思わぬ再会
「どう? 違和感は無いかしら?」
「はい、大丈夫です」
俺は久々に外の空気に触れた右手の調子を、握っては開いて、握っては開いてを繰り返して確かめる。
麻酔のせいでずっと右腕の感覚がなかったが、入院生活も9日目に入り、めでたく麻酔の投与が終わり、右腕が装置から取り外された。
人工細胞の体組織修復は完了。後は数日経過を見て退院になっている。
一度俺の体を離れていたとは思えないくらい元通りになってくれたな、右手。痕も残ってないし。
「機械を使って検査した限りでは、もう完全に治ってるけどね。認可されてないものを使ったわけだし、万全には万全を期して、ね。あと少し入院しててもらうわ。今日からは好きに動いても大丈夫だから。でも、面倒ごとは起こさないでね。最近忙しいんだから」
そう言って、御門先生は台車に乗せられた機械を押しながら、病室を去っていった。
むしろ、好きに動かして普段通りに動かせるかをしっかり確認しておいた方がいいな。
腕に時計を巻いて、久々にお散歩タイム。意気揚々と病室を飛び出しあちこち探索し始める。前の入院の時も少しは見て回ったりしたんだけどね。なんにしても今は少し動きたい気分だ。
病院だし、そんなに面白い造りをしているわけじゃないけど、これからもここにはお世話になるだろう。構造を頭に叩き込んでおくのもいいでしょ。
あれから毎日、日替わりでみんながお見舞いに来てくれる。でも、肝心の依頼については全く話してくれない。今回は本当に干渉することがなさそうだ。みんなだけでうまくやってしまうんだろう。ちなみにいうと、俺が事件解決にかかわらなかった場合、つまり、女の子だけで依頼をこなした場合、ガチャポイントは増えないらしい。
ま、たまにはそういうのもいいだろう。のんびりと待つことにしよう。そうだ、売店に行って何か飲み物を買おうかな。
と、おおらかに構えていた俺だったが、思わぬ再会があった。
「あ」
「あ、あんたっ!!」
「へ? どうしたんですの、お姉さま?」
売店の入り口、今まさに扉を開けて外に出ようとする2人組。『御坂 美琴』と『白井 黒子』がそこにいた。
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俺が売店で午後の紅茶を買って院内の指定された場所に向かう。そこには厳しい顔をした2人の少女が座っていた。言うまでもなく御坂と白井の2人だ。
ばったり顔を合わせたとき、ここに来るように言われたのだ。特にやましいことがなかった俺は快諾した。ここは病院で、一応俺は入院している身。ここでテンプレの決闘イベにはならないだろ。
(―――と思ったんだけど……)
2人の顔が予想の3倍怖くなっている。御坂の方はわかるけど、白井の方まで怖くなっているのは謎だ。白井とは顔を合わせるのは初めてだったので軽く自己紹介をしておく。それに合わせて、俺が今入院していることも伝えておく。
「それで、俺に用があるのか?」
「ええまあ。一週間ほど前に起きた
「ああ、あれか。覚えてるぞ」
色々あって忘れそうになっていたけれど、俺が前に退院した日にどさくさに紛れて解決したっけ。や、解決自体はしてないな。俺は爆弾になってた人形を処理しただけだ。
話し始めると釣り上げられていた白井の目が落ち着きを取り戻し、口調も平坦なものになる。
「その時、友人を助けていただいたようなので、お礼を」
「ああ、どういたしまして」
白井の素直なお礼に、俺も素直に返す。無意味な謙遜は嫌いだからな。白井の言う友人というのはおそらく、頭にたくさんの花飾りをしている初春の事だろう。
「ちなみに、今日はどうして病院に? 見たところケガをしたわけじゃないみたいだけど。誰かのお見舞いか? さすがにそのお礼をしに来たわけじゃないんだろ?」
ここはすかさず探りを入れてみる。情報は、仕入れることが出来るときに仕入れていた方がいいからな。それに、病院なんて普段は来ることがないところに顔を出しているんだ。何か起こっているのは間違いない。
「はい。ですが……いえ、これは話しておいた方がいいかもしれませんね。
ん?
