1人だけ個室に通されたはやて。
「それではこちらを。特製のハーブティーです」
「すんすん、ん~、嗅いだことの無い香りやな」
「当店のオリジナルブレンドですから♪」
そか、と笑いながら一口飲む。
「どうかされました?」
「や、こういうハーブティって体に作用する物質とか入っとるんかなぁって。アハハ、変な想像のし過ぎかな?」
「いえ、そのハーブティには発汗作用と体の体温を高めてマッサージの効果を受け入れやすくする効果がありますよ。今回施術ではたくさん汗をかくことになりますので、それも合わせたデトックス効果を高めています」
「へ、へぇ~、そうなん……」
平然とした調子で言われて、はやては顔を反らしてしまう。そう言われると体もポカポカしてきたように感じる。
「(顔、熱い……恥ずかしくなったから? それともこのハーブティの効果? うー、分からん!!)」
はやてが顔をぶんぶんしている間にも着々と準備が進む。
「それでは横になって下さい~」
「は、はい……っ」
始まる。始まってしまう。
そう思って身構えていたはやてだったが、
「あ゛~」
始まったのはごくごく一般的なマッサージだった。
足先から始まり、ふくらはぎ、太もも、手先から二の腕、腰から背中、肩まで。的確な指捌きによってどんどん自分の体がほぐされていくのがわかる。そのレベルのマッサージだった。
「(あ゛~、気持ちいい~、今立ったら絶対『うわ、体軽っ!?』って言ってまうやつや……)」
ただあまりにも普通過ぎて拍子抜けというか、予約したコースと大分かけ離れた内容で困惑する部分もあったが。
「八神様、お加減どうですか?」
「ああ、めっちゃええです……あ゛~、そこもええなぁ」
「ふふ、良かったです。このまま続けますね~」
そうしてしばらくマッサージが続いた。
「よし、大分体がほぐれましたね。それでは『次』の準備を……八神様、仰向けにお願いします~」
言われた通りに仰向けになるはやて。その首から下を覆うようにタオルが掛けられる。さらに口を残して顔にもタオル。
これではマッサージなど出来ないのでは? と考えていたはやてに職員が告げる。
「それでは次の準備が整うまでしばらくこのままで。水分補給したい場合はお声がけください」
職員がはやてから離れ、加湿器をはやての口に向けて起動した。特殊な薬液を混ぜたミストがはやての口を中心に部屋を満たしていく。
それを確認した職員は『自分も同じ状態にならないため』に、その部屋から退出するのだった。
――――――――――――――――――――――――
「それでは始めますね~」
「は、はいっ」
「お願いします」
フェイトとなのはの施術も始まっていた。ついたてに分けられた空間に2つのマッサージ台がならんでいた。並んでいると言っても施術が始まれば魔法が発動しついたて越しの音をシャットアウトする。
未だに緊張しているフェイトとその様子を見て逆に落ち着いたなのは。2人も序盤ははやてと同じようにマッサージを受ける。
そして同じように体をほぐされ、警戒心が薄れる。そこからが本番だ。
とは言え、2人が受けているコースではあからさまな局部を触ったりはしない。アスナやアリアが受けていたコース―――夜に向かってどんどん性欲が高まっていくコースだ。
故に大きく乱れることはない。
「は、ふぅ……っ」
お腹を圧迫していた指が離れ、押し止められていた血液が一気に流れる感覚。じんわりと染み入るような不思議な感覚に、フェイトは深い息を吐いた。
「素敵なお体ですね。うらやましいです!」
フェイトの施術をしているのはかなり若い、フェイトと同じくらいの年齢の女性だ。
「そんな……私こういう体のお手入れとか全然してなくて、そんな大したものじゃないですよ」
どう聞いても嫌味としか思えない返答だったが、職員は変わらずニコニコしていた。それはただ単に体が綺麗というだけの誉め言葉ではなかったからだ。
