザスティン!!」

「翔殿。お待たせいたしました。八神部隊長も」

「お久しぶりです」

 

いつもの鎧姿ではなく、この島にも合う半そで短パンのナイスガイが現れた。

 

「それで、例の物は」

「ああ、これだ」

 

俺は御門先生に用意してもらった藍子の直近の精密検査のデータを手渡す。

 

「たしかに」

 

これからザスティンはこれを本国へ送り、デビルークの医療技術で治療が可能かどうか専門家の判断を仰ぐことになっている。もしもそれで治療ができるなら……という希望だ。

 

このことは既に藍子には許可は取ってある。

 

そしてこれでもダメならばその時は、藍子はそれ以上の特殊な治療を望んでいない。自分のせいで誰かが不幸になることは望んでいないのだ。

 

「頼むぞ」

「よろしくお願いします……!!」

「ああ。すでに王からの勅命で専門医が集められている。明日までには結論を出させよう」

 

え、王の勅令? そんなものが出たの?

 

「なに、婚約者候補殿の頼みとあれば。将来のことも考えて手を抜くことなどできんからな」

「……」

 

ま、まあそれは今後考えよう。

 

「ご、ごめんな翔君。ホンマ、何から何まで」

「い、いや、提案したのは俺なので。それよりも、これで結果待ちですね」

「うん。翔君は一回家に帰って休み。ユウキのことは六課で保護することにするわ」

「そうさせていただきます」

 

はやてさんと別れた俺は真っすぐ家に帰り、そのままベッドに入って久しぶりの休息をとるのだった。

 

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