《RIDER TIME! 仮面ライダーZI-O!》
《ARMOR TIME!》
《HIBIKI!》
そして、
「祝えッ!!」
あの男もやってくる。
「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ、響鬼アーマー。たった今、仮面ライダー響鬼の力を継承した瞬間であるッ!!」
何処から現れたのか、いつの間にか俺の隣にいたウォズが高らかに宣言する。
「お前……こんなにすぐに出てこれるなら、もっと早く出て来いよ」
「すまない、我が魔王。あまり手を出してしまうと歴史を歪めてしまう可能性があるのだ」
「……あっそ」
俺は周りを―――特に、俺の近くにいて、おそらく気配すら察知できずに警戒しているベートさんとティオナさん―――見てため息を吐く。
「(ウォズのことも説明しないといけないのか? 俺だって、コイツのことは何も分かんないっつーのに)」
遠巻きにこちらを見ているフィンさんからもバリバリ視線を感じる。
ため息を吐きたい気分だが、そんなことをしている余裕はない。
アナザー響鬼は止まらない。むしろより狂暴に、より純粋な破壊衝動だけを撒き散らしながら暴れ続けている。
全身を脈打つような紋様に覆われた異形―――アナザー響鬼。その中心にいるのは、剣姫、アイズ・ヴァレンシュタイン。
けれど今、その瞳に理性は薄く、獣じみた闘争本能だけが燃えていた。周囲に散らばる建物の残骸が、彼女の一撃の凄まじさを物語っている。
響鬼アーマーになったことで何か感じ取ったのだろうか。鬼が咆哮する。空気が裂け、衝撃波だけで周囲の瓦礫が吹き飛ぶ。
「チッ……!」
ベートさんが翔の前へ飛び出した。
直後。
アナザー響鬼の拳が炸裂する。
受け止めることも出来ず、ベートさんの身体が地面へ叩きつけられ、石畳が蜘蛛の巣状に砕け散った。
「ベートさんッ!!」
「こっちを気にしてんじゃあねェ!!」
血を吐きながらも、ベートさんは吠える。
「さっさと終わらせろ!! そいつァもう限界なんだよ!!」
俺は歯を食いしばった。
「分かってるさ……!!」
響鬼ウォッチを抜かれた今、アイズさんの存在は崩壊へ向かっている。倒して変身解除されれば助かるのだ。
「――ァァァァァァアアアッ!!」
咆哮と共に、アナザー響鬼が跳ぶ。
「ク、ソ……ッ!!」
速い。ほとんど視認できない剣を、音撃棒で受け止めた。
「(重すぎだろ……!!)」
同じ響鬼の力を使っている。だが向こうは、それにステイタスの力も上乗せしている。さらにアナザー響鬼は、アイズさん自身の戦闘技術が融合している。
純粋なスペックなら、勝てる訳がない。
「翔ッ!!」
ティオナさんが叫ぶ。次の瞬間、彼女が横から飛び込んだ。
半ばから切断された巨大な双刃を、全力で叩き込む。
「どぉぉぉぉりゃあああああッ!!」
アナザー響鬼の身体がわずかによろめき、
「このッ……化け物がァァァァァッ!!」
そこにベートさんが突っ込む。
渾身の蹴撃は、アナザー響鬼の脚を強引に刈る。体勢が崩れた。
「やってぇッ!!!」
2人がどんなに命を懸けてアナザー響鬼と戦おうとも、最終的にキメることが出来るのは俺だけだ。
だから確実に決める。
《FINISH TIME! HIBIKI ONGEKI! TIME BREAK!》
その音声と共に、俺の手にとあるアイテムが現れる。比較的平べったい円形のアイテムだ。名前は『音撃鼓・火炎鼓』。
「ティオナさん、ベートさん!! 何とかアイズさんを押さえて下さい!!」
「ッ゛ッ゛ッ゛!!」
「ガアアアアッ゛!!!」
俺の言葉に弾かれたように動く2人。ティオナさんとベートさんの決死の組みつきにより、アナザー響鬼はその場に固定される。
「これ、でぇぇぇぇぇッッッ!!」
その腹に音撃鼓をねじ込む。するとその部分を中心として音撃鼓が巨大化した。まるで巨大な太鼓がアナザー響鬼を拘束しているみたいだ。
「ッッッ!!」
動きが止まったのを見逃さず、俺は音撃棒を叩き込んだ。力任せとは言え、火炎鼓は正しく清めの音を生み出し、アナザー響鬼に流し込んでいた。
「(よし、これなら―――)」
続く2劇目を入れようとして、
「―――!!」
銀閃が俺を切り裂いた。
突風が乗せられた剣により、俺は切り裂かれ、大きく後ろに後退することになってしまった。
「ぅ、か、ぁ……!!」
見ると、組み付いていたベートさんもティオナさんも同じように切り裂かれ、吹き飛ばされていた。
腹に火炎鼓を埋め込まれたまま、アナザー響鬼は立っていた。
「クソが……冗談も大概にしやがれ…!」
ティオナさんが冷や汗を流しながら、大剣を構え直した。
「硬すぎるし! 速すぎるし! 重すぎるし!! なんなのコレ……!!」
返答はない。アナザー響鬼がゆっくりと足を踏み出す。
それだけで空気が震えた。
だが、頭が冷える。やることはもう決まっているのだ。動揺しようが、焦ろうが、俺がやるしかない。
「なんとかッ!!!」
やるのだ。
「動きを止めて下さい!!」
「「ッ!?!!?!」」
「次で決めますッ!!」
「簡単に言ってんじゃねぇぞォ!!」
ベートさんの怒声が近くで聞こえる。それもそのはず、アナザー響鬼が放った銀閃を受け止めてくれていたのだから。
「させるかァァァァッ!!」
割り込んだベートさんは必死に力比べをしているが、スペックの差はそう簡単には埋められない。
両腕を交差し、強引に一撃を受け止める。衝撃波と共に地面が陥没した。
「ぐ、ぁ……ッ!!」
骨が軋む音が聞こえる。それでもベートさんは退かない。
牙を剥き、血走った目でアナザー響鬼を睨みつける。
「テメェの相手は……こっちだ、化け物ォ!!」
直後。横合いから巨大な斬撃が叩き込まれた。
「うおおおおおッ!!」
ティオナさんの攻撃だ。持てる力の全力。
だがアナザー響鬼は籠手で大剣を受け止める。
「ッッ、嘘でしょ!?」
ミシミシと剣身が軋む。
そのまま振り払われ、ティオナさんの身体が宙を舞った。それでも彼女は笑う。
「はっ、いいじゃん……! これくらいじゃなきゃラスボスっぽくないよね!!」
2人共身体中が血塗れだった。それでも立っている。アイズを救うために。俺の言葉を信じて。
俺は歯を食いしばった。失敗は出来ない。
だから、俺も2人を信じて、アナザー響鬼のことを頭から追い出した。雑念が邪魔だ。まだまだ習熟度が浅い。このくらい集中しないといけないんだ。
「ああ、それでいい……!!」
格上の攻撃を何度も受け、体をぼろぼろにしながら、ベートは笑った。
アナザー響鬼の狙いは一貫して俺。真正面から突撃、アナザー響鬼の拳を、ベートさんが身体で受け止めた。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
骨が砕ける。鮮血が舞う。それでも離さない。
「……」
それでも気を練り続ける。
直後、ティオナさんが背後からアナザー響鬼へ組み付いた。
「捕まえたぁぁぁぁぁッ!!」
ミシミシと体と筋肉が悲鳴を上げる。アナザー響鬼が暴れる。それでも二人は離れない。
ヒビが入り始めている火炎鼓。おそらく、チャンスはこれが最後だ。
俺はヒビキさんのように両手に持った音撃棒・烈火をくるりと回転、さらにその先をアナザー響鬼へ向ける。
そして大きく深呼吸。
「早くしやがれェェェェッ!!!!」
「もう持たないよ~~~~っ!!」
何とかアナザー響鬼を取り押さえている2人からの必死の声が聞こえてくる。が、俺は動かない。後が無いのならこの一撃にかける。一撃にかけるのなら絶対に失敗出来ない。余計な焦りは邪魔なのだ。
練り上げた『気』を音撃棒・烈火に流し込む。すると段々と、持ち手から、光を鋭く反射する『黒』に変わっていく。
広がる火炎鼓のヒビ。もう時間が無い。取り押さえている2人だけでなく、後ろで戦うロキ・ファミリアの面々の視線も向けられている。
だが、全ての焦りを排除し、ただひたすらに、研ぎ澄まされる覇気を待つ。
そして、その集中が頂点に達した瞬間に、
「爆裂強打の型ァッ!!!」
助走をつけ、渾身の強打を二連撃。それを受けたアナザー響鬼はよろめき、数歩後退する。
紫の火の粉を散らし、回転を増す火炎鼓。
そして、
「ア、 ァアァァァ―――!!」
音撃が体全体に浸透したのか、まるで邪気が晴れるように、アイズさんからアナザー響鬼の力が抜け人の姿に戻っていく。
こうしてアイズさんは、アナザー響鬼の呪縛から解放されたのだった。