※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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ロキ・ファミリアへの説明 前編

翌日、俺は聖王教会の関連施設に来ていた。

 

ここは現在のロキ・ファミリアの本拠地だ。その館の広間には、団員のほとんどが集められていた。

 

「んじゃ、昨日の続きやな。ここにいる翔クンの力について、みんなにも説明してもらうで」

 

ロキの気の抜けたような前置き。広間の空気は昨日の会議とは違う、どこか緊張混じりの好奇心に満ちていた。集まっている団員の視線は、壇上――というほど大層なものでもないが、そこに立つ俺に向けられていた。

 

すでに束さんの件は管理局を通して世界中の国に共有された。今頃各国のお偉いさんは今後の方針を協議しているところだろう。

 

六課やロキ・ファミリアにも、今の段階でそのことは共有してある。

 

今からその先、俺の持つ秘密について話すのだ。

 

アイズさんもここに戻ってきていて、表面上はみんなといつも通りの関係を築けているようだ。最前列にティオナさん、ティオネさんと共に座る彼女からは、俺に対する興味が溢れている。

 

「それじゃあ、頼めるかい?」

「はい……皆さん、俺が異世界出身で、使う能力も異世界の物であることはすでに知っていると思います。ここからはその先について、能力を増やすことが出来る事、その取得条件です」

 

フィンさんに促され、一つ息を吐いてから口を開いた。ごまかしや余計な言葉はいらない。余計な時間を使うだけだ。だからストレートに言う。

 

「俺の能力の取得条件は、女性と深い仲になることです」

 

一瞬の静寂。それから、広間がざわりと揺れた。

 

誰かが呟く。

 

「……深い仲、って」

「それは、つまり……」

 

団員たちの間で、疑問符だけではなく、確信も混じった表情がじわじわと広がっていく。そして確認するような視線が、俺だけでなくフィンさん達にも向けられる。

 

「昨日はもっと直接的な表現だったんだけどね。流石にこの人数を相手にそれはどうかって話を事前にしたんだ。だからみんなの想像通りだし、事実はもっと生々しいと思ってくれ」

「……それが俺の能力の秘密です」

「あー……なるほどねぇ」

 

一人がそう呟いて、隣の同僚と目配せを交わす。誰も彼も、それ以上は聞かなくても十分理解した、という顔をしていた。フィンさんの苦笑いも理解の助けになっていた。

 

『深い仲』というのが単なる心の距離の問題ではないことは、一定の知識がある人になら伝わったはずだ。

 

最前列に陣取っていたティオナさんが身を乗り出した。

 

「つまり、翔ってばもう何人も――」

「ティオナ、ストップ」

 

ティオネさんが咄嗟に妹の口を塞ぐ。だが遅かった。その質問が決定打だった。広間のあちこちから、忍び笑いと、生温かい視線が集中し始めていた。

 

「へぇ……なるほどなぁ……」

 

ベートさんが腕を組んだまま……その表情は何なんだろうか。

 

そして一人、顔面から湯気を発生させる勢いで赤くなった人物がいた。

 

「い……」

「レフィーヤ?」

「い、ぃいぃ、淫獣ぅ!!」

 

悲鳴に近い声が、広間に響き渡った。

 

「え、いや、待って、そんな直接的な」

「そうです、そういうことです、要するにそういう存在ってことですよね!? 女性と、その……深い仲にならないと能力が使えないなんて、そんなの、そんなの―――淫獣以外の何だっていうんですか!」

「能力が使えないんじゃなくて、能力を増やす条件、だよね?」

「同じことですよ!!」

 

顔を真っ赤にしたレフィーヤさんが、両手で顔を覆いながら、それでも指の隙間からしっかりと睨みつけてくる。あまりの剣幕に、周囲の団員たちも一瞬たじろいだ。

 

「ちょ、レフィーヤ、言い方が……!!」

「言い方も何も、事実じゃないですか! みんな平然としてますけど、おかしいですよね! こんな、こんな不埒な条件で力を得てる人が―――」

「レフィーヤ、それは言いすぎだ。そもそも、能力の取得条件で相手のことを―――」

 

リヴェリアさんが割って入ろうとするが、レフィーヤさんの勢いは止まらなかった。

 

顔を真っ赤にしたまま、涙目で翔を指差し、なおも「淫獣」を連呼し続ける。ロキが腹を抱えて笑い出し、ガレスさんが呆れたようにため息をつく。フィンさんだけは、ある種の憐れみを込めた目で翔を見ていた。

 

だが、それは何もレフィーヤさんだけの反応ではなかった。覇気で感じ取れるのは好奇の感情に混じった嫌悪感。やはり女性……とりわけ女性エルフの団員には快く思われていないらしい。

