風呂から上がり、一通りウェイバーに文句を言われた後、俺たちはウェイバーの拠点である家に向かった。原作でもあるマッケンジーさんの家だ。
ウェイバーは、元々自分を息子だと思うように催眠をかけている。そこにさらに上書きして、俺たちが長期滞在しても違和感がないようにしてくれた。もっとも、その効果がいつまで続くのかはわからないけど。簡単に自己紹介を済ませ、2階へ引っ込む。
家についた段階で、もうそれなりの時間だったため一眠りした。ウェイバーはベッドで、イスカンダルは床で大の字に。大男のイスカンダルにそれをやられると、俺と桜ちゃんの寝るスペースがなくなってしまう。
そこで優しいおじいさんとおばあさんが、別に寝るところを作ってくれた。
魔力供給さえあれば、サーヴァントに睡眠はいらない。しかし俺は特殊な境遇、イスカンダルは睡眠も楽しみたいといってすぐに眠りについた。
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「……ッ! ……ふっ、くぅっ! ……ハッ、はぁっ!」
曲がりなりにもサーヴァントになって感覚が強化されているのだろうか。普段では絶対に起きないような小さい声に反応した。
「……?」
薄目で、同じ布団に寝ている桜ちゃんを見た。寂しいから一緒に寝てほしいと言われ、承諾したのだが、寝る前と変わったところは発見できない。
「うぅぅ……うぅん……っ、はぁぁ……っ」
(桜ちゃん?)
顔は見えない。俺の胸に後頭部を預けるようにしているからだ。体も布団の中であるため俺に見えているのは本当に頭頂部の髪の毛くらい。
しかし見えなくてもわかる。乱れた呼吸。俺に密着している腰が時折悩ましげに揺れ、右肩が、布団の中で右手を激しく動かしていることを伝えてくる。
疑いようも、言い訳のしようもない。桜ちゃんが自分を慰めている。
「はっ、はっ、はっ、はっ……!」
桜ちゃんの吐息がどんどん切羽詰まったものへとなっていく。後頭部がぐりぐりと胸に押し付けられる。それだけではなく、布団の中の見えない位置にある部位までもが、体の内で生まれている熱を逃がそうとしている。しかし、腕の速さは加速し、大きく、大胆になっていく。
「はっ、はぁっ! んんんっ! ッ!! みゃぁああぁぁあぁぁ……っ!!」
桜ちゃんは、背を丸めて戦慄いた。自分がやっていることがイケナイことであるのは理解しているのか、袖をくわえて大きな声を出すことは避けている。それでも俺には、熱い吐息に合わせるように痙攣する幼い体のすべてが、分かってしまっていた。
「はーっ、はーっ、はーっ、んっ」
乱れた呼吸を整えているのか、はたまた余韻に浸っているのか、あんなにも艶めかしく脈動していた体はすっかりと脱力している。
流石の俺も、この光景にはどっきりしていた。風呂に入ったりするときに裸を見る、なんて時には特に何ともないのだが、俺の間近で―――というか密着しながら―――自慰されると生物学的男の本能が刺激されてしまう。こんなに小さい娘でも。
俺の男の部分が固くなってきてしまった。あわよくば、このまま疲れて寝てしまわないだろうか。そう考えつつ、俺は少しずつ腰を引いてズボンを押し上げつつある肉棒を避難させる。
「ぁ、やぁ……っ」
そんなはかない願い、叶う道理はなかった。桜ちゃんの右手が再び動き出したのだ。
「おさまん、ないっ。なんでっ……なんでなのっ……っ」
その激しさは数刻前に絶頂を迎えた時、その最後の一押しと遜色ない。布団をかぶっていなければ言い逃れできないイヤらしい音が、夜の闇に響いていただろう。
激しさを増す一方だった手淫だが、俺と目があって停止した。なんてことはない。歯を食いしばって体を反らした時に、目が合ってしまったのだ。
桜ちゃんは目を見開き、みるみる頬を青くしていく。ギュッと唇を引き締めて、顔に怯えの色を浮かべ始めた。
「ぁ、その……違うのっ。今までずっと、おじいさまの言いつけで、こういうこと、されてきて、蟲に……っ」
布団を跳ね上げ、立ち上がり、必死に言い訳してくる。しかし、自分の右手にべっとりとまとわりついている透明な液体を見て、その声は小さくなっていく。
「アソコが、切なくなって、だから、いつもされてたみたいに、ナカ、ずぼずぼされたらおさまるかなって……っ」
「もういいって!」
そんな詳細な説明は求めてない。
「別に何かあるってわけじゃないから。でも、その……」
どうしようか。立ち上がった足はプルプルと震えている。呼吸はまた荒くなり始め、足の付け根に近い部分を抑えて唇をもにょもにょさせていた。おなかが痛いわけではない。そこよりも下、女性の部分だ。
どうするべきか悩んでいると、幽霊のような足取りで、桜ちゃんが近寄ってきていた。
狙いは言うに及ばず、俺の下半身だ。強く主張している息子に顔を寄せてくる。
「すん、すん……」
犬のように、犬がそこにあるものが食べられるものかを判断するように、鼻を鳴らす。そしてそれは比喩ではない。
そんな予感から、俺は少しずつ逃げの姿勢に入ろうと―――
「ちょっと?」
ズボンをがっしりと掴まれてしまう。
