「あ、ぇ……?」
「……」
タオルが取り払われて出て来たのは、赤く腫れあがった亀頭を天井に向けている俺のペニスだった。限界まで反り返っている竿には血管が浮き出ている。時折テレビで紹介されている深海魚よりグロテスクだ。
あんなにやる気満々だった桜ちゃんが完全に固まっちゃっている。
「さ、桜ちゃん?」
「っ! あ、ごめんなさい! ちょっと驚いちゃっただけなんです。すぐに洗いますね!」
俺の言葉が催促だと思ったのか、慌てた様子で泡を立て始めた。赤い顔で。そういう訳じゃないんですよ! そういうことを言いたいわけじゃないんだ!
「その、お父さんのとちょっと違かったから……大きさ、とか」
そりゃ平時と戦闘形態は違う。時臣が桜ちゃんに戦闘形態を見せていたらこっちが引くよ。そこまで時臣に幻滅したくない。俺の中では『うっかり優雅魔術師お父さん』でいてほしい。属性多すぎるかな?
なんてことを思っている間にも、桜ちゃんは俺のそそり立つ肉棒に手を近づけていた。前を洗うという話だったはずなのに、視線がただ一点に向けられているのがとても気になる。
「だったら無理しなくても……」
「いいえ! 大丈夫ですから!」
そもそも、桜ちゃんには一度見られてるよな。あ、でも、あの時は蟲の影響もあったし、何より暗かった。熱に浮かされてたみたいなところもあったし、よく覚えてないのかもしれない。
「それじゃあ、洗いますね……」
もう何を言っても無駄だと悟った俺は、せめて何事もないようにと身構えた。いくら討論しても変わらないなら、もう相手が満足するまでやってもらうことにしたのだ。
「っ」
「ひぅ」
小さく、石鹸の泡でヌルヌルになった手で触れられた。それだけでピクリと反応する。ドクンドクンと脈打つものにおびえたように手を引っ込める桜ちゃん。でも、すぐに離れた手は近づいてくる。
握るのではなく、手のひらで包み込むように触れられた。
「すごい……固くて、熱い……」
撫でるように側面を刺激される。微弱とはいえ快楽の電流が流れ始める。浮き上がった血管を爪で弾かれ、腰が少し震えた。
「心臓みたいにドクンドクンって……男の人はみんなそうなんですか?」
「ん? あー……その人によるんじゃないかなぁ」
「でもお父さんと全然違うし……もしかして、病気だったり……」
「しないから! そうだなぁ……そう、体調だよ! 男の人は体調がいいとこんな感じになるのサ」
何を言っているんだろうか、俺は。全然わかんないよぉ。
「体調、ですか……?」
「そうそう! 元気だとこんな感じになるんだよ! 多分、時お……お父さんはその時疲れてたんじゃないかな!?」
「そういえば……そうだったかも」
何とか回避できたみたいだ。
「俺はもう、ケガが治ってご飯も食べたから! 元気いっぱいなんだよ!」
「そうだったんですね。良かったです。元気になって」
なんかとんでもないこと言ってしまった気がするけど……ま、成長すればそのうちわかるでしょう。その時までには忘れてるかもしれないしね。
「それじゃあ、洗いますね!」
「あ、ウン」
勢いを取り戻した桜ちゃんは、おっかなびっくりだった手つきをどんどん大胆にしていった。
肉棒はくちゅくちゅと、泡立った石鹸によって卑猥な音を出し始めた。両手で、何の手加減もなしにリズミカルに、根元から出っ張って手が止まるカリ首までしごかれている。
カリ裏の皮が薄い部分をたたかれるたびに、目の前に火花が散ったのではないかと思うくらいの刺激が背骨から脳に送られる。
それをやっているのがまだ小学生にもなっていないような女の子という事実が、背徳感となり、さらなるスパイスになる。
カウパー粘液がポンプで押し出されるようにくぷぷと溢れてくる。まだ射精していないのが奇跡のようだ。俺の意思もバカにしたものじゃないな。亀頭は真っ赤にはれ上がり、陰嚢は中に入っているものを吐き出したいとうずうずしていた。
「ふぅっ、ふぅっ……っ!」
腹筋に力が入る。せわしなく手を握ったり開いたり、快感を外へ逃がそうと必死になっていた。
そう遠くない未来に決壊するのは目に見えていた。このまま刺激され続ければ。
そう思っていたのだが、唐突に桜ちゃんが手を止めた。
「ここはもういいかな。次は……」
亀頭全体を揉みしだくように洗ってきた。桜ちゃんはまじめだった。とても念入りに、射精直前で張りつめている亀頭を洗ってくれた。
「ぁ、っ、っ……!」
カリがお気に入りなのか、竿との段差に指を合わせ、丹念に汚れを落としてくれた。空いた手で先ほどしていたように、今度は亀頭を短いストロークでしごき始めた。
