家に帰った俺は、夕飯を食べながら情報の共有を行った。
「―――って感じになりました」
俺は説明会であったことを報告した。
六課の隊長陣に能力のことを話したこと、それによる協力体制を築くことになったこと、それに伴いライダーやガンダム、スタンドについて細かく説明することになったこと等だ。
「そういえば私達も、詳しく全部聞いてるわけじゃなかったですね」
「そうだよね。アイテムが出たら説明を受けるって感じで」
作品も説明事項も膨大だったからな。でもこれからはそんなことを言ってられなくなった。敵が俺の世界のアイテムや能力を使って来るのなら、知っていればそれだけで有利になるのだから。
「じゃあその内、みんなで勉強会しないとだね」
「かもな」
これからは俺のアイテムをみんなが使う機会も増えるだろうし、しっかり理解してもらうのは重要だ。
俺は生徒じゃなくて教員側に回ることになる。
こうして説明会で起きたことの共有は終わる。
さて。
「で、なんだけど……」
「……もう察したけど、何?」
アスナの笑顔が怖い。
察してくれたなら話さなくていいか! ……なんてなるわけがないし、俺がそんなことは許さない。
「説明会で色々あって。この度、フェイトさんとも付き合うことになりました」
「説明会でどうしてそのような事態になるのか、わたくしには全く分かりませんが」
狂三の瞳も怪しい光を放っていた。
「まあ、フェイトさんは……」
「そうですよね。分かりきっていたというか……」
桜と雪菜は不満そうな態度を隠さないが、どこか納得しているところもあるようだ。
「ふぅ、分かりました。フェイトさんとは後日お話するね」
「う、うん」
何だその面談みたいなやつ。一体どんなことを話すのだろうか。もしかして、俺と付き合うことになった娘にはみんな行われてるんだろうか。全然知らないぞ?
向こうではクロが、『あー、いつかヴィヴィオと姉妹になる日が来るのかしら。や、その前に二人で一緒に頂かれちゃったり?』なんて言ってる。
他の娘も、今さら俺に1人や2人、恋人が増えた程度では動じなくなっているようだ。常識がちょっとずつ捻じれてるな。
「で」
「え?」
まだ続くと思っていなかったんだろう。みんなの視線が一斉に俺に向けられる。
「実ははやてさんとも……」
「主様……」
「お兄さん……」
うッ、そんな目で見ないでくれ、コッコロ、ティナ。
「付き合うことになったんですか?」
今度は雪菜が静かに問いかけてくる。
「いや、そういう訳じゃなくてね……」
俺は例のマッサージの件を説明する。そうすることで大きな味方を作ることが出来た。我が家でのマッサージ経験者であるアスナと、それを勧めた理子である。
「あ~、あれか~」
「それ、なら……う~ん」
理子はともかくとして、アスナの発言力は我が家でも大きい。結果として、はやてさんに行った『医療行為』はあまり咎められなかった。
だが、
「先輩、まさかとは思いますが、なのはさんとも……?」
「や、なのはさんとは何もなかったよ」
「……本当ですか? 隠すと後が怖いですよ?」
「本当だって!! 2人暴露して1人だけ隠す意味がないだろ!!」
「でもお兄ちゃん。同じ家にいて1人だけしてないとか、あり得る?」
「全員制覇してる方がおかしいだろ!!」
やいやいと騒ぐ俺達。
とりあえず、はやてさんも『お話』の対象に入ったらしい。
こうして夜は更けていった。
――――――――――――――――――――――
次の日。
「ちょっと、よろしくて?」
「……はい」
訓練の合間の休憩時間。
声をかけて来たのはIS組の1人、セシリア・オルコット。わずかにロールがかかっている髪をふさぁ、として水着のようなアンダースーツの腰に手を当てた。
やはり正面から見ると本当に美人だ。白人特有の透き通った白い肌。絵画でも見ているような美しい気品のある顔立ち。ブルーの瞳は少しつり上がっており、座って休んでいる俺を見下ろしていた。
最近は気を鍛え始めているのだが、その見聞色が伝えてくる。相手は不機嫌だと。や、そんなの見れば分かるか。
「まあ!? 何ですの、その覇気のないお返事は?」
覇気は使っているが? そうじゃないか。
