「エターナルにウェザー、黒トリガーにブラッドスタークまで……っ」
「ね、どうかな? 考えてくれた?」
「……っ」
俺はこれまでの戦闘の映像、その全てを見せられていた。
ここがどこかは分からない。あのワープホールに押し込まれ、気が付けばこの部屋にいたのだ。どこかのラボなのか、周りには機械が並んでいる。
すぐに暴れても良かったのだが、話があるから座ってくれと言われ、今に至る。
明らかな脅し。六課もロキ・ファミリアも苦戦している。このままだと死者が何人出るか分からない。問題は、明らかに俺の世界のアイテムが使われていることだ。
「ゾンビが持ってたアイテムか?」
「ゾンビ? ……ああ、アイツか。そだね。それも含まれてるよ」
「それも、ってことは、他にもアイテムを提供した奴がいるんだな」
「そーだね」
ずいぶんあっさりと認めてくるな。隠すだけ無駄だと判断したのか? となると、例の男も篠ノ之 束側についていると考えてよいか。
「もちろん、ただ貰ってるだけじゃないからね。もらったものはしっかりと分析して、束さんのスペシャルカスタムにしているのだ!!」
上機嫌で格納庫らしき場所の映像を見せてくれた。そこには直立するサイコガンダム、サイコガンダムMk-IIが10機ずつ見える。これで全部なのだろうか? そんな訳ないな。
「その目も……」
「ん、ああ! そうそう! 凄いでしょ、この目」
水の波紋のような瞳に俺は苦い顔をする。
「輪廻眼……」
輪廻眼はNARUTOに登場する特殊な力を持つ目だ。俺が既に持っている写輪眼、もう1つ白眼というモノと合わせて三大瞳術と称されている。
その中でも輪廻眼は、最も崇高にして最強の瞳術とされ、写輪眼の行きつく先とまで言われている。
原作でも輪廻眼を開眼した者だけが使える『六道の術』で大暴れしていた。
映像にも輪廻眼の束さんが映っているが、これはおそらく自分のクローンかなんかでガワを作り、ソレを六道の術の1つ『外道』を使って操っているんだろう。
「当たり~、すごいなぁ、束さんの事なんでもわかっちゃうんだ?」
ぱちぱちぱち、ずぞぞーっ、と適当な拍手の後、ストローで飲み物を飲みほした。
「それで、結局どうするのかな?」
「……いろいろと教えてもらって悪いけど、俺が束さんに協力することはない」
「それは残念―――ってそう言うのは分かってたけどね~。君のこと結構調べたし。でも聞いてみないで判断するのはダメだしね」
「……まさかそれだけのために、俺をここまで?」
「お話できて良かったよ。もう帰るでしょ? 早く帰りたいでしょ? お帰りはあちらだよ~」
「何もせずに帰していいのか?」
「おっ、それじゃあ今から、諸悪の根源、束さんと戦ってみる? この目の力を試してみたいとも思ってたし」
束さんがファイティングポーズを取るが、俺は首を横に振る。
「……やめておくよ。今はそんな時間はなさそうだ」
今は一刻も早くみんなの所に帰るのが先決だ。俺にはその役目がある
「間に合うといいね。ここってあの場所からは大分離れてるから……あれ? そう言えばどこにあるか知ってるんだっけ?」
実を言うと、あの場所がどこにあるかなんて俺には関係ないし、戻ろうと思えばいつでも戻れたのだ。
「へぇ~? 面白いじゃん。君1人が逝けば何とかなるって思ってるその目。すごい自信だね」
「ああ。だから俺の活躍を観とけ、そのモニターでな」
俺は『術を解いた』。
――――――――――――――――――――
六課とロキ・ファミリアが別れるとき、翔が待ったをかけた。
理由は、
「影分身の術?」
「はい。この分身も連れて言って下さい」
フィンさんに術の説明をする。
「なるほど。つまり向こうの調査で何かあったとして、その分身を解除すれば、即座に情報が全て君に伝わるという事かい?」
「そうです。何かあったら分身を解除して情報をみんなに伝達。そこからどう動くのか決めたいと思います」
「それはええね。何かあったらすぐに見捨てるって訳にもいかんし」
「だね。ボク達も生きて帰りたいのは本当だし」
