やってしまった。
俺は少し前に姫柊ちゃんと話しているときに思いました。
クロに手を出すことはない、出されることはあっても、と。
俺の眼下には、焦点の合わない目で虚空を眺めているクロ。全身を痙攣させているのは俺の手で絶頂に導かれてしまったからだ。
俺には俺の言い分がある。
クロはあからさまに、姫柊ちゃんがいない時を狙って俺を射精させようとしていた。おそらく、姫柊ちゃんが家で俺を連れて行った時に、姫柊ちゃんの監視の目がこれから厳しくなることを予想していたのだろう。
姫柊ちゃんも魔力補給のキスくらいなら、懇切丁寧に説明して説得すれば何とかなるだろう。でも、それ以上の行為は許すわけがない。
なので、出来る時にしてしまおうという心理に達したのは自然な流れだ。クロのなかではな。普通はそういう行為を控えようと思うだろうけど。
でも、それはそれ、これはこれだ。
今は依頼をこなしている最中であって、一度それを許すと際限がなくなる恐れがあった。
くわえて、クロが普通の注意を聞くとは思えなかった。
やるなら徹底的に、今後こんなことをしようとは思わないように。
こんな理由ですね、はい。
ダメ? やっぱりか。じゃあ、もう姫柊ちゃんにバレないようにするっていう方向で行くしかないですね。
と言うか、このことをネタにクロに迫られたら、それこそクロの言いなりになっちゃうんじゃ?
その時はその時考えるしかないな。俺だって一回やったんだ、もしもの時は逆に反撃してやろう。
そもそもこれはおしおきだし? お尻ぺんぺんの延長みたいなもんだから。何もおかしなところはないな。自己正当化終了。
……クロをおこすか。
俺はクロをトイレの便座に座らせる。
「お兄ちゃん……」
「ん?」
「やらないの? 最後まで……?」
この子はまだ言うか。
「やらない。歩けるんだったら帰るぞ」
「じゃあ、もうちょっとだけ待ってて」
「ああ」
俺は壁に寄りかかる。クロは便座に座り、無防備に開いていた足を閉じて顔をしかめた。
「うわぁ、パンツびしょびしょだよ。早く取り替えたい」
クロは閉じた筈の足を開いてパンツに触り始めた。もちろん濡れ具合を確かめているだけなんだろうけど、傍から見ると、顔を赤くして自分の性器を弄っているように見える。
「お兄ちゃんって、割とSだったんだね。外にいた子にばれちゃったらどうするつもりだったの? 本当に声出ちゃいそうだったんだよ?」
悪戯っぽく言うクロ。
何を言うか。お前だって俺にやられるのを望んでただろ。
「そう言うクロは、割とMだったんだな。みんなにバレそうなのにそんなに溢れさせてたんだから」
俺も負けじと言い返す。
するとクロは顔を真っ赤にした。パンツを両手で隠してぼそぼそと言う。
「そ、それはっ……お兄ちゃんが……してくれたから」
「え?」
「だって、朝、何もしてくれなかったから。私、雪菜に比べたら全然子供だし……お兄ちゃん、私の体に興味なんじゃないかと思ってたから……お兄ちゃんから触ってくれて、すごく、うれしくて、その……」
あ、あれ? なんだか様子がおかしいんだけど。これフリじゃないよね? もしそうなら女性不信になりそうなレベルだよ。
「あ、いや、その、あれはおしおきだったから」
「それでも嬉しかったのっ!!」
「そうですか、はい」
それならそれでいいです。
クロはそう言って立ち上がった。そして、おもむろにパンツを脱ぎだした。
こいつは……もう一度叱ってやらねばなるまいか。
「クロ……」
「え? あ、違うよ? パンツ気持ち悪かったから。これだったら穿かない方がましだよ」
「家までノーパンで帰るつもりかよ」
「ふふ、興奮しちゃう?」
「興奮するのはおまえだろ」
クロはトイレットペーパーを使って、自分の足にまで垂れていた愛液を拭き取る。それをトイレに流し、準備万端というように俺の方を向いた。
「お兄ちゃん、帰ろ!」
俺は短く返事をして、入った時の様に周りの目に気をつけてその公園を後にした。
その後、姫柊ちゃんと合流した。クロと一緒にいたことについては何も言わなかったのは自分より前に合流したと解釈してくれたからだろう。
姫柊ちゃんは人形を渡しに行くついでに行きそびれていた買い物をしてくるらしく、俺とクロは先に帰ることになった。
いつもだったら買い物を手伝っていたのだが、今はクロがノーパン。しかもスカートだ。流石に家に帰った方がいいだろう。
俺にもクロにも露出性癖はないからな。この世界に来てたった2日で家の外で射精した俺が言うと、説得力が無さ過ぎて泣けてくる。
そんなわけで俺は今家の中、女の子ガチャの目の前にいる。
姫柊ちゃんが人形を渡せば依頼完了、ガチャを引くことが出来る。それを待っているのだ。
姫柊ちゃんは買い物の前に渡しに行くって言ってたし、そろそろじゃないかな?
