※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

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皆さん、ガンダムバーサスって知ってますか。いえ、何でこんなこと言いだしたのかは言葉にはしませんが。


寒くなったら

翔が流血で気を失ってからのアインハルトの行動は早かった。

 

「とにかく早く血を止めないと! あの小屋の中に何か……っ!」

 

点検の時に使う休憩所、その中はいくつかの保存食や飲料水、仮眠室に加え、アインハルトの目当ての物のちょっとした医療セットが備え付けられていた。

 

焦って震える手で救急セットを広げていく。真面目なアインハルトは学校で習ったことをしっかりと実践できていた。初めての実践にしては、ケガの度合いがひどかったが。

 

激しい運動をしているわけでもないのに汗がどんどん出てくる。ともすれば、下手なランニングよりも息が荒くなる。

 

しかし、アインハルトはやりきった。圧迫と止血剤で出血はそれなりに止まってきた。ここで出来る処置としては限界まで頑張ったといえるだろう。

 

翔を仮眠室に寝かせると、アインハルトも隣に横になって力を抜いた。実は楽しみで前日に眠れなかったアインハルトの瞼は、少し重くなってくる。

 

瞼が閉じ着る寸前、外から聞こえてきた悲鳴に飛び起きる。

 

「今の声は刀藤さん?」

 

その声に嫌でも警戒心が強まる。大人モードになり、神経を研ぎ澄ませつつ小屋の外に出る。

 

そこには声の主の綺凛と耀がいた。どちらもずぶ濡れになっていて地面に水滴が落ちている。翔の腕から吹き出した血がべっとりと付着している地面と、切断面がむき出しになっている腕を見て、綺凛が尻もちをついてしまっている。

 

その隣では、耀が回収していなかった超宇宙聖剣(スペースカリバー)を拾い上げていた。普段は天然であまり感情を荒げることのない耀も、その光景には眉を寄せている。

 

「ス、ストラトスさん! こ、これって……っ!」

「アインハルト、何があったの? 翔はどこ?」

 

どう見ても本人だ。顔も、声も、体形も。

 

しかし、

 

「そこで止まってください」

 

たかがそれだけでは、この2人が『本物』である保証にはならない。

 

「……アインハルト?」

「ど、どうしたんですか?」

 

見分けるのは非常に困難だったとはいえ、ホワイトスネイクに簡単に騙されてしまったアインハルトとしては、そう簡単に2人を翔に近づけるわけにはいかない。

 

あの状態の翔にとどめを刺さなかった時点で、もう見えない敵は撤退してしまっているのかもしれないが、万が一ということがある。

 

(でもどうすれば……)

 

目の前に立つ2人を本物かどうか見分ける方法。ずっと格闘技にしか目を向けていなかったアインハルトにはわからない。

 

(いや、違う。『見分ける』なんて生ぬるいことを言ってちゃダメだ)

 

翔の覚悟を見た。見えない敵を倒してアインハルトを守るためとはいえ、躊躇わずに自分の腕を切り落とした覚悟を。

 

(今度は私が『守る』番だ)

「春日部さん、刀藤さん、あなたたちは今までどこにいましたか?」

「えと、穴に落ちるときからずっと春日部先輩と一緒にいましたけど……私、泳げなくて……」

「うん。翔の匂いを追ってここまで来たけど、特に誰にも追いかけられてないよ?」

「そうですか……刀藤さん、失礼します。刀を構えてください」

「―――え?」

 

相手の了解も得ずに綺凛に殴り掛かるアインハルト。綺凛は驚きこそしたものの、比較的冷静に捌いていく。

 

しばらく拳と刀がぶつかり合ったが、アインハルトが先に構えを解いた。

 

「ありがとうございます」

(この剣筋は間違いなく、夜月先輩との決闘の時のものと同じ……見よう見まねでできるものではないですね)

「春日部先輩、私たちが昨日先輩方の家を訪問した時、先輩が食べていたものは何ですか?」

「え? ○○屋のお饅頭だよ?」

(これも当たっていますね)

 

自分に出来る方法で確認して、この2人を『本物』だとアインハルトは信じることにした。

 

「失礼なことをして申し訳ありませんでした。実は―――」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「って、モノなんだよ」

「ふえぇ……」

「そんなものが……」

 

アインハルトからの説明で襲ってきた相手はスタンドを使っていたということを理解した耀は、2人にスタンドの説明をした。

 

この島でも聞いたことがない異能だったため、2人は分かったようなわからないような声を出している。

 

「それで、翔は中に?」

「はい。応急手当てをして寝かせてあります」

すぐに中に入って寝ている翔を目の当たりにする。どういう状態かは説明でわかっていたはずだったが、2人の体は一瞬固まってしまう。

 

が、耀はすぐに動いて怪我の具合を確かめた。

 

「うん、処置は出来てるね。外部と連絡は取った?」

「あ、まだでした!」

 

翔の負傷があまりにもショッキングだったからか、アインハルトは怪我の処置ばかりに目が行ってしまっていた。

 