フィンさんとはやてさんに同意を得られたことで、分身を同伴させることが決定する。
「それにしても……」
「はい?」
「いや、すごく便利な魔法だと思ってね。その分身、見掛け倒しじゃなくて君の魔法も使えるんだろう? 今まで隠していたのかい?」
「あぁ~……ま、まあ、そ、そんなところですね。べ、別に信用してないとか、そんなんじゃありませんよ?」
わかっているよ、とフィンさんは笑うが……これは無理があるよなぁ。影分身の有用性をフィンさんが気づかないわけないし……というか他の人も気づくだろう。それを伝えないのは明らかにおかしい。
違和感を持たれただろう。俺も部隊生存のためなら能力を温存するつもりは無いし……今後のことも考えないといけないな。
なにせ、これからさらに違和感のあることを言う訳だし。
「ああ、それとですね……何かあってヤバそうだったら、俺が皆さんを学園島まで転移させますから」
転移というのは飛雷神の術の事だ。令呪によるブーストをかければ全員を運ぶことも可能だろう。
マーキングクナイはすでにフェイトさんに渡してあるしな。
「君は転移魔法も使えたのかい?」
「ええ、はい。すみません、黙っていました……」
最悪だなぁ、俺。向こう視点で、黙ってること多すぎんよ。
覇気を通して、何とも言えない感情が伝わってくるよ……
「……了解した。それじゃあその方針で行こう。八神部隊長からは何かあるかい?」
「んー……今すぐ島に戻れるなら、今までの出来事を島のメンバーにも伝えて欲しいんやけど、出来そう?」
「はい」
「ついでに、今の島の様子も聞いておきたいな。や、待てよ、他人も転移させられるという事は、向こうのメンバーをこっちに連れてくることも出来るのかい?」
「できますけど……」
俺1人ならともかく、多人数を飛雷神するには魔力が足りない。不足分の魔力は令呪から引っ張ってこれるが、影分身では令呪が使えなかった(検証済)。令呪が使えるのは本体だけってことだ。
ま、最悪仙豆を食べれば魔力は全回復するんだけど。
「なら、翔君自身が戻ればいいさ。六課の方にも分身を残しておけば問題ないだろう」
「そやね。何かあれば分身を解除して知らせれば良いんやし」
こうして俺は六課とロキ・ファミリアそれぞれに分身を残し、飛雷神の術で一度島に戻った。
「わっ!? しょ、翔? どこから―――もしかして、向こうで何かあったの?」
跳んだ先はクナイを渡していたフェイトさんの所だ。
突然現れた俺に驚いていたが、すぐに察して真剣な表情になる。
「いえ、そういう訳ではなく……」
俺は事情を説明した。
フェイトさんだけではなく、こちらに残っていた人たちにも。
「そっか、向こうではそんなことになってるんだね」
「はい。なので、こっちでは何か変わったことが無いかと思いまして」
「う~ん、特に変なことが起こったってことはないけど……ね、リヴェリアさん」
「そうだな、特別報告は受けていない」
じゃあやっぱり俺達はあの場所に誘い込まれたのか……
と、ここで、
「ん……んん!?」
「どうした?」
「向こうの影分身が解除されました。これは……」
六課の方の分身だ。
「何だって……!?」
『あの』篠ノ之 束が、明らかに敵の態度で現れた……!? あの人が単純に味方になるわけがないと思ってはいたけど、こんなあからさまに敵になるなんて……!!
「そ、んな……束さんが……」
JS事件で一緒に戦ったからだろう。フェイトさんがショックを受けている。本来なら何か声をかけるべきなのだが、ここはやるべきことをやらせてもらう。
「分身によると、はやてさんは『島の様子を見て、出来るなら援軍を送ってほしい』とのことです」
向こうのはやてさんは、束さんが出て来た時点で、俺の分身がいることを気取られないように、即座に術を解除させたようだ。
ロキ・ファミリアの方の分身は解除されていない。もうすでに壊されたのか? 六課の方に動きがあって、中央部の探索をしているロキ・ファミリアに何もないなんてありえるのか?