ちなみにいうと、クロは今シャワーを浴びている。体に付いたもろもろを洗い流すためだ。
さあ、今度は誰が来るんだろうか。
調べたところでは、とある系や緋弾のアリアのキャラの一部はこの島に既に存在していた。つまり、ヒロインのすべてがガチャによって召喚されるのではないようなのだ。
「お」
腕時計型携帯が振動する。ポイントが加算されたのだ。
俺はすぐにタッチパネルを操作する。
『結城 明日奈』をゲットしました。
5階3号室に入室しました。
おお! アスナさんか!
……ん? 待てよ、この場合のアスナは、どっちが一番最初になるんだ?
無印が最初っていうなら、主人公であるキリトへの好感度メーターは振り切ってるだろうけど、 プログレッシブが最初なら他人同然の扱いになるのか?
同じ屋根の下で暮らすんなら、好感度は高い方がいいなぁ。
そんなことを考えていると、階段を下りてくる音が聞こえる。
「こんにちは、翔君」
満面の笑みを浮かべたアスナさんが姿を見せた。
この様子を見る限り、無印の方だな。まあ、プログレッシブは色々本編と比べると矛盾があるって作者も言ってたらしいから無印の方なんだろう。
「初めまして、アスナさん」
俺も軽く笑う。アスナさんはラノベのメインヒロインの中でもかなりの常識人だ。キリトが他の女の子といちゃいちゃしていても笑って許す度量があるし。めったに暴力は振るわない。
そこ、めったに暴力は振るわないのは、出番が少ないからだとか言っちゃいけません。DEBAN村の人に失礼でしょう。
「あれ? お兄ちゃん、その人は?」
そこにシャワーを浴び終わったクロが現れる。
髪を拭いていたタオルを首にかけて、アスナさんをじろじろと観察するクロ。初対面の人をこれだけ無遠慮に眺めることが出来るクロもクロだが、不快な様子を全く見せないアスナも大人だなぁ。
実際、俺よりも年上だよな。この家の最年長はアスナさんになったな。
「はじめまして、クロちゃん。結城 アスナです」
「……ああ、そう言う事ね。初めまして、アスナ。クロエ・フォン・アインツベルンよ。よろしくね」
こうして、俺たちに新しい仲間が増えたのだった。
その日の夜は、アスナの歓迎パーティを催すことになった。
アスナはそんなことしなくても大丈夫だと言っていたが、そこは気分の問題だ。
俺はキッチンで腕を組んでいた。歓迎パーティをすると言っても、何もそこまで特殊なことをするわけではない。
せいぜい、いただきますの代わりに乾杯をするくらいだろう。でも、歓迎会と銘打っているので、料理には少しくらい力を入れたいと思っている。
ちなみに、家の料理は基本的に俺が作ることになっている。と、言うか、俺以外作ることのできる人がいない。
俺の料理の腕はばあちゃん仕込み。ばあちゃんは和食、フレンチ、中華、イタリアンあらゆるジャンルの料理を俺に授けてくれた。
じいちゃんは俺が調理することにあまりいい顔をしなかったが、いつもばあちゃんの一睨みで静かになっていた。俺の家で一番力があるのは、ばあちゃんだった。
おかげで、料理は俺の趣味と言えるものになっていた。それなりのこだわりもできたため、下手なことをされないように、姫柊ちゃんとクロにはなるべくキッチンに入らないように言ってあった。
昨日までは、だが。
今日はアスナさんがいる。
アスナさんはデスゲームになったSAOにて、戦闘には全く関係ない料理スキルを趣味で完全習得した猛者だ。
しかも、その腕は現実世界でも変わらない。
最初は歓迎する人に手伝わせるわけにはいかないと断ったのだが、どうしてもと押し切られてしまった。
さらにその時、残りの2人が料理を勉強したいと言ってきたのだ。
十分に時間に余裕があったためか、アスナさんはそれを承諾。まったりと調理しながら、2人のレクチャーもすることになった。
「まあ、たまにはいいか」
俺とアスナさんはそれぞれ姫柊ちゃんとクロを教えている。
「え? 何か言いました、先輩?」
「いや、なんでも……ほら、目を離すな」
「あ、ごめんなさい」
包丁を握っているのに目を俺の方に向ける姫柊ちゃんに注意する。
そうだな、平和でいいんだ。
