束に向かって何の迷いもなく剣を振り上げる。
「あは、危ないなぁ」
その剣は黒いゲートから現れた老剣士に受け止められていた。
「~~~~~ッ!!」
ヘラヘラと笑う束に、普段は見せない激情を見せ、奥歯を噛みしめるアイズ。声なき絶叫を上げ、目の前の障害を突破しようとがむしゃらに斬りつける。
風を纏う乱舞が炸裂するが、その全てを老剣士は受け止められてしまう。
「うーん、ホントに黒竜のことを持ち出すと怒っちゃうんだねぇ」
という束の呟きは、我を忘れたアイズには届かない。
「うわああああああああああああああああっ!!!!!」
「うわ、怖~……でも、危ないんじゃない? そんな乱暴に攻撃してると―――」
「ッ!?」
ギロチンを振り下ろすように、超速の刃が老剣士とアイズの間を通り過ぎた。刃は床も切断する。滑らかな切断面はその切れ味を物語っていた。
「(あぶな、かった……!!)」
一瞬よぎった死のおかげで、少しだけ冷静さを取り戻すことが出来たアイズ。
回避できたのは斬撃の息継ぎのために一瞬体を引いたおかげだ。そうでなければ今頃、剣を握った右手は無くなり、武器を失ったアイズは老剣士に切り殺されていただろう。
「『黒トリガー部隊:ウィザ』。流石最強だね~。うーん、ホントは意識も残しておきたかったんだけど。ま、このレベルで動けて
「(刃は透明なの? 全然見えなか、った……)」
透明の刃が襲ってきたのでは、と考えたアイズだったが、少し距離を取ったおかげで全体像を把握できた。
老剣士―――ウィザを中心として魔力のレールが円のように広がっている。そのレールの上に、緑色の刃がいくつも設置されていた。
「(見える? 攻撃の瞬間に透明になっている? それとも……速すぎて見えなかった?)」
その思考に辿り着いた時、猛烈な悪寒に襲われた。
レベル5の自分が全く視認できない攻撃。これが仲間に向けられたらとんでもない被害が出る。
せめて乱発できないことを願ったが、
「ッ!?」
全てを投げ捨てた全力の回避で命を拾う。
「(この連射速度、今は私に
奇しくもウィザの実力が合図に冷静さを取り戻させていた。それでも、相手が弱くなるわけではない。
「アレは、マズい……!!」
フィンの親指の疼きは痛みに変わっていた。
「(あの老剣士―――ウィザと言ったか、まるで生気を感じないが、実力は本物だ。この威圧感、オッタルに匹敵するか、それ以上―――!!)ベート、ティオナ、アイズの援護を!! あの老剣士を突破しなければ活路はない!!」
「―――ッチ!!」
「うん、分かった!!」
フィンの焦った声に、2人の団員が即座に走り出す。
さらに、黒いゲートが開いた。駆けだしていたベート、ティオナとフィンたちの本体の間に。
「止まるなッ!! こっちでどうにかするッ!!」
現れる人物の影を横目に捕らえつつ、団長の指示を守りアイズの元へ走る。
「うんうん、それで良いよ。その子には狙わせないから―――ハイレイン、制圧して」
『黒トリガー部隊:ハイレイン』。掌に卵のような物体を浮かべる男性だ。
その卵から、無数の魔力弾が生まれた。だがそれは一般的な球体ではなく、世にも奇妙な、魚の形。魚型の魔力弾だ。
空中を泳ぐようにして飛来する。
「ワシの盾をよこせッ!!」
「はいっ!!」
2軍メンバから盾を受け取ったガレスは先頭に立ち、その魚型の魔力弾を受ける。大盾を構え、数発その身に受けながらも、攻撃から仲間を守る。ロキ・ファミリアが誇る
そのはずだったが、その巨躯がぐらりと揺れる。
「ッ!? コ、コイツは……!!」
「ガレス! どうした!」
フィンの問いかけに対して、全体への注意を促すことで返す。
「全員! コイツの魔力弾は必ず武器で叩き落とせ! 当たった瞬間に魔力を削られるぞ!!」
ガレスの足元にはガレスの魔力光の色のキューブがいくつも転がっていた。
「まったく、頑丈が取り柄のワシとは相性が悪いわい……!!」
ハイレインが使っているデバイスには、
能力は魔力を卵生の生物型の魔力弾に変換し、発射するというモノ。問題はその魔力弾の性質だ。
ガレスが言った通り、『命中した対象の魔力を、キューブ状にして強制的に排出させる』というモノだ。
キューブ化は魔力で作られたものであればなんにでも有効で、BJも意味が無い。障壁や魔力弾もキューブにされる。ガレスは盾ではなく体で受けたため、魔力が削られてしまったのだ。
弱点として、弾速はそこまでではない事、物理的な破壊力が無い点が挙げられるが、
