―――――――GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!
俺を遥かに上回る巨体が、その重さで地面にヒビを入れる。開いた装甲から、内部に乗り込む。システムを起動し、空に悠然と浮かぶウラヌスシステムを捉えた。
「行くぞ、機龍」
三式機龍
日本を幾度となく襲ってきたゴジラの骨を利用して作られた強力な兵器。分かりやすく言えばメカゴジラ。ゴジラのパワーを有しているため格闘性能がとても高くなっている。本作でのサイズは身長5メートルほどで、外部からの遠隔操作か着込んでの内部操作の2パターンを選ぶことが出来る。最大稼働時間は10分程度。
バックパックユニットが火を噴き、大空に舞い上がる。かなりのG負荷が体にかかるが、気にしている場合ではない。
口内に装備されている99式2連装メーサー砲、腕に装備されている0式レールガンで、飛来するミサイル群を叩き落していく。しかし、本体の装甲には少し傷がつく程度。
埒が明かないと思ったのか、今度は巨大なアームが迫ってきた。軽快な動きで回転。尻尾を使って軌道をそらす。
「ふっ!」
着地して伸び切ったアームをつかむ。渾身の力を込めると、指の形に変形する。アームの指1本をへし折った。でも、大したダメージにはならないだろう。
「へぇ、やるじゃねぇか」
その証拠に、声にはまだまだ余裕がある。これ以上ちんたら戦って下にいる娘に被害が出たら大変なことになる。
まだまだ遊んでいるうちに決めさせてもらう。
胸の砲門にエネルギーが蓄えられていく。
機龍の胸から極光が迸った。機龍の最終兵器。-273.15℃の光線は対象を瞬時に凍結させ、分子レベルで破壊する。ウラヌスシステムはその餌食になった。機体の3分の1が凍り付き、崩れ始める。
「……は? な、なんだよ。なんなんだよこのポンコツ!! 一発で壊れんのかよぉ!! 使えねぇガラクタがよぉぉぉぉぉ!!」
そして、もう一度極光が世界を照らす。
今度は
「最大出力」
俺はエネルギーを使い果たした機龍から飛び出し、宙に身を躍らせていた。
その手には(ユニヴァース版)星の聖剣が握られている。
「げ、げいげ、迎撃を――――」
無理矢理に動かそうとしているのだろう。ウラヌスシステムは死ぬ間際の肉食獣のようなうめき声をあげる。
アームが迫ってくる。あのアームに摘ままれれば、生身の俺は虫のように潰されることになる。
「
振りかぶった聖剣はアームをやすやすと切り裂いた。ミサイルは飛んでこない。あいつはもう目と鼻の先。そしてその道を阻んでいたウラヌスシステムはもう使い物にならない。
「このままブチのめすッ!!」
「ッ!! ホワイトスネイクッ!! 時間を稼げェェェェッ!!」
もはや、ヤケクソだ。狂ったように叫び、いまさらながらバグルドライバーを取り出している。
不死身能力は俺に効かないとわかっていても縋ってしまうのは仕方のないことだ。しかし、みすみす変身させるつもりはない。
「
爪が回転を始める。狙いを定めて発射。
「ウショオオアアアアアッ!!!!」
ホワイトスネイクはラッシュで爪弾を弾き飛ばすが―――
「その程度で、ACT2の回転は死んだりしない」
着弾しても、弾痕に回転のエネルギーは残っている。エネルギーは尽きていない。本当に尽きてしまうまで、目標に向かって攻撃を続けるんだッ!