「まったく、わたくしに話しかけられるだけでも栄光なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら? ……何故少しうれしそうなんですの?」
本当に思った通りのセリフを言ってくれるからだよ! ちょっと感動してるだけだから気にしないで欲しい。
―――気を取り直して。
「それで? 結局何の用なんだ?」
「いえ……わたくしがここに来るようになる前に謹慎になった方がどのような人か、確認しに来たのですが。やはり、謹慎になるような人はこの程度のようですね。謹慎明けの訓練も真面目にしないなんて」
どうやらセシリアには俺が全力を出していないことがバレていたらしい。
確かに俺は真面目に訓練には取り組んでいるが、全力は出していない。
このメンバーの前では封印している能力が多々あるのだ。それはそれで基礎訓練が捗っているのだが、全力を出しているかと言われればそうではないだろう。
セシリアの最初の態度も、配属されて一月で命令違反により謹慎処分になる隊員に対するものだったらしい。
そう言われると滅茶苦茶ダメな奴だな、俺。セシリアに反論できない。反論できない理由があるのだが。
「そんな人と一緒に訓練していたら、身になるモノもなりませんわ。せいぜい訓練中は私の邪魔にならないようにしてくださいまし。それでは」
言いたいことだけ言ったセシリアは、俺から離れていった。
――――――――――――――――――――――
別の日。セシリアの他にも俺の元へと訪れる人がいた。
「あの、いいですか?」
「はい」
声をかけてきたのは『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインだった。その後ろにはスレンダーな褐色女性。アマゾネスのティオネも立っている。今日はこの2人のコンビが来る日だったようだ。
とも思ったが、
「アイズさん、来る頻度多くないですか?」
俺が六課に復帰してまだ1週間も経っていない。
初日はフィン、次はリヴェリア、次はガレス―――それにくっついて毎回アイズさんが来ていた。
「うん。君がいるから」
その不用意な言葉に反応するのは俺の近くで休んでいたアスナだ。
「え、と、アイズちゃん? それってどういう?」
この2人、お互いアスナ、アイズちゃんと呼び合う仲だった。同じ剣士だから仲良くなるのが速かったのかと思ったが、8月の怪獣騒動で共闘したことも大きかったらしい。
ちなみに、俺のことも『翔』と呼ぶようになっている。アレはリヴェリアさんと一緒に来た時だったか。何かアドバイスでも貰ったのか後ろから見守られながら、改めて自己紹介し、互いに名前を呼ぶようになったのだ。
「前に翔が聖王教会に来た時にね」
その時あったことをたどたどしく説明してくるアイズ。俺が聖王教会を訪れた時、ロキとエヴァンジェリンの計らいによってベートと模擬戦になったことを。
そう言えば、あれ以来エヴァンジェリンに会ってないな。
会わないほうが面倒なことにならなくてよいかもしれないけど、エヴァンジェリン程の大物ならその内バッティングしそうだ。だったら早めに済ませておくって考えもあるかもな。
「だから、すごく強い翔と一緒に訓練したくって。みんなとの訓練じゃあんまり本気出してないでしょ?」
六課に来るのは持ち回りらしいのだが、アイズは暇なときは毎回来ているらしい。そりゃ回数も多くなる。
セシリアには普通に見抜かれていたが、アイズの場合はベート相手に実力を見せている。ごまかしは効かない。
「ああ、そう言う事……」
危惧していた理由と違ったからか、安心した表情を見せるアスナ。
「アスナさん。あまり油断しない方が良いですよ」
俺の所に女性が集まっていることに警戒したのか、雪菜が目を細めながら近寄ってくる。耀はニヤニヤしている。
「先輩の近くにいる女性には、誰であろうと要注意です」
それは流石に言い過ぎでは? 俺だって別に見境なしって訳じゃ……
「……同年代だけじゃなくて、小学生くらいの娘、フェイトさんみたいな大人の女性。王女様の婚約者候補にもなってますね」
「あと手を出してないのは熟女、人妻、おばあさん、あとは―――」
「言いすぎじゃないですよね?」
「ごめんなさい」
雪菜と耀の言葉に俺は頭を下げた。