「ッチ!! うっとおしい……!! おい! お前らも武器を取れ!! 削られ過ぎると身動きとれんくなるぞ!!」
「は、はい―――!!」
ラウル以下2軍のメンバも各々の武器を使って魚を叩き落し始める。
一瞬混乱しかけたが持ち直す。一流のファミリアなら当然のことだ。
自信も槍を振るいながら思考するフィン。
「(よし、この弾幕、は何とか凌げそうだ。後はここからどう動かすか。幸い、この弾幕は
アイズ達には向かっていない。向こうも状況は良くなさそうだけど……なんだ? トカゲ?)」
宙を飛ぶ魚に目を奪われていたが、足元にはトカゲ型の魔力弾もいた。それらは攻撃に参
加するわけでも無く、わずかに被弾したことで出来たキューブを拾って、ハイレインの元
に帰っていく。
「おい、フィン。ありゃあ……」
ガレスも気づき、引き攣った声でぼやいていた。
「ああ、まさか……キューブにした魔力を本体に還元しているのか……!?」
それではいくら耐えても意味が無い。ウィザに苦戦する3人を助けに行けないまま、じりじりと削られて終わりだ。
「レフィーヤ、魔法の詠唱を。狙いは魔力弾を撃ってくる男だ。君の魔法で一点突破をかける」
「はい……っ」
「相手の魔力弾相殺後、僕とティオネで、無理やりにでもあの
フィンの魔法―――戦意を高め、全能力を超強化する『ヘル・フィネガス』という魔法だ。しかしこれは冷静な思考が出来なくなる諸刃の剣。
フィンがこの魔法を使うという事は『司令塔が指示を放棄した』と同義であり、文字通り最後の手段だ。
「そうして今度は、全員がかりであの老剣士を突破か……さらにその奥にいる、篠ノ之 束はどうする?」
ガレスの問いに、フィンは一瞬思考する。
「……今回は情報を持って帰ることを考える。篠ノ之博士は無視しよう。とにかく、脱出を一番に―――」
「だ、団長……!!」
「っ!! どうしたっ!!」
ラウルの悲鳴のような声に、フィンが顔を跳ね上げる。
指さす方角には黒いゲート。そして1人の人影。
「3人目……!!」
『黒トリガー部隊:エネドラ』。
エネドラが纏う、黒い雲のようなモノ、それが広がっていく。
「こ、今度は何すか……!!」
「(挟撃は不味い。もし目の前の
フィンの嫌な予感は的中してしまう。広がった雲、それが一瞬で硬化し、刃となって襲い掛かってきたのだ。
「だ、団長……!!」
「止めるなっ!! 詠唱を続けろ!! 僕が言うタイミングで、いつでも発動出来るようにしておくんだ!!」
「っ!! は、はいっ!!」
一喝のおかげで詠唱を続けることが出来たレフィーヤ。
「(とは言え厳しいのは事実だ)」
前と後ろ、両方に意識を配りながらフィンは思考する。
「(逆転出来るかは、彼の動きにかかっているな……)」
親指を舐めながら、そう考えるのだった。
―――――――――――――――――――――――――
《ETERNAL》
白を基調とした体に漆黒のマント。ウォッチで変身したにもかかわらず正規の変身なのは神(作者)の采配か。ベルトもロストドライバーの、まごうことなき仮面ライダーエターナルだ。
エターナルの変身を皮切りに、他の面々もメモリを起動させる。
《HEAT》
《LUNA》
《METAL》
《TRIGGER》
NEVERの面々がそれぞれドーパント化した。
「異形の怪物……怪人っちゅう奴か……!!」
「怪人か……良い表現だが、『奴』に言わせると、俺だけは違うらしい」
エターナルがマントをはためかせる。
「俺は仮面ライダー。仮面ライダーエターナル、というらしいぜ」
そして―――見せつけるようなサムズダウン。親指を下に向けて言い放った。
「さあ、地獄を楽しみな!」
「みんな、来るでぇ!! 気ぃつけぇ!!」
2人の声と共に、束に向いていたヘイトが分散する。
「行け、お前達」
「ええ」
「それじゃあ、行くわよぉ!!」
「GAME START」
「うおおおおおぉぉっ!!」
ヒートドーパント、ルナドーパント、トリガードーパント、メタルドーパントがそれぞれ行動を開始する。
「博士、アンタはさっさと下がれ。戦場をウロチョロされるのは目障りだ」
アーミーナイフ型の専用武器、エターナルエッジを逆手に持ちながら。近くに着地した束に言う。
「うーん、でも束さんももう少し遊びたいなぁって思うんだよねぇ」
「……はあ、分かった。好きにしてくれ。別にその体が破壊されようと問題ないんだろ?」
「そーいう事! ほーら、なのはちゃーん、束さんはここですよ~」
「ディバインバスター!!」
エターナルと束に桃色の光線が迫るが、
「ふんッ!!」