「そうだな。だが、向こうで動きがあったという事は、こちらにも動きがあるかもしれないという事だ」
「はい……」
リヴェリアさんの厳しい声だ。
普通に考えてロキ・ファミリアと六課を同時に相手どれる戦力を簡単に用意できるとは思えない。そんな無理難題を押しのけ、さらに学園島に攻撃を仕掛けるなんて正気ではない。
だが相手は篠ノ之 束だ。目的も何も分からない。何をするかも分からない。
リヴェリアさんやフェイトさんを連れて戻った後に、こちらの島を襲撃されるかもしれない。
「心を揺らさず、ここは一度腰を据えた方が良いだろう」
「そうだね。みんながそう簡単にやられるとは思えないし」
「です、ね……」
リヴェリアさんとフェイトさんに言われて、俺は浮きかけていた腰を椅子に戻した。
確かに篠ノ之 束はとんでもないが、こちらのメンバーもとんでもないのだ。焦って行動するのが一番まずいか。
飛雷神クナイは俺の身内の女の子みんなに配ってある。戻ろうと思えばいつでも戻れるのだ。
そうして重苦しい空気が部屋に充満して数分、決定的なことが起こる。
「ッ!? ―――戻ります。今すぐに」
「え、ど、どうしたの? なにかあった?」
有無を言わせない俺の口調に、フェイトさんが戸惑っている。だが、説明している時間はない。
簡潔に言えることは、
「ロキ・ファミリアにつけていた分身が解除されました。このままだと―――全滅の可能性があります」
「全滅……!?」
強い言葉に、流石のリヴェリアさんも少し動揺する。だがすぐに問いを返してきた。
「何故そう言い切れる? 篠ノ之 束が用意した兵力は、それほどに強大なのか? 何がいるんだ、向こうには。あの極彩色の魔物だけではないんだろう?」
「それは……」
分身がもたらした情報は敵の情報と、みんなの今の様子だ。
だが詳しく説明している時間はないし、説明しても短時間では理解出来ないだろう。
ならば、
「向こうにいるのは、俺が知っている相手です。最悪の強敵……全員が手を組めばおそらく、世界征服だって目じゃない」
「何だと……!?」
次々に飛び出る単純ながら力のある言葉。フェイトさんは『俺の世界』絡みであることを察したみたいだ。
「とにかく俺は向こうに戻ります。戻らないと―――」
「待て」
が、それでもリヴェリアさんに制止させられてしまう。でもその表情は厳しいながらも思慮に満ちていた。
「君の言葉が真実だとして、君が向かって状況が変わるか? それだけの相手に対して、君1人で、状況を変えられるのか?」
リヴェリアさんの心配はもっともだ。俺が下手に世界征服が出来る敵(間違っているとは思っていない)と言ってしまったからだ。
「変えます。撤退を第一優先で行動します。このままだとみんなは嬲り殺しです。俺が行けば、飛雷神の術でこっちに跳んでこれる」
俺とリヴェリアさんは睨み合うように目を合わせる。その言葉に偽りがないか、本当に実行できるのかを見定められている。
「……ふう。時間が惜しいんだったな。引き留めてすまなかった」
俺は折れない。必然的に、折れるのはリヴェリアさんの方だ。
「私もむざむざファミリアや六課の面々を死なせたいわけではない。可能性があるのなら、それにかけよう」
「はい……!! それじゃあ……」
「だが、お前1人だけというのは不安だ。2人まで連れて行け」
「じゃあ、アスナと耀で」
そうしてアスナ、耀と共に、飛雷神の術を発動させる。
「だが忘れるな。お前は今回の敵を『知っている』と言った。ならば今回の戦闘の後、相応の説明が求められるぞ」
「―――もちろんです」
リヴェリアさんの視線を受けながら、俺達は空中要塞に跳んだ。目標にするのは、女の子達にあらかじめ渡してあるマーキングクナイだ。
―――――――――――――――――――
「う、ぐ……っ」
「雪菜さん!!」
エターナルの白い装甲を、雪菜の鮮血が赤く染め上げる。ファングによって大きく切り裂かれた雪菜。雪霞狼が指から滑り落ちる。
急速に体外に流れる血液のせいで、視界が一気に暗くなる。気が付くと地面に倒れていた。
そしてエターナルは、冷酷な人間兵器として、一切のためらいなく雪菜にとどめを刺した。
「まずは1人だ」
迫るアーミーナイフ。
その一連の流れを、スローモーションの世界で、体を動かせず眺めるしかない雪菜。無意識に発動する霊視。そこには、
「(あ、ぁぁ、先輩―――!!)」
アーミーナイフは雪菜の眼前で止まっていた。
「正直、エターナルも大道 克己もカッコいいけどなぁ」
とてつもない怒気を孕んだ声だ。黒く変色―――武装色によって硬化した手によって刃を掴んで止めていた。
「こういうのは許せねぇよ」
そしてもう一方の手。同じように変色しているがあり得ない程に長い。伸びているのだ。
「ゴムゴムの……
「うぐッ……!?」
エターナルはとっさに腕で防御するが想定外の威力に大きく吹き飛ばされる。
「ボォォォォッ!!」
「チィ!!」
さらに耀が吐き出した火球を、マントを使って払いのける。
その間に、
「雪菜ちゃん、これ」
「アス、ナ、さん……」
アスナが差し出していた仙豆を咀嚼する。喉を通り過ぎた途端体の痛みが全て消え去る。
血まみれの雪菜が平然と立ち上がる姿を見て、
「なるほど、お前が夜月翔か。ここに来たところを見ると、博士の勧誘は失敗したらしいな」
エターナルは不可思議な現象で翔のことを察したのだ。
「ああ。アンタも、うまくいくとは思ってなかっただろ?」
「フン、そうだな」
色々と言いたいことはあるのだが、今の目的はそちらではない。
「みんな、遅くなってゴメン。これから、撤退戦を始めるぞ」
全員、生きてこの空中要塞から脱出する。それを第一目標にすると、翔は宣言した。