 

「……そう、ですね。流石にそれは……」

 

そんなつぶやきも聞こえてくる。

 

当然だ。今まで理解のある人たちには受け入れられてきたが、この人数では嫌悪感を抱く人はがいるのは当然―――いや、むしろこっちの方が自然なんだろう。レフィーヤさんはその人たちの感情を代弁したに過ぎない。

 

これが、俺が1人の女性に対して真剣になっている、とかなら話は別だったのかもしれない。

 

だが、俺の周りに女性が多いのは周知の事実。そして今の話があれば、不特定多数と関係を持っていると推測するのは容易いし、それは事実だ。否定できない。

 

元より全員の理解を得られるとは思っていない。目的は予めの情報共有。そして、戦闘時の最低限の連携だ。

 

これでロキ・ファミリアに来た目的は果たした。

 

俺の言葉で事態を収拾することは出来ないのだから、後は自然に落ち着くのを待つしかなかった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

その一部始終を、ティオナの隣に座っていたアイズは首を傾げながら眺めていた。

 

翔と話したことで少しだけ心の整理が付き、今日の午前中に帰って来たアイズ。

 

翔の秘密を聞けるとあって当然この場に顔を出したのだが、秘密という割にはふわふわとして、要領の得ない話だった。しかし、周りはそれで完全に理解している。レフィーヤに至ってはリヴェリアに取り押さえられ、部屋の端に連れていかれるくらいだ。

 

「(深い仲になる……? それって、どういう意味なんだろう?)」

 

どうして周囲の団員たちが一様に納得したような、それでいて何やら気まずそうな顔をしているのか、アイズにはさっぱり分からなかった。

 

レフィーヤが顔を真っ赤にして怒っている理由も、よく分かっていない。

 

「ティオナ、深い仲って、どういう意味?」

 

隣にいたティオナに、素直に尋ねてみる。

 

ティオナは一瞬、驚いたように目を丸くした後、何とも言えない顔で視線を泳がせた。

 

「え、えーっと……それは、その……」

 

いつも快活な彼女に似合わない歯切れの悪さだ。

 

「ティオナ?」

「深い仲、っていうのは……だから、なんていうか……」

 

ティオナはしどろもどろになりながら言葉を探していた。なんとか説明しようと試みているが、適切な言葉がなかなか出てこない。

 

アイズは思いついたことを口に出す。

 

「一緒にいる時間が長いとか、そういうこと?」

「あ――うん、まあ、そういう部分も、あるにはあるんだけど……」

「じゃあ、フィンとか、ガレスとも、わたしは深い仲ってこと?」

「全然違う。方向性が全然違う」

「方向、性?」

 

アイズが真顔で首を傾げるので、ティオナはますます言葉に詰まった。隣で聞いていたティオネが、耐えきれずに噴き出す。

 

「もー!!! じゃあ説明してあげてよーー!!」

「絶対嫌よ」

 

姉妹揃って責任を押し付け合っている様子を、少し離れた場所からベートが呆れた目で眺めていた。

 

が、巻き込まれたくないため何も言わない。

 

そんな中、部屋の隅で未だぶつぶつと呟いていたレフィーヤが顔を上げた。

 

「そもそも、こんな条件のこと、アイズさんに理解してもらう必要なんてないと思います。関係ないことですし」

「レフィーヤ」

「だって、そうじゃないですか。アイズさんには関係のない話ですよね? 別にそんなこと知らなくたって―――」

 

リヴェリアの言葉にも、レフィーヤは耳を貸さずに自分の考えを口にする。

 

その時だった。

 

「関係ない、ことは、ないと思う」

 

静かだが、はっきりとした声で、アイズが言った。場の空気が、すっと変わる。

 

「アイズさん?」

「昨日のこと、考えてた」

 

アイズは膝の上に置いた自分の手を見つめながら、言葉を選ぶように続けた。

 

「わたしは、翔に助けてもらった。みんなが帰った後も翔と話して、少しだけ楽になれた」

「それは……うん、良かったと思うけど」

「だから、わたしも、翔の力になりたい。ただ守られるだけじゃなくて」

「それは分かるけど、アイズ、話が飛んでない?」

「飛んでない」

 

ティオナが恐る恐る口を挟む。だが、アイズはまっすぐ前を―――翔を見たまま、続けた。

 

「深い仲になる、って言われて……よく分からなかった。単純に信頼するとか、心を許すとか、そういうことじゃないことも分かった。でも……」

「いや、待って、アイズ、それは――」

「『女性と深い仲になること』が条件なら―――わたしにも出来ると思う」

 

言い切った瞬間、広間全体が凍りついた。

 




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