「もちろん素晴らしいプロポーションで私も磨きがいがあるというものですけど、そうではなくてですね。率直に。お客様、今、恋をしてますね?」
「へっ!? なあ!? なん、な、え!?」
「ああ、お客様、起き上がらないで下さい」
職員に押し込めれ、ベッドに寝かされる。
「ど、どうしてわかって……!!」
「あは、当たっちゃいました?」
「いえ! その……!!」
とっさにごまかそうとも思ったが、2度会う可能性が低い相手にごまかしてもしょうがないと思い、赤くなりながらも頷いた。
「はい、多分、してます……」
「多分? ……え、もしかして、初恋なんですか!?」
再び無言で頷く。
「え~!」
「どうしてわかったんですか?」
「ああ、それはですね。マッサージすると分かっちゃうんですよ。こう見えても
「それはつまりマッサージをすると体の悪い部分がわかる、みたいな?」
あ、そんな感じです。と、職員は言う。
「恋をしてる女性って、体が準備してるんですよ。それがさっきのマッサージで分かっちゃって」
「準備? それにさっきのマッサージって……」
先ほどから数回繰り返されている、下腹部を指圧しながら揺らすあのマッサージだ。
ハテナを浮かべているフェイトの耳に口を寄せ、職員はこっそりと告げた。
「セックスの準備ですよ。いつでもその人の子供が作れるように、個々が準備してるんです」
そう言ってぐりぐりと下腹部を指圧する職員。
「へっ!? せ、せく!?」
「しかも初恋ってことは初めてでしょうし、え、初めてですよね? そうなると、体も念入りに準備を始めちゃうと言うか……」
「ちょちょちょ、っと待ってください! 私別に、彼とそう言う事したいと思ってるわけじゃなくて……!!」
「いやぁ、これは本能ですから。自分の意思じゃ止められないですって」
「ええええっ!?!?!?」
予約の際にはやては今回の施術の目的を伝えており、店もソレを考えて担当者をキメていた。つまり、フェイトの担当に選ばれたこの若い職員は、モーレツに燃えていたのだ。
「で、アタックの予定とかあるんです? これから会うんですよね?」
何故これからの予定を知っているのか。少し口を滑らせるのはご愛敬だ。
「え、な、無いです!! アタックの予定なんて!! それに彼はいつも女の子と一緒にいて……」
「あ~、横恋慕ですか。それは厳しいですね~」
「え、あ、いえ、別に確認してるわけじゃないというか……」
「じゃあアタックするしかないですね!! いつするんですか!?」
「で、ですから!!」
そうして盛り上がっているフェイトの方とは違い、なのはの方は粛々とマッサージが進んでいた。
別に気まずい雰囲気が流れているわけではない。なのはもしっかりマッサージを楽しんでいる。
「お客様、お加減はいかがですか?」
「はい、とってもいいです」
すぐ横の大騒ぎはこちらの空間には全く影響を及ぼさない。
こっちの職員もはやてからの情報で、なのはには明確な相手がいる訳ではないことを承知している。
それでこのマッサージを受けるのは、夜が辛くなるのではないかという心配はあったが、そこは仕事なので割り切っていた。
だが、
「お客様、ずいぶんと凝ってらっしゃいますね」
「え。そうですか? 自分では全然……」
職員は嫌なら止めて下さいと前置きして続けた。
「骨格のゆがみなどはあまり問題ありません。きっと体を動かすご職業なのでしょう」
「は、はい。そうですね」
数カ月前までは教導隊で今は六課での実働部隊。事務もあるが定期的な出動もある仕事だった。
「ですが、その生活の中で使われていない機能がある。それ故に体に悪影響が出るかもしれません」
「悪影響……そうなんですか? 使われていない機能というのは?」
「女性としての機能、と言えばお分かりですか?」
さっとなのはの顔が赤くなる。
「あの、あんまりそう言う話は」
「失礼しました」
それから再び、粛々としたマッサージに戻る。
