「いらっしゃーい!」
玄関を開けると近所迷惑になりそうなくらい大きな声で理子が歓迎してくれた。ここは俺の家ではなく、とあるマンションの一室だ。それもファミリー用でかなりの広さを誇る。
理子は今、俺の家に住んでいる。しかしその前、つまり武偵殺しとして活動していたころはこのマンションを活動拠点としていたらしい。ジャンヌや夾竹桃も一緒に。今はこの2人で利用しているのだとか。
犯罪組織の3人がルームシェアをしているというのも結構迂闊なんじゃないかとも思うが、俺たちに捕まるまで全く疑われてなかったんだよね。どこかの誰かが手を回してたんだろうか。
そんな場所に俺は今日招待された。
「なっ、なぜここにいるんだ、夜月!」
リビングから顔を出すジャンヌ。理子は俺の来訪を伝えていなかったらしい。いろいろと状況が読めてきた。
「り、理子! どういう事なんだ!」
「そんなの、翔君にも見てもらうために決まってるでしょ? ジャンヌのメイド服姿を、ね」
顔を赤くするジャンヌの手には、動きやすさと可愛らしさを合わせた服が握られている。フリフリがあしらわれていて、どう見ても普段着、もしくは普通の外出には使わないであろうデザインだ。サイズを見るに間違いなくジャンヌが着るものだ。
以前偶然にも目にしてしまったことであるが、ジャンヌは可愛い服に興味を持っている。
周囲にはクールな先輩というイメージが付き、本人も自分には似合わないと敬遠してしまっているが、家で隠れて着るくらいにはドップリ浸かってしまっている。というのは理子の話。どうやら俺と一緒に1着だけと言って買ったモノが、案の定やめられなくなってしまったらしい。
そんなジャンヌを見かねた理子は自らの伝手を使い、フリフリ衣装を着て接客をするお店にバイトの申し込みをしてしまったのである。ジャンヌには内緒で。
何も言わずに申し込んだこととはいえ、ジャンヌ自身も前々から興味があった事もあって乗り気になっていた。
今日がそのバイトの初日なのだが、直前になって行きたくないと駄々をこね始めたらしい。
それで、お店の制服を着た姿を理子に見せて激励してもらうことになったらしいのだが、
「だからと言って、この男にまで見せる必要はないだろう!」
「えー、でもさぁ、お店に行ったら男の人の接客もしないといけないんだよ? そんな時に恥ずかしがってたらダメだと思わない? せっかく掴んだチャンスなんだよ!」
せっかく掴んだチャンスってバイトだよな? これってさ。しかも君が強引にチャンスを掴ませたんだけど?
「ほらほら、どうするの? どんどん時間が過ぎていくよ? バイト休むの?」
「そうしたいのは山々だがな……ッ! しかし、初日から休んで店に迷惑をかけるわけには……くっ!」
まじめ過ぎるのも考え物だとつくづく思う。ジャンヌはひとしきり悩み、やがて肩を落とした。
「はぁ……分かった。着替えてくるから少し待っていろ」
そう言って、ジャンヌは自分の部屋に入っていく。
着替えが終わるまでリビングでゆっくりしようとする俺だったが、理子がそんなことを許してくれるはずがなかった。
「どうした、理子」
不意に俺の手を掴む理子。
「これ、なんだかわかる?」
ポケットからピンク色で卵型の機械と同色の小さいリモコンを取り出した。どこか見たことがあるような感じがする。というか見たことがある。パソコンの画面越しだけど。
「ローター……? え、なんで今?」
俺自身、理子にお呼ばれなんてそういうことを期待していたゲフンゲフン予想はしていたけれど。これからジャンヌのウェイトレス姿の鑑賞会をするって時に出てくるとは思わなかった。
