凄まじい勢いでドアが開いた。くつろいでいた神経が一気に警戒体制に移行するが……それはいらない心配だった。
「翔ー! いるー?」
「ぶはっ!?」
スパーン! と扉を開けたのはララだった。当然のように裸。や、お風呂に入ろってんだから裸でOKなのか? いやいや、ここ男子風呂だぞ? え、俺が間違ったわけじゃないよな? そもそもララは会議に呼んでないからここにいるはずが……
「あ! いたいた。翔ー!!」
俺の混乱をよそにララはてくてくと近づいてくる。アニメでは鉄壁を誇っている湯気も貫通してみずみずしい肢体が目に飛び込んでくる。
必然、俺の下腹部には血液が集まってくる。
「ちょ、おまっ、ダメだって!」
「? あ、そっか。まず体を洗わないとだよね!」
「そうじゃないよ!?」
風呂場は声がよく響く。
俺の叫び声を背に、ララはシャワー(銭湯のようにいくつも並んでいるモノ)で自分の身を清めていく。その隙に外に出ていこうとするのだが、
「あっ、ダメっ!!」
体中を泡だらけにしたララが入口を通せんぼしてくる。自らの身体を惜しげもなく広げ、脱出をもくろむ俺を妨害してくる。
「お、おいっ、ちょっとどいてくれって……!」
まさか押し通るわけにも……というか、体に触れるわけにもいかず俺の手が宙をさまよった。
「どうして出ていこうとするの!?」
「や、どうしてって……ほ、ほら、アスナ達にも言われてるだろ? 俺のお風呂に突撃しちゃいけないって」
「そうだけど……今日は翔に大事な話があるの!」
「だ、大事な話……?」
な、何だと言うんだろうか。だが、ララの意思は固いようだ。梃子でも動かないという意思を感じる。後でアスナ達に怒られようが構わないのか?
「わ、わかったよ……」
俺はしぶしぶ湯船に戻っていく。まあ、ララの言う大事な話ってのも気になる。さっきの会議でデビルークの名前も出てたこともあるしな。
気持ちを静めていると、体を洗い終わったララがすぐ隣に入ってきた。
ぷかぷかと浮かぶ双丘を目に入れないように少しだけ距離を離し、ララと向き合った。
「それで、大事な話ってのは?」
「その前に、会議ってどうなってるの? もう終わっちゃった?」
「え? や、まだ終わってない、と思うぞ? みんなはまだ会議してるし。今は俺だけちょっと休憩って感じかな?」
まあ、風呂に入って休憩しているところを見れば、会議が終わっていると考えてもおかしくはないか。
でもなんだ? ララがそんなこと気にするなんて。会議の内容が気になってるわけじゃなさそうだけど。
俺の返答にそっかと呟いたララは、笑って言った。
「私ね、六課に入ろうと思うの! はやてがまだいるなら今日言ってみる!」
「え。え? ……え? 六課に、入る……?」
「うんっ」
あまりにも予想外のところから殴られ、一瞬呆けてしまう。が、すぐにその意味を飲み込んで問い返した。
「それは、なぜ突然に?」
「翔、ずっと六課で働いてて全然一緒にいれないでしょ? お仕事が大事なのはわかるけどそれだと私も寂しいし、何より翔と仲良くできないでしょ!」
「だから、六課に入りたいって?」
「うんっ! そうすれば六課でも一緒にいられるよね!」
「……」
ララの満面の笑顔に、俺は思考する。言葉を選ぶ。うれしさのあまり抱き着いてくるララの感触すら頭から完全に追い出して。
「ララ」
「なぁに?」
「それはダメだ」
否定の言葉を。
「……え? どうして? 危ないから?」
「危ないのも確かにそうだけど、管理局は人を助ける組織だ。俺と一緒にいたいってだけじゃ務まらないぞ」
俺も100%そうとは言えない部分はある(予言事件の情報収集や味方作りなども目的の1つ)が、大前提としてその意識がある。だがララにはない。俺と一緒にいたいという単純な動機しか。
「大丈夫だよ! 私戦うの得意だし! 悪い人やっつければいいんだよね!」
「そんなに単純じゃないんだ」
ララはあまりにも精神が幼い。人を助ける仕事はもちろん、他人との協同も難しいだろう。
この辺りはジャンルの違う作品がクロスした影響かもしれないが……なんにせよ学校の行事程度ならまだしも、事実上の軍事組織に所属させるのは難しい。
「それに管理局に入ったら俺と一緒にいるだけじゃなくて仕事しないといけないんだぞ? それは考えてるのか? 王宮での勉強もめんどくさいってやってなかったんだろ?」
「それは……」
考えてないだろうな。この顔を見ると。
それにしても第一王女がこの状態で、デビルークは後継をどうするつもりだったのだろうか。妹のモモやナナは別に普通だから教育環境が整ってないわけじゃないと思うんだけど。もしくはララの奔放さを見て方針転換したのか?