小声でのやり取りだが、これ以上はやめておこう。
「でもまあ」
アイズとそういう関係になるのは、少なくともすぐにはないと思う。アイズは強くなることが頭の大半を占めていて、その手の話については小学生以下のはずだし。
「本当ですか……?」
その方面に関してはもう信用がなくなっているらしい。
「じゃあ、この後の訓練は同じグループでしよう」
「うんうん! アタシも一緒でいいよね? アイズだけじゃなくてアタシも興味あるし!」
アイズだけでなくティオナも参加したいらしい。
「それは別にいいんだけど、あの時みたいな力は中々見せられないと思うぞ? 色々と制約があるから」
「大丈夫。近くにいて、一緒に訓練したいだけだから」
「私も全然おっけー!」
話はまとまり、その後の訓練はアイズやティオナを加えたメンバーで行った。
当然、闇の魔法もライダーの力もその他特殊アイテムも封印しているため、足を引っ張ってる感は凄くあった。それでも2人は文句を言わずに俺に合わせてくれた。
周りの女性陣の目はアイズ以上に距離が近いティオナに向けられていたが、それは自分がアマゾネスであるからで、強い雄に関心があるんだよ! 無意識の行動だよ! との趣旨の発言をしたことで、大いに騒ぎになったことをここに記しておく。
――――――――――――――――――――――
それから更に数日。
「どういうことですの!?」
訓練場にセシリアの声が響き渡った。理由はとある通達が出された為だった。
今までなのはさんとセシリアが行なっていた外回りの業務。そのセシリアの部分を俺が引き継ぐことになったのだ
「黙れ馬鹿者が。管理局の人事に我々が口を出す権利はない。貴様が同行していたのはあくまでも夜月隊員の代理だったからだ。復帰すれば外されるのは当然だろう」
「で、ですが! せめて理由を教えてください!」
織斑先生に睨まれて一瞬口籠るが、それでもセシリアは引かない。
織斑先生はうっとおしそうになのはさんを見る。さっさと説明して黙らせてしまえと言う顔だ。
だが、
「ええと、それは、ね……」
なのはさんがちらりと俺を見た。
セシリアから俺に変わった理由はただ1つ。俺が積極的に外回りをすることで、少しでも情報を集めるためだ。ゆくゆくはみんなの俺の知識を共有してその仕事の分散を測る予定だが、今は俺が受け持つことになっている。
当然だがそれを話すわけにはいかない。
「ごめんね、セシリアちゃん。決まったことだから。帰ってきたらまた色々とアドバイスするからね?」
なのはさんもそう言うしかない。
みんなから聞いた話だと、セシリアは射砲撃の名手であるなのはさんに積極的に教えを乞うているらしい。セシリアのISの性能を考えると、なのはさんは適任だろう。
管理局でも一流のなのはさんは良い師になっているのだが、そのお師匠様も奪われた気分になっているのかもしれない。
「オルコット、まだごねるか?」
「っ!! わかり、ましたわ……」
織斑先生に言われ、どう見ても納得していない顔で渋々頷くセシリア。キッと睨まれる俺。なのはさんの視線から、俺に何かあると悟ったんだろう。
これは……
「ウチのバカがすまんな」
「にゃはは、大丈夫ですよ。じゃ、行こっか、翔くん」
「そ、そうですね」
外回りのために訓練を切り上げて訓練場を後にする俺。背中に突き刺すような視線が向けられているのを感じる。
これは明らかに俺にヘイトが向いてしまったのでは? もともと向いていたヘイトがさらに強化されてしまったのでは?
これはそう遠くない内に爆発するかもな。
その予感は翌日すぐに当たることになってしまう。
―――――――――――――――――――――――
外回りが俺の仕事になった翌日。いつものように六課に出社した俺と、俺に少し遅れてやってくるIS組。
「(あ、これヤバい)」
鍛え始めたばかりの覇気にもビンビンに反応している。それほどまでに明確な敵意。それをこちらに歩み寄ってくる英国代表候補者から感じる。
俺の視線を受けても怯むことなく近づいてくる。その手に持っていたものから何をされるのか予想がつき、実際その通りになった。
俺の胸に白い手袋が投げ付けられる。更に指を刺され一言。
「決闘ですわ!!」
そう宣言されるのだった。