※この作品はR-18です。

異世界ハーレム奮闘記   作:文房具

57 / 383
ブラド決戦 編
無意味な話し合い


「お待ちしていました。夜月翔様、峰理子様。どうぞこちらへ」

「……」

「……」

 

車から降りた俺と理子は、特に何も答えずに案内に従う。そんな礼儀のなっていない俺たちに対して全く表情を変えない青年は、大きな屋敷へと続く道を歩き始めた。月夜に照らされて、口元がきらりと光を反射した。

 

車に乗ってからずっと青い顔をしている理子の手を握って青年の背中を追う。

 

理子が着ているのは普段とまったく変わらない防弾制服だが、その至る所にたくさんの武器が仕込まれているだろう。場所が場所だからな。

 

今夜は、ブラドからの招待日当日だ。

 

ここはすでに敵地。しかし俺はそれほど警戒していなかった。

 

俺たちは今日、ブラドの招待を受けてこの屋敷に来た。なんでも俺と理子、2人と話したいことがあるらしく、晩餐会を開いてくれるそうだ。ここまで回りくどいことをしたんだ、迎えの車の中でも何もなかったし、道中で襲うなんて姑息な真似をすることはないだろうと俺は予想する。でもそれは正々堂々俺たちと向かい合おうって訳でもない。

 

俺は俺で新しく手に入れることが出来た武器のことを考える。これからの戦闘は必至だ。相手の戦力が測れていないのがすごく気がかりだけど、これで対抗していくしかない。

 

幸いと言っていいのか、当然のようにブラドの屋敷は広大な土地にある。周りにあるのはこれまた名のある人たちのお屋敷なのだが、そこまで気を使わなくともこの広さなら全力で戦って大丈夫だろう。

 

「こちらの席でお待ちください。ただいま当主をお呼びします」

 

通された部屋には見たことのないくらい大きなテーブルがあった。椅子は3つ。俺たちが座るべき椅子は言われなくてもわかった。1つだけ装飾が違うからだ。

 

俺達は静かに座って待った。

 

10分ほど経ち、とうとうそいつは現れた。

 

「ようこそ我が屋敷へ。夜月翔君、と……おかえりなさい。リュパン4世」

 

ブラドだ。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

テーブルには所狭しと料理が並べられていた。料理は肉料理が中心のようだ。ブラドが着席すると同時にメイドと思われる女性たちが運んできた。

 

「さぁ、遠慮せずに食べてください。お酒は……そうですね、未成年ですが武偵なら軽いものの一杯も飲めないとお話にならないでしょう」

 

直接言葉にしないが、裏に込められたブラドの意思を確実に組んで実行していくメイドさん達。4人が部屋の中を動き回り、食器を置いているはずなのに全く物音がしないのはさすがプロなんだろう。

 

配膳が終わり、2人を残して部屋の外へ出て行った。

 

目の前にあるおいしそうな料理の匂いに、口の中の涎と胃袋が、身体が欲しがっていることを伝えてくれる。でも、さすがの俺も緊張で食べ物が喉を通らない。理子も同じだろう。

 

そんな俺達とは真逆に、おいしそうに料理を食べ始めるブラド。

 

「吸血鬼という種族にとって、人間にとっての夜は朝のようなもので。この食事も私にとっては朝食なんですよ」

 

知らんわ、そんなこと。

 

「人工血液も悪くは無いんですよ。いえ、最初は私もこんなもの飲めるかと思っていたんですがね。食わず嫌いはいけませんね。さっぱりとしていて寝起きの一杯にはちょうどいいんですよ」

 

その真っ赤な飲み物、ワインじゃなくて血だったのか。トマトジュース感覚なんだな。

 

ちなみに人工血液ってのは、ここの吸血鬼に配布されているものだ。なんでも、これを飲んでいれば吸血衝動を抑えられるとか。

 

「ブラド。俺たちは別に、お前と楽しく食事をするためにここに来たわけじゃないぞ」

「ほう、それではどうして招待状に従ってここに来たのでしょうか?」

 

とぼけたことを言ってくる。

 

