※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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決闘の後

模擬戦は終わった。

 

結果としてみれば、セシリアは1発も俺に攻撃を当てることができず、それどころか同じようにビットを使う戦術で上をいかれ、最後は懐に潜り込まれてビームサーベルを突き付けられる形になった。

 

この上ない圧倒。この模擬戦を見たものが全員同じ感想を抱くだろう。

 

それどころか、

 

「おめでとう。でも、手加減した?」

 

帰還した俺にアイズさんはそんなことを聞いてきた。

 

「ア、アイズさん!? 何言ってるんですか!? あの戦いでそんなこと出来るわけ……!!」

「そうですよ。俺は間違いなく全力でした」

「そう?」

「はい」

 

正確には武器のおかげだ。

 

実際、エアリアルじゃなかったら、あれだけの数のビットの操作は出来っこない。エアリアルのビットはちょっと特別だからな。

 

νガンダムとかストライクフリーダムとかのオールレンジ攻撃は間違いなくセシリア未満の操作しかできない。そもそも操作できるのかも分からないよ。

 

「ほ、ほーらアイズさん! 本人もこう言ってますし、あんまりこの人から学ぶことなんてないんじゃないかなぁって」

「でも、翔は武器を使わないでベートさんを倒したよ? 接近戦で」

「え゛!? ベートさんを……!?」

 

アイズの言葉にレフィーヤがギョッとした目で俺を見てくる。

 

あれ? 聞いてなかったのか?

 

ま、本人が言いふらすわけないし、他のあの場にいた団員も敗者を無暗に煽るような真似はしないか。

 

そう、敗者と言えば、負けたセシリアの方には織斑先生が行っていた。

 

「ずいぶんな無様を晒したようだが、何か言いたいことはあるか?」

「……いいえ、ありませんわ」

「そうか。ここで下らん言い訳をするようなら、殴り飛ばして学園に連れ帰っていたところだ」

 

何やら物騒なことを言っている。

 

そっちはそっちの教育方針ってことで、俺からはノータッチで行こうと思う。今話しかけても拗れるだけだろうし、ここはそっとしておこう。

 

「おっし、お前ら! 模擬戦も終わったことだし、さっさと今日の訓練始めんぞ!! 翔、セシリア! まさか動けねぇってことはねぇよな?」

「はい!」

「……はい!」

 

ヴィータさんの声に、俺とセシリアが背筋を伸ばして返す。

 

セシリアは沈んだ顔をしているが、そんなこと関係ないとばかりに今日の訓練が始まるのだった。

 

結局その後、セシリアと一言も言葉を交わさないまま訓練は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

翔達が訓練を行っている最中、その様子を見ていた千冬になのはが近づく。

 

「ずいぶんと強引だったね、千冬ちゃん」

「確かにそうだったかもしれんな」

 

2人の視線は2人の生徒に向けられていた。いつも通り訓練を行う翔と、決闘の結果を引きづっているのか明らかに動きの悪いセシリアだ。

 

教導する者として、なのはは千冬に渡されたセシリアの情報にも目を通していた。持っているスキルや経歴だけでなく、IS学園での様子についても。

 

もう一人の鈴と合わせて中々に問題があるのは理解していた。

 

それを解決するために、

 

「翔君を使ったんだね」

「ああ。中々にイキのいい奴がいると聞いたからな」

 

何か問題があったか、と視線で問いかけてくる千冬。

 

普段の千冬ならば、セシリアが決闘の話を持ち上げた時点で拳骨を落とし、IS学園に連れ帰ってもおかしくなかった。

 

それをせずにわざわざ警告を行い、結果的に決闘を容認したところを見ると、セシリアの暴走は千冬の想定の範囲内という事だ。

 

「流石にここまでスムーズに事が進むとは思わなかったよ」

「にゃはは、千冬ちゃんにとってはそうかもね……」

 

なのは的には翔の話を聞いた後なので、あまり翔には目立つような行為は避けてほしかったのだが。

 

「まあ、決闘に踏み切らせたのは私だしね」

 

外回りの件を伝えた時、自分がうまく説得できていれば翔への敵意をあそこまで大きくすることはなかったと考えているなのは。

 

「ふ、ならば黙らせればよかっただろう? ティアナ・ランスターの時のようにな」

「も、もうっ! あの時のことは……!」

 

機動六課時代、とある理由でティアナに行った行為をからかわれてしまい、唇を尖らせるなのは。

 

だがあのくらいの強引さも時には必要だと千冬は考えていた。なのはのやり方は教導や実際の任務どちらも理性的だった。

 

本人の性格もあって理不尽に相手を捻じ伏せると言ったことは(基本的には)ない。

 

