「ただいま~」
「おかえりなさいです~」
帰宅したはやてを出迎えたのはエプロンを付けたリィン―――リィンフォースⅡだった。
「ユウキも。ただいまです」
「う、うん。ただいま」
少し恥ずかしそうに返すユウキ。前に住んでいた部屋は完全に引き払い、今はこうして八神家で過ごしていた。
「ご飯、もうじきできますよ。あ、先にお風呂にしますか?」
「あ、ああ……や、ご飯にするわ……お風呂というか、シャワーは浴びて来たし」
「え? 何か言いましたか?」
「え!? い、いやあ、何でも無いわ。アハハ……」
「???」
はやての妙な態度にリィンは首を傾げる。だがユウキには分かっていた。自分も、今ご飯とシャワーを選べと言われたら、間違いなくご飯を選ぶ。
「(えっちって、すごく喉が渇くし体力も使うんだ……)」
ユウキの言う『えっち』というのは、チンポを突っ込まれる大人のセックスではなく、シャワー室で一人慰めたオナニーの事だ。
だがそれでも、それが今までの人生で体験したことの無い体験だった。慣れない運動をしたかのように、全身の筋肉が疲労しているのを感じている。
ユウキはあの時シャワーを浴びて気が付かなかったのだが、肉壺からは愛液を垂れ流していたし、絶頂によって体が火照り汗をかいていた。体の水分がなくなるのは当然だった。
絶頂によって自分の意思とは関係なく筋肉も痙攣するのだ。疲れるのは当然だった。
そしてそれはすべて、はやてにも当てはまっている事だった。
2人そろってご飯を選択した。とりあえず着替えるために部屋に向かっていたのだが、
「ね、ねぇ、はやてさん」
「ん? なーに、ユウキ?」
廊下の分岐点で、ユウキは思わずはやてを呼び止めていた。
「ちゅうか『はやてさん』て。もう家族なんやし、ここはもう『はやてママ』とか、呼んでくれてもええんよ?」
と、いつもの調子で茶化してくるが、
「はやてさんは、今日、翔さんと、し、したん、だよね?」
「へぇっ!? あ、ああ、ぁ~……それ、は……」
ごまかしは効かない。
何故なら戦力増強作戦のメンバを募る際、はやては手を上げてしまっているからだ。少なくともあの時点では『する』つもりだった、と思われるのは当然だ。
だが実際に『した』かは別だ。部屋の中での出来事は誰にも分からない。
直前になってやっぱり止めたとなるかもしれないし、年下部下のチンポに散々耕されて、最終的には子種を懇願するようになっていたのかもしれない。
だからこそ、はやては曖昧にしておきたかったのだが、
「な、何で、そんなこと聞くん? も~、おませちゃんやなぁ、ユウキは」
まだ、茶化して乗り切れると思っているはやて。だがユウキの気持ちはすでに誤魔化せる段階を通り過ぎていた。
「だって……ボクだって見たし……それに……」
「……え、もしかして……もしかしてユウキも翔君と……?」
「あぇっ!? し、してない!! ボクはしてないよっ!!」
「そ、そぉかぁ~……!! それは良かった……? やん?」
2人して妙なテンションになってしまう。2人で面白くも無いのにアハハと笑い、それ以上こみ入った話も出来ず、各々の部屋に分かれた。
「あー……ダメやダメや、気持ちを切り替えな……」
自分のほっぺたをぺちぺちと叩くはやて。
「でも不意打ちやん。そんなこと聞いてくるなんて……」
以前のユウキなら絶対に口に出さなかったであろう話題だった。
翔ならばもしかして、と一瞬ユウキのことを疑ってしまったはやて。
「(いやいや、翔君も女の子の気持ちは大事にするはずやし。そうやなかったら、あんなたくさんの娘に好かれとるわけない。ユウキにその気が無かったら……無いのかな? でもお姉さん助けてもろたし……それはチョロすぎるよなぁ)」
はやては忘れていた。思春期になれば男女関係なく、セックスに興味が出てくるという事に。
「ま、まあでも大丈夫や! 恋人でもないんやし! そんな相手とするわけないやん!」
そして、自分がした事は完全に棚上げしている事に。
実際、思春期の性欲を仕事で押しつぶしたはやては、何人ものメスを食い散らかしたオスである翔との体験が強烈に頭に刻み込まれてしまった。
ここに関して、正常な判断が出来なくなっていても仕方がなかった。
「(でも、あん時の私、凄い声出してた気がするなぁ……うぅ、翔君はあの場だけのことにしよう言うてくれたけど、顔見るたびに思い出しそう……!!)」
そんなことをグルグルと考えていた。
そしてユウキは、