願わくば、こんな平和が続きますように――
「ところで先輩、さっき洗面所に行ったんですけれど」
なんだよ、いい感じに終わろうとしてたのに。いいじゃん、今回はこれで終わりで。切りもいいしさ。
「クロさん、シャワー浴びたんですね」
「浴びたんだな」
クロの話は俺にとって地雷原にも等しいものだ。少し間違えば俺の犯した罪が露見する。
アスナさんがいるこの状況は、昨日よりも事態が悪化したと言っても過言ではない。
「変なことしてませんよね?」
「……してませんよ」
俺たちの間の会話の種はそれ以外ないんですかね。
「なんでそう思った」
「えっと……それは……」
ちらちらとクロ、アスナさんの方を気にしつつ、
「男の人がするときって、えっと、おかず? が必要なんですよね?」
……あー。
「女の子が着たあとの服のにおいは、いいおかずになる、と書いてあったのですが……」
とりあえず、俺がいつもヤることしか考えてないみたいな言動はやめてほしい。俺、そこまで汚れてますか?
「そう言う人も、まあ、確かにいるかもしれないけど」
「先輩は違うんですか?」
「一概に違うとも言い切れない、かな」
「せ、先輩……っ」
だから目を離すんじゃないよ。そしてそんな目で見ないでください。
「誤解するな。匂いが好きっていうのは、あれだ、動物で言うフェロモンみたいなもんだ。男は女を引き寄せるにおい、女は男を引き寄せるにおいを出す。生物的に生殖活動は重要なんだから、それに反応するのは当然だろ」
「確かにそう言われれば……で、でも、生々しいですね」
そんなもんなんだ、あきらめろ。
あ、だから、目を――
「痛っ!」
だから言ったのに。いや、俺のせいだな。
俺と話していたせいで、姫柊ちゃんは指を包丁で切ってしまってた。
「見せてみろ」
「だ、大丈夫ですよ。自分で出来まっ!! せ、先輩!!」
「ん?」
何を騒いでるんだ? ただ切った指をくわえただけだろう。ばあちゃんにはよくやられたぞ。
俺は姫柊ちゃんの指をくわえたまま、バンドエイドを手探りで取り出す。料理をやっていると、たまに切ってしまうことがある。念のために常備しているのだ。
口を放して、バンドエイドを巻く。はい、終わり。
「どうした?」
「いえ……」
バンドエイドが貼られた指にそっと触れたまま動かない姫柊ちゃん。ま、指先のケガって痛いしね。
とりあえず包丁は俺が代わり、姫柊ちゃんには別の事をしてもらうことにした。
そして、この時、近くにいる2人が俺の事を見ていたことには気が付かなかったんだよね。
「それじゃあ、アスナちゃんの入室を祝して、乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
完成した料理を4人で囲む。昨日は3人だったのにもう4人になった。この調子で増えていけば、テーブルの大きさが合わなくなるんじゃないか?
しばらくすると学校の話になった。
自分たちのクラス、担任ときて、今度は選択授業の話になった。
この島の武偵学校では中等部になると、選択授業として超能力開発や、魔法などの超常的な力を学ぶ機会がもらえる。
授業を取っていない場合は、自主訓練や依頼を受けたりすることもできる。
ちなみに初等部では、全体的に学習して下地を作るらしい。
本来はここで自分に向いている方向性をある程度決めるのだが、あいにく、俺にはそんな機会は与えられていない。
「まあ、適当に回ってみようと思ってるよ」
「そうなんですか。私は巫女系統に興味があるのでそっちにしてみようと思ってます」
まあ、姫柊ちゃんは剣巫だしな。
「じゃあ私は、翔君と一緒に見て回ろうかな。いい?」
「もちろん」
これで明日は、アスナと学校デートだ。違うか。
毎日投稿の作者さんは化け物か!?
すみません、昨日休んでしまいました。
本当に、毎日投稿している人は尊敬します。
もう2日に1回で、いいですか?
弱音はここまでにして、3人目はアスナでした。
性格はプログレッシブの方にしようか迷ったんですが、やっぱり話が作りやすい無印の方にしました。
次回もよろしくお願いします。