「グギャアアアアアアアアァッァァァァァア!!!!!」
足に食い込んだ回転エネルギーが、膝を破壊する。溢れ出る血液をせき止めるように傷口を抑えている。なりふり構っていられなかったからか、変身のための道具はどこかに放り投げてしまっていた。
「ようやくお話しできる距離に来れたよ」
「テ、テメェ……ッ」
顔を突き合わせるのはこれが初めてだ。今まではお互いに変身してたしな。久しぶりに会えた同郷の人間。しかし、これ以上顔を見ているつもりはなかった。
スタンドを維持することもできないのか、ホワイトスネイクは消えていく。
「ま、待てよ、よせっ! 話せばわかるさ、なっ。そうだ、女! お前、好みの女言ってみろよ。俺の手持ちから好きなのを」
俺は一歩近づく。
「おい、おいっ! 待てよ。落ち着け。止まれって!! お前の言う通りにする。もう攻撃したりしない!」
「じゃあ降参するか? やっぱり、同郷の人を殴るのは心苦しい――――」
「バカがよォォォォォ!! ……あ、れ……?」
後ろから殴りかかろうとしていたホワイストスネイクの腹に、爪弾が突き刺さっていた。ダメージに連動して腹に傷ができていく。
「―――――なんて気持ちはもうなくなったよ。さっきな。不意打ちをしてくることも簡単に予測出来た。泣き叫ぼうが拳を叩き込まないと気が済まなくなった」
力なく、今度こそ本当に消え去るホワイトスネイクを背に、最後の一歩を踏み出した。
「ひっ! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「捕まえろ!!
「悪イナ。逃ガサネェゼ」
「ク、クソッ!! 離しやが―――ッ!!!」
俺の拳が顔面に突き刺さった。
「これは今回情けなかった俺への怒りだ。悪いな。八つ当たりして」
「あ、が……」
いやな感触が俺の手に伝わり、生暖かい液体が付着する。
「でもこれからは」
ゆっくりと振り上げ、
「お前が食い物にしてきた人たちの分だ!!」
再度、拳がめり込む。
「これも」
殴る。
「これも」
殴る。
「これもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれも」
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。
「これもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもッ!! 全部その人たちの分だッ!!!」
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るッ!!
――――――――――――――――――――――――――
「それじゃあ、お大事に」
「うん、ありがとうね」
そう言って、俺は病室を出た。今回の戦いでケガをしたアスナ達が入院したのだ。怖い人たちからの事情聴取も終わったことだし、とりあえずブラド関連でやらなきゃいけないことは終わったかな。
すべてが終わった後、俺は異世界の外に出た。中にいた女の子と、血だらけになった男を連れて。男のほうは完全に気を失ってて楽だったんだけど、女の子のほうが大変だった。俺が近づくと逃げたりする娘までいた。あいつに色々やられたせいなのはわかってても、結構心に刺さったな。
御門先生の話では、それぞれ程度の差はあれど男性恐怖症になってるから、しばらくはそっち方面の治療があるとか。
そして、外に出た時にはすでにブラドとの戦闘は終わってた。ブラド自体、虫の息だったし、戦闘行為と呼べることはもう起こっていなかった。
ブラドとゲンム(新谷航平)、その他ブラドの部下多数はレティシアさんの告発によって捕まった。今は最高クラスの警備の中で取り調べされているはずだ。もう世間にも公表されているから、スタンド能力を使っても逃げることはできない。
ブラドを倒したことで、俺たちの周りも多少なりとも変化し始めた。
一言でいえば、名前が売れ始めたのだ。
ハイジャック(武偵殺し)、聖天使様暗殺未遂事件(ティナとヤミ)といった事件も解決してきたが、今回の相手は世界に名を轟かしていた吸血鬼の貴族。話の規模が違う。
たとえ、ブラドが油断していたからこその勝利だったとしても、外野には関係ない。重要なのは倒したという事実なんだ。本当に有名になったよ……理子達は。
そう、ブラドを倒したのは俺ではない。俺が倒したのは世間的には全くの無名人。表立ってちやほやされることはなさそうだった。
別にちやほやされたかったというわけじゃない。今の状況はすごく嫌だ。
「大変そうねぇ、翔君?」
「楯無さん……いえ、自分が忙しいって訳じゃないんですけどね」
柱の陰にでも隠れてたのか? いつの間に後ろに来てたんだ。