理不尽が無いと言えば素晴らしいのだが、警察組織である管理局では多少強引な手段で養育する必要も出てくる。

 

今回のセシリアの様に。

 

「奴の大きすぎるプライドと大人になり切れない部分は私も手を焼いていたんだ。だから同年代に一度コテンパンにされてプライドをへし折られる必要があった」

 

本来なら学年交流戦のような形式で楯無にでもぶっ飛ばしてもらおうと思っていたのだが、残念ながら六課の仕事が多く、あまりIS学園の行事には参加出来ないでいた。

 

だからこその今回だった。

 

「本来なら適当なところで模擬戦のメニューでも組んでぶつけようと思っていたんだがな」

「翔君が負けちゃったらどうするつもりだったの?」

「その時はその時だな。別の手を考えていたさ」

 

と言いながらも、翔が負けることはあまり考えていなかった。相手の実力を見抜く目は千冬も持っているからだ。

 

「強引なんだから」

 

そう言いながら、2人の教導者は訓練の様子を眺めているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

IS学園。セシリアの自室。

 

ISの学生寮は基本的に相部屋で、それは代表候補性であるセシリアも変わらない。

 

普通ならお互いに話し合い相手が不快にならない範囲で自分のプライベートルームを構築していくのだが、セシリアの場合ルームメイトの好意によりかなり自由に、自分色に部屋を染め上げていた。

 

バスルームもその1つだ。心身を癒すためのありとあらゆる物品が高級ブランドで揃えられている。ちなみにこれは同居人も使う許可を得ている。

 

「はぁ……」

 

セシリアはリラックス効果のあるバラの香りのするお湯に身を沈めながら、今日のこと振り返っていた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

セシリアは努力してきた。

 

幼くして亡くなった両親が残した財産を守るために必死に勉強し、薄汚い周囲の大人たちから家を守ってきた。

 

セシリアにとって上流階級に生まれたこと、自分がそれにふさわしい態度でふるまうことは一種のアイデンティティなのだ。

 

ISの代表候補性の肩書もそうだ。自分の才能を理解し、それを磨き上げたことで手に入れたモノ。

 

それを掲げて入学したIS学園だったのだが、

 

「はぁ、IS学園と言ってもこの程度ですのね……」

 

ISの操作技能、もろもろの仕組みを学ぶ学校であるIS学園。確かに国際色豊かではあるのだが、生徒のレベルはイギリスでの訓練校の方が高いように思えた。

 

それもそのはずで、代表候補性のセシリアがいたのは特にレベルの高い選抜クラス。最後まで代表候補性の席をかけてしのぎを削っていたのだ。学園として広く門戸を開いている場所と比べるのは酷だった。

 

ただ『ISの適性がある』だけの学友に囲まれる日々。入学初期はクラス代表としてやる気を見せていたセシリアだったが、半年たった今はその現実に辟易していた。

 

セシリア自身、ブルーティアーズの『とある機能』をいまだ十全に発揮出来ないことも自分の感情を苛立たせる原因になっているのではと思っていた。

 

そんな中、キーストーンゲート占拠事件から1週間ほど経って、千冬から思わぬ提案がされる。

 

管理局―――特務六課との合同訓練だ。

 

千冬からの提案は半ば命令だったのだが、セシリアは構わなかった。

 

少し調べればわかる。

 

ISを世界的に広めるきっかけになった事件―――JS事件。その事件解決のため、先頭に立ったのが機動六課であり、そのメンバーの多くを再集結させたのが今回の特務六課だ。

 

その中にはあの『高町 なのは』がいる。

 

高町 なのはは強力な砲撃で有名だったが、同時に多数の誘導弾での弾幕でも名が知られていた。

 

ブルーティアーズの制御にさらなる磨きをかける足掛かりになるのではと、ここ半年でセシリアは最大級のやる気を出していた。

 

実際に参加してみれば、なんとあのロキ・ファミリアまでもが訓練にいるではないか。

 

セシリアと同じくらいの若い隊員もいる。聞けば部隊長直々のスカウトで入隊したらしい。全員がやる気に満ちた環境だ。

 

なのはとの関係も良好だった。外回りの仕事にも立候補し、移動時間も無駄にせず勉強を続ける。なのはも熱心かつまじめなセシリアに自らの技術を教えていた。

 

そうした日々を送っていると、すぐにIS学園の退屈な授業よりもこちらの方が楽しみになる。

 

すべてが順調。そう思っていたところに、

 

「謹慎処分になっている隊員が……?」

 

不穏な話を耳にする。

 

部隊長推薦で9月から入隊した隊員が、あのキーストーン事件で命令違反を起こし謹慎処分を受けているというのだ。

 