「またまたぁ。翔君だって色々期待してたんでしょ? 家にいるみんなとはあんまり出来ない事とか興味ないかなぁって思ってさ」
「や、それについては否定しないけど、ジャンヌもいるし」
俺は部屋の中でごそごそしているジャンヌに視線を移す。もちろん扉越しに。
バレても大丈夫な人とダメな人がいる。クロとか狂三ならこっそりしてても少しムッとするかもしれないけど許してくれるだろう。アスナと雪菜はカンカンに怒るけど謝れば許してくれるだろう。でもジャンヌの場合は。
「次に会う時からゴミを見る目になるだろ」
ちょっとそれは勘弁。
「ちなみにどんなことしようと思ってるんだ?」
「んー? 翔君もネットで見たことない? 女の子のアソコにHな道具入れて何かさせるってやつ」
まあ、予想の範囲内だな。
「この手のヤツってどこかのお店に行かせるのが多いよね。ジャンヌのバイトから思いつきました!」
「最悪だよ!」
この娘、友達を何だと思ってるんだ。
「大丈夫だよ! バレなければいいんだからさ!」
「えぇ……」
もう理子はやる気満々といった具合だ。
でも、このタイプのプレイってローターのリモコン持ってる男の方に主導権がある訳だし。起動させないって選択肢もあるんだよね。そう考えると心が楽になって来た。
理子はスカートの中に手を突っ込み始めた。その手にはローターが握られている。
「あ」
「ん?」
理子が動きを止める。
「翔君が入れてくれる?」
「やめておく。我慢が効かなくなったら困るからな」
「くふっ、それもそうだね」
ふわりと笑い、スカートの中でごそごそと手が動かされる。ほんの数秒で作業が完了したらしい。すごく手慣れてる感じがする。
そしてリモコンのメモリを俺に見せるように持ち―――メモリ最大になるまでスイッチを動かした。
「んっ!」
「お、おい!」
いきなり最大にするとはいったい何考えてるんだ。
「このローター高級品でね? ほら、最大にしても全然音聞こえないでしょ?」
「……そう言われれば」
確かに何も聞こえない。この音の大きさなら、大きな反応さえしなければ早々バレることはないだろう。
「これなら、遠慮しなくても大丈夫だよね?」
「はいはい、分かったから。ほら」
とりあえずリモコンを渡すように右手を差し出した。なんか最大にしてても平気そうだし、ずっと一番パワーを低くしておこう。で、最後に操作するの忘れたって言ってごまかすとしよう。
そんな計画を立て、リモコンを受け取ろうとした。
「着替え終わったぞ。扉の前で何をそんなに話している」
ジャンヌが扉を開け、出てきた。
理子は何食わぬ顔でリモコンを隠していた。流石、有名怪盗の血を引いているだけあって鮮やかな技だ。でもこれで、俺がリモコンを受け取るチャンスが大きく減ってしまったことになる。
「くふっ」
「……」
理子が笑ってるんだけど。
何か悪いことを考えついたという顔だ。悪い予感しかしない。
「んー何でもないよー。ほらほら! 時間もないんだし早くリビングに行こ!」
「そうか? はぁ、この男相手に練習するのか……」
笑顔でジャンヌに応対しつつ、
「よっと」
扉が閉まりきる直前、リモコンをジャンヌの部屋の中に投げ入れてしまった。
「……は? え?」
な、何してんの、理子さん? ローターのパワー、最大のままだったよね!?
そのままパタンと扉が閉まってしまう。俺は反射的にリモコンを取ってこようとドアに手をかける。
「おい、何をしている夜月。私の部屋に何か用なのか?」
「え、あ、や、そういうわけじゃ……」
当然、ジャンヌがそれを許してくれるわけがない。
「もー翔君は。時間ないんだからそういうことは後回しにしてくれないと!」
理子、お前は後で仕置きしてやるぞ……っ!