扇で口元を隠した女性―――更識 楯無。ブラドは確かに大物だった。表では。しかし、裏の注目度で言ったら俺が倒したデンジャラスゾンビのほうが大きかった。スタンドという未知の能力を広め、仮面ライダーの変身アイテムという未確認の技術を使っていたのだから当然だ。
おかげで、理子達は一般武偵に追いかけられ、俺はこの人に粘着される日々を送っていた。
前に会った時とは明らかに違う視線。俺を測っている、監視している眼だ。
「今日はクローディアと一緒じゃないんですね」
「あら、一緒のほうがよかった? も、し、か、し、て、会いたかったのかなぁ~?」
「それはもちろん」
適当に返す。
俺の思考を読んでいるのか、それ以上余計な茶化しは入れない。黙って後ろをついてくる。
俺は自販機から飲み物を買おうと、
「あ」
楯無さんが俺を追い抜いてお金を入れてしまう。そしてそのままボタンを押して購入。ガランと音を立てて落ちてきた缶コーヒーを俺に差し出してくる。
「お姉さんからのプレゼントよ。いつも飲んでるやつでしょ、それ」
「……ありがたくいただきます」
「もー、そんなに警戒しなくていいってば。楽しくおしゃべりしましょ? ほら、そこに座って」
缶コーヒーを受け取ってしまった手前、断りづらくなってしまった。
あきらめて座る。
プルタブを開け、一気に半分ほど飲み干す。
「それで、何の話をしましょうか」
「そうねぇ……最近捕まったあの人のこと、なんてどうかしら?」
「いいですね、自分も興味ありますよ。何かしゃべりましたか?」
「なーんにも。変わらず言い続けてるわ。『俺は神に選ばれてこの世界に来た』ってね」
「……」
俺の戸籍やその他はこの世界に来た時に違和感ないように作られている。それは召喚された女の子についても同じだ。いくら聞かれようが、知らないといえば知らないし、そこから粗を探すことはできない。
「『俺のことをブチのめした奴もそうだ。絶対に殺してやる』だそうよ」
「ずいぶん錯乱してるんですね」
「そうかなぁ……私にはどうもそうは思えないんだよねぇ……」
目の前で大胆にも足を組む楯無さん。
「どうしてですか? 今ある資料は男の妄言をすべて否定してるんでしょう?」
「でも、ウソ発見器も読心能力者も彼の発言が本当だと言ってるのよ。この場合どっちを信じればいいのかしら」
「催眠でも使えば、心からウソの発言をすることもできるんじゃないですか?」
俺は学んだ。異世界から来たことがばれると不味いことになりかねないと。未知の能力と技術を性行為だけで無限に取り寄せられると知られた暁には、どんなことが起こってしまうのか。想像できない。
たとえ原作にいるキャラクターであろうとも、本当に信頼出来なければ明かすことは出来ない。
「とにかく、俺はそいつが言ってることは何一つ本当だとは思いませんよ。そこから先をどう考えるのかは先輩の自由ですけれど」
「……そうね。私も疲れてるのかな、こんなことまじめに考えちゃうなんて。ありがとう、話せてよかったわ」
「はい、こちらこそ」
俺はその場を立ち去ろうとする。
「あ、そうだ。言い忘れたことがあるの」
「え?」
「あいつが住んでた家、見つかったわ」
「っ!」
その言葉に反応しそうになる体を抑える。
「へぇ、そうなんですか。もう捜査を?」
「いいえ、まだ。明後日になる予定よ。何分、特務六課は人手不足なのよねぇ。その分、質はいいのだけれど」
特務六課か、何となくどういう組織構成か見えるな。
「興味あるかしら?」
「ええ、両方に」
ここは是が非でも家宅捜査には参加しておきたい。
「だったら、参加してみる?」
「いいんですか?」
「もちろんよ。そのくらい融通してあげる。それに、実際に戦った人の意見も欲しいかもしれないしね」
思い出したように言ったけど、これが目的だったな。こっちには渡りに船だったけど。
「詳しい時間と場所は後でメールするわね」
「よろしくお願いします」
そういって、俺たちは本当に別れたのだった。
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「あっと」
家に到着すると携帯にメールが入った。楯無さんからかな。
「んん?」
違うっぽいぞ。えーなになに。メールのタイトルは、
「緊急ミッション……」
え、嘘だよね。今回休憩ないの?
げんなりした気分になる。強制ではないにしろ、見てしまった以上は無視できないのが人情。
メールを開いて詳しい内容を確認しようとしたところ、さらなるアクションが起きた。
「うわ」
長らく埃をかぶっていたアイテム、『タイムベルト』が勝手に取り出されて腰に巻き付いたのだ。つまりこれって、過去か未来に行くってことで――――
俺は声を上げる暇もなく、この時代から消失した。
次回、Fate/Zero編……?