「からだ、が求めてるの……っ! ここにあるのを。熱くておかしくなる、からぁ、これいじょう、は……お願いします、お願いします……っ!」
「……わかったよ」
外気にさらされるペニス。期待に打ち震えるそれはぴくぴくと震え、そそり立っている。桜はそれをうっとりと眺める―――なんてことはしなかった。
「うぐっ」
腫れた亀頭に大きな口を開けてむしゃぶりついた。風邪を引いた人のような粘っこい唾液が、真っ赤な薄皮と、ベージュ色の舌の滑りをよくする。ぷくっ、と滲んでいた先走りと混ざったがいったいどんな味になったんだろうか。
「ふぁふぅぅっ、んっ、れりゅうっ、んむっ」
竿を握り、一心不乱に亀頭を舐め続ける。その心地よい刺激に、俺も力を抜いて快楽の海に身を任せ始めた。
「んろっ!! じゅるっ!! んっ!!」
鈴口を行ったり来たり。先端の部分をひたすらに責めてくる。
自分の疼きを静めたい一心で、ひたすらにしてくるが、その必死さに技術が伴ってない。射精の予感は少しずつ高まってきているものの、まだ少し時間がかかりそうだ。
しかし、噴火のための快楽は着実に蓄積されていた。睾丸にあるマグマがその温度を上げていく。
そして、とうとうその時が来た。
「桜ちゃん、そろそろ」
「んちゅ、れろ、れろ、ん、んっ!」
くわえたまま首を縦に振る。
俺は耐えず、流れに身を任せた。上ってくる感覚、それが先端から弾ける映像を幻視し―――
「うっ、あ……っ」
「っ!!! ゴホ、ケホっ!!」
口の中に出された異物を、手の中に吐き出してしまう。数瞬迷い、
「……ん、く」
口に入れ飲み込んだ。
「大丈夫そう?」
「ふぅ、ふぅ……大丈夫そう。ありがとう、翔お兄ちゃん」
それは良かった。即効性があって何よりだ。
「それと、このことは、ね。誰にも言わないで……?」
「当たり前だよ!」
ほんとうにウェイバーに変態扱いされる。汚名が本当になる!
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朝が来た。
何事もなかったかのように食卓に着いた。桜ちゃんともいつも通り。何の問題もない。何より、向こうがなんともないようにふるまってくれたおかげで、まったく怪しまれてない。
朝食後、ウェイバーの部屋に集まった。この人数でいるには少しばかり狭いが贅沢は言っていられない。ウェイバーの魔術道具を少し横にどけて座る。
「で?」
座るや否や、ウェイバーが仏頂面で問うてくる。
「これからについて、何か考えはあるんだよな?」
「んん?」
「や……特には。強いて言うならバーサーカーのマスターとの交渉があるくらいで……」
「それだよ! それ! どう考えてもでっかい考えだろ!?」
昨夜のショッキングな出来事のせいで、イマイチテンションが上がらない。
ちらりとイスカンダルを見る。間桐雁夜の素性は調べればわかるからイスカンダルもそんなに怒らないだろう。他のマスターのほとんどは把握している情報だし。イスカンダルが嫌がるのは、知りえないはずのサーヴァントの弱点を教えたり、これから起きる出来事をあらかじめ知らされることだ。
それじゃあ少し説明しておくか。
「そうだな、少し説明しておくと……バーサーカーのマスターの名前は間桐雁夜っていうんだ」
「間桐……確かこの子の名前も」
「そ、間桐桜」
「同じ家の人間だから、協力できるってことか?」
そうではない。そうではないけど、ここは口を開かないほうがいいかもな。
「まあそんなもんだ」
「なるほど……」
少なくとも、ウェイバーを納得させるには十分な理由だったみたいだ。間桐家の事情を知りさえしなければ、魔術師の世界でも家族の情はある程度認められるらしい。
イスカンダルも特に何も言ってはこない。
「ま、交渉については任せてくれ。成功の確率は高い。そっちには、桜ちゃんの護衛をお願いしたい」
「お前はお前で、ずいぶんと不用心だな。マスターを預けるなんてさ」
「信用してるんだよ」
俺は軽く笑ってやった。
過ごす時間が長くなればだんだんと気を許してしまうものだ。あんなに警戒していたウェイバーは少し顔を緩めて、逸らした。ちょっとチョロい。
ともかく、交渉は今日ではなく明日の夜。魔力回復のことも考えて余裕を持たせた。第2ステップ成功のためにも、ゆっくりと休むことにしよう。
と言っても、ずっと家の中にいるわけにはいかない。
桜ちゃんは頼れる人がもういない。間桐家にはもちろんのこと、遠坂家にも。そして、誰かの庇護がなければ桜ちゃんに未来はない。この聖杯戦争が終われば俺は未来へと強制送還される。一番良いのは一緒に帰ることだけど、正直それは厳しいだろう。
ただ生き残らせるだけじゃダメだ。しっかりと未来に生きていけるようにしなければ。
時間は少なく、やることは多い。体を休めていても、頭を動かすことはできる。ゆっくりとしつつ、きびきび考えることにしよう。
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そして、とうとう交渉の時間がやってきた。目玉が飛び出るようなアクシデントもあったがむしろ良かったのでは?