ま、世界有数の国であるデビルークの数少ない弱点ってことなのかもな。王位継承者の筆頭であるララが、王位のことを何も考えてないってのは。
「……めんどくさいなら、王位なんていらないもん……」
「めんどくさいからで放り投げて、それで管理局員が務まると思うか?」
「っ」
息を詰まらせたララは、俺の目の前で初めて沈んだ表情を浮かべた。
なんだか説教臭いことを言ってしまったな。多分、ララが一番されたくない話だろう。でもここであいまいな態度を取って、もしなし崩し的にララが入隊してきたらますます動きにくくなるだろう。
とは言え気まずくなってしまった。女の子と一緒にお風呂に入っているっていう素敵イベントの真っ最中なのに。
いつもなら俺の近くにいるといつもニコニコしているララの表情が濁っている。まるで叱られた―――いや、事実叱られたと思ってるんだろう。小さくなってしゅんとしている。
「あー……でもな」
「え?」
これはフォローもしておいた方が良いだろう。
「もしもララが本当に頑張りたいのなら、色々と勉強するところから始めてみたらどうだ? 今まで嫌がってたことをさ」
「……うん」
……これで大丈夫か?
や、まあガチで六課に入れるかどうかは俺が決めることじゃないしな。はやてさんとかデビルークの人が話し合って決めるだろう。
婚約者候補の俺の出る幕は……まあ、俺が原因だから引っ張られると思うけど。ララの気持ちがそこまで本気だと言うのなら協力することもやぶさかではない。
そもそもこの説教でララの方が俺に愛想つかすかもしれないしな。安全圏だと思っていた俺が、面倒なことを言ってきたんだし。
再び黙ってしまったララに不安になっていると、
「ばーん! 突撃ぃ~!!」
「っ!?」
勢いよく扉を開けて入ってきたのは理子だった。お風呂に入るのなら当然と言わんばかりに何も身に着けていない。
「もう理子ちゃん? そんなふうに入ったら翔君びっくりしちゃう―――」
「アスナさん? どうかしました―――」
続いて入ってくるのはアスナと雪菜。美しい裸体を申し訳程度にタオルで隠している。男が入っているとわかっている風呂に入ってくるなんて!
3人の視線はララに注がれる。
「いやっ、これは―――」
「大丈夫です、先輩」
「うんうん。何も言わなくて大丈夫だよ」
「まー、もう付き合いが長いからね~。理子達も動揺しないよ。いくらララちゃんと一緒にお風呂に入っててもね?」
「はい。大方、ララさんが無理矢理入ってきたんですよね?」
「お、おう……」
流石俺! 普段の積み重ね!
ま、常識で考えてもみんなが会議してる間に他の娘を連れて風呂に入るなんて、そんなことあるわけないもんなぁ!
「ん、んん? え、あれ? じゃ、なんでみんなまで風呂に?」
疑問を口にしていると、
「し、失礼、します」
「もう、アインハルトさん、緊張しすぎですよ?」
アインハルトと綺凛まで入ってきた。
「……こう並べて見ますと、桜さんやアスナさんはともかく、綺凛さんにまで負けてますわね……」
「ふふ、大丈夫ですよ。狂三さんも十分魅力的ですから」
「嫌味にしか聞こえませんわ」
さらに狂三と桜まで。
みんなララの姿を見ると一瞬怪訝そうな表情になるが、アスナや理子の説明ですぐに納得してくれた。
それにしても本当に意味が分からないんだが? 会議はどうなったんだ?