セシリアには信じられなかった。部隊長の推薦という名誉を授かっておきながら、その名前に泥を塗るような行為を行うことが。そして謹慎が明けるとその人物とともに訓練や任務を行わなければいけないことが。

 

「(夜月 翔……覚えましたわ)」

 

セシリアにとって、会ったこともないその人物に敵意を持つには十分な理由だった。

 

そして謹慎明け当日。

 

六課の訓練場に到着したセシリアの視界に、見たことのない男が映り込んだ。明らかに場に馴染んでいる。今日昨日の付き合いではないことは容易に察することが出来た。

 

「(あの男が……!)」

 

ロキ・ファミリアの面子や引率の千冬と話す翔。

 

「フンっ!!」

 

その横をわざと鼻を鳴らして通り過ぎる。

 

それがセシリアと翔のファーストコンタクトだった。

 

「(ですが―――)」

 

訓練中、一度冷静になったセシリア。

 

「(過去の行いだけですべてを決めつけるのはいけませんわね。彼が謹慎中、自らの行いを悔い改めたというのなら、代表候補性として彼の熟達に手を貸してあげてもいいですわ)」

 

そう考えて翔の訓練の様子を横目で見ていたのだが、

 

「(真面目に取り組んでいるようですがどこか余裕がある……力を残している? 全力ではない? 謹慎明けの訓練に全力で挑んでいない?)」

 

翔があえて能力やアイテムをセーブしていることを知らないセシリアは、その訓練の態度に眉を寄せる。

 

加えて、

 

「(特別推薦にしては……この程度?)」

 

実力も伴っていないように見える。少なくとも、基礎訓練で一番遅れを取っているのは翔だった。

 

「(残念ですが、実力も、意識も、態度も、この程度ということですね)」

 

そう結論付けたセシリアは、翌日の訓練で邪魔にならないようにと宣言した。

 

だが数日後。

 

「どう、して……」

 

前触れなく告げられた外回り当番の変更。しかも。

 

「よりにもよって、あの男が……っ」

 

代わりに指名されたのが翔だった。

 

他の人だったら、セシリアもここまで不満を漏らすことはなかっただろう。だが目の敵にしている翔だ。しかもなのはに理由を聞いた時、一瞬だが翔の方を見たのをセシリアは見逃さなかった。

 

いくらある程度の力を隠しているとしても、自分の実力なら負けるはずがない。そう思っての決闘だったのだが。

 

「それが」

 

まさかあんなことになるとは。

 

結果を見れば完敗の一言。序盤は翔が回避に専念していたため攻勢に出れたが、エアリアルの真価を発揮してからは何もできずにやられてしまった。

 

自分の何倍ものビットを使った攻撃、一瞬オートで動かしているのではとも思ったが、同じくオートにしたブルー・ティアーズが次々と撃墜されたことで、それは間違いだと理解している。

 

武器の差で負けたなんて言い訳は出来ない。

 

それを言えばセシリアは実験機とはいえイギリス最新鋭のISを使っていたのだ。

 

仮に翔が空を飛ぶ力を持っていなかった場合でも、セシリアははるか上空からビームの雨を降らせることに何の躊躇もしなかっただろう。

 

それを卑怯だと罵る権利は誰にもない。

 

だが実際はそうならなかった。

 

それどころか自分以上のビット操作を見せつけられ、

 

「負けてしまうなんて―――……あ」

 

そこまで考えてハッとした。セシリアは思い出したのだ。

 

敗北の衝撃ですっかり頭から抜け落ちてしまっていた『あの約束』について。

 

慌ててデバイスを手に取り、相手を呼び出した。

 

《どうかされましたか、お嬢様》

 

呼び出した相手はセシリアの専属メイドであり、また幼馴染でもあるチェルシー・ブランケットだった。

 

セシリアがIS学園に入学するにあたり、専属メイドである彼女はIS学園の清掃員として雇用され、時間外でセシリアのお世話を行うという生活を送っていた。そんなチェルシーも今は自室で休んでいる時間だった。

 

「実は……」

 

セシリアは本日の決闘の結果をチェルシーに話した。専属のメイドであり幼馴染だけあって、チェルシーはセシリアの内情や性格を誰よりも理解している。この学園に入学してからずっと鬱屈とした日々を送っていたことも、六課での訓練を楽しみにしていることも。

 

そんなチェルシーにも聞かされていなかった話があった。正確には、セシリアは自分の勝利を疑っていなかったため単純に話し忘れていたのだが。

 

理由はともあれ、セシリアの口から出た言葉はチェルシーの思考を数秒停止させた。

 

「例の決闘ですが、負けたら『なんでも言うことを聞く』と言ってしまっていて……」

《は―――》

 

言葉を失ったチェルシーは、すぐさま直接会って話をしようと言うのだった。

 

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