フードを被った男がいる、間桐雁夜だ。不自然に片方に偏った重心。こちらを睨みつける顔も土気色で生気が感じられない。怨念か執念か。この男を支えているのはそれだけだ。
「お待たせ」
「お前! 桜ちゃんはどこにいる!!」
すでにバーサーカーが傍らに控えている。戦闘準備は万端だ。間違っても戦いに発展するのだけは阻止したい。
「落ち着け。桜ちゃんは無事だ。俺のマスターだからな」
「……なん、だと……? ど、どういうことだ!?」
雁夜は焦っているのか冷静さを失っているのか錯乱気味だ。
「俺が桜ちゃんにサーヴァントとして呼ばれたんだ」
「ぁ、ぇ?」
「理由はわからない。事実として俺が呼ばれ、桜ちゃんがマスターになった。俺はイレギュラーとして呼ばれた8番目のサーヴァントだ」
「そんな……桜ちゃんがマスターになるなんて……あの蟲爺ッ!!」
勘違いに怒りを燃やしているが、今は勝手に話を進めさせてもらう。
「もう間桐の家は潰した」
「なに?」
虚を突かれたように唖然とする。
「召喚されたときに気持ちの悪い虫に囲まれてたからな。消し飛ばしたよ」
「あれはお前がやったのか……あいつは死んだのか?」
「分からない。雑に吹き飛ばしてすぐに離れたからな」
そして交渉に入る。できるとほぼ確信しているが。
「間桐雁夜、提案がある」
「なんだ」
「今、俺はライダーのもとに下っている。俺も桜ちゃんがこの聖杯戦争で命を落とすことは望んでいない。そのためにも力を貸してほしい」
「俺にもライダーの仲間になれと言いたいのか?」
雁夜の顔には隠し切れない嫌悪の色がある。おおよその魔術師という生き物を嫌っている男だ。ライダーと一緒に戦う、つまり魔術師と肩を並べて戦うことが嫌なんだろう。
「ライダーのマスターは人として信用できる。俺はそう判断した。お前の思っているような魔術師じゃない」
「……」
自分にとって美味しすぎる話。安全のために桜ちゃんは連れてこなかったが、連れてきていればもっと簡単に信用を勝ち得ていただろう。錯乱気味の雁夜でも、少し考える程度の思考は残っているみたいだ。
静かに結論を待つ。ここまで考え込んでいるということは、信用されなくても即戦闘にはならないだろう。だったら後日桜ちゃんもつれてまた会いに行けばいい。
静かに結論を待っていると、
「む」
大きな魔力を感じ取った。こちらに一直線に近づいてくる。
「こいつは……」
大きな存在感を隠そうとしない、しかも隠れることなく進んでくる。アサシンとかキャスターじゃないな。こいつは2人が俺たちを狙う理由がない。ライダーとアーチャーも考えにくい。残るはランサーとセイバー。
拙いな。ここでその2人のどちらかと戦うのは。
雁夜もその存在に気付いたらしい。険しい顔をしている。
「雁夜、逃げてくれ」
「な、何?」
「ここは逃げろと言ったんだ。お前は底なし沼にハマりながら戦っているようなものだ。不用意に戦えばどんどん体が沈んでいく。お前に死なれるのは困る」
「だが、2人がかりなら一瞬で―――」
「行けッ!!」
ランサーの宝具はバーサーカーにとって天敵といえる。相対するのは非常にリスキー。
セイバー相手ではただでさえ制御できない狂犬が、さらに手に負えない状態になる。しかもこの速度、十中八九決着がつくまで戦う羽目になる。ここであまりセイバーに精神的ダメージを負ってほしくない。
雁夜がどこまで相手を絞り込めているかはわからないが、とにかく戦ってほしくない。
万一マスターに出くわしても、バーサーカーがいれば対応できるだろう。
雁夜は息を飲み、背を向けて走り出した。
そのわずか十数秒後、俺の目の前に一台の車が止まった。俺の目線から見るに、レトロな高級クラッシックカー。日本の地方都市で乗り回すには少々過ぎたもの。
そこから2人の人影が下りてくる。
セイバーとそのマスター。2人分の視線が俺に突き刺さっていた。
これをチャンスと見るか。
「待ち構えているとは、よい度胸だイレギュラー」
それともピンチと見るか。
「貴様には聞きたいことがある」
ある意味聖杯の汚染に一番敏感な陣営といえる。
「この尋常の勝負、受けてもらうぞ」
俺がしたいのは戦闘ではなく話し合い。どうやってそこに持っていけばいいのか。俺は冷えた頭で考え始めた。やっぱり、騎士道云々を利用するのが一番いいか。
俺は武器を取り出す前に口を開いた。