「そんなこと、聞かなくても理解してるんだろ。茶番をするくらい時間が余っているのか?暇人さんなのか?」

「長い時間を生きていると、娯楽を求めて暇を持て余すことが増えるのは確かですね。もっとも、最近は少々愉快なことが多いのですが」

 

まだまだ茶化すつもりらしい。

 

「ブ、ブラド……っ! 今日、は……っ、お前を逮捕しに来たんだ……っ!」

 

裏理子の口調だがその声は震えている。怖いのを我慢して必死に絞り出したセリフだ。

 

「はぁ……4世」

「っ!!」

 

たったそれだけで、理子はその身を固くする。

 

「まだわかっていないんですか? あなたが何かを言う権利なんて存在してないんですよ。劣等遺伝子しか受け継ぐことのできなかった自分を恥じ、もう少し謙虚に立ち回ればよかったものを」

 

ぽろぽろと涙を流し始める理子。俺はその手を握る。

 

「しかしすり寄る相手を見る目はあったようですね。こんな大物を釣り上げるとは。母親同様、男に媚を売るのはうまいようで」

「お、お母様の悪口は……っ!」

「おい、やめろよブラド。故人を悪く言うのは根性無しのすることだ」

 

そんな俺を見て、ブラドは顎に手を添える。

 

「体に釣られましたか、夜月翔? 確かに4世は人間の中では非常に魅力的なものでしょうね。その点だけを見れば母親譲り、完全な劣等遺伝子と言えないのかもしれませんが……そんなものよりももっと貴重な、受け継ぐべきものがあったはずなんですがね。残念ですよ」

 

ブラドは極度のDNA至上主義者だ。DNAこそ、その存在のすべてだと本気て思っている。そして理子は優秀な怪盗の娘なのにも関わらず、その才能が全く遺伝していなかった。ブラドから見れば最悪のケースなのだ。

 

それでも、優秀な家系であることには変わらない。次代を生ませるために幼いころから監禁されて育ってきた。

 

そんな理子が解放の条件として提示されたのが、アリアの打倒だ。結果としては失敗してしまったのだが、ブラドが約束を守るつもりがあったかどうかは、ここまでの会話を聞いていれば簡単にわかるだろう。

 

「それに逮捕、ときましたか。確かに、人間に対してニコニコとしている奴らと違ってあいつらの法を守るつもりなんてありませんからね。表に出されれば面倒になるものもゼロではありませんよ。表に出されれば、ですがね」

 

ナプキンで口元を拭くブラド。

 

「ですが出来れば平和的に解決したいものです。知っていますか? 人間というのは案外我々吸血鬼よりも血の気が多いのですよ?」

「悪いけど、お前が今までの行為を悔い改めて理子に頭を下げたとしても、罪が消えてなくなる訳じゃない。お前の犯した罪が、全く別の人に擦り付けられてるんだよ。平和的に解決したいなら、これから然るべき場所に自白しに行くことになるぞ」

「あぁ、ホームズ4世ですか。母親に私の罪が擦り付けられているようで。それは災難ですね。短い寿命しか持っていないというのは」

 

こいつ、事実上の終身刑を寿命が短いせいだと言いやがった。本当に人間をゴミだと思ってるんだな。

 

「勘違いしないでほしいのですが、私は別にすべての人間に対してこんな態度をとっている訳ではありませんよ。君に対してはそれなりの礼節と敬意をもって接しているつもりですが」

 

お前が敬意を持っているのは、俺の中にある有能かもしれないDNAに対してだろうに。

 

「ええ。あなたのその天からの才能に敬意を表して、紳士的に平和的に話し合いをして互いにとって有益な関係を結ぼうと思っているのです。どうでしょうか、私の要望を聞いてもらえるのならそれ相応の見返りの用意がありますよ?」

「話にならないな」

「そうですか」

 

茶番はもういいよ。これでようやく、完全に完璧に無駄だった時間が終わった。

 

ブラドとの会話を打ち切り、

 

「そういえば」

 

腕時計型携帯から武器を、

 

「あなたの知り合い2人もここにきているようですね」

 

俺の動きが止まった。

 