結局俺は言い訳を見つけることが出来ず、リビングへ連行されていった。
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「うん。いいな」
「いいよねぇ……んっ」
「そ、そうだろうか? お前たちがそう言っても、それはお前たちがおかしいからなんじゃないのか?」
こいつさらっと毒吐いてくるな。でも、ジャンヌに対する評価は変わらない。一通りのあいさつ、立ち振る舞いを見せてもらったが、どこにもおかしなところはなかった。相当練習したんだろう。
着ている服装は、俺が想像できる一般的なメイド服だった。そこまで装飾がされているわけではないし、露出がある訳ではない。スカートもロングだし。ジャンヌが気にするような過度なものは何一つない、本当にシンプルなものだ。
気にしている身長だってそこまで考えないだろ。そりゃあ、ムキムキでボディビルダーみたいな女性だったら好みが分かれるかも知れないけど。ジャンヌ相手にそんなこと気にする人なんてそうそういる訳ない。
しかし、時折横でピクピクする理子の事もどうにかしてほしい。リモコンが手元にない今、理子の下腹部で暴れている機械を止めることは不可能だ。取り出そうにもジャンヌの目の前で下着に手を入れるわけにはいかないし。
机の影で落ち着きなく俺の袖を握って開いてを繰り返すその姿は、俺をイケナイ気持ちにさせてくる。
「割と手堅いお店なんだな。理子のことだからもっと派手なところ選んだんだと思ってたよ」
「ふっふっふ。理子だってそのくらい弁えてますからね~。このくらいがちょうどいいと思ったんだよ」
意識を逸らすためにも適当な話を振る。
「なんだと!? これよりも過激なものを着るかもしれなかったのか!?」
「スカートがロングだし、かなりセーブされてるだろ」
「場所によっては肩を出したりするからねぇ…………ひぐっ!」
「「っ!?」」
突然理子が変な声を上げた。
「ど、どうしたんだ、理子? そんな変な―――」
「何でもない! なんでもないから気にしないで!」
あの理子が焦っている。もしかしなくても今のは出てしまった声だ。
(おい、理子)
(ごめんごめん。いまちょっといいとこに当たって、ね?)
いいとこって、おまっ……!
(それにしてもこんなにすごいなんてね)
(は?)
(このプレイ、こんなに効くなんてなぁ。そんなにMじゃないと思ってたんだけど)
(や、何言って―――)
(しかも今ので一気に濡れてきたかも……あは、ちょっとまずそう)
いやいやいやいや、まずそうじゃねーですよ!?
(トイレ行けよ! 早くしないと――)
(も、もう無理。足ガクガクになっちゃってる)
「おい、何を話して―――」
「とにかく! すごく似合ってることには変わりないから! 俺たちが保証する」
「ふん、何人もの女とまぐわうような男の言葉があてになるか」
「まぐわう言うな」
事実だけれども。今もすごくマズいけれど!
しかし幸いジャンヌは恥ずかしさからか顔を横に背け俺たちの方を見ようとしていない。これなら俺たちがこんなことしているとは、よほどのことが無い限り気が付かないだろう。
「ふぅぅぅ……っ、あ……っ! ひぅ、ひあぁ……っ!」
よほどの、ことが……
「……ふっ! ……ふぅっ……んんっ……っ!」
無い限りは……
「んんっ、ぁ……んあっ……ふぅっ………んっ……これ、もう……っ!」
これ、小声だけどジャンヌに聞こえてないんだよな!? 顔色一つ変えてないし大丈夫なんだよね!?
最初は余裕そうに深く腰掛けていた理子も、今は椅子からわずかに腰が浮き、声を出さないための大きな呼吸でお腹が上下している。
内股になった太ももがこすりあわされている。
そしてとうとうその時が来た。
「っ……うぅう、ぅんんうぅ……っ!」
途中から握っていた俺の手に加えられていた力が一気に強くなった。大声こそ上げていないが、体中が強張っているその姿は女性が絶頂を迎えている姿だ。
声を出せないせいで受けている快楽をすべて味わってしまっているのか、ずいぶんと長い……や、そうじゃない。ローターがずっと動いてるせいで快感が永遠と与えられてるのか。
「理子? 本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だから! ジャンヌもそろそろ行く時間じゃないのか!?」
何とかジャンヌには気づかれずに済みましたとさ。よかったよかった。
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「それでは、行ってくる」
「はいよ、行ってらっしゃい」
ジャンヌは割と上機嫌に出て行った。なんだかんだ言っても、褒められるのはうれしかったんだろう。慣れてきたら様子を見に行ってもいいかもしれない。
で、こっちの娘は。
「はー、ドキドキした」
ドキドキしたのはこっちだと言ってやりたい。
ジャンヌが出て行ってすぐに壁に寄り掛かり、そのままずるずると座り込んでしまった理子を見る。
スカートから伸びる健康的な2本の足。その最奥にある布地はぐちゅぐちゅになっていることだろう。さらにその薄布の先には……
今までのことに対する小さい怒りと、これからのことに対する大きな期待の目を、俺は理子にむけるのだった。