さてさて。全員生きて脱出すると宣言したところで、状況を確認しよう。
俺達の勝利条件は全員の生還。
その為には全員を倒す―――のではなく、何とかして飛雷神の術を使う隙を作り、転移することが重要になる。敵を倒すのではなく、隙を作るのだ。
さらに言えば、俺はこの敵を突破して中央の建物で戦闘しているロキ・ファミリアと合流。同じように飛雷神の術を使って脱出しなければいけない。
《はやてや、転移魔法なら私も使える。翔君はロキ・ファミリアの所に辿り着くことを考えて欲しい!》
と念話ではやてさんが伝えてくれた。
《じゃあこっちはお願いします!! 俺はとにかく向こうに!!》
多少のズレがあったとしても、なるべく同時に転移しなければいけない。そうしないと早く転移したほうの敵が、残っている方に集中して大変なことになる。
つまり、俺がどれだけ早く向こうに行って転移の準備を整えられるか。それが全員の生存率に関わってくる。俺が転移するギリギリ直前まで、こっちでは粘っててもらわないといけないんだからな。
「影分身の術!!」
俺は4人の分身を作り出す。ちなみに分身にはちびレプリカを一緒に行動させることで、離れても連携が取れるようにしている。
1人は魔法の詠唱開始。1人はエターナル。1人ははやてさん達の所へ。1人は俺と一緒に戦う。
「みんな、聞いての通りだ。頼むぞ!!」
「おっと、そうはさせないよ~?」
束さんがにやにやしながら立ちふさがる。
輪廻眼は視界を共有することが可能だ。つまり、俺があのラボから分身を消して戻ったことが、目の前の束さんとロキ・ファミリアの近くにいる束さんに伝わっているという事になる。
俺がこうしてロキ・ファミリアの元に急いでいるのも伝わっているのだ。
本気で合流を阻止しようとしているのではなく、この場で俺が何を見せてくれるのか楽しみにしている、そんな顔だ。
だが、
「申し訳ないが、相手にしている暇はない!!」
「ふーん? じゃあ、こんなのも出しちゃおうかなぁ?」
再び口寄せを行う束さん。タワーの目の前に現れるのは二足歩行の巨大兵器、『ビグ・ザム』だった。
その体のど真ん中に装備されているメガ粒子砲が火を噴いた。
「ッッッ!?」
戦場を真っ二つに分断する火線。巻き込まれればひとたまりもない。
さらにその前には束さんとサイコガンダム達が陣取り、そこに至るまでの道をメタルドーパントが塞ぎ、ルナドーパントが出した兵隊が道を埋め尽くし、トリガードーパントがどこからか俺達を狙っている。
大した状況だ。それを突破しなければいけない。
「中々可愛い坊やだけど、ここから先へは進ませないわぁ!!」
ルナドーパントによって無限に湧き出る兵隊。1体1体の強さは大したことが無いが、こうも大量に出されると面倒に思えてくる。いっそのこと飛んで行ってしまおうかとも思ったが、
「うわっと!?」
ぴりっとした気配を感じその場から飛びずさると、何処からか飛来した弾丸が、さっきまで俺の頭があった位置を通り過ぎた。
「トリガードーパントか……」
これは、下手に背中は向けられないな……
「大丈夫、私が行く」
と、耀が立候補した。姿が見えないが。だが、その声は頼もしい自信に満ちている。
「頼む」
しばらくすると、トリガードーパントの援護射撃が止んだ。相変わらず銃声は聞こえてくるが、こちらには弾丸は飛んでこない。耀と戦闘しているんだろう。
耀、マジで強いな……近接戦に持ち込んでも、簡単に倒せる相手じゃないだろうに。
それじゃあ、俺は、
「頼む。アレだ」
「了解。アレだな!」
分身の俺は
《スバルさん、適当なタイミングで俺の後ろまで下がって下さい。まとめて吹き飛ばしますから》
《了解!!》
スバルさんと一緒に適当に兵隊をいなしながら、分身の合図を待つ。
《準備完了! 行けるぜ!!》
「ああ―――!!《スバルさん、下がって!!》」
《うん!!》
俺は
「?? ライオンちゃん?」
サウザンドサニー号の船首だけを外に出した。ルナドーパントは首を傾げているが、すでにコーラパワーは充填されている。
船首のライオン飾りの口が開き、砲塔が見える。
「ん?」
ルナドーパントは異変を感じ取っているようだが、もう遅い。
「撃ってくれ!!」
《おう!! ―――ガオン砲、発射ッ!!!》
分身の気合の入った声と共に、凄まじい空気弾が発射された。
「あらぁ~~~~~~~!??!?!?!?!」
大量の兵隊と共に、ルナドーパントが吹っ飛んでいく。
サウザンドサニー号の最終兵器である『ガオン砲』だ。元々、サウザンドサニー号はコーラを燃料として様々な特殊機能を動作させている。この兵装もその1つだ。