すぐに無線機を使って連絡を取る。係員からは30分もすれば到着すると返答があった。

 

これで本当にやれることはすべてやった。3人とも自分から話を振るタイプではないため

特に会話もなく、でも何となく落ち着かない3人は、どこかに座ることもなく微妙な距離を開けて座っていた。

 

そんな時、

 

「くしゅん!」

 

綺凛がクシャミをした。

 

タオルで拭くといったこともしていないため、服はビショビショだ。そのせいで体が冷えてしまったのだろう。

 

「このままじゃ風邪ひいちゃうかもしれないから、シャワーでも浴びておかない?」

「はい」

「そうですね」

 

耀の言葉に誘われて、3人はシャワールームへと向かった。

 

タオルなどの洗面道具はしっかりと備え付けられている。さらに幸いなことに、水があるところで作業することを考慮してか、フリーサイズのジャージも何着かあった。

 

それぞれ、すっかり水を吸って重くなった脱いだ服は乾燥機に入れ、一つ一つが軽い個室になっているシャワールームに入った。起きて数時間しか経っていない筈のなのに、体はドッと疲れている。

 

そんな体に、熱いシャワーが注がれる。体が温まることで、その疲れも少し取れた気がしてくる。

 

(大きい……)

 

アインハルトの目に飛び込んできた2つの大きな『モノ』。自分のとは比べるまでもない。その持ち主の綺凛はアインハルトの視線に気が付くと首をかしげる。

 

「あの……どうかしましたか?」

「い、いえ! なんでもありません……」

 

慌てて目をそらして、目に焼き付いた光景を抹消しようとするアインハルト。無意識のうちに首をぶんぶんと振っているため、余計に綺凛に不審がられている。

 

(そうです。人の身体的特徴をじろじろ見るなんて失礼極まりないです! 刀藤さんだって、きっと刀を振るうのに邪魔だと思っているはず―――)

「服の上からでもわかってたけど、綺凛って、胸大きいよね」

「ぇ? あ、あの、春日部先輩。そんなにじろじろ見られると……というかその手の動きは……?」

(ちょっとォォォォォォ!!)

 

ようやく網膜に焼き付いた双丘が消え去りそうになっていたというのに、無情な一言でその努力が無に帰ってしまう。

 

「あ、あの、春日部先輩? 刀藤さんも嫌がってますし、その辺にしておいた方が……」

「アインハルトは不公平だと思わないの?」

「え?」

「綺凛とアインハルトは同い年。私に至っては年上なんだよ? アレ、おかしいと思わない?」

「あ、アレ……ごくりっ」

 

耀に促されるままに、視線が綺凛の胸元に引き寄せられる。2人の視線が集まっているのが恥ずかしいのか、タオルを巻いているにもかかわらずその上から腕で隠している。そのせいで例のアレが押しつぶされ非常に大変なことになっている。

 

「い、いえ! 大きすぎると肩が凝ったり、動くと痛いなんて話も―――」

「あ、そっか。アインハルトって大人モードになれば、ボン・キュッ・ボンな体型になるもんね」

「あ、あれはそんな目的のためになっているわけではありませんからね!! あの姿になればリーチも長くなりますし、覇王流の技を使うのも―――」

「それじゃあ綺凛、少し分けてもらいます」

「え? あっ!?」

 

全く人の話を聞かない耀は、オヤジのような手つきで綺凛に迫る。そのまま胸に手を伸ばすが、

 

「むっ」

 

タオルを片手で抑えている綺凛にあっさりと防がれてしまう。何度やっても結果は同じ。動きを読んでいるかのような足さばきで、華麗に躱していく。

 

「むー、ガードが堅い」

「春日部先輩! 怒りますよ!!」

 

その言葉に、しょうがないと耀は手の動きを止めた。

 

(こんな人と先輩は一緒に暮らしているんですね……)

 

アインハルトは苦労が絶えないだろう翔に、心の中で合掌するのだった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

再び手持無沙汰になってしまい、翔が寝ているところの近くに腰を下ろす。仮眠室と思った部屋は畳になっていて、部屋の隅には長机や布団が積まれている。公的な施設に畳は珍しいが、いろいろな目的に使えることが評価されたのかもしれない。

 

シャワーを浴びてそれなりに時間が経った筈だが、まだ人は来ない。

 

青白い顔で寝息を立てている翔。思わず手を握った綺凛は驚いた。

 

「冷たい……」

 

血を大量に無くしたからか、翔の体温はみるみる下がっていた。シャワーで温まったせいか、余計に自分との温度の差が不安を掻き立てる。

 

「このままじゃ少しまずいかもね……」

「そうですね、それではすぐに暖房を―――」

「何言ってるの、アインハルト。違うでしょ」

「え?」

 

静止の声に困惑するアインハルト。体が冷えているから部屋を暖めようとすることに何か間違いがあるというのだろうか、と。まさか部屋の中で火を焚くわけではあるまい。

 

なんとなく嫌な予感がしてくるアインハルト。

 

指をぴんと立てた耀は、迷いなく告げた。

 