「……」

「隠さなくても結構ですよ。私のスタンド能力について。うっかりホワイトスネイクが漏らしてしまったようですが……あなたならよく知っているでしょう」

「スケアリーモンスターズ、か」

 

生物を恐竜化させるスタンド。前回は取り囲まれただけで戦闘には至らなかったが、能力についてはみんなと共有してある。

 

「この屋敷にはたくさんの恐竜が放たれています。さしずめ監視カメラのようなものですね。その恐竜たちが得た情報はすべてこの私が知ることになる」

 

潜入しているのは狂三とハサンのカードを夢幻召喚(インストール)したティナだ。そう簡単に見つかるとは思えない。

 

この2人にはどさくさに紛れてブラドの罪の証拠集めをしてもらっている。きな臭いうわさがあるとしても、表向きには原作と違って大物吸血鬼の一人として名前が知れ渡っているからな。暴れるだけ暴れてもこっちが悪者にされかねない。

 

影に入る能力と気配遮断を待つ2人なら、かなり自由に屋敷内を移動できると思って任せたんだけど。

 

「放たれている恐竜にはとても小さいものもいましてね。アリのように小さいんですよ。もしかすると、知らず知らずのうちにうっかり踏み潰してしまっているかもしれませんね。普段屋敷にいる者のことは避けて歩くようにしているのですが……」

「ッ!!」

 

そういうことか。

 

スケアリーモンスターズの五感による監視と、小さい恐竜が踏みつぶされたときの監視、2重体勢になっているのか。ほとんどの奴は前者で見つかり、そうでない者も床のトラップスイッチを踏むように知らず知らずのうちに侵入を伝えている。踏み潰された恐竜の死はブラドに伝わるからだ。

 

「悪いことは言いません。今ならまだ間に合いますよ。スケアリーモンスターズは最低限の知性も持たない下等動物ですが、最強の攻撃生物であることに変わりはありません。お友達がケガする前に降参した方がいいと思いますよ」

 

ここまで来て引けるわけがない。そして、こちらにも隠し玉がある。

 

「アリア、撃て」

《了解! ぶっぱなすわ!》

「なに?」

 

耳に着けている小型インカムに向かって指示を飛ばす。

 

直後、大きな揺れが屋敷を襲った。

 

「なんだ!? ……ッ! これはッ!」

 

ブラドも何が起こっているか理解したらしい。

 

上空に待機していたアリアのデンドロビウムが、ミサイルの雨を降らせたのだ。

 

「ふ、ふふ、ふふふ。思い切ったことをしてくれますね。明日の朝にはこの話題で持ちきりになるでしょうね」

「こそこそと逃げ隠れするのも、嘘でもお前の提案に乗るのもお断りだからな。これで俺は後に引けない。追い込まれた人間は強いぞ」

「自分で追い込んでおいてよく言いますね。ますます気に入りましたよ。これで中身(DNA)も良ければ言うこと無しです」

 

どっかのカードゲームの吸血鬼は、自分で自分のライフを削って復讐するからな。言葉は難しい。

 

と、インカムに通信が入った。

 

《駄目ね。防御用の結界あるみたい。もうブラドにケンカは売ったわけ?》

「ああ。今のでカンカンに怒ってるぞ」

《少し話させて》

「いいぞ」

 

俺はインカムの設定を切り替えてブラドに向ける。

 

《あー、あー、聞こえてる? 聞こえてるわね? ブラド、今までの会話は全部聞かせてもらったわ! よくも人間をバカにして、私のママを侮辱してくれたわね! 今までの悪事をすべて暴いて、風穴開けて刑務所にぶち込んでやる! 覚悟しなさい!》

「……いいでしょう。そこまで言うなら私が直接相手になりましょうか。この吸血鬼ブラドに対する不敬の報い、その身に刻み付けてあげましょうか……ッ!!」

「行かせると思うか?」

 

ブラドの目の前に立ちはだかる。理子も銃を抜いた。

 

「……ふぅ」

 

ブラドはため息をついて指を鳴らした。部屋の扉が開いて金髪の女の子が入ってくる。この場面でブラドが呼ぶ人物だ。俺たちにとって敵であることに違いはない。

 

「それではレティシアさん。ここは頼みましたよ」

「……ああ」

「……なんだって?」

 

レティシア? その名前、聞いた事がある気が……あ、思い出した!