だがなのはの頭では、先ほどの言葉が反芻されていた。『女性としての機能』が何を指しているかなど容易に想像出来る。言ってしまえば性欲だ。
「(なんだか、熱くなってきたかも)」
自身の体の火照りをごまかすように、なのはは口を開いた。
「その、『女性としての機能』が使われていないって。心当たりはありますけど……」
「三大欲求という言葉があります。その中でも性欲は軽視されがちです。欲求を満たさなくても生存には影響がない―――と思われているからです。ですが欲求を満たさないと長期的に体の不調が現れます。私の感覚を信じるのなら、お客様は自身での発散もしていないのでは?」
「そう、ですね」
「いけませんね、それは。誰かお相手はいらっしゃらないので?」
「それが全然……」
なのはの悩みを真剣に聞いてアドバイスしていく職員。フェイトとは違う形で悩みを解決していくのだった。
―――――――――――――――――――――――
なのはとフェイトが極上のマッサージを受けている頃、個室にいるはやては。
「はぁ、はぁ、んっ、ぁは、ぅぅっ、はぁ……っ」
ミストを吸い込み続け、今ではそのミストを押し返すように荒い吐息を漏らしていた。
掛けられたタオルは学園島製のとても保温性が高いものであり、それによって体を覆われたはやてはサウナにいるかのような状態になっている。
それに加えてハーブティの効果で真夏の炎天下にいる時よりも汗をかき、マッサージ台のシーツには人型の染みが出来ていた。
もはや一時もじっとしていることは出来ない。頭に掛かっているタオルがずり落ちていないのが奇跡だった。
この状態になるまで、体の変調に気が付かないわけがない。
体温が高くなりお腹の奥がムズムズと疼くような知らない感覚。最初は戸惑っていたが、無意識のうちに自身の敏感な部分に伸びそうになる手を自制している中で、ようやく気が付くことが出来た。
間違いなく、自分は発情していると。
「(こぇ、やばぁ。ほんまに、合法な量なん……? そりゃ、違法業者は捕まるわなぁ……っ)」
そう言った薬があるのは知っていたし、実物を見たこともあった。管理局での講習を受けどのような症状になるのかも、今回の施術で使われることは承知の上だ。
だが実際に使われると想定をはるかに超えていた。
全身がオイルでも塗られたのかと錯覚するくらいに発汗している。
乳首は痛いくらいに勃起し、施術着を押し上げているだけでひりひりとした快感を与えてくる。
そのたびに秘部からは新たに強い粘液が生産され、汗と混ざり合ってお尻の方に垂れていた。
もちろん合法な量だが、知識のある人が正しく使えば、素人が量に任せて引き起こしていた症状を軽く上回る結果を発揮する。
「み、みず。みず、ください……っ」
何とか絞り出した声。自分が想像した10分の1も出ていなかった。絶対に聞き取ることが出来ない、音量だったが。
「八神様、タオル失礼しますね」
「んぁ!?」
突如、視界が開ける。頭に掛けられていたタオルがなくなったのだ。視界の先には先ほどの職員がいる。その手にはストローの刺さったペットボトル。
「どうぞ~」
「ぁ、は、ぃ……」
顔だけ動かしてストローを咥えた。
「そろそろ既定の時間なので、本格的に始めていきますね~」
「ぁ、は、はい……っ」
忘れていたが、これはただの準備。
「(つまり、本番はここから……っ)」
心臓だけでなくお腹の奥がドクンドクンと脈打っていた。まるで心臓が2つあるみたいだ。
いつの間にかミストは止まっていた。
「体に掛かっているタオルも取っちゃいますね」
「ふぁぁ……っ」
タオルサウナから解放された体が部屋の空気で冷まされていく。
「(気持ちいい……)」
「うん、良い状態ですね」
じっくりと煮込まれて準備が整った媚肉を見下ろしながら、職員は満足そうに頷く。
仕込みの済んだ具材の具合を確かめるように指が這いまわる。5本の指が太ももをなぞり鼠径部を通り下腹部を一瞬圧迫しツンと尖った胸に到達する、その前に体から離れた。