サニー号を手に入れた時、所謂コレクションアイテム。しばらくアイテム倉庫の肥やしになるかと思っていたのだが、
「凄いな」
その結果は御覧の通りだ。ま、使い道をひねり出したとも言えるけどな。
コーラ樽を使えばこの攻撃が出来るのが良い。魔力も何も、俺のエネルギーは消費しないのだ。
ルナドーパントが呼び出した兵隊のほとんどが消え去り、本体もどこかへ飛んで行っていってしまった。影も形も無い。
道の中央を塞いでいたメタルドーパントすら、この衝撃には耐えられなかったようだ。どこかへ飛んで行ってしまった。
「うはっ!! 凄いじゃん!! それで? こいつらはどうするのかな?」
そんな中、束さんは平然と輪廻眼で俺を見据えてくる。それは視線を上空に向けた。
「鈴!! コイツを使え!!」
「はぁ!? って、これって―――」
「目の前のデカブツをぶっ潰してくれ!!」
「わかっ……ってか、どうやって着ればいいのよ―――!!!」
上空からここまで聞こえてきそうな叫び声だが、
「ああ、それは―――」
「問題は無い。私が装着させよう」
随伴させていたちびレプリカに任せてある。
「ISのままで行けるワケ!?」
「そのようだ……よし、完了だ」
鈴と甲龍に装着されたのは、模擬戦の時に俺が使ったバルバトスだった。インナーに装着されているのはほとんどバルバトス。宙に浮いている龍砲が少し浮いている。
「スペック見たけど、ホントに平気なのよね!?」
《いける!! 俺を信じろ!!》
「っ、しょうがないわねぇ!!!」
半ばヤケクソになったように、鈴が叫ぶ。そしてその行動も、周りから見ればヤケクソに見えただろう。何せ、体中からビームを照射するサイコガンダムに正面から突っ込んでいくのだ。
「―――」
当然のように、接近する敵は集中的に狙われる。無作為に放たれていたビームが一極集中。鈴を撃ち落とそうと牙をむく。
「効くかああああぁぁぁぁぁっ!!!」
鈴の気合だけではない。バルバトスの装甲は、サイコガンダムの全身から放射されるビーム攻撃を全て弾いていた。
ナノラミネートアーマー。詳しい設定を話すと長くなるので割愛するが、バルバトスなど鉄血のオルフェンズ系のエイハブ・リアクターを使っている機体は、ビームに対して絶大な防御力を発揮出来るのだ。
サイコガンダムも数秒間のビーム照射をものともしない鈴に対して、何か別の動きを見せていた。だが、それよりも鈴が速かった。
「こん、のおおおおおおおぉぉぉぉぉッッッッッ!!!」
「―――!!!?!??!」
気合と共にメイスが炸裂する。
その一撃だけで、サイコガンダムのガンダムヘッドが関節からもげてどこかへ飛んで行った。
「お願いッ!!」
「セシリアッ!!」
「はいっ、なのはさん!!」
鈴の叫びで、ピンク色の光球、深い青の涙が、四方八方からサイコガンダムを撃ち抜き、完全に沈黙させる。
さて、もう1体、サイコガンダムMK-Ⅱだが、
「私が行くよ」
「アスナ!? ……任せた!!」
一瞬、流石に無謀では、と思った俺だったが、飲み込んで任せる。
王妃のベルトを装着するアスナ。それを見て何か考えがあると悟った俺は突破だけを考えて走り出す。
《ACCEL》
アスナは真紅のライドウォッチを取り出す。
「……変……身ッ!!」
それは初めて実戦で使う緊張から来るものだった。だが、その言い方は本来の変身者である照井 竜を彷彿とさせるものだ。
《ARMOR TIME!》
《ACCEL! ACCEL!》
アスナの周りに現れたエンジンピストンが限界まで稼働しアーマーを生成、アスナに装着される。
アスナがアクセルに変身したのだ。
だがアスナは『閃光』の二つ名の通り、スピード型だ。バイクモードでかく乱するのか? と思ったが、さらにアイテムを取り出していた。
《TRIAL》
トライアルメモリがウォッチに吸い込まれ、絵柄が変わる。
「ふぅ……全部、振り切るよ!!」
ベルトを回転させた。
《FORM TIME!》
《TRIAL!》
本物のように一度黄色に変わり、全身の装甲の軽量化と共に青に変わる。仮面ライダーアクセルの強化形態、アクセルトライアルだった。
余計な重りは必要ないとばかりに、装甲はインナーと最低限の急所を守るだけのモノ。
この形態は自身の装甲やパワーを削り、スピードを極限まで高めた高速形態。思想としてはフェイトさんのソニックフォームに近い。
「翔君、もう敵のことは気にしないでいいよ。前に走って」
「了解」
俺は走り出した。