「もちろん、『人肌で』温めるんだよ」

「……え?」

「……はい?」

 

あまりにも突飛な意見にアインハルトも綺凛も固まってしまう。

 

「雪山で遭難したら、服を脱いで、抱き合って温め合うんだよ?」

「にゃに言ってるんですか!?」

「ここは雪山ではないですよね!?」

 

真っ赤になって反論する2人。

 

「2人とも、わがまま言わないで。翔が死んじゃったらどうするの?」

「うっ」

「そ、それは……」

 

痛いところを突いてくる耀。しかし腕を切断したことによる大量出血が、体を温めた程度で何とかなるわけがない。これは耀の口八丁だ。

 

「そ、そうですね。夜月先輩には御恩もありますし。抱き付いて温めるくらい……っ!」

「刀藤さん!? 春日部先輩に流されてしまってはダメですよ! よく考えてみてください!」

「……そんなに騒がないでほしい」

「あ、翔。起きてた?」

「「ええっ!?」」

 

うっすらと目を開けている翔。

 

「すごいね。普通なら次に起きたら病院の天井のはずなのに。ゾンビみたいだね」

「ゾンビは敵だけでいいよ……マジであれ、どうしよう」

「え? 何か言った?」

「何でもない」

 

血が少なくなってぼんやりとする頭でなんとなく考える。さっきのホワイススネイクとの戦闘を。

 

血が少なくなっているせいか、感じる痛みがぼやけている感覚がするが、それでもティナに刺されたときよりも痛い。

 

「……目、覚まさなければよかった。体が動かないし、泣きたいくらい痛い」

「泣きたいなら、私たちのうちの誰かの胸を貸してあげるよ?」

(貸せる胸があるのは1人だけですが?)

 

普段なら口に出していた迂闊な発言。今回は口に出さないで済んだ。もし出していたら新しい戦争が起こっていたかもしれない。

 

「それで、誰がいいの?」

「話続いてたのか。無理しないでいいから」

 

翔の感覚は、尋常ではないはずの痛みすらぼやけている。いつもならやってくれるならぜひ、と冗談交じりに言っていたかもしれないが、それすら出来ない。当たり前と言ったら当たり前だが。

 

「そ、それでは、失礼しますっ!!」

「ああ、うん。うん?」

 

てっきり誰も来ないと思い込んでいた翔は、腕がある方に抱き着いてくる綺凛に目を白黒させる。

 

自分の体温が低いせいなのか、異様にあったかい、柔らかいものに腕が挟まれる。それだけではなく、足まで絡めてくる。程よく筋肉が付いた太ももが手のひらをキュウキュウと圧迫する。

 

「ど、どうでしょうか?」

「とてもいいです」

(なんで、こんなに詳細までわかるんでしょうか……?)

 

感覚がぼやけているというのは何だったのか。綺凛の息遣いまでわかってきた翔は自分の節操のなさに焦りを感じ始める。

 

「ま、まあ、刀藤さんがやると言うのでしたら……私も、助けられましたし」

 

アインハルトは右側に。怪我をしているため、抱き着くというよりは少し腕に触れる程度。添い寝のような状態だ。羞恥心との兼ね合いも考えれば、この距離はアインハルトにとっても限界の距離だった。

 

「私のために、すみません。ありがとうございます」

「気にしなくていい……腕がくっついてくれれば」

 

いまさらながらに、腕を切り落としたことを悔やみ始める翔。もしもくっつかなかったら義手にでもしてサイコガンをくっつけようなどと計画する。

 

「それじゃあ私はこっちから……」

「お前、上からかよ……」

「そんなに重くないでしょ?」

「重くはないけど……」

 

翔の両側の2人はどこか違う世界にでもトリップしているのか、耀の動きに何も反応を示さない。

 

耀はゆっくりと翔の体に覆いかぶさっていく。いつもいつもではあるが両手に花どころの話ではない。3人の女の子にこんなことをされるのは、世の男性から見ればうらやましいことこの上ない。

 

「あれ?」

「どうした」

「なんだか固いものが……」

 

男は死に際になると子孫を残そうとするらしい。

 

「もう、翔は本当にHなんだね。私のこともそんな目で見てたの? 周りにいる女の子は全員ターゲット?」

「や、正直あんまり耀のことはそういう目で見たことは……」

「……怪我してなかったら張り倒してたよ。押し倒してたよ」

「会って数日で何期待してるんだよ……押し倒すってなんだよ」

「もしかして、冗談だと思ってる? だったら、ここで少し進めておく?」

「え」

 

耀の顔が迫ってくる。左右と上をがっちりと固められている俺は抵抗できずに―――

 

「誰かいますか!! 大丈夫ですか!!」

 

救助隊の人が来てくれてすんでのところで事なきを得た。何が事なきを得たのかはわからないが。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

(ごめんね、翔。さっきのは冗談だよ。そこの2人はどうか知らないけどね)

 

耀は救助艇で治療を受ける翔を見ながら、そんなことを思うのだった。

 




問題児は恋愛描写がなくて、こういう時の反応で参考にできるものがなくて困りますね。
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