あらゆる攻撃を無効化するエターナルローブのひと薙ぎで搔き消されてしまう。
「それと、あの男はどうした? 何故いない? 大切なメモリを1本預けているんだぞ」
「ああ、井坂先生? ……あれ? 一緒に呼び出したはずなんだけど……」
「私ならここにいますよ」
建物の影から姿を見せる男性。その顔に見覚えのあったはやては思わず叫んでいた。
「い、井坂先生!? どうしてここに……?」
そこに居たのはユウキの姉、藍子の主治医だった男、井坂 深紅郎だった。見慣れた白衣ではなく漆黒のスーツに身を包んでいるが、見間違えるはずがない。
「すみませんねぇ、八神さん。わたしにも色々と秘密がありまして」
「何をこそこそ隠れている、井坂。貸しているメモリの分はきっちり仕事をしろ。ろくに仕事をしない奴に、持たせるメモリは無いぞ」
「それは困ります。それでは、一仕事するとしましょうかねぇ」
懐からメモリを取り出し、
《WEATHER》
ウェザードーパントへと変身した。
「やっぱり、怪人に……!!」
「ってっめぇぇぇぇえええ!!!」
「ヴィータ!!」
八神家は全員、井坂と顔見知りだった。お見舞いで何度も顔を合わせたことがあったし、言葉を交わしたこともあった。
今では家族である1人の少女、その姉の命を握っていたのが目の前の、敵の男なのだ。ヴィータが感情を爆発させてしまっても無理はない。
ハンマー型のアームドデバイス、アイゼンを振りかぶり、ウェザードーパントを攻撃する。
重い一撃を腕甲で受けながらも、ぺらぺらと口を開く。
「これはこれはヴィータさん。初めてBJを拝見しましたが、なるほど、ずいぶんと可愛らしいらしい姿じゃありませんか」
「ふざけやがってッ!! テメェ、ずっとアタシらのことを騙してたのかッ!!」
「騙すとは人聞きの悪いことを。少なくとも医者として、皆さんに嘘をついたことは1度もありませんよ? そして、手を抜いたこともありません」
もっとも、とウェザードーパントは続ける。
「私もライドウォッチに興味がありましてね。彼の指示もあったとはいえ、その成長の手助けをしたのは間違いありませんが……!!」
瞬間、ウェザードーパントの身体から冷気が放射される。
慌てて後ろに下がるヴィータ。
「ヴィータ! 1人で前に出たらアカン!!」
「でもはやて!! コイツは……ッ!!」
「ふむ、うまく釣れたようだ。それでは彼女と、ついでに八神はやては私が受け持ちましょう」
「お願いね~。うん、そーだね。この感じだと、そんな時間もかかんないでロキ・ファミリアを処理できると思うし。こっちもやっちゃおうか」
「そうだな。目の前の敵を殲滅するとするか」
エターナルが一歩前に出る。
そこにはヒートドーパントと近接戦を繰り広げる雪菜、ルナドーパントが生み出した戦闘員を影の刃で一掃する桜がいた。
《なのはちゃん! なのはちゃんはIS組と一緒に、とにかく束さんを押さえて!! ここで逃がすわけにはいかへん!!》
《了解!! セシリア、鈴、地上のことはみんなに任せて、このまま攻撃を継続!!》
はやての指示で束への攻撃を再開するなのは達だが、
「じゃあ、もっと仲間を呼んじゃおうかな? ―――口寄せの術」
束が地面に両手をつけた瞬間、白い煙が爆発的に生み出された。
「仲間って言うか、兵器だけどね♪」
そして煙の奥に見える黒い影―――2機。
サイコガンダムとサイコガンダムMk-Ⅱだった。束を守る仁王像のように、両脇にそびえ立つ巨人。その全身から無座別にビームが放たれた。
周囲の建物が瞬く間に穴だらけになり、瓦礫の山と化す。
「確かに火力は凄まじいですが、その巨体なら良い的ですわ!!」
勇ましく吠えたセシリアはビットで取り囲んでビームの雨を降らせるが、
「バ、バリア、ですの……っ!?」
2機に備え付けられているIフィールドによって湾曲、全て明後日の方向に着弾してしまう。
「ディバイン……バスター!!」
なのはの砲撃が着弾するも、
「効いてない、か……」
「ど、どうすれば……鈴さん! 何とか近づいて攻撃出来ませんこと!?」
「うっさいわね!! あんなのにそう簡単に近寄れるわけないでしょ!!」
舌打ちすら聞こえてきそうな鈴の声に、なのはは落ち着いて、と返す。
「(でも、どうしよう。あの手ごたえ、単純に出力を上げれば攻撃が通るわけじゃなさそう。わたしとセシリアとは相性が悪い。流石、束さん。私達のこと分かってるな。他の所も手一杯みたいだし……)」
そう考えながら地上の束と見ると、
「ふふっ」
波紋の眼の束と、目が合うのだった。