アスナはエンジンブレード―――ではなく愛用のレイピアを抜いた。さらにもう片方の手をベルトのウォッチにかざす。すると吸い込まれていたトライアルメモリが現れた。何に使うのか、答えは簡単だ。
《FINISH TIME! ACCEL MAXIMUM TIME BREAK!》
始まるカウントダウン。数字を刻むのは放物線を描きながら頭上に投げられたトライアルメモリだ。
俺の横を俺よりはるかに早くなったアスナが駆け抜けていく。
狙いはサイコガンダムMk-Ⅱの右足だ。
「はああああッ!!」
いかに変身していたとしても、MAの装甲をパワーが低いアクセルトライアルでは貫けない。一撃では。
「(重い一撃は必要ない)」
再度、魔力を纏った刺突が、足首の、装甲の隙間を縫って突き刺さる。正確な一撃はサイコガンダムMk-Ⅱの脚関節を破壊する。
「(下手な大技は必要ない)」
すぐさまもう片方の脚へ。同じように関節を破壊する。
「(ただ速く。最速の攻撃を相手に叩き込むッ!!)」
この攻撃はすべてソードスキルだ。
サイコガンダムMk-Ⅱの体中に備え付けられている全砲門、及び関節をすべて破壊しながら、下半身から上半身へと駆け上っていくアスナ。
10発でダメなら100発。100発でダメなら1000発。相手を完全に沈黙させるまで、閃光の攻撃は止まらない。
そして、
「これで―――ラストォッ!!」
頭部に渾身の一撃を見舞って、投げていたトライアルメモリをキャッチ。倒れるサイコガンダムMk-Ⅱの体を蹴って、地面に着地する。
《TRIAL MAXIMUM DRIVE!》
「9.7秒……結構ギリギリだったかな?」
ヒュっ、と風を切るレイピア。キャッチしたトライアルメモリのタイムカウントを見ながら、そう呟いていた。
アスナ、まさかトライアルメモリを使いこなすなんて……や、相応の時間練習すればいけるのかもしれないけど、アレを手に入れたのって、結構明け方だったよな?
「アスナちゃん!! そのまま束さんを押さえて!!!」
「はいっ!!」
「うわっと!? 危ないなぁ!!」
俺の思考をよそに、アスナは加速して束さんに迫る。束さんは焦ったような声を出しているが……その態度は余裕そのもの。ま、単純なスピードでどうこうなる相手じゃないことは分かってるけどな。
そうしている間に、
「詠唱終了。いけるぞ、翔」
「っ、ああ!!」
レプリカの合図で、俺は魔法の詠唱を行っていた影分身を解除する。
すると、発動を待機させられていた魔法が俺に還元された。この手法はNARUTO原作にてナルトが仙術チャクラを、影分身を使ってストックさせていた事に着想を得ている。
例えば、長ったらしい詠唱が必要な魔法でもこの手法を使えば、遠方で魔法を用意して、準備完了次第、手元に持ってくることが出来るのだ。
今回のように、
「固定、掌握」
影分身が用意した魔法を、
「
そのまま術式兵装の種にすることも出来る。
今回準備していた魔法は『魔法先生ネギま!』の主人公、ネギが使う
強烈な雷を放射する呪文―――それこそ、数百メートルの巨大な岩を簡単に融解させることも出来る威力を誇っている魔法だ。
作中で天才と言われる主人公ネギですら、当初は長ったらしい呪文を唱えなければいけないほどの難易度を誇る。それをこんなに容易く使えるのは手に入れた高速詠唱Cのおかげだ。
それを今回は、攻撃ではなく術式兵装として体に装填する。
その名前は
雷の術式兵装は
当然のように打撃には電撃が付与されるが、その真価は速度にある。一瞬だけ『雷化』―――つまり雷になって移動できるのだ。
その速度は秒速150キロメートル。
いくつか弱点もあるけど、そこに対応出来る人なんてそういないから今は割愛する。
最後の壁になっているビグ・ザム。コイツもIフィールド(この世界では、中、遠距離からの魔力射撃を跳ね返すバリア)を備えている面倒な相手だ。
だが、今の俺なら。
パリッ、と雷光が散った。
「影分身の術!!」
メガ粒子砲の二射目はない。雷速でビグ・ザムの胴体の下を取った俺。そのそばには影分身がいて、俺の手を覆うように手のひらを重ねていた。
乱回転する魔力。球形に整えたソレを、ビグ・ザムに叩きつけるッ!!
「螺旋丸ッ!!」
装甲を捩じ切り、内部へと回転を伝える。さらにその最中。
「レプリカ、
「了解」
螺旋丸の形成を終えた分身の俺が、
「頼むぞ!!」
「応ッ!!」
分身の俺が威勢よく応える。向かう先は中央のタワー。ロキ・ファミリアが今も死線を繰り広げている場所だ。
「ギア、
指から骨へと空気を送り込み、巨大化させる。
「ゴムゴムの……
タワーの壁をぶち破った。