「~~~~っ!! はぁ……っ!」
その間はやては身体に力を入れ、シーツを固く握りしめて、恥ずかしい声を出さないようにするのが精一杯だった。
「それでは下腹部をほぐしていきますね~」
「は、はい」
「それと、声など『出てしまうもの』は我慢せずに出してしまって下さいね? その方がマッサージの効果が高まりますので」
「(そないな事言われても、恥ずかし―――あ)」
下着越しに自らの秘部が広げられる感覚。
「(ひ、人に触られて―――)」
その中でもひときわ激しく主張していた陰核を左右の親指で圧迫される。
「ひ、ぁっ」
「痛みはありますか?」
「あり、ま、せん、けど……!!」
「続けますね」
マッサージ師の指は魔法の指だった。いくら下着が張り付いているとはいえ、的確に肉豆を指の腹でこする。はやての反応を観察しながら最適な強さで。
「ぁ、ぃ、ぐぅ……!!」
マッサージ師の優しい手つきで刺激され、あっさりと絶頂を迎える。
だが指の動きは止まらない。
「(れ、連続は無理)―――あぁっ!?」
へこへこと動く腰。下着から溢れる女汁。それでも止まらない。にもかかわらず世間話のように口を開いた。
「お客様。お連れ様ですが、順調に施術が進んでいるようですよ」
「そっ、れは、よかった、です……っ、ああ、ま、た……っ」
とめどなく溢れる愛液はさっきからずっと垂れ流しの状態だ。絶頂の瞬間、まるで男性の射精の様にぴゅっぴゅっと吹いていた。
「はい。例のお客様へのアドバイスも順調のようで……あの娘は少しやる気が空回りすることもあるんですけどね。今回はうまく行っているようです」
「ああ、そんな、むり、いくいく……っ、いぅぅぅぅ……っ」
暴れそうになる体を職員に抑えられ、腰だけ逸らして粗相する。
愛液とは違う液体が浮いた腰から弧を描いてシーツに水たまりを作った。
脱力したはやては水たまりに尻を落とした。
「次はこちらに行きますね」
「あくっ!?」
遠慮なく両乳首がつままれぐにぐにと弄ばれる。こちらも下着越しだがそんなことは全く関係なかった。
両端に詰まっている快楽神経が容赦なくすり潰された。
「そ、んな、乱暴に、しちゃああぁぁぁっ!!」
「痛みがありますか?」
「な、い、です……っ、でも―――」
「では続けますね」
そこから何度もはやての嬌声が聞こえてくるのだった。
―――――――――――――――――――――――
「ふはぁ……」
「あ、はやて」
「長かったね。流石高級コースって事?」
「ん、まあ、そうやね。ちょっと余韻が……」
意識が混濁するほど逝かされたはやては、しばらくその場から動けなかった。シャワーでオイルを洗い流すのも、職員の介助が無ければまともに出来なかったくらいだ。
「余韻?」
「ああ、や、そのくらい気持ち良かったって事やな。うん」
「へえ~! 私達の方もすごく良かったって話してたんだけど、高級コースはやっぱり違うんだね」
「う、うん。全然違うと思う……そっちはどうやったん?」
はやての質問に、2人共すごく良かった旨の感想を返す。
「あと、ちょっとした悩み相談、みたいなこともした、かな?」
「なんやなのはちゃん。やっぱり悩みがあったんやな」
「え、っと、そうじゃなくてね。体の不調とその解決方法、みたいな? 2人はなかったの?そういうの」
「私は、ちょっとあったかも……」
「ああ、私もあったなぁ……」
フェイトとはやても賛同する。
3人共マッサージ思い出して同じような表情を浮かべる。
少しの間沈黙が流れるが、なのはが空気を変えた。
「こうしててもしょうがないし、食材買って家に帰ろっか。早く準備しないと翔君きちゃうしね」
そう、今日のメインはまだこれからなのだ。翔の話を聞くという大きなイベントも、このマッサージの真の効能も。
唯一はやてだけが今夜に何が起こるのか、少し不安になっていた。