「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
部屋に入って扉を閉めるなり、その場にへたり込んでいた。
「(ボ、ボク、凄いこと聞いちゃった……!!)」
親代わりの、いや、養子になった今となっては『親』であるはやてに向かって。
翔のチンポもセックスもその目で見たユウキ。頭に思い描く映像。ぶっとい肉棒に貫かれて喘ぐアインハルトや綺凛が段々とはやてに変わっていく。
いや、それだけではない。あの場で手を上げた女性は全員、『そう』なっている可能性があるのだ。
「ひ、く……っ!!」
無意識のうちにズボンの中に手を入れていた。
「下着濡れてる……っ、ここ、熱っ……!!」
実は翔の家を出た後もずっとおマンコを濡らしていたユウキ。だからあんなことを聞いてしまったのだ。生々しいセックスの情景に、脳を焼かれてしまったと言っても過言ではない。
床に転がりながら、小さい雌穴を指ズポしていじめる。ホテルのシャワー室で行った初めてのオナニー。その衝撃が頭から離れない。
「指っ、指っ、指っ、指……!! 入り口引っ掻くの気持ちいっ、お腹の裏ぞりぞりするの、すごいぃ……っ」
はしたない声を漏らしながら、腰を浮かせるユウキ。まさに猿のように自らの性感帯を引っ掻く。限界はすぐに訪れた。
「ひぃ、あぁ……っ!!」
綺麗にブリッジする体と股間から洩れる液体。分かりやすいほどに絶頂を決めたユウキが、朦朧とした意識で法悦の空を飛ぶ。
程なくして快感が収まったユウキは、
「……下に行かないと」
濡れてしまった下着を取り換え、ご飯を食べるためにリビングへ向かうのだった。
――――――――――――――――――――――――――――
「ただいま~」
「おかえり~」
「お帰り、フェイトちゃん」
フェイトは家に帰宅した。出迎えるのは同居人のなのはとヴィヴィオだ。
「ただいま~、あ~、お腹空いた~」
「え」
「どうしたの、ヴィヴィオ?」
何かおかしなところがあったのだろうかと、小首をかしげるフェイト。
「なんか、フェイトママがお腹空いたー、って言うの珍しいなぁって思って」
「え? ああ、うん、そ、そうだね……?」
ヴィヴィオの無邪気な顔に、どうしてお腹がすくのか心当たりを感じてしまう。
何とか誤魔化すフェイトに、なのはの鋭い視線が向けられていた。
そうしてご飯を食べ、ヴィヴィオが寝た後、明日の仕事を考えると寝るまでのわずかな時間。なのはとフェイトが向かい合ってリラックスしてた。
なのはが口を開く。
「ねえ、フェイトちゃん」
「何?」
「今日のお話って、なんだったの?」
「あ、っと……翔の事。これからどうするのって」
「これから?」
「うん……ほら、翔って色々と特殊でしょ? だから今の事件とは関係なく、これからのこともちゃんと考えなきゃねって、そういうお話だったよ」
会議に呼ばれていない以上、いくら親しくてもこの件に関してなのはは部外者だ。だからこそ、詳細を話すの憚られた。
嘘はつかず、しかし詳細は教えず、概要だけ伝わるように。そんな返答だった。
だがなのはは『将来』という言葉に反応した。
「将来……そっか。フェイトちゃんはどう考えてるの?」
「え?」
「ほら、将来―――まだ早いかもしれないけど、翔君と結婚するってなったらどうするとか、考えたりしてる?」
「けっ!? っこん……!?」
何も考えていなかったとして、フェイトは責められない。何せ初恋が実って数カ月だ。そこからすぐに将来や結婚に思考が流れる方がおかしい。
だが、意識させられれば話は別だ。会議の話と結婚の話が、フェイトの中で結びつく。
「(え、え、どうなるんだろう。翔がこの後どこかに―――それこそ、デビルークの王様になったら。一夫多妻制が認められてるらしいから、私も結婚することになるのかな? じゃあその時、なのはとヴィヴィオはどうなるんだろう。2人にもデビルークに来てもらう? でもヴィヴィオには学校もあるし、なのはにも仕事がある。じゃあ別れて暮らすのかな……)」
考え出すと途端に何も分からないことに気が付く。翔だけでなく自分のライフプランも全くの白紙だったのだ。
「ご、ごめん。何も考えてなかった……」
「謝らないで。別に責めてるわけじゃないから。ただ、どうするのかなって思っただけで。こっちこそゴメンね? 付き合って数カ月で結婚とか、考えてるわけないよね」
この程度のことでこの2人がギクシャクすることはない。小学校からの付き合いで、お互いの思考は分かっているからだ。
「ごめんね。今日話す内容じゃなかったかも」