「
「……マジか」
「はい。しかも原因は不明。現在はその分野の専門家に詳しく検査をしてもらっているところです」
介旅初矢が意識不明になる、つまりは
……ここは少し踏み込んでおくべきか。みんな、ゴメン。
「もしかして、
「っ!! どこでそれを?」
「知り合いが調べててな。少しばかり情報をもらったりしてるんだ」
一気に真剣な顔になった白井は、少し顔を寄せてくる。この世界、『調べている』、『情報をもらっている』のワードパワーが高い。こう言っておけば、よほどのことがない限りは相手は何も言えなくなってしまう。
「優秀なお知り合いをお持ちで。
最近起こっている能力事件の犯人は、記録と比べても、『成長』という言葉では説明がつかないくらいの能力差があるらしい。そして、ネット上に氾濫しているネタの中で、一気に有名になった
これらを結び付けて捜査する生徒を選出したらしい。その中に御坂と白井も加わっているのだとか。
「俺も加わるわけには……」
「ダメに決まってるでしょ。もうクエストの締め切りは切られてるんだから」
「……お姉さまが言っても、正直説得力がありませんが……そもそも、あなたは入院している身でしょうに。無理です」
ですよね。
『御坂 美琴』と『白井 黒子』は共に『とある魔術の禁書目録』に登場するキャラクターだ。二人とも強力な超能力を持っている。
特に御坂の方は、
素直に、まともに戦ったら勝てないと思える人物の一人だ。
「自分の腕にどんだけ自信があるかは知らないけど、怪我してんのに無理やり出張ってくる必要は無いわよ」
怪我はもう治ってるんだけどね。
棘のある言い方だけど、それだけの力を御坂は持っている。能力だけで、すでにSランク評価をもらってもおかしくない。
そうそう、能力と言えば、遅くなったけど俺が新しく手に入れた能力を紹介しておく。
Fate系作品に登場するサーヴァント、ランスロットの所有する宝具。
丸腰で戦う羽目になった時、拾った楡の木の枝だけで勝利したというエピソードが具現化した宝具。手にした物を、たとえそれがただの鉄柱だったとしても、自身の宝具として扱えるようになる宝具。
デンドロビウム
機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYに登場する兵器。
ガンダム試作3号機『ステイメン』がアームドベース・オーキスに乗り込んだもの。アームドベース・オーキスには、戦艦一隻を一撃で轟沈させることが出来るメガ・ビーム砲、遠距離のビーム攻撃を封殺するIFジェネレーター、武器コンテナには多数の重火器、ミサイルが積んであり、クローアームに搭載されたビームサーベルで多少の近接攻撃も出来る。形が分からない人は、検索すればすぐに出てくるので一度見てみてほしい。カッコいいので。ステイメンはデンドロビウムのコアユニットになっていて、パワードスーツのように着込むことでアームドベース・オーキスを操縦する。
サイズ、その他諸々は調整されていて多少は扱いやすくなっている。ビーム砲や武器コンテナだけを呼び出すことも可能。弾薬は無限に供給されるが、ユニットが破損すると自動修復はされないので注意が必要。
ちなみに、デンドロビウムはお花の名前らしい。物騒なお花もあるものである。
この2つだ。
問題はデンドロビウム。入院している関係上まだ呼び出したことはないが、使うときは注意しないと。適当に撃つとカリバー以上に周りに甚大な被害が出る可能性がある。要練習だな……練習する場所の心当たりはないけど。
「ま、そうだなぁ。天下の
俺の言い方に白井がムッとした顔になる。
と、俺を見ている御坂の目が、嫌な感じになっているのに気が付く。それは別に俺の言葉に不機嫌になったわけじゃない。まるでこの話題になるのを待っていたかとでも言いたげな、獲物に嚙みついたぞ、みたいな……。
「そうよねぇ……ショッピングモールではずいぶんド派手にかましてたみたいだけど、ねぇ」
「え」
「そういえば……
「ええ、恥ずかしいけど、焦ってコイン落としたのよ、あたし」