 

レティシア・ドラクレア。『問題児たちが異世界からくるそうですよ』に登場するキャラクターだ。作品最強の吸血姫で、『箱庭の騎士』と呼ばれるほどの高潔な女性のはずだ。間違ってもブラドの考えに賛同することはないはず……

 

「恨みはないが、ここで死んでもらおう」

 

現実は待ってくれない。向こうはすっかりとやる気みたいだ。

 

とりあえず倒してからだ。考えるのは動きながらでもいい。

 

新しい戦力の一つ、さっそく使わせてもらうか。

 

俺はベルトを腰に巻いた。

 

 

 

 

ゲーマドライバー

 

『仮面ライダーエグゼイド』に登場する変身ベルト。このベルトとガシャットと呼ばれるアイテムを用いる事でエグゼイド系列の仮面ライダーに変身することが出来る。

なお、このベルトは最初に装着した人間にしか使えない。

 

 

 

 

《Dual ガッシャット!》

《The strongest fist What's the next stage?》

 

「MAX大変身!」

 

《ガッチャーン! マザルup!》

《赤い拳強さ! 青いパズル連鎖! 赤と青の交差! PERFECT KNOCK OUT!》

 

俺の体が青いパーフェクトパズルと赤いノックアウトファイター、2つのボディが混ざり合ったものに変化する。ゲーマドライバーを手に入れることでようやく変身可能になった『パーフェクトノックアウトゲーマーレベル99』だ。

 

「ほぅ……やはり似ていますね、彼に」

「彼だと?」

「知っているはずですよ、デンジャラスゾンビです。まあ、似ているといっても姿形だけで、性格は正反対ですが」

 

ブラドは、俺にとって衝撃的なセリフを吐いた。

 

「あなた、元はこの世界の住人ではないでしょう?」

「な、何を言ってるんだ! ブラド!」

 

理子が詰め寄ろうとするが、黒い影のような刃が道を塞いでしまう。

 

「すぐに戻ります。レティシアさん、お願いしますよ」

 

疑問を片付けるのは後。今は目の前のことに集中することにしよう。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

雪霞狼の神格振動波駆動術式で侵入者を拒む結界を無力化して侵入した雪菜、クロ、アスナ、耀は、ブラドの部下の吸血鬼に対して大立ち回りをしていた。

 

対吸血鬼用の呪いが付与された宝具をクロが投影したことで、吸血鬼の回復能力も恐れることなく戦えている。

 

本当はこの4人は陽動で、アリアと一緒に場を混乱させている最中に逮捕に必要な証拠を集めるはずだったが、少し予定が変わってしまった。

 

そこに1人の男が現れた。

 

「オラ、邪魔だ。どけよ」

 

青年吸血鬼を蹴り飛ばし、歩み寄ってくる。

 

「夜中に花火が撃ちあがったと思ったら、今度は庭でダンスパーティーか、あぁ? そこのお前、どういうことだよ。俺はよぉ、眠ってんのを無理やり起こされるのが大嫌いなんだよ、知ってんだろ?」

「し、侵入者です! そいつらが、そいつらが悪いんだ!」

 

怯えた表情で必死に弁解する青年吸血鬼。

 

「おいおいおいおい。一緒になって騒いでたのはお前も一緒だろ。俺を無理やり起こしたのはお前でもあるんじゃないか?」

「そ、そん―――うぎゃあああああああぁぁぁっぁ」

「とりあえず、魔臓の機能は預かっておくぜ。その傷で死んでなかったら返してやるよ」

 

DISCを抜き取られた青年は生まれて初めて味わう痛みに叫び声を上げる。

 

「で、お前らか。なんでこういうことしちゃうのかなぁ。気持ちよくなって気持ちよく寝てたのによぉ」

 

《DENGEROUS ZOMBIE》

 

「変身」

 

《ガッシャット! バグルup!》

《Denger denger Death the crisis DENGEROUS ZOMBIE!》

 

「こりゃあ、身体で払ってもらうしかねぇよな」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。