「ううん。私も、もうちょっと気を引き締めないとだね」
明日は本格的な捜査なのだ。
別に今日セックスしたからと言って気が緩むわけではないが、今回の事件、余計なことを考えている余裕はない。そんな予感がする。
2人はそれで話題を打ち切り、明日に備えて眠りにつくのだった。
――――――――――――――――――――――――――
翔が狂三や理子、アルトリア達とセックスしている、その時間。
精神と時の部屋では、雪菜やアスナ達が変わりばんこで訓練に励んでいた。
せっかく『王妃のベルト』を手に入れたのだから、少しでも翔のアイテムを理解しようという試みだ。
とは言え、部屋の定員は2人。この時間ばかりは、翔の影分身を使った訓練も中断するしかなかった。みんなで強くなるには、部屋を独占しているわけにもいかないのだ。
「そうは言っても、やっぱり先輩がいないと、踏み込んだ訓練は出来ませんね」
「そうですね……使い方は頭に入ってくるんですけど……」
今、部屋にいるのは雪菜と桜だった。2人共腰にベルトを装着しており、その手にはウォッチや、武器が握られている。
「やっぱり先輩は凄いです。あんなにすぐに、武器を使いこなせるようになるんですから」
実際には使い方を知っているだけではなく、漫画やアニメで視覚的にどのような効果が出るのかを知っているからこそ、ある程度使いこなせているのだ。
故にこれは過剰な持ち上げだったが、それに理解を求めるのは酷だった。だが、それが雪菜達のやる気に繋がるのなら問題は無い。
「そうですね。とにかく少しでも翔君に追いつけるようにしないとです」
桜のその声で、2人は訓練を再開した。
そして、
「あっ、耀ちゃん」
「アスナ、終わったの?」
現在休憩中のアスナは、明日の準備をしようとリビングに来ていた。するとそこには耀がいたのだ。もうすぐ夜明けとは言え、早朝と言える時間だ。
「ちょっと休憩かな。耀ちゃんは? 眠れないの?」
「うん、眠れなかった……布団に入っても、今みんなが翔とセックスしてるって思うと、全然眠れなかった」
「ごほっ! ごほっ! ごほっ!! よ、耀ちゃん……!?」
突然のカミングアウトに、アスナは激しく咳込む。その様子を見て、してやったりと言わんばかりの表情を浮かべる耀。
「冗談、眠れなかったっていうのは。今回のことだって、決めたのは私だから」
「うん……でも本当に良かったの? 耀ちゃんも参加しなくて」
アスナは今回、耀も参加するものだと思っていた、彼女の気持ちを知っていたからだ。
「……あんまりそういう経験、なかったから。でもだからって、こんなみんなの流れに乗って、って言うのは嫌だ」
それはつまり、乙女なりのプライドだった。あるいは耀の頑固な部分か。
「だから、今回じゃなくていい。もっとふさわしいときに、取っておきたい」
「耀ちゃん……」
「(それに、みんなの後だと、私の身体じゃ満足できないかもしれないし……)」
ここは乙女のコンプレックスだった。
「耀ちゃん?」
「何でもない。アスナ、次に部屋に入るなら、私も入って良い? 少し体を動かしておきたい」
「ん、いいよ」
こうして2人は雪菜と桜が出てくるのを一緒に待つのだった。
――――――――――――――――――――――――――――
「ふふふ」
クローディアはパン=ドラを手に入れてから初めて、幸せな気持ちで布団に入っていた。今ならば夢の中でどんな凄惨な死を迎えようと、生殺しセックスを見せられようと笑って耐えられる。そんな気分だ。
「恋人恋人……私は翔の恋人♪」
まだ告白の返事を貰ったわけではないのだが、長年温めてきた思いを告げることが出来たのはクローディアにとってとても大きなことだった。
何せ、この未来に辿り着けるのかすらも分からなかったのだ。
「ふふふっ」
それは腹黒などとは程遠い、年相応の少女が浮かべる笑顔だった。
軽やかな心は、ゆっくりと眠気を誘ってくる。
「(さて)」
まどろみの中、クローディアは思う。
「(明日からの調査、何が出てくるのか)」
パン=ドラの夢でそれを知れれば良かったのだが、あいにくと今まで一度もその未来を観れなかった。
前日かつ、今日はクローディアにとって最高にめでたい日だ。パン=ドラからも、何かプレゼントを期待してしまう。
例えば、明日の情報とか。
「(ま、見せてくれるとは思いませんけど)」
苦笑しながら眠りに落ちていった。
こうして長かった1日が終わる。
そして次に訪れるのは、事態を次のステップに進める運命の日だった。