命からがら島に戻った俺達。だが、すぐに休むわけにもいかなかった。
まず初めにリヴェリアさんの回復魔法が俺達を癒した。
自らの仕事を果たしたリヴェリアさんは。
「アイズ!!」
俺が渡した衣服に包まれるアイズさん。この場で唯一気を失っている少女に声をかけた。衣服が丸ごと変わっているとなれば、何事かあったと思うのは当然だ。
「リヴェリア。アイズは精密検査が必要だ。今すぐ病院に……いや、六課のシャマル先生の所に連れて行こう」
「……わかった」
フィンさんのきっぱりとした口調に、リヴェリアさんも冷静さを取り戻す。
「そやね。最低限今回のことも、どう報告するか、考えんといかんしね」
はやてさんも出てくる。
俺達は引継ぎを済ませ、六課に帰還するのだった。
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特務六課、会議室。あの要塞での戦いからまだ2時間程しか経っていない。窓の外は既に日が傾いていた。
時間で言えばすでに定時が近いが、あの要塞で手に入れた情報は早急に整理する必要がある。だからこそ、俺達はこの場に集まっていた。
静かな部屋。だが空気は重い。
テーブルを挟み、向かい合う両陣営。特務六課側は、はやてさん、なのはさん、フェイトさん。
対するロキ・ファミリアは、団長であるフィンさん、両脇を固めるリヴェリアさん、ガレスさん。
そして、
「それじゃ、はじめよか?」
ロキが薄目を開いて告げるのだった。
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俺は六課側に座っていた。それもそうだ。色々と聞きたいのは向こうなんだからな。そして、はやてさん達には俺の言葉で説明すると伝えてある。
「で? そっちから話振ってくれるってコトやけど? 話すのは今日の捜査―――空中要塞? って所の話やな?」
ロキの言葉で視線が集まる。この場で誰よりも発言を求められているのは俺だった。恐らくフィンさんから、すでに今日のあらましは聞かされているのだろう。
「まず」
沈黙を打ち破るように宣言する。
「始めに宣言します。俺は味方です」
「……ふむ」
俺の宣言にフィンさんが軽く頷いた。
「正直言って、その辺りはあまり気にしてないんだ。君が善人であることは、僕達も分かってることだ。問題は―――」
静かな声。だが圧がある。
「―――君がいったい、どんな秘密を抱えているのか、という事だ」
「今回のアイズの件、お前は事前に何か知っていたのか?」
「敵についても心当たりがある、とも言っていたらしいのう」
リヴェリアさんとガレスさんの厳しい視線も向けられる。
「順番に話します」
誤魔化せない。ここで嘘を吐けば、間違いなく関係が全部壊れる。
俺は伝えた。
俺が異世界から転移してきたこと。俺の能力が俺の世界の創作物を元にしていることを。そして条件さえ達成すれば、能力やアイテムを増やすことが出来ることを。
「……なんだそれは……」
「つまり、何でもアリ、という事か……」
リヴェリアさんとガレスさんも俺の説明に戦慄している。特に創作上の能力を使っているという点に驚いているらしい。
だが、まだ説明の途中だ。
「つまり、アイズさんをあの姿―――アナザー響鬼に変身させたのは俺の世界の、特撮番組が由来の能力です。あの姿になったら基本的に俺にしか解決できません。敵のことを知っていたのも、同じ理由です」
数々のMSやブラッドスターク。束さんが持っていた輪廻眼。それらがヤバい代物だと分かった理由も説明する。
すると、
「なぜ、アイズが選ばれた?」
リヴェリアさんだ。彼女はアイズのいわば母親のようなもの。自分の見ていないところでそんな目に遭ったと聞けば、気になるもの無理はない。
「あの場には他にも人がいたはずだ。それなのに、どうしてアイズが選ばれた?」
「それは……」
異世界の知識はそこも分かるのではないか。娘同然の少女が、あろうことか仲間にまで剣を向けてしまった。それを受け入れるための、確かな理由を求めていた。
だが、
「正確には分かりません。でもたぶん、敵はそのライダーに適した相手、似通った性質のある人を狙っていると思います」
実際のところ、誰でもアナザーライダーになれるのか、それともある程度資質のようなモノが必要なのかは分からない。
しかし誰でも良いというのなら、ここまで原作キャラだけがアナザーライダーに変身しないだろう。
そして、俺の周りの女の子だけがアナザーライダーにされる意味も。
「ただ、強い感情が狙われたって事かもしれません。強さへの渇望とか、焦りとか」
その瞬間、リヴェリアさんの表情が僅かに曇る。
理解してしまったのだ。アイズがどれほど強さへ執着しているか。怪物を倒すために生きてきた少女だ。
小さい頃からの教育でその欲求は抑え込まれていたのかもしれないが、今回はその『抑え』が破壊されてしまったという訳だ。
アナザーライダーは元のライダーの性質を持ちつつも、歪めて表現しているようにも思う。