「うん。方針は決まったから翔君にも教えなきゃと思って。でも……」
アスナの視線がララに向けられる。ララがいる前では言えない事なんだな。さらに言えば、ララの様子が少しおかしい事にも気が付いてるみたいだ。
話しを進めるためにはララに出て行ってもらうか、それとも俺が少し離れるか。
「じゃ、もう1回体洗おうかな……」
「じゃあ理子がご案内~」
湯船から出ると理子が手を引いてきた。
アイコンタクトを取り、アスナ達にララは任せる。
俺と理子は銭湯のようにシャワーが並ぶ場所に向かう。湯船の間には壁があり、普通に話す分には声は聞こえないだろう。
「で、理子。何を企んでいるんだ?」
「ん~、くひっ、何だろうねぇ? ああ、でも、理子が考えたんじゃなくて、みんなで考えたことだから、理子1人をどうにかしても意味ないよ?」
「みんなで、だと……」
俺は首を伸ばし、湯舟を見る。くわしくは聞こえないがララを中心に話している。
肌色が多い景色に、むくむくと下腹部に血液が集まるのを感じた。それを見て理子が笑う。
「くふ、やっぱそうだよねぇ。あんな、女の子より取り見取りだもん。好きな娘に好きなだけ出来ちゃうなんて。翔君、地球上で一番恵まれた男の子なんじゃない?」
「や、それは言いすぎだろ……」
「そう? ま、いっか。ほらほら、座って座って」
導かれるまま俺は座らせられる。椅子と言っても銭湯でよく見るようなものだ。さらに足を開くように言われ、出来上がったスペースに理子が滑り込んできた。
「おい!? ん、く……っ」
「ん、れえろ……」
四つん這いで股間に顔を近づけた理子は、半立ちになったそれを口に含んだ。ねろりという温かい口内に包まれ、加速度的に膨れていくのがわかる。
「へろぉっ……あ~、大きくなったぁ」
「何だよ。何がしたいんだ?」
真っ赤に腫れた亀頭を舌先でくすぐる理子に、声が裏返らないように気張って尋ねた。
「ん~? これからすることについて、翔君にも覚悟決めてもらおうかなって」
俺は聞いた。長期的には将来の準備の積み重ね、短期的には明日の調査のため、今から明日の朝までひたすらにセックスを繰り返そうという計画を。
「―――ってコト? OK?」
「OKも何も。もう準備してるなら断れないだろうに」
「だよね~。こんな据え膳、食べなかったら男としての沽券にかかわるもんねぇ?」
スケジュールについては、レプリカに送られているらしい。
参加者はこのホテルの部屋のどこかで身を清めて待機しているとのことだ。もちろん、時間に追われて行為をするのはよくない。待機時間はあくまでも目安であり、その時間周辺になったら部屋で待機しているという意味だ。
会議があったとはいえ、まだ午後3時前。明日の朝まで実に12時間以上もある。時間は十分だ。
「理子の番はもう少し後なんだけど……ね、ちょっとだけ、しちゃう?」
にちっ、と俺と理子の性器が触れ合う。
聞かれているが、俺は椅子に座り、その上に乗られている状態だ。決定権はない。理子は今も人体の弾力を使って浅いところを出入りさせている。ここで下手に動けばそのまま飲み込まれて『始まって』しまうだろう。
「理子さん、何してるんですか?」
流石に時間をかけすぎてしまったらしい。
声の主は桜だった。気が付けばお風呂の方から聞こえてきていた声がなくなっている。
胸の下で持ち上げるように腕を組んで、半眼を向けてきている。程よく鍛えられた四肢に、わずかに筋肉の浮く腹、豊かな双丘とその頂点、さらに下腹部の整えられた陰毛を隠す様子はない。
男性なら誰だろうと発情するような肉体を前に、挿入手前のペニスがびきりと苛立った。
「あんっ……もー、理子が目の前にいるのに、桜のこと見てコーフンしたんだ?」
「理子さん。今日だけは抜け駆け禁止。その約束ですよね?」
「わ~、怖い怖い。じゃあ、ごめんね翔君。最後までできなくて」
「あ、ああ」
理子が体をゆする。快楽を得るための動きではない。桜の言う通り、この場ではこれ以上の行為は行わないのだろう。
「あ、そーだ。翔君のロッカーの中に夾ちゃん特性の精力剤入れといたから。必要だったら飲んでね~。ま、翔君は絶倫だしあんまり必要ないかもだけど」
そう言って湯舟へと向かっていった。
「えーと、桜。あれはだな……」
「いいんです。翔君が悪くないのは分かってますから。それに……理子さんの気持ちも少し分かります」
桜の視線が下に向けられる。先ほどまで理子を貫いていた俺の肉棒に。
「こんなの見せられて、自分の番が後だなんて。耐えられなくなる気持ち、分かります」
言いながらペニスを指でなぞる桜。
「桜ちゃ~ん? ミイラ取りがミイラになっちゃダメだよ~?」
「もちろんですよ~、アスナさん。……じゃ、行きましょっか、翔君」
桜に連れられ、何人もの娘が浸かるお風呂へと向かう。
「あれ、ララは?」
「狂三ちゃんに連れて行ってもらったよ。驚いたね。まさか六課に入りたいなんて……」
「ああ……でも流石に、な」
「そうだよね。入隊するにしてもあのままじゃ六課でやっていけないし……」
最終的にはララが決めることだ。変化を望むのか、今のままでいるのか。
「翔君の方は聞いた?」
「あ、ああ。でも、本気なのか―――なんて聞くまでも無いか」
「うん」
「分かった。じゃあ俺も精一杯……あー、精一杯、アレだな」
その先を言葉にするのは流石に恥ずかしかった。
その様子に何人かの女の子がくすりと笑った。
「それじゃあ解散。みんなも、自分に割り当てられた時間までは邪魔しないであげてね」
アスナの一言で、解散が告げられる。
最初の娘は、
「よろしくお願いします」
「お、お願い、します……」
アインハルトと綺凛のようだ。