「全力だよ、全力。あの攻撃には自信があったからな」
「全力? 爆弾が爆発するまでの一瞬に、全力の一撃をとっさに当てたってこと? その割には、近くに来た時に息も切らしてなかったみたいだったけど?」
「それについては言えないな。企業秘密だから」
こいつ、これが目的だったのかよ。
御坂は高レベルな能力を持っているが、その反動なのか、原作初期には自分よりも強い相手が気に食わないという旨の発言をしている。これは完全に目をつけられてしまったみたいだ。
俺がふてぶてしい態度で御坂の顔を正面から見ていると、あきらめたのか緊張を解いた。俺も内心ほっとしていると、今度は携帯をポケットから取り出す。まったく諦めてないみたいだ。
「ふーん……ま、いいわ。携帯の番号交換しておこ。これから連絡取れないと不便になることあるかもしれないし」
「んなッ!!」
唐突な提案に思い切り顔をしかめる俺。白井は顎が外れるんじゃないかと心配になるくらい、口を開けている。
「おおおおおお姉さま? い、いきなり何をおっしゃっているんですの……? そ、そんな、殿方とッ! 携帯の番号を交換だなんてッ! 黒子は……っ! 黒子は……っ!」
「はいはい。いちいちそんな反応しないの。あんたもちゃっちゃと携帯出しなさいよ、嫌そうな顔すんじゃないわよ」
挙動不審になってカタカタ震えだす白井に対してドライに対応していく御坂。白井の扱いには相当慣れているようだ。
カエルのストラップがくっついた携帯を軽快に操作していく御坂。無言で突き出されている携帯と御坂を見て、俺はしぶしぶ携帯を取り出す。番号の交換は、数十秒で終わった。
交換作業の最中、白井は椅子の角に頭を打ち付け続けていたんだけど、手当てが必要なケガはするなよ。
「君達、まだいたのかね」
白衣を着た、汗だくの女性が丁度良く声をかけてきた。青白く濃い隈を持つその顔は、お世辞にも健康だとは言えない。白衣から医者だという事はわかるが、まず本人が健康的な生活を送ってほしいと思われるレベルだ。
しかしこれは一般的な反応だ。俺の頭には全く別のことがあった。
(木山 春生……ッ!!)
この
そんな俺の考えはつゆ知らず、白井は話を進めていく。
「はい。ちょっと木山先生に聞きたいことがありまして」
「構わないよ。彼の診断結果は既に院長に伝えてきたから、しばらくは余裕があるからな。そちらの彼も一緒かい? さっきはいなかったみたいだが……」
「あ、いえ。彼は部外者、で……え?」
いつの間にか木山先生が着ていたシャツが半脱ぎになっていた。誰かにやられたという訳ではない。本人が「暑いな」と言ってどんどん衣服をパージしようとしているのだ。
あまりにも衝撃的な事態に固まっていると、あっという間に上半身が大人な黒のブラのみの状態になる。
いち早く平静を取り戻した白井が木山に食って掛かる。
「なぜ、こんな所でストリップしてますの!?」
「なぜって……そんなの暑いからに決まっているじゃないか……」
「殿方の目がありますの!!」
「下着を付けていても駄目なのか……?」
「ダメに決まっているでしょう!!」
御坂は前髪から電撃を漏らしながら、
「とりあえずあんたは、猥褻の現行犯かしら?」
「それは向こうだと思うんだけど……?」
俺に迫ってくるのだった。
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翔が御坂から逃げ延び、白井が木山に服を着させ、さらに暑いという理由で木山が脱ぎださないように近くのファミレスに入ると、ようやく落ち着いて話ができる環境が整った。
「ふむ、落ち着いたようだし、そろそろ話し始めてもいいかな? 結局人数は増えたようだが」
「さっきの殿方とは違って、この2人は関係者ですの」
「そうなのか。それでは、何から話そうか―――」
木山がぽつぽつと話し始める。そんな木山とテーブルを共にしているのは4人の少女だ。2人は御坂と白井。
そして後の2人は、アスナと狂三だった。