とめどなくあふれ出るカウパーのおかげかどんどん滑りが良くなる。
まさかここからアクセルがかかるとは思わなかった。そんなことをされてしまえば、我慢なんてできる訳がない。
「
しっかりと煮込まれた白濁が、体の根元から尿道を登ってくる感覚がしっかりと感じ取れた。
――ぐびゅるる、どびゅるるるる……っ、ごぶっ、どぶどぶっ、びゅるるる……
「わっ!」
「あっ、ご、ごめん!」
顔の目の前で
俺は慌てて洗い流そうと洗面器にお湯を汲もうとする。
「あうぅぅ、これ……?」
横では、桜ちゃんが顔についたものを手ですくっていた。しかも、あろうことか口の中に―――
「桜ちゃん、顔洗って。ほら、早く」
有無を言わせず顔を洗わせた。
「やっぱりあとは自分で洗うから。桜ちゃんは湯船に浸かってて、ね?」
「は、はい。分かりました」
予想していたこととはいえ、見事にダメだった。ここ最近溜まったものをすべて吐き出すみたいに吐き出しちゃった。
「お兄さん。もう上がりますか? 良かったら一緒に……」
「ん、わかったよ」
手早く前を洗った俺は、再度お湯に浸かった。少し冷えてしまった体に、熱いお湯が心地よい。
肩までつかると桜ちゃんが寄りかかってきた。
「あったかいです」
「しっかり温まれよ」
「はいっ」
すっかりリラックスしたように俺に体を預けている。俺も力を抜いて天井を見た。
そこからしばらく、2人とも口を開かなかった。
―――っ、―――っ、―――っ!
何やら廊下を誰かが走り回っているような音が聞こえてくる。
「ん? なんか外が騒がしい―――」
「イレギュラー!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
浴室の扉がいきなり開かれた。そこに立っていたのはセイバーだ。
「な、なんだよ! いきなり入ってくるなよな!!」
もしも『アウト』な光景が繰り広げられていたらどうするつもりだったんだ! 俺は知らんぞ!
「緊急事態です! 早く上がってください!」
セイバーが珍しく焦っていた。
……なに? 緊急事態だと?
――――――――――――――――――――――――――――――
俺と桜ちゃんは風呂から上がり、言われるがままにTVを見た。『生中継』というテロップがあり、空からヘリで撮影しているのか激しく画面が揺れていた。わざわざ映している場所は、ここからそう遠くない駅の近くだということは、『生中継』の下にある文字で知ることが出来る。
《お判りになるでしょうか! この奇妙な現象を! 本来なら人々でにぎわう駅。その近くで原因不明の事件が起こっています!!》
原因不明。そう言いたくなるのは良くわかる。カメラの先に見える人たちは必死に逃げまどっていたのだ。しかし通り魔がいる訳ではないし、狂った殺人鬼が暴れているわけでもない。映像には、善良な市民しかいない。みんな、とにかくがむしゃらに走っている。
「これ、放送しちゃダメだろ……ッ!」
一人、また一人と、見えない何かに食われるように体が削られ息絶えていく。ヘリの音にかき消されていても、悲鳴が聞こえてきそうな光景だった。
「こいつは……サーヴァントの仕業か?」
イスカンダルはあくまでも冷静に。
「どうでしょうか。少なくとも、私のセイバーは何もしていません」
「そりゃあ、こっちだってそうですよ」
「余も、同じく」
しかし、だったら。
「誰の仕業なんだ?」
俺の知っている第四次聖杯戦争にはこんな出来事はない。だったら、この作品にはない何者かの介入。そう考えるのが自然だ。
そして、見ればわかる。倒さなければならない相手だと。
「ほう。未来から来た貴様でも、知り得ないことがあったというわけだな。これは面白くなってきたわい。果たして相手は何者か、わくわくするわい」
「面白がるなよ、ライダー!」
「おいおい。未知の強敵と相まみえることこそ、人生の醍醐味ではないか」
「いや、ライダー。イレギュラーの言う通りだ。人命が失われている以上、面白いなどという言葉を口に出すべきではない」
「余とて、この振る舞いを許しておくほど豪気ではないぞ? すぐさま出陣し、下手人には王の罰を与えてやらねばなるまいて」
セイバーにも注意され、あっさりと降参してしまう。
「準備が整い次第、出陣とする」
テレビの画面にヒビが入った。現場で撮っているカメラのレンズに入ったヒビだろう。4割ほどが映らなくなり、今度は地面を映しながら真っ逆さまになる。
「……」
次の瞬間には『しばらくお待ち下さい』と映し出された。
「なるべく早く、な」