響鬼系のライダーは地道な鍛錬で鬼になる力を得ている。それはステイタスを日々更新しているアイズさんも同じだろう。
そこへ、『簡単に強くなれる力』を差し込まれた。彼女の望みを考えれば、拒絶出来なかったとしても不思議じゃない。
ガレスさんが低く唸る。
「悪趣味な力だな」
「はい」
これが向こうの意図した結果なのかは分からないが。弱みに付け込んだ……や、相手のことを分かっているからこその選出なのか。
「それは分かった。アイズを助けてくれたことは、いくら感謝してもし足りない」
唯一違うのはフィンさんだ。未知の能力を使っている、その先を瞬時に見据えることが来出る。それがこの人だ。
「問題は」
そして一番奥に座っているロキも。俺の言葉が嘘ではないことを咀嚼したうえで口を開く。
「条件を達成すれば『能力を好きに増やせる』ってところやなぁ?」
「その条件―――聞いてもいいのかな?」
フィンさんの目が細くなる。ロキはへらへらしているが、その目は笑っていない。
「言いにくいかい?」
「や、ちょっと心の準備が。言えないわけじゃないです」
俺は小さく息を吐く。
そして。
「さっきも言いましたが、俺は、結構好き勝手に能力を増やすことが出来ます」
「好き勝手に、か……あまり厳密な条件じゃあないって事かな?」
「……普通は厳しい条件だと思うんですけどね……俺も、この世界に来て初めて条件を聞いた時は厳しいと思いました」
「つまり、今はそう難しい条件だとは思っていないと?」
「……はい」
これから告白することを考えると認めるのも恥ずかしいな。でも噓はつけない。
「なんや、もったいぶるやん。はよ確信をぶちまけたれ」
「はい……俺が能力を手に入れるための条件は……女性との性行為です」
「……ふむ?」
初めて見たかもしれない。フィンさんの『理解出来ない事象を笑顔で受け流しているところ』を。
だが、続ける。
「女性との性行為―――1回の射精につき1つ、ランダムに能力を取得することが出来ます。それが『条件』です」
沈黙が支配する会議室。俺は次のアクションを待つ。
「―――ロキ?」
「嘘は、ついて、へんな」
フィンさんの確認。そして、
「ぷっ―――」
ロキが腹を抱えて笑い始めた。
「アハハハハハッハハハ、そ、それは、そやなぁ!! 人には言えんわ!!」
ケラケラと笑う声が会議室に響く。が、それはこれからの追及の前のクッションに過ぎない。
「なる、ほど」
フィンさんも飲み込んだのか、何度も頷いている。俺が嘘をついていないのはロキによって確認出来ている。問題はその先をどうするかだ。
「ちなみに、能力のデメリットは? 君と、そして相手に」
「……ありません。少なくとも、今のところ確認出来ていません」
「……」
フィンさんは無言になる。俺に向けられる視線が厳しくなったのを感じる。
「危険やな」
フィンさんの代わりにロキが断じる。その顔に冗談は無い。
「つまり、カワイ子ちゃんといちゃいちゃすれば、好きなだけ能力、アイテムを増やし続けることが出来るって事やろ? そんなん、ウチらの
神の目が俺を真っすぐに射貫く。
神と呼ばれる存在はこの世界での生活はかなり厳しく制限されている。生活の自由は許されているが、どんな人にでも
自由を保障されつつも、一般人よりは自由を制限されている。そして、あらゆる国家から注視されている。
俺の能力は未知の能力をばらまけるという意味では、神の
それは、世界でも上位の実力者集団であるロキ・ファミリアや特務六課を追い詰めたことが証明していた。
「神扱い、堪能してみるかぁ?」
「それは……勘弁願いたいですね……」
安易な排除は無いにしても、各国が俺の行動を制限する可能性、口実は確かにあった。流石に俺が神扱いされるとは想像出来なかったけど。
しかし、当事者のロキには想像出来てしまうんだろう。俺の能力の詳細が露見した場合の世界の反応って奴が。
「夜月 翔。君は―――その力を制御出来ているのか?」
「制御、ですか……」
リヴェリアさんの問いに俺は考える。危険な力を1人が保有し、好き勝手に使っている。リヴェリアさんの問いかけはもっともだった。
全員が俺の答えに注目している。
出した答えは、
「分かりません」
正直に答えた。
「どこまで行けるのか、自分でも分かりません。能力の出所だって分からないし、元の俺とは変わってしまってるのかもしれない」
今までいいように使ってきたこの力だが、実際には何も分かっていないのだ。俺が今、本当に正気なのかすらも分からない。
「でも、やることは変わりません。やるべきだと思ったことをやるだけです」
フィンさんの視線が突き刺さる。
この気持ちに嘘はない。少なくとも今は。
やがて、フィンさんは小さく息を吐いた。
「……分かった。ひとまず、君を敵とは見なさない」
その言葉で、会議室の空気がほんの少しだけ緩んだ。ロキが何も言わないことも大きいだろう。
だが同時に、ここから